連合調べ 消費者からの迷惑行為 接客業務従事者の半数以上が「受けたことがある」
[17/12/21]
提供元:@Press
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接客業において、商品やサービスに瑕疵があった場合、消費者による苦情(クレーム)や改善要求は健全な消費活動の実現のためにも必要な行為であり、事業者にとっても新商品開発やサービス向上につながる側面もあるため積極的に受け止めるべきものです。しかし近年、暴言などの行き過ぎたクレーム、暴力や長時間拘束などの迷惑行為によって、労働者が精神的なストレスを抱えていることが課題となっており、その対策が求められています。
日本労働組合総連合会(略称:連合、所在地:東京都千代田区、会長:神津 里季生)は、消費者行動関する実態を把握するため、2017年11月13日〜11月14日の2日間、「消費者行動に関する実態調査」を、インターネットリサーチにより実施し、全国の15歳〜69歳の男女2,000名(一般消費者1,000名、接客業務従事者1,000名)の有効サンプルを集計しました。(調査協力機関:ネットエイジア株式会社)
[調査結果]
※ 本調査では、自身の職業を「専業主婦」や「学生」、「無職」とした就業していない人、または、就業していても仕事で一般の消費者・利用者と接する接客業務に従事していない人を『一般消費者』、就業しており、仕事で一般の消費者・利用者と接する接客業務に従事している人を『接客業務従事者』としています。
≪消費者の苦情・クレーム経験≫
◆サービスや商品に対する苦情・クレームを「言ったことがある」 一般消費者の約4割、50代では5割強に
はじめに、全国の15歳〜69歳の一般消費者(※)1,000名に、これまでにサービスや商品について、苦情・クレームを言ったことがあるかどうかを聞いたところ、言ったことがある人の割合は39.2%で、約4割の人が、サービスや商品について、苦情やクレームを言ったことがあることがわかりました。
年代別にみると、50代までは年代が上がるにつれ苦情・クレームを言ったことがある人の割合は高くなり、最も高い50代では51.5%と半数を超えました。
また、全国の20歳〜59歳の接客業務従事者(1,000名)にも同様の質問をしたところ、苦情・クレームを言ったことがある人の割合は、接客業務従事者では58.6%と、一般消費者よりも高くなりました。職業柄、サービスや商品に対して、厳しくみてしまう人が多いのかもしれません。
年代別にみると、一般消費者と同様に、50代までは年代が上がるにつれ苦情・クレームを言ったことがある人の割合は高く、50代では68.5%と約7割になりました。
◆言ったことのあるクレーム 一般消費者は「食べ物に異物混入」、接客業務従事者は「商品が不良品」が最多
◆苦情・クレームで受けた対応 最多は「丁重に謝罪」、「代金の全額返金」は接客業務従事者のほうが高い傾向
苦情やクレームを言った経験がある人に、どのような内容の苦情・クレームだったかを聞いたところ、一般消費者(392名)では、「食べ物に異物が混入していた」(32.4%)が最も多く、「商品が不良品」(31.4%)、「注文した料理が出てこない/出てくるのが遅い」(30.4%)、「注文した料理と出てきたものが違う」(26.3%)、「釣り銭が間違っていた」(20.2%)と続きました。飲食店での異物混入に苦情を言ったことのある人が多いようです。
一方、接客業務従事者(586名)では「商品が不良品」(38.4%)、「注文した料理と出てきたものが違う」(34.5%)、「注文した料理が出てこない/出てくるのが遅い」(34.3%)、「食べ物に異物が混入していた」(32.6%)、「従業員のマナー、態度が悪い」(20.5%)と続き、不良品へのクレームが最も多くなりました。
また、苦情やクレームを言った経験がある人に、自分が苦情・クレームを言った際、店員・係員から、どのような対応を受けたかを聞いたところ、一般消費者(392名)では、「丁重に謝罪された」(61.7%)が最も多く、「新しい商品と交換してもらった」(41.6%)が次いで多くなりました。
