【雪印メグミルク】ガセリ菌SP株のRSウイルス感染防御効果を《日本農芸化学会2017年度大会》で発表
[17/04/27]
提供元:@Press
提供元:@Press
雪印メグミルク株式会社 (本社:東京都新宿区 代表取締役社長:西尾 啓治) は、当社保有のプロバイオティクス乳酸菌ガセリ菌SP株(Lactobacillus gasseri SBT2055)について、新たな健康機能に関する知見を《日本農芸化学会2017年度大会》にて発表いたしました。
【発表内容サマリー】
RSウイルス(RSV:Respiratory syncytial virus※1)は、乳児期の肺炎や細気管支炎などを引き起こすウイルスとして知られており、その対策が世界的な公衆衛生上の重要な課題の一つです。
そこで、本研究では、ガセリ菌SP株のRSウイルス感染防御効果を評価しました。
ヒト喉頭がん由来細胞にRSウイルスを感染させると、細胞内でRSウイルスが増殖し、感染による炎症マーカーの遺伝子発現量が増加しました。一方、ガセリ菌SP株を添加して培養した細胞では、RSウイルスの増殖が抑えられ、炎症マーカーの遺伝子発現量も抑制されました。マウス肺由来細胞を用いた場合にも同様に、ガセリ菌SP株の添加によりRSウイルスの増殖が抑制されました。
次に、マウスへのRSウイルス感染試験を行ったところ、ガセリ菌SP株を摂取しない群では感染に伴い肺でのRSウイルスの力価※2が増加して、体重が減少したのに対し、ガセリ菌SP株を経口摂取した群ではRSウイルスの力価の上昇が強く抑制され、体重が増加することが分かりました。
これらの結果から、ガセリ菌SP株には、RSウイルスに対する感染防御効果を有することが示唆されました。
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/127619/img_127619_1.jpg
図1 RSウイルスを感染させたマウス肺中のウイルスの力価
肺におけるRSウイルスの力価が、ガセリ菌SP株摂取群で抑制された。
画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/127619/img_127619_2.jpg
図2 RSウイルスを感染させたマウスの体重の推移
RSウイルス感染群で認められたRSウイルス感染による体重減少が、
ガセリ菌SP株摂取群で抑制された。
※1 RSウイルス:呼吸器の感染症の原因となるウイルス。2歳までに少なくとも1度は感染するとされ、乳児期早期(生後数週間〜数ヶ月間)に初感染した場合には、細気管支炎、肺炎といった重篤な症状を引き起こすことがある。
※2 ウイルス力価:感染性をもつウイルス量のこと。
◆研究発表内容
演題名:乳酸菌Lactobacillus gasseri SBT2055のRSウイルス増殖抑制効果
発表者:○江口慧1、浮辺健1、河野通生1、關敬弘1、馬場一信2、猪村帝2、
田中くみ子2、松原由美2、中川久子2、宮崎忠昭2
1.雪印メグミルク株式会社 ミルクサイエンス研究所
2.北海道大学 遺伝子病制御研究所
※○は演者
発表日:2017年3月19日
会場:京都女子大学 (京都市東山区)
発表の講演要旨:
<背景と目的>
これまでに、ガセリ菌SP株をマウスに経口投与することにより、インフルエンザAウイルス感染後の生存率が上昇し、肺におけるウイルスの増殖が抑制されることを報告した1)。ガセリ菌SP株は、宿主細胞の抗ウイルス遺伝子の発現誘導を介してインフルエンザAウイルスの増殖を抑制すると考えられることから、同様の増殖機構を有する他のウイルスに対しても増殖抑制効果を示す可能性がある。
RSウイルスは、ヒトの呼吸器に感染して風邪様症状を引き起こすウイルスであり、インフルエンザAウイルスと同じエンベロープ※3を持つ1本鎖RNAウイルスである。ウイルス感染後に、乳幼児、高齢者および免疫不全者では症状が重篤化することがあり、発展途上国においては、RSウイルス感染が乳幼児の死亡要因の1つとなっている。国内においても、2015年には年間約12万件の感染が報告されており2)、RSウイルスは世界的に公衆衛生上大きな課題となっているウイルスの一つである。
