糖尿病創薬に光 - インスリン産生細胞の分化マーカーを2色の蛍光で標識したヒトiPS細胞を開発
[16/10/27]
提供元:@Press
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埼玉医科大学 ゲノム医学研究センターの岡崎 康司(所長)、三谷 幸之介(部門長)及び国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下 産総研)の中西 真人グループを中心とする共同研究で、糖尿病治療の再生医療を目指しインスリン産生細胞膵β細胞の作製を目的に、2色蛍光ヒトiPS細胞(hIveNry)を開発しました。
【概要】
■膵β細胞(インスリン産生細胞)の分化を追跡できるマーカーを2色の蛍光で標識したヒトiPS細胞(hIveNry)を作製しました。
■薬剤スクリーニングによりFGFR1阻害剤は膵β細胞の分化誘導を促進することを発見しました。
■この発見は、従来のFGFR1シグナルがβ細胞分化に必須である常識を覆す成果です。
■FGFR1シグナルのスイッチのONとOFFを分化段階で精密に切り替えることが重要であることを証明しました。
■β細胞分化過程のメカニズムの新たな一端を明らかにし、創薬または糖尿病の再生医療の実用化に繋がる可能性が期待されます。
以上のように、今回の研究では、hIveNry細胞を用いてβ細胞分化促進因子のスクリーニングを行ったことにより、β細胞分化のメカニズムの新たな一端を明らかにすることが出来ました。
【発表者】
岡崎 康司 :埼玉医科大学 ゲノム医学研究センター 所長
三谷 幸之介:埼玉医科大学 ゲノム医学研究センター 遺伝子治療部門 部門長
中西 真人 :国立研究開発法人産業技術総合研究所
創薬基盤研究部門 ヒト細胞医工学研究ラボ ラボ長
【研究の背景】
1型糖尿病は、自己免疫疾患によりインスリン産生細胞が破壊され、インスリンが欠乏すると高血糖状態が続き、腎症や失明などの合併症を引き起こす重篤な病気です。今日の1型糖尿病治療では、生涯にわたりインスリンを注射し続けるか、膵島の移植が主に行われています。
しかしながら、膵島の移植はドナーの不足や免疫応答の問題が解決されていないため、あまり普及していません。近年、その他の再生医療アプローチ法として期待されているのが、ヒトiPS細胞や幹細胞からのβ細胞への分化、体細胞からのダイレクトリプログラミングによるβ細胞などがあります。
ヒトiPS細胞からの分化誘導法は2006年に発生学を模倣した分化誘導法が報告されて以来、多くの報告がされています。しかし、臨床応用に達した分化誘導法は未だ確立されておらず、分化メカニズムにおいても不明点が多いです。そこで我々はヒトiPS細胞からβ細胞への分化誘導法の改善をめざし、簡便にβ細胞を追跡できるシステムを樹立しました。
【研究の内容】
埼玉医科大学 ゲノム医学研究センターでは、岡崎 康司(所長)、三谷 幸之介(部門長)及び産総研の中西グループらによって糖尿病治療の再生医療を目指しインスリン産生細胞膵β細胞の作製を目的に、2色蛍光ヒトiPS細胞(hIveNry)を開発しました。本細胞は、膵β細胞分化誘導時に分化過程を可視化できるようにしたものであり、β細胞をVenus(緑)、β細胞分化の前段階である内分泌前駆細胞をmCherry(赤)の蛍光が光るようヒトiPS細胞にあらかじめゲノム編集により挿入して作製したものです。
本細胞を用いてβ細胞の分化誘導促進因子を探索するため薬剤スクリーニングを行ったところ、繊維芽細胞増殖因子受容体1の阻害剤 - fibroblast growth factor receptor 1(FGFR1)inhibitor - がβ細胞分化に効果があることを証明しました。FGFR1は膵臓発生初期段階においては重要であることは知られていましたが、本研究によりβ細胞の分化過程の後半においてはFGFR1を阻害することで、効率良く分化誘導を進めることがわかりました。
本成果は、β細胞の分化にはFGFR1のシグナルが必須であるというこれまでの認識を覆すものであり、FGFR1シグナルを介する分化誘導は分化の段階に応じて適切にスイッチングのOnとOffの使い分けが大事であるということを初めて示しました。本研究で開発したhIveNry細胞システムは、一般の創薬スクリーニングや、β細胞の分化誘導法の改善に有効であると考えられ、糖尿病の再生医療への応用が期待されます。本研究は、私立大学戦略的研究基盤形成支援事業(文部科学省)、科学研究費(文部科学省)、日本IDDMネットワーク、ならびに川野小児医学奨学財団の支援を得て行われました。