接客従事者(586名)についてもみると、一般消費者と同様に、「丁重に謝罪された」(67.7%)が最も多くなり、「新しい商品と交換してもらった」(41.0%)が続きました。他方、「商品代金を全額返金してもらった」は16.6%で一般消費者(10.2%)より高くなりました。
◆苦情・クレームに対する対応で消費者が許せないもの
1位「たらい回し」42% 2位「消費者に落ち度があるような言い方」35% 3位「失礼な言葉づかい」34%
一般消費者(1,000名)に、苦情・クレームに対する店員・係員の対応について、どのような対応が許せないと思うか聞いたところ、「色々な部署をたらい回しにされる」(41.8%)が最も多く、「こちらに落ち度があるような言い方をされる」(35.3%)、「失礼な言葉づかいで対応される」(34.4%)、「謝るだけで、他に何も対応がない」(32.3%)、「なかなか返事が来ない」(27.7%)が続きました。“たらい回し”は、“非を認めないこと”や“失礼な言葉づかい”よりも許せないという人が多いようです。また、“ただ謝るだけ”や“返事が遅い”といったことを許せないと感じる人も少なくないようです。
接客業務従事者(1,000名)にも同じ質問をしたところ、「色々な部署をたらい回しにされる」が最も多く41.5%、「こちらに落ち度があるような言い方をされる」が36.5%、「謝るだけで、他に何も対応がない」が31.5%、「失礼な言葉づかいで対応される」が31.3%、「なかなか返事が来ない」と「一方的に言い訳をされる」が26.6%で続きました。一般消費者とは、3位項目と4位項目が入れ替わり、「一方的に言い訳をされる」が5位項目になるといった違いはみられたものの、それぞれの割合に大きな違いはみられませんでした。
≪消費者からの迷惑行為≫
◆消費者からの迷惑行為 接客業務従事者の半数以上が「受けたことがある」
迷惑行為を受けたことがあるのは非正規雇用者より正規雇用者のほうが高い傾向
◆勤務先で受けた迷惑行為 「暴言」3割強、「威嚇・脅迫的な態度」約3割、「説教など、権威的な態度」約2割
次に、接客業務従事者(1,000名)に、勤務先で消費者から受けたことがある迷惑行為を聞いたところ、「暴言を吐く」(33.1%)が最も多く、以下、「威嚇・脅迫的な態度を取る」(28.5%)、「説教など、権威的な態度をとる」(19.2%)、「何回も同じクレーム内容を執拗に繰り返す」(16.7%)、「従業員を長時間拘束する」(10.4%)が続きました。また、「セクハラ行為をする」(3.5%)や「暴力を振るう」(3.3%)、「SNS・インターネット上で誹謗中傷する」(2.3%)、「土下座を強要する」(1.7%)といった回答も僅かにみられました。そして、「あてはまるものはない」は43.1%で、そこから、いずれかの迷惑行為を受けたことがある人の割合を算出すると、56.9%と半数を超えました。
雇用形態別にみると、いずれかの迷惑行為を受けたことがある人の割合は、正規雇用では64.3%、非正規雇用では55.5%となりました。パートタイマー、アルバイト、契約社員といった非正規雇用者より、企業や団体の正社員・正職員といった正規雇用者のほうが迷惑行為を受けたことがあるようです。
業種別に、いずれかの迷惑行為を受けたことがある人の割合をみると、「公務」が最も高く79.4%、次いで、「情報通信」が69.6%、「運輸・郵便」が66.7%、「金融・保険」が61.9%で続きました。
受けたことがある迷惑行為についてみると、公務では、「暴言を吐く」(58.8%)、「威嚇・脅迫的な態度を取る」(55.9%)、「説教など、権威的な態度をとる」(38.2%)、「何回も同じクレーム内容を執拗に繰り返す」(38.2%)、「従業員を長時間拘束する」(32.4%)のいずれにおいても他の業種より高くなりました。また、「威嚇・脅迫的な態度を取る」は金融・保険でも45.2%と、比較的高くなりました。
◆迷惑行為に対する対応 暴言を吐く消費者に半数近くが「丁重に謝罪」
次に、消費者から迷惑行為を受けたことがある人(569名)に、それぞれどのように対応したか聞いたところ、【暴言】【威嚇・脅迫的な態度】【説教など、権威的な態度】では、「丁重に謝罪した」(暴言47.4%、威嚇・脅迫的な態度44.2%、権威的な態度43.2%)が最多回答となりました。