以上の背景から、本研究ではガセリ菌SP株のRSウイルスに対する増殖抑制効果を検討することを目的とした。
<方法と結果>
ヒト喉頭がん由来細胞(HEp-2細胞)にガセリ菌SP株を添加して24時間培養し、その後にRSウイルスに感染させ、感染後にもガセリ菌SP株を添加して培養した。
RSウイルス感染48時間後の細胞内の遺伝子発現量をreal-time PCR※4で評価したところ、ガセリ菌SP株の添加によりRSウイルス特異的遺伝子量が減少した。
また、RSウイルス感染により炎症性サイトカインIL-6※5の遺伝子発現が亢進したが、ガセリ菌SP株はこの発現亢進を抑制した。マウス肺由来細胞(MLE12細胞)を用いてガセリ菌SP株のRSウイルス増殖抑制効果を検討した結果、MLE12細胞においてもガセリ菌SP株の添加によりRSウイルス特異的遺伝子量が減少した。
そこで、5週齢の雌性BALB/cマウス※6にガセリ菌SP株を3週間経口摂取し、その後にRSウイルスを感染させた試験においても、感染4時間後に再度ガセリ菌SP株を経口摂取し、その20時間後の肺でのウイルス力価を評価した結果、ガセリ菌SP株摂取群においてウイルス力価が低減した。
<結論>
ガセリ菌SP株はヒト由来喉頭細胞においてRSウイルスの増殖を抑制し、RSウイルス感染により惹起される炎症を抑制する可能性が示された。
また、マウス由来細胞に対してもガセリ菌SP株はRSウイルス増殖抑制効果を示し、さらに、マウス感染実験においても、ガセリ菌SP株はRSウイルス感染防御効果を有する可能性が示された。
※3 エンベロープ:一部のウイルス粒子に見られる膜状の構造のこと。
※4 real-time PCR:ポリメラーゼ連鎖反応 (PCR) による増幅を経時的(リアルタイム)に測定することで、増幅率に基づいてターゲットとなるDNAの定量を行なう方法。
※5 IL-6:インターロイキン-6の略。炎症時に免疫細胞が産生するタンパク質で、免疫反応を惹起する。
※6 BALB/cマウス:一般的な動物試験に使用されるマウスの一品種。
1) Nakayama Y et al.:Sci Rep.,4,4638,2014.
2) 国立感染症研究所「感染症発生動向調査年別報告数一覧(定点把握)」
http://www.nih.go.jp/niid/ja/survei/2085-idwr/ydata/6565-report-jb2015.html
【発表内容サマリー】
RSウイルス(RSV:Respiratory syncytial virus※1)は、乳児期の肺炎や細気管支炎などを引き起こすウイルスとして知られており、その対策が世界的な公衆衛生上の重要な課題の一つです。
そこで、本研究では、ガセリ菌SP株のRSウイルス感染防御効果を評価しました。
ヒト喉頭がん由来細胞にRSウイルスを感染させると、細胞内でRSウイルスが増殖し、感染による炎症マーカーの遺伝子発現量が増加しました。一方、ガセリ菌SP株を添加して培養した細胞では、RSウイルスの増殖が抑えられ、炎症マーカーの遺伝子発現量も抑制されました。マウス肺由来細胞を用いた場合にも同様に、ガセリ菌SP株の添加によりRSウイルスの増殖が抑制されました。
次に、マウスへのRSウイルス感染試験を行ったところ、ガセリ菌SP株を摂取しない群では感染に伴い肺でのRSウイルスの力価※2が増加して、体重が減少したのに対し、ガセリ菌SP株を経口摂取した群ではRSウイルスの力価の上昇が強く抑制され、体重が増加することが分かりました。
これらの結果から、ガセリ菌SP株には、RSウイルスに対する感染防御効果を有することが示唆されました。
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/127619/img_127619_1.jpg
図1 RSウイルスを感染させたマウス肺中のウイルスの力価
肺におけるRSウイルスの力価が、ガセリ菌SP株摂取群で抑制された。
画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/127619/img_127619_2.jpg
図2 RSウイルスを感染させたマウスの体重の推移
RSウイルス感染群で認められたRSウイルス感染による体重減少が、
