IEEEがプレスセミナーを開催『ディープラーニングのロボットへの応用とその展望』
[16/12/20]
提供元:@Press
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IEEE(アイ・トリプル・イー)は、ブームを迎えた人工知能(AI)の重要技術であるディープラーニング(深層学習)とロボットの関係性を説く『ディープラーニングのロボットへの応用とその展望』と題したプレスセミナーを2016年11月14日(月)に大手町(東京都千代田区)で開催いたしました。今回は、IEEEメンバーで、AI・ロボット双方の研究で知られる尾形 哲也教授(早稲田大学 基幹理工学部 表現工学科、産業技術総合研究所人工知能研究センター)にご登壇いただきました。
今回のセミナーでは、画像認識や音声認識の分野を中心に研究開発が進むディープラーニングとロボットを組み合わせた研究事例の紹介と、AIとロボットの相性、組み合わせの問題点、課題解決策と将来の展望について尾形先生が紹介しました。
■AIでロボットの動きを制御
「ロボットと人工知能(AI)を組み合わせて新しい機能を開発する。」一見、多くの企業や大学で研究開発が進んでいそうです。しかし、AIでロボットの「動き」自体を制御する研究は少数です。ロボットとAIを組み合わせる研究は、ほとんどのAIが画像や音声などの認識をして、ロボットはAIの認識結果を動きの生成に使うという役割分担をしています。尾形先生の研究室は、AI技術の一つであるディープラーニング(深層学習)による認識と動きの制御の統合という課題に取り組んでいます。
尾形先生は「現在、本当はAIとロボットの関係は薄い」と説きます。関係性の薄さを示す事象の一つが学会の会員です。1980年代以前はロボット関連の学会とAI関連の学会に同じ研究者の名前がありました。ですが、それ以降は多くの分野で研究が分かれ、別々のメンバーが研究を進めてきています。
最近は、深層学習が飛躍的に進化して画像や音声の認識率が高まっています。画像認識や音声認識、異常検知など幅広い応用が見えて、開発のブームを迎えています。一方で、ロボット技術もドローンやコミュニケーションロボットの進化を契機に応用が一斉に始まり、モノのインターネット(IoT)の一要素としても注目されブーム的な状況になっています。当然、AIとロボットを組み合わせようという動きが加速しています。
■相性が悪いロボットとAI
尾形先生は「AIとロボットの相性は本来悪い」と問題提起します。AIは人間の知的処理を明示的にプログラム化し、計算して分析や認識を行います。一方で、ロボットは歩く、腕を上げる、といった動きの詳細を明示化しにくい作業が中心です。子供にモノの持ち方を説明するときに、産業用ロボットのようにいちいち座標の変化を教示する人はいません。説明できないものはプログラムにしにくい。この差が相性の悪さを示しています。
そうした背景から、深層学習は認識に使い、それによって得た結果をロボットの認知・判断・動作に活用しようという役割分担的な組み合わせが研究の主流になっています。そんな中、尾形先生の研究室は、深層学習を直接ロボットの制御に使う研究を進めています。「物をつかむというロボットの動きに、つかみたい物の細かい位置や形状の認識は不要。ざっくりした状態把握で動いても役目を果たせる」という考え方で、新たな機能獲得を目指しています。
成果としての一つの事例が、ロボットがタオルをつかんで畳む動きの研究です。ヘッドマウントディスプレイを着けた人が3Dマウスを動かして一度簡単に動作を教えます。すると、タオルの位置がズレたり、別の色のタオルでも、ざっくりした感覚で位置を把握してロボットがちゃんとつかんで畳みます。尾形教授は「例えば、グリグリ動かしつつ棒を穴に差し込むとか、二つの部品をガチャガチャぶつけながらはめ合わせる、といった精度だけでは難しい作業が応用範囲になるだろう」と、この研究の利点を挙げます。
■ロボットの進化につながる深層学習
違う研究事例では、人型ロボットが鍋の中のボールを回す、鐘をならす、といった複数の動きをこなす作業も円滑に学習できます。一つ一つの動作をきっちりプログラムするのでなく、頭脳に深層学習を使いつつ、センサー状況を把握しながら、ざっくり動きを生成することでできるものです。
こうした技術の応用で、尾形先生はロボットの動きをテキストで言語に変換する研究にも挑戦しています。2本の腕を持つロボットの腕の前に赤と緑のベルを置き、「赤を鳴らす」と指示すると赤いベルに近い方の腕を下ろしてベルを叩きます。ベルの位置を入れ替えてもカメラで色を認識し、正しいベルを鳴らします。“and”や“or”などの言葉の意味も学習から理解し動かせるようになることから、これまでにないロボットの役立て方ができると期待されています。
AIによるロボットの動作生成は、アメリカのGoogleなどごく一部の研究しかありません。ですが、詳しく動きを教えなくても、人が声で指示したことをできる、といった未来のロボットに不可欠な技術であることは確かです。
■IEEEについて
IEEEは、世界最大の技術専門家の組織であり、人類に恩恵をもたらす技術の進展に貢献しています。160カ国、40万人以上のエンジニアや技術専門会の会員を擁する非営利団体で、論文誌の発行、国際会議の開催、技術標準化などを行うとともに、諸活動を通じて世界中の工学やその他専門技術職のための信用性の高い「声」として役立っています。
