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<高齢者の自転車事故実態調査>自動車運転免許自主返納数は今年過去最高の見通し!高齢者の次なる足は自転車!?高齢者はハンドル操作ミスや転倒事故が他世代を大きく上回る結果に!

自転車の安全利用促進委員会は、高齢者の自転車事故とその傾向について、当委員会メンバーでもある三井住友トラスト基礎研究所 研究理事 古倉 宗治氏、公益財団法人交通事故総合分析センターITARDAから提供を受けた事故データに基づき、2015年に発生した事故について調査・分析いたしました。その結果、高齢者(65歳以上)の自転車事故件数は19,510件あり、事故におけるハンドル操作ミスの割合が他の世代の約2.5倍であることや、「転倒事故」の約半数を高齢者の事故が占めているということがわかりました(2015年データより)。
高齢者になると全体的に身体能力が低下して、視覚能力の衰えによる認知ミスや、バランス感覚・運動神経の低下による操作ミス、特にハンドル操作ミスが生じやすい状況が原因だと考えられます。


高齢者に多い自転車事故を防ぐために推奨される電動アシスト自転車。電動アシスト自転車は、低速時でもふらつきが少ないため、高齢者の事故原因に多い転倒事故の防止に寄与できるなどのメリットがあります。
高齢者は電動アシスト自転車の利用率が他の世代と比べて突出して高く、自動車の運転免許自主返納を促進する動きが進む中、免許返納数は2016年1年間の34万5,313件に対し、2017年は1月〜9月で32万2,356件となり、年間では大幅に増える見通しとなっています。今後も高齢者の生活の足としてさらに電動アシスト自転車の利用は増加していくと考えられます。
しかし、昨今ではアシスト比率が道路交通法の基準を超える電動アシスト自転車が販売されていることを受け、警察庁から注意喚起が行われるなど、自転車の車体そのものの安全性が問われる事態も起こっています。事故の防止は自転車選びから。電動アシスト自転車購入の際には「BAAマーク(自転車安全基準に適合した自転車に貼付される)」が付いているかどうかに注目することも重要です。自治体によっては「BAAマーク」付き自転車を補助金の条件にしているところもあります。


【調査トピックス】
●高齢者の自転車事故は年間約2万件起きている!
・高齢者においても、出合頭の事故に細心の注意を。
・ハンドル操作ミスにも要注意。事故に占める割合が他の世代の2.5倍高い!

●高齢者は、転倒事故にも要注意。全転倒事故の約半数が高齢者!

●高齢者におすすめの電動アシスト自転車。選ぶ際の注意点は?
・60歳以上の電動アシスト自転車の利用率は9.2%。各年代で最も高い!
・高齢者の電動アシスト自転車選びのポイントは「軽量」「低重心」がおすすめ。
※高齢者…65歳以上


【自転車事故実態調査】
調査元 :公益財団法人交通事故総合分析センターITARDA
交通事故と人間、道路交通環境及び車両に関する総合的な調査分析研究
並びにその成果の提供等を通じて、交通事故の防止と交通事故に
よる被害の軽減を図ることにより、安全、円滑かつ秩序ある
交通社会の実現に寄与することを目的とする団体。
調査時期:2017年2月


【高齢者の自転車事故は年間約2万件!】
●高齢者においても、出合頭の事故に細心の注意を。
●ハンドル操作ミスにも要注意。事故に占める割合が他の世代の2.5倍高い!

2015年に発生した全自転車事故は98,700件あり、うち19,510件(19.8%)が高齢者(65歳以上)の事故です。
このことから、当委員会が高齢者の事故に絞って調査・分析を行ったところ、他世代と同じく出合頭の事故が群を抜いて多く、自転車事故の「発生場所」では特に、比較的交通量が少ない歩道のない裏道交差点での事故の割合が一番高くなっていることがわかりました。
また、高齢者事故の特徴として「ハンドル操作ミス※」が多いことが見受けられます。高齢者の自転車事故における人的要因のうち「ハンドル操作ミス」は4.7%となっており、全体の1.9%と比較して約2.5倍もの高い割合になっています。
※ハンドル操作が制御できなかったり、意識と異なる方向にハンドルを切ってしまったりするミス

