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自家用セダンの販売に迫る危機、KPMGのリサーチで明らかに 自律型モビリティ社会による「アイランド化」へと移行する米国の自動車市場

KPMGジャパン(本部:東京都新宿区、チェアマン:高橋 勉)はこのたび、KPMGが自動運転車とモビリティサービスによる消費者の意識の変化が、米国自動車市場に与える影響に関するKPMG独自の洞察をまとめたレポート「アイランド・オブ・オートノミー:自動運転車はどのように世界中の都市に出現するのか?」(以下、レポート)の日本語版を刊行しました。

KPMGでは、将来、自動運転車と新たなモビリティサービスの登場により移動手段の選択技が広がり、消費者の自動車購入意欲は低下すると予測しています。特に、自家用セダンを購入する消費者は著しく減少すると考えられます。消費者は将来、自動車の購入を検討する際に自動車を所有することの利便性や快適性と、スマートフォンを使ってモビリティサービスを申し込む手間とを比較するようになると考えられます。

消費者は、自動車を購入するか、あるいは自動車を所有せず、モビリティサービスを移動手段として利用するかを選択する自由を手に入れることになります。その結果、米国における自家用セダンの販売台数は急激に減り、2030年までに現在の540万台から210万台にまで減少するとKPMGでは予測しています。

さらに、KPMGのレポートでは、米国の自動車市場は、これまでのような国や地域単位から、150を超える「アイランド・オブ・オートノミー」(島のように散在する自律型モビリティ社会)へと変化するとしています。アイランド・オブ・オートノミーと呼ばれる大都市圏では、都市ごとに異なる消費者の移動ニーズが存在し、それらの移動ニーズは自律型モビリティサービスによって満たされます。

KPMG米国の自動車セクターリーダーのGary Silbergは、「破壊的革新をもたらす新たな交通手段、すなわち、完全自動運転車とモビリティサービスの組み合わせにより、全世界で1兆ドル規模の新たな市場が急速に形成されつつあります。ただし、この新しい交通手段は直ちに実現されるのではなく、また、何処でも実現するものでもありません。KPMGが『アイランド・オブ・オートノミー』と呼ぶ大都市圏で順次実現されていくでしょう。アイランドごとに異なる消費者ニーズに合った車種が求められるようになります。その結果、その地域の自家用車の車種構成、特にセダンは大きな影響を受けることになるでしょう」と述べています。

米国には、国勢調査局の用語で、「合同統計圏(CSA:Combined Statistical Area)」と呼ばれる、人口30万人以上の地域社会が169地域あります。CSAは、周辺地域と経済的・社会的に結び付いた隣接する大都市と小都市から構成された広域都市圏を指し、個々のCSAは、アイランド・オブ・オートノミーの人口統計的特性と合致しています。

KPMGでは、地理情報システム(GIS:Geographic Information System)を使用して、シカゴ、アトランタ、ロサンゼルス-サンディエゴの3つの広域都市圏において匿名化された携帯電話のモバイルビッグデータを分析することで、個人の移動に関する場所(緯度・経度)と移動時間を割り出し、CSAごとの特徴の解析を行いました。

この調査では、移動距離、平均移動時間、推定乗車人数に関して、それぞれのアイランドごとに異なるセグメンテーションが存在することが明らかになりました。KPMGの調査結果は、アイランドごとに異なる消費者の移動の特徴に合致した車両ミックスとサービスの組み合わせが必要となることを示しています。

自動車メーカーは、アイランドごとに異なる消費者ニーズに合った車種を特定するために、「環境」、「移動時間」、「移動距離」、「乗車人数」という4つの要素に加え、速度(時間と距離から算出)についてのデータを分析することが求められます。

「これは、今日の自動車メーカーにとって極めて複雑な問題を生じさせます。なぜなら、自動車の開発において、従来の車種区分の方法論のみによって市場を区分化する手法では、すべてのユーザーのニーズを満たすことはできないからです。百を超えるアイランドから得られる数十億にも上る個々の移動データの中から、適切な製品ポートフォリオを特定することのできる自動車メーカーだけが、将来、市場で成功を収めることになるでしょう」とSilbergは述べています。

169のアイランド市場における完全自動運転車とモビリティサービス(MaaS: Mobility-as-a-Service)の台頭は、自動車市場の様相を一変させ、セダンタイプの自動車に最も大きな影響を及ぼします。自動運転車とモビリティサービスによって提供される移動手段の選択肢は、セダンを中心とした自動車を所有したいという消費者の願望を低下させるものとなります。

「自家用セダンの所有意識の低下は、自動車メーカーが予想した以上に深刻な破壊を市場にもたらすことでしょう」とKPMG米国のインダストリアル・マニファクチャリング部門の戦略リーダー、Tom Mayorは述べています。さらにMayorは、「複数の自動車メーカーが将来工場を閉鎖し、セダンの生産から撤退する可能性は極めて高いと考えられます。こうした大規模な変化の結果、現在、米国市場に年間80万台以上のセダンを供給している自動車メーカー10社が、将来3〜4社にまで減少するとKPMGは予測しています。」

この複雑な市場動向を踏まえると、自動車メーカーが成功するためには、アイランドの中で行われる消費者の個々の移動の価値、すなわち、「移動時間」、「移動距離」、「出発地/目的地」、「乗車人数」、「移動目的」を把握することに新たな重点を置く必要があります。

Mayorは、さらに次のように述べています。「自動車産業のプロフィットプール(市場全体の利益の総和)は変化の過程にあります。自動車メーカーにとっての好材料は、1兆ドル規模の新たな市場がモビリティを中心として生まれつつあるということです。この潜在的な市場へのドアを開ける鍵は、アイランドごとの消費者のニーズを個々の移動ごとにより深く理解し、複数のアイランドにわたってデータを集計して規模の経済を見出すことです。そのうえで、自家用車を所有せず、配車サービスなどを移動手段として利用する消費者の移動ニーズに応える、新しいクラスの自動車を開発することです。」


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