他方、【同じクレームの執拗な繰り返し】【従業員の長時間拘束】では、「対応できる内容と、できない内容をはっきり説明した」(クレーム繰り返し50.9%、従業員の長時間拘束47.1%)が最多回答となりました。
◆消費者からの迷惑行為の解決率 「セクハラ行為」は66%、「暴力」は64%にとどまる
◆苦情・クレームを受けた人の6割が「同じようなことをしないと心掛けた」、「同じようなクレームを言った」は約1割
続けて、消費者から迷惑行為を受けたことがある人(569名)に、迷惑行為は解決したかどうかを聞いたところ、「解決した」と回答した人の割合を迷惑行為別にみると、「金品の要求」が最も多く86.8%、「威嚇・脅迫的な態度」が84.2%、「暴言」が83.1%、「説教など、権威的な態度」が82.3%で続きました。
他方、「セクハラ行為」(65.7%)と「暴力」(63.6%)は他の迷惑行為と比べると低く、6割半ばにとどまっていました。また、「SNS・インターネット上で誹謗中傷」(※)では39.1%(23人中9人)と、4割未満で、解決が困難な迷惑行為だった様子が窺えます。
※ n数が少ないため参考値
それでは、仕事で苦情やクレームを受けた経験は、日常生活に何か影響を及ぼすのでしょうか。
消費者から迷惑行為を受けたことがある人(569名)に、勤務先で苦情・クレームを受けた経験が、自分の普段の行動に影響を及ぼしたことがあるかどうかを聞いたところ、「自分が消費者として店やサービスを利用するとき、同じようなクレームを言わないように心掛けた」という人は59.2%、逆に「自分が消費者として店やサービスを利用するとき、同じようなクレームを言った」という人は8.3%となりました。苦情やクレームを受けたことがある人の多くは、消費者の立場では同じようなことをしないように心掛けたようですが、残念ながら、同じようなクレームを言ってしまった人も僅かにみられました。
◆勤務先が「迷惑行為についてのマニュアル作成や教育を行っていない」約6割
◆消費者の迷惑行為に関する悩みの相談相手 3割が「相談できる人がいない」と回答
続けて、接客業務従事者(1,000名)に、勤務先で、消費者の迷惑行為に関するマニュアル作成や教育などが実施されているかどうかを聞いたところ、「実施されている」が42.9%、「実施されていない」が57.1%となりました。約6割の勤務先で迷惑行為に対するマニュアル作成や教育が行われていないことが明らかになりました。消費者の迷惑行為に対するマニュアル整備や教育の実施など、企業の対応は十分とはいえない状況のようです。
業種別にみると、実施率(「実施されている」)が半数を超えたのは、公務(67.6%)と金融・保険(59.5%)の2つだけで、小売(37.5%)や飲食店・飲食サービス(33.8%)では3割台にとどまりました。
そして、接客業務従事者(1,000名)に、勤務先に消費者の迷惑行為に関する悩みを誰に相談できるか聞いたところ、「上司」(54.2%)が最も多く、「同僚・部下」(35.0%)、「企業内カウンセラー」(5.6%)と続きました。また、「相談できる人はいない」は29.4%でした。
≪消費者が行う迷惑行為に対する意識≫
◆他の消費者が行う迷惑行為を見聞きした経験あり 約6割
一般消費者(1,000名)に、他の消費者の迷惑行為を見聞きしたことがあるか(※ニュースなどで見聞きした場合は除く)聞いたところ、「暴言を吐く」が42.5%、「威嚇・脅迫的な態度を取る」が28.1%、「説教など、権威的な態度をとる」が19.1%、「何回も同じクレーム内容を執拗に繰り返す」が15.5%、「従業員を長時間拘束する」が11.9%でした。
また、「こうした行為を見聞きしたことはない」は41.6%で、そこから、いずれかの迷惑行為を見聞きしたことがある人の割合を算出したところ、58.4%になりました。お店などを利用していて、他の消費者の迷惑行為を目にしたことがある一般消費者は約6割もいるようです。
◆他の消費者の迷惑行為 一般消費者の8割以上が「不愉快」
消費者は、他の消費者が行う迷惑行為に対して、どのように感じているのでしょうか。