ガセリ菌SP株摂取群で抑制された。
※1 RSウイルス:呼吸器の感染症の原因となるウイルス。2歳までに少なくとも1度は感染するとされ、乳児期早期(生後数週間〜数ヶ月間)に初感染した場合には、細気管支炎、肺炎といった重篤な症状を引き起こすことがある。
※2 ウイルス力価:感染性をもつウイルス量のこと。
◆研究発表内容
演題名:乳酸菌Lactobacillus gasseri SBT2055のRSウイルス増殖抑制効果
発表者:○江口慧1、浮辺健1、河野通生1、關敬弘1、馬場一信2、猪村帝2、
田中くみ子2、松原由美2、中川久子2、宮崎忠昭2
1.雪印メグミルク株式会社 ミルクサイエンス研究所
2.北海道大学 遺伝子病制御研究所
※○は演者
発表日:2017年3月19日
会場:京都女子大学 (京都市東山区)
発表の講演要旨:
<背景と目的>
これまでに、ガセリ菌SP株をマウスに経口投与することにより、インフルエンザAウイルス感染後の生存率が上昇し、肺におけるウイルスの増殖が抑制されることを報告した1)。ガセリ菌SP株は、宿主細胞の抗ウイルス遺伝子の発現誘導を介してインフルエンザAウイルスの増殖を抑制すると考えられることから、同様の増殖機構を有する他のウイルスに対しても増殖抑制効果を示す可能性がある。
RSウイルスは、ヒトの呼吸器に感染して風邪様症状を引き起こすウイルスであり、インフルエンザAウイルスと同じエンベロープ※3を持つ1本鎖RNAウイルスである。ウイルス感染後に、乳幼児、高齢者および免疫不全者では症状が重篤化することがあり、発展途上国においては、RSウイルス感染が乳幼児の死亡要因の1つとなっている。国内においても、2015年には年間約12万件の感染が報告されており2)、RSウイルスは世界的に公衆衛生上大きな課題となっているウイルスの一つである。
以上の背景から、本研究ではガセリ菌SP株のRSウイルスに対する増殖抑制効果を検討することを目的とした。
<方法と結果>
ヒト喉頭がん由来細胞(HEp-2細胞)にガセリ菌SP株を添加して24時間培養し、その後にRSウイルスに感染させ、感染後にもガセリ菌SP株を添加して培養した。
RSウイルス感染48時間後の細胞内の遺伝子発現量をreal-time PCR※4で評価したところ、ガセリ菌SP株の添加によりRSウイルス特異的遺伝子量が減少した。
また、RSウイルス感染により炎症性サイトカインIL-6※5の遺伝子発現が亢進したが、ガセリ菌SP株はこの発現亢進を抑制した。マウス肺由来細胞(MLE12細胞)を用いてガセリ菌SP株のRSウイルス増殖抑制効果を検討した結果、MLE12細胞においてもガセリ菌SP株の添加によりRSウイルス特異的遺伝子量が減少した。
そこで、5週齢の雌性BALB/cマウス※6にガセリ菌SP株を3週間経口摂取し、その後にRSウイルスを感染させた試験においても、感染4時間後に再度ガセリ菌SP株を経口摂取し、その20時間後の肺でのウイルス力価を評価した結果、ガセリ菌SP株摂取群においてウイルス力価が低減した。
<結論>
ガセリ菌SP株はヒト由来喉頭細胞においてRSウイルスの増殖を抑制し、RSウイルス感染により惹起される炎症を抑制する可能性が示された。
また、マウス由来細胞に対してもガセリ菌SP株はRSウイルス増殖抑制効果を示し、さらに、マウス感染実験においても、ガセリ菌SP株はRSウイルス感染防御効果を有する可能性が示された。
※3 エンベロープ:一部のウイルス粒子に見られる膜状の構造のこと。
※4 real-time PCR:ポリメラーゼ連鎖反応 (PCR) による増幅を経時的(リアルタイム)に測定することで、増幅率に基づいてターゲットとなるDNAの定量を行なう方法。
※5 IL-6:インターロイキン-6の略。炎症時に免疫細胞が産生するタンパク質で、免疫反応を惹起する。
※6 BALB/cマウス:一般的な動物試験に使用されるマウスの一品種。
1) Nakayama Y et al.:Sci Rep.,4,4638,2014.
2) 国立感染症研究所「感染症発生動向調査年別報告数一覧(定点把握)」
http://www.nih.go.jp/niid/ja/survei/2085-idwr/ydata/6565-report-jb2015.html