IEEEは、電機・電子工学およびコンピューターサイエンス分野における世界の文献の30%を出版、2,000以上の現行標準を策定し、年間1,300を超える国際会議を開催しています。
詳しくは http://www.ieee.org をご覧ください。
今回のセミナーでは、画像認識や音声認識の分野を中心に研究開発が進むディープラーニングとロボットを組み合わせた研究事例の紹介と、AIとロボットの相性、組み合わせの問題点、課題解決策と将来の展望について尾形先生が紹介しました。
■AIでロボットの動きを制御
「ロボットと人工知能(AI)を組み合わせて新しい機能を開発する。」一見、多くの企業や大学で研究開発が進んでいそうです。しかし、AIでロボットの「動き」自体を制御する研究は少数です。ロボットとAIを組み合わせる研究は、ほとんどのAIが画像や音声などの認識をして、ロボットはAIの認識結果を動きの生成に使うという役割分担をしています。尾形先生の研究室は、AI技術の一つであるディープラーニング(深層学習)による認識と動きの制御の統合という課題に取り組んでいます。
尾形先生は「現在、本当はAIとロボットの関係は薄い」と説きます。関係性の薄さを示す事象の一つが学会の会員です。1980年代以前はロボット関連の学会とAI関連の学会に同じ研究者の名前がありました。ですが、それ以降は多くの分野で研究が分かれ、別々のメンバーが研究を進めてきています。
最近は、深層学習が飛躍的に進化して画像や音声の認識率が高まっています。画像認識や音声認識、異常検知など幅広い応用が見えて、開発のブームを迎えています。一方で、ロボット技術もドローンやコミュニケーションロボットの進化を契機に応用が一斉に始まり、モノのインターネット(IoT)の一要素としても注目されブーム的な状況になっています。当然、AIとロボットを組み合わせようという動きが加速しています。
■相性が悪いロボットとAI
尾形先生は「AIとロボットの相性は本来悪い」と問題提起します。AIは人間の知的処理を明示的にプログラム化し、計算して分析や認識を行います。一方で、ロボットは歩く、腕を上げる、といった動きの詳細を明示化しにくい作業が中心です。子供にモノの持ち方を説明するときに、産業用ロボットのようにいちいち座標の変化を教示する人はいません。説明できないものはプログラムにしにくい。この差が相性の悪さを示しています。
そうした背景から、深層学習は認識に使い、それによって得た結果をロボットの認知・判断・動作に活用しようという役割分担的な組み合わせが研究の主流になっています。そんな中、尾形先生の研究室は、深層学習を直接ロボットの制御に使う研究を進めています。「物をつかむというロボットの動きに、つかみたい物の細かい位置や形状の認識は不要。ざっくりした状態把握で動いても役目を果たせる」という考え方で、新たな機能獲得を目指しています。
成果としての一つの事例が、ロボットがタオルをつかんで畳む動きの研究です。ヘッドマウントディスプレイを着けた人が3Dマウスを動かして一度簡単に動作を教えます。すると、タオルの位置がズレたり、別の色のタオルでも、ざっくりした感覚で位置を把握してロボットがちゃんとつかんで畳みます。尾形教授は「例えば、グリグリ動かしつつ棒を穴に差し込むとか、二つの部品をガチャガチャぶつけながらはめ合わせる、といった精度だけでは難しい作業が応用範囲になるだろう」と、この研究の利点を挙げます。
■ロボットの進化につながる深層学習
違う研究事例では、人型ロボットが鍋の中のボールを回す、鐘をならす、といった複数の動きをこなす作業も円滑に学習できます。一つ一つの動作をきっちりプログラムするのでなく、頭脳に深層学習を使いつつ、センサー状況を把握しながら、ざっくり動きを生成することでできるものです。
こうした技術の応用で、尾形先生はロボットの動きをテキストで言語に変換する研究にも挑戦しています。2本の腕を持つロボットの腕の前に赤と緑のベルを置き、「赤を鳴らす」と指示すると赤いベルに近い方の腕を下ろしてベルを叩きます。ベルの位置を入れ替えてもカメラで色を認識し、正しいベルを鳴らします。“and”や“or”などの言葉の意味も学習から理解し動かせるようになることから、これまでにないロボットの役立て方ができると期待されています。
AIによるロボットの動作生成は、アメリカのGoogleなどごく一部の研究しかありません。ですが、詳しく動きを教えなくても、人が声で指示したことをできる、といった未来のロボットに不可欠な技術であることは確かです。
■IEEEについて
IEEEは、世界最大の技術専門家の組織であり、人類に恩恵をもたらす技術の進展に貢献しています。160カ国、40万人以上のエンジニアや技術専門会の会員を擁する非営利団体で、論文誌の発行、国際会議の開催、技術標準化などを行うとともに、諸活動を通じて世界中の工学やその他専門技術職のための信用性の高い「声」として役立っています。
IEEEは、電機・電子工学およびコンピューターサイエンス分野における世界の文献の30%を出版、2,000以上の現行標準を策定し、年間1,300を超える国際会議を開催しています。
詳しくは http://www.ieee.org をご覧ください。