まず、一般消費者(1,000名)に、迷惑行為を提示(※)し、そのような言動を行う人に対してどう思うかを聞いたところ、「非常に不愉快」が66.9%、「やや不愉快」が17.7%で、合計した『不愉快(計)』は84.6%になりました。他の消費者が行う迷惑行為に対しては、大多数の人が快く思っていないようです。男女別に見ると、『不愉快(計)』は男性80.7%、女性88.3%と、女性の方が高くなりました。
※ 提示した行為は以下の通り
暴言/威嚇・脅迫/暴力行為/セクハラ行為/何回も同じ内容を繰り返すクレーム/長時間拘束/権威的(説教)態度/金品の要求/土下座の強要/SNS・インターネット上での誹謗中傷
接客業務従事者(1,000名)にも同じ質問を行ったところ、「非常に不愉快」が68.3%、「やや不愉快」が17.3%、合計した『不愉快(計)』は85.6%で、一般消費者と同程度の高さとなりました。
男女別に見ると、『不愉快(計)』は男性82.9%、女性88.3%と、こちらも女性の方が高くなりました。
◆消費者の迷惑行為 一般消費者の半数近くが「増えている」と回答
接客業務従事者の実感は「増えている」が5割半ば
◆迷惑行為の原因と思うこと 1位「消費者のモラル低下」一般消費者の約6割が回答
続いて、一般消費者(1,000名)に、消費者が、店員・係員に対して、迷惑行為を行うことが、近年増えていると思うかどうか聞いたところ、「増えている」は48.9%となり、一般消費者の約半数が迷惑行為が増えていると感じている結果になりました。
また、接客業務従事者(1,000名)にも、同じ質問をしたところ、「増えている」は56.4%でした。半数以上の接客業務従事者が、消費者の迷惑行為の増加を感じているようです。
次に、一般消費者(1,000名)に、消費者の迷惑行為が発生している原因は、どのようなことだと思うか聞いたところ、「消費者のモラルが低下した」(58.5%)が最も多く、以下、「(店員・係員は)ストレスのはけ口になりやすい」(41.2%)、「SNSの普及で情報が拡散しやすくなった」(34.9%)が続きました。消費者のモラル低下や、店員・係員が消費者のストレスのはけ口になりやすい立場になっていることが原因と考えている人が多いようです。
接客業務従事者(1,000名)にも同じ質問をしたところ、一般消費者と同様に、「消費者のモラルが低下した」(65.7%)が最も多く、「(店員・係員は)ストレスのはけ口になりやすい」(46.6%)が次いで多くなりましたが、いずれも割合は一般消費者より高くなりました(「消費者のモラルが低下した」は7.2ポイント、「ストレスのはけ口になりやすい」は5.4ポイント)。また、一般消費者では「SNSの普及で情報が拡散しやすくなった」が3番目に高くなっていましたが、接客業務従事者では、「サービスに対する消費者の期待が過剰になった」(34.8%)が3番目となりました。
◆消費者の迷惑行為をなくすために必要なこと 1位「消費者への啓発活動」一般消費者の4割半ばが回答
◆一般消費者の7割強が「消費者の迷惑行為に対する啓発や注意喚起を行うこと」を肯定
続いて、一般消費者(1,000名)に、店員・係員に対する消費者の迷惑行為をなくすためには、どのようなことが必要だと思うかを聞いたところ、「消費者への啓発活動」が最も多く46.0%でした。自分たち消費者側の意識改革が大切だと考える人が多いようです。以下、「企業のクレーマー対策の教育」(42.0%)、「法律による防止」(36.0%)が続きました。
また、接客業務従事者(1,000名)にも聞いたところ、「消費者への啓発活動」が最も多く49.5%、「企業のクレーマー対策の教育」(40.6%)、「法律による防止」(37.3%)が続き、一般消費者と、上位に大きな違いはみられませんでした。一般消費者と差がみられたのは「企業のマニュアル整備」(32.5%)で、一般消費者(26.9%)より高くなりました。接客業務従事者では、企業のマニュアルの整備が必要と考える人も少なくないようです。
消費者への啓発活動として、鉄道事業者が共同で暴力行為防止ポスターを作成し、駅構内に掲示するなどの例があります。
そこで、一般消費者(1,000名)に、事業者が、消費者の迷惑行為に対して啓発や注意喚起を行うことをどのように思うか聞いたところ、『やったほうがいい(計)』(「やったほうがいいと思う」「どちらかといえばやったほうがいいと思う」の合計)は、73.0%で、消費者・利用者への啓発や注意喚起に対して肯定的な人が大多数であることがわかりました。