【三井住友トラスト基礎研究所 古倉 宗治氏 コメント】
高齢者(65歳以上)の自転車事故の件数が多い原因としては、自動車の運転に自信がなくなる等の理由から高齢者の日常生活における自転車利用が増加していることや、全体的に身体能力が低下して、運転にミスが生じやすいこと等が考えられます。ただし、事故全体に占めるミスのある割合は、非高齢者が66.7%に対して高齢者は65.6%であり、若干低い割合になっており、非高齢者は注意を怠るなど人為的な要素によるミスが多いのに対し、高齢者は注意をしてはいるものの、身体活動がついてこないという身体能力的な要素によるミスで、結果的に同じようなミスの割合になっていると考えられます。
このため、自動車・歩行者・その他をしっかりと認知するよう努めるとともに、ハンドルやブレーキ等の操作に余裕を持った運転を心掛けることで、高齢者の自転車事故の危険性を減少させていくことができると思います。また、認知ミスは出合頭事故の大きな原因にもなっていると考えられます。安全確認、一時停止等のルール遵守の確実な励行を行うとともに、自動車・歩行者・その他の存在の認知に努め、見落とさないようにすることが大切です。その点においては、電動アシスト自転車は、低速時でもふらつきが少なく、ハンドル操作ミスの防止に寄与できるほか、発進が容易であることから、一旦停止・信号待ちなどルール遵守をしやすい環境が作りやすいと言えるでしょう。

・高齢者の自転車事故態様
https://www.atpress.ne.jp/releases/145345/img_145345_1.jpg
・ハンドル操作ミスの割合比較
https://www.atpress.ne.jp/releases/145345/img_145345_2.jpg
※中学生・高校生・主婦・高齢者のみの割合を記載しています

<参考>高齢者人口及び割合の推移
https://www.atpress.ne.jp/releases/145345/img_145345_3.jpg
出展:「人口推計」(総務省統計局)


【高齢者の事故は対人・対物の事故だけじゃない!
転倒事故にも要注意。全転倒事故の約半数が高齢者!】
●全転倒事故1,320件のうち45%にあたる600件が高齢者の転倒事故!
●転落事故も約半数が高齢者の事故。175件のうち約半数の93件起きている!

高齢者(65歳以上)の自転車事故では、対人・対物の事故だけではない転倒事故も突出して多く、年間の全転倒事故が1,320件あるのに対し、そのうち45%の600件が高齢者の転倒事故です。このことから、高齢者においては車や自転車、歩行者を相手にした事故だけでなく、転倒事故にも注意が必要ということがわかります。また、高齢者の転落事故も年間93件起きており、転落事故においても半数以上が高齢者の事故です。(全転落事故:175件)

【三井住友トラスト基礎研究所 古倉 宗治氏 コメント】
高齢者(65歳以上)は全体的に身体能力が低下して、視覚能力の衰えによる認知ミスや、バランス感覚、運動神経の低下による操作ミス、特にハンドル操作ミスが生じやすい状況です。このため、路面の状態・段差・障害物などを見落としがちで、さらにこれを回避するための的確なハンドル操作ができていないと思われます。また、歩道での転倒事故が多いのは、歩道空間が狭いことと、段差や障害物を回避したり、速度を制御することが難しいからだと考えられます。高齢者は自転車の速度が低く、また、ルールを守った慎重な運転を行う人が多い※とされています。
一層この傾向を維持していただくとともに、自らの視覚やバランス感覚、運動感覚などを十分に理解した上で運転すること、夜道はなるべく避けること、夜間ではライトを欠かさず点灯するなどして、障害物などを認識できるようにすることが大切です。その上で、荷物や坂道などでのふらつきをなくすために、特徴や操作方法をよく理解した上での電動アシスト自転車の利用がおすすめと言えます。
※元田良孝ら「高齢者自転車運転者の利用実態と特性」より

・転倒事故の属性別件数(対象期間:2015年1月〜12月)
https://www.atpress.ne.jp/releases/145345/img_145345_4.jpg


【高齢者におすすめの電動アシスト自転車。選ぶにあたっての注意点は?】
●電動アシスト自転車を一番利用する世代は60歳代以上!利用比率は9.2%。
●高齢者の電動アシスト自転車を選ぶポイントは「軽量」「低重心」がおすすめ。