この研究成果は日本時間10月27日18:00に英国科学雑誌(Scientific Reports)に発表されました。
< http://www.nature.com/articles/srep35908 >
【概要】
■膵β細胞(インスリン産生細胞)の分化を追跡できるマーカーを2色の蛍光で標識したヒトiPS細胞(hIveNry)を作製しました。
■薬剤スクリーニングによりFGFR1阻害剤は膵β細胞の分化誘導を促進することを発見しました。
■この発見は、従来のFGFR1シグナルがβ細胞分化に必須である常識を覆す成果です。
■FGFR1シグナルのスイッチのONとOFFを分化段階で精密に切り替えることが重要であることを証明しました。
■β細胞分化過程のメカニズムの新たな一端を明らかにし、創薬または糖尿病の再生医療の実用化に繋がる可能性が期待されます。
以上のように、今回の研究では、hIveNry細胞を用いてβ細胞分化促進因子のスクリーニングを行ったことにより、β細胞分化のメカニズムの新たな一端を明らかにすることが出来ました。
【発表者】
岡崎 康司 :埼玉医科大学 ゲノム医学研究センター 所長
三谷 幸之介:埼玉医科大学 ゲノム医学研究センター 遺伝子治療部門 部門長
中西 真人 :国立研究開発法人産業技術総合研究所
創薬基盤研究部門 ヒト細胞医工学研究ラボ ラボ長
【研究の背景】
1型糖尿病は、自己免疫疾患によりインスリン産生細胞が破壊され、インスリンが欠乏すると高血糖状態が続き、腎症や失明などの合併症を引き起こす重篤な病気です。今日の1型糖尿病治療では、生涯にわたりインスリンを注射し続けるか、膵島の移植が主に行われています。
しかしながら、膵島の移植はドナーの不足や免疫応答の問題が解決されていないため、あまり普及していません。近年、その他の再生医療アプローチ法として期待されているのが、ヒトiPS細胞や幹細胞からのβ細胞への分化、体細胞からのダイレクトリプログラミングによるβ細胞などがあります。
ヒトiPS細胞からの分化誘導法は2006年に発生学を模倣した分化誘導法が報告されて以来、多くの報告がされています。しかし、臨床応用に達した分化誘導法は未だ確立されておらず、分化メカニズムにおいても不明点が多いです。そこで我々はヒトiPS細胞からβ細胞への分化誘導法の改善をめざし、簡便にβ細胞を追跡できるシステムを樹立しました。
【研究の内容】
埼玉医科大学 ゲノム医学研究センターでは、岡崎 康司(所長)、三谷 幸之介(部門長)及び産総研の中西グループらによって糖尿病治療の再生医療を目指しインスリン産生細胞膵β細胞の作製を目的に、2色蛍光ヒトiPS細胞(hIveNry)を開発しました。本細胞は、膵β細胞分化誘導時に分化過程を可視化できるようにしたものであり、β細胞をVenus(緑)、β細胞分化の前段階である内分泌前駆細胞をmCherry(赤)の蛍光が光るようヒトiPS細胞にあらかじめゲノム編集により挿入して作製したものです。
本細胞を用いてβ細胞の分化誘導促進因子を探索するため薬剤スクリーニングを行ったところ、繊維芽細胞増殖因子受容体1の阻害剤 - fibroblast growth factor receptor 1(FGFR1)inhibitor - がβ細胞分化に効果があることを証明しました。FGFR1は膵臓発生初期段階においては重要であることは知られていましたが、本研究によりβ細胞の分化過程の後半においてはFGFR1を阻害することで、効率良く分化誘導を進めることがわかりました。
本成果は、β細胞の分化にはFGFR1のシグナルが必須であるというこれまでの認識を覆すものであり、FGFR1シグナルを介する分化誘導は分化の段階に応じて適切にスイッチングのOnとOffの使い分けが大事であるということを初めて示しました。本研究で開発したhIveNry細胞システムは、一般の創薬スクリーニングや、β細胞の分化誘導法の改善に有効であると考えられ、糖尿病の再生医療への応用が期待されます。本研究は、私立大学戦略的研究基盤形成支援事業(文部科学省)、科学研究費(文部科学省)、日本IDDMネットワーク、ならびに川野小児医学奨学財団の支援を得て行われました。
この研究成果は日本時間10月27日18:00に英国科学雑誌(Scientific Reports)に発表されました。
< http://www.nature.com/articles/srep35908 >