接客業務従事者(1,000名)にも聞いたところ、『やったほうがいい(計)』は78.6%でした。消費者・利用者への啓発・注意喚起を期待する接客業務従事者も大多数のようです。
◆行き過ぎた苦情・クレームで“うつ病”になるケースがあること 接客業務従事者でも41%が「知らなかった」と回答
近年、店員・係員が、消費者・利用者からの社会通念上行き過ぎた苦情・クレームなどによって、うつ病を発症するケースが発生しています。
そこで、一般消費者(1,000名)に、店員・係員が、行き過ぎた苦情・クレームなどによって、うつ病を発症するケースがあることを知っていたか聞いたところ、「知っていた」は45.1%、「知らなかった」が54.9%と、知らなかった人のほうが多くなりました。
接客業務従事者(1,000名)にも、同じ質問をしたところ、「知っていた」が58.7%、「知らなかった」が41.3%でした。知っていた人ほうが多くなりましたが、知らなかった人も4割と少なくないようです。
日本労働組合総連合会(略称:連合、所在地:東京都千代田区、会長:神津 里季生)は、消費者行動関する実態を把握するため、2017年11月13日〜11月14日の2日間、「消費者行動に関する実態調査」を、インターネットリサーチにより実施し、全国の15歳〜69歳の男女2,000名(一般消費者1,000名、接客業務従事者1,000名)の有効サンプルを集計しました。(調査協力機関:ネットエイジア株式会社)
[調査結果]
※ 本調査では、自身の職業を「専業主婦」や「学生」、「無職」とした就業していない人、または、就業していても仕事で一般の消費者・利用者と接する接客業務に従事していない人を『一般消費者』、就業しており、仕事で一般の消費者・利用者と接する接客業務に従事している人を『接客業務従事者』としています。
≪消費者の苦情・クレーム経験≫
◆サービスや商品に対する苦情・クレームを「言ったことがある」 一般消費者の約4割、50代では5割強に
はじめに、全国の15歳〜69歳の一般消費者(※)1,000名に、これまでにサービスや商品について、苦情・クレームを言ったことがあるかどうかを聞いたところ、言ったことがある人の割合は39.2%で、約4割の人が、サービスや商品について、苦情やクレームを言ったことがあることがわかりました。
年代別にみると、50代までは年代が上がるにつれ苦情・クレームを言ったことがある人の割合は高くなり、最も高い50代では51.5%と半数を超えました。
また、全国の20歳〜59歳の接客業務従事者(1,000名)にも同様の質問をしたところ、苦情・クレームを言ったことがある人の割合は、接客業務従事者では58.6%と、一般消費者よりも高くなりました。職業柄、サービスや商品に対して、厳しくみてしまう人が多いのかもしれません。
年代別にみると、一般消費者と同様に、50代までは年代が上がるにつれ苦情・クレームを言ったことがある人の割合は高く、50代では68.5%と約7割になりました。
◆言ったことのあるクレーム 一般消費者は「食べ物に異物混入」、接客業務従事者は「商品が不良品」が最多
◆苦情・クレームで受けた対応 最多は「丁重に謝罪」、「代金の全額返金」は接客業務従事者のほうが高い傾向
苦情やクレームを言った経験がある人に、どのような内容の苦情・クレームだったかを聞いたところ、一般消費者(392名)では、「食べ物に異物が混入していた」(32.4%)が最も多く、「商品が不良品」(31.4%)、「注文した料理が出てこない/出てくるのが遅い」(30.4%)、「注文した料理と出てきたものが違う」(26.3%)、「釣り銭が間違っていた」(20.2%)と続きました。飲食店での異物混入に苦情を言ったことのある人が多いようです。
一方、接客業務従事者(586名)では「商品が不良品」(38.4%)、「注文した料理と出てきたものが違う」(34.5%)、「注文した料理が出てこない/出てくるのが遅い」(34.3%)、「食べ物に異物が混入していた」(32.6%)、「従業員のマナー、態度が悪い」(20.5%)と続き、不良品へのクレームが最も多くなりました。