高齢者においては、他世代に比べて電動アシスト自転車の利用率が高いのも大きな特徴で、2012年の調査※では60歳代以上の電動アシスト自転車の利用比率は9.2%と他世代に比べて突出しています。電動アシスト自転車は発進時の力が少なくても済むほか、非電動アシスト自転車に比べて低速時のふらつきなども軽減されるため、運動能力の減退などが進む高齢者の利用率が高くなっており、自動車の運転免許自主返納者数が年々増え、自治体も支援策を促進する動きが進む中、高齢者の生活の足の受け皿として今後さらに電動アシスト自転車の利用は増加していくと考えられます。
しかし、昨今では電動アシスト自転車の製品の安全性にばらつきがあることも分かっています。アシスト比率が道路交通法の基準に適合しない電動アシスト自転車について2016年10月に警察庁が注意喚起を行い、2017年6月29日には国民生活センターがテスト結果を発表しました。電動アシスト自転車等の購入に補助金を交付している自治体も、「BAAマークが付いているか」を条件している場合があり、製品としての安全性が高いものを選び、メンテナンスをきちんとした上で利用することが不可欠です。
※一般財団法人自転車産業振興協会「平成24年度自転車保有実態に関する調査報告書」より

【三井住友トラスト基礎研究所 古倉 宗治氏 コメント】
電動アシスト自転車は、疲れにくいため移動範囲が拡大することや買い物の荷物運搬が容易になること、体力的弱者や膝の悪い人なども容易に利用できることなど高齢者の利用に特に適しています。特に、発進や坂道、向かい風の場合等を含めてふらつきが少なく、一旦停止や信号遵守にもつながり、安全性の向上にも寄与できます。また、60歳代以上の電動アシスト自転車の利用率は、9.2%となっている※のに対して、電動アシスト自転車の高齢者の事故による死傷者は全電動アシスト自転車の死傷者数の3.2%であり、利用率に対して3分の1程度と低くなっているなど、利用率に対して事故率は低いといえます。
高齢者が電動アシスト自転車を選定する場合には、BAAマークが付いているかを確認した上で、可能な範囲で軽量なものや低重心のもの、転倒しにくい三輪車などを検討することも一つの方法です。ただし、車体自体の重量があるため車庫などへの出し入れが容易かどうか等は購入前にきちんと確認することをおすすめします。購入後は、発進時に思いのほか速度が出やすいなどの特徴をつかむために、自身で何度か練習してから利用するとよいでしょう。
※一般財団法人自転車産業振興協会「平成24年度自転車保有実態に関する調査報告書」より

・電動アシスト自転車使用率
https://www.atpress.ne.jp/releases/145345/img_145345_5.jpg
※一般財団法人自転車産業振興協会「平成24年度自転車保有実態に関する調査報告書」より作成


【参考】自治体の電動アシスト自転車購入補助の条件にもなっている、「BAAマーク」って何?
電動アシスト自転車は走行時の注意点をきちんと把握するとともに、安心安全で快適な自転車利用のためにまず重要なのは、車体そのものの安全性能です。BAAマークは、一般社団法人自転車協会が制定し、同協会が定める自転車安全基準に適合した製品の『立てパイプ(サドル下のパイプ)』に貼られています。このマークが付いている自転車は道路交通法の基準に適合する製品のため安全に走行することができます。

・BAAマーク貼付自転車(サドル部分)
https://www.atpress.ne.jp/releases/145345/img_145345_6.jpg
・製品不良の自転車
https://www.atpress.ne.jp/releases/145345/img_145345_7.jpg
・BAAマーク
https://www.atpress.ne.jp/releases/145345/img_145345_8.jpg

●『BAAマーク』は、90項目以上の安全基準をクリアした証
『BAAマーク』の自転車安全基準には全部で90か所の検査項目があり、電動アシスト付き自転車の駆動補助比率や、ブレーキ制動性能、フレーム・駆動部の強度、ライトの光度、リフレクターの反射性能などに合格する必要があります。

古倉 宗治(こくら・むねはる) 三井住友トラスト基礎研究所
https://www.atpress.ne.jp/releases/145345/img_145345_9.jpg
東京大学法学部卒業。建設省、東京工業大学助教授、(財)民間都市開発推進機構都市研究センター、(財)土地総合研究所等を経て、2008年から(株)三井住友トラスト基礎研究所研究理事を勤める。自転車施策の第一人者として、講演会の他、NPO法人自転車政策・計画推進機構を主宰、また、大学で教鞭を取るなど活躍中。
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