また、苦情やクレームを言った経験がある人に、自分が苦情・クレームを言った際、店員・係員から、どのような対応を受けたかを聞いたところ、一般消費者(392名)では、「丁重に謝罪された」(61.7%)が最も多く、「新しい商品と交換してもらった」(41.6%)が次いで多くなりました。
接客従事者(586名)についてもみると、一般消費者と同様に、「丁重に謝罪された」(67.7%)が最も多くなり、「新しい商品と交換してもらった」(41.0%)が続きました。他方、「商品代金を全額返金してもらった」は16.6%で一般消費者(10.2%)より高くなりました。
◆苦情・クレームに対する対応で消費者が許せないもの
1位「たらい回し」42% 2位「消費者に落ち度があるような言い方」35% 3位「失礼な言葉づかい」34%
一般消費者(1,000名)に、苦情・クレームに対する店員・係員の対応について、どのような対応が許せないと思うか聞いたところ、「色々な部署をたらい回しにされる」(41.8%)が最も多く、「こちらに落ち度があるような言い方をされる」(35.3%)、「失礼な言葉づかいで対応される」(34.4%)、「謝るだけで、他に何も対応がない」(32.3%)、「なかなか返事が来ない」(27.7%)が続きました。“たらい回し”は、“非を認めないこと”や“失礼な言葉づかい”よりも許せないという人が多いようです。また、“ただ謝るだけ”や“返事が遅い”といったことを許せないと感じる人も少なくないようです。
接客業務従事者(1,000名)にも同じ質問をしたところ、「色々な部署をたらい回しにされる」が最も多く41.5%、「こちらに落ち度があるような言い方をされる」が36.5%、「謝るだけで、他に何も対応がない」が31.5%、「失礼な言葉づかいで対応される」が31.3%、「なかなか返事が来ない」と「一方的に言い訳をされる」が26.6%で続きました。一般消費者とは、3位項目と4位項目が入れ替わり、「一方的に言い訳をされる」が5位項目になるといった違いはみられたものの、それぞれの割合に大きな違いはみられませんでした。
≪消費者からの迷惑行為≫
◆消費者からの迷惑行為 接客業務従事者の半数以上が「受けたことがある」
迷惑行為を受けたことがあるのは非正規雇用者より正規雇用者のほうが高い傾向
◆勤務先で受けた迷惑行為 「暴言」3割強、「威嚇・脅迫的な態度」約3割、「説教など、権威的な態度」約2割
次に、接客業務従事者(1,000名)に、勤務先で消費者から受けたことがある迷惑行為を聞いたところ、「暴言を吐く」(33.1%)が最も多く、以下、「威嚇・脅迫的な態度を取る」(28.5%)、「説教など、権威的な態度をとる」(19.2%)、「何回も同じクレーム内容を執拗に繰り返す」(16.7%)、「従業員を長時間拘束する」(10.4%)が続きました。また、「セクハラ行為をする」(3.5%)や「暴力を振るう」(3.3%)、「SNS・インターネット上で誹謗中傷する」(2.3%)、「土下座を強要する」(1.7%)といった回答も僅かにみられました。そして、「あてはまるものはない」は43.1%で、そこから、いずれかの迷惑行為を受けたことがある人の割合を算出すると、56.9%と半数を超えました。
雇用形態別にみると、いずれかの迷惑行為を受けたことがある人の割合は、正規雇用では64.3%、非正規雇用では55.5%となりました。パートタイマー、アルバイト、契約社員といった非正規雇用者より、企業や団体の正社員・正職員といった正規雇用者のほうが迷惑行為を受けたことがあるようです。
業種別に、いずれかの迷惑行為を受けたことがある人の割合をみると、「公務」が最も高く79.4%、次いで、「情報通信」が69.6%、「運輸・郵便」が66.7%、「金融・保険」が61.9%で続きました。
受けたことがある迷惑行為についてみると、公務では、「暴言を吐く」(58.8%)、「威嚇・脅迫的な態度を取る」(55.9%)、「説教など、権威的な態度をとる」(38.2%)、「何回も同じクレーム内容を執拗に繰り返す」(38.2%)、「従業員を長時間拘束する」(32.4%)のいずれにおいても他の業種より高くなりました。また、「威嚇・脅迫的な態度を取る」は金融・保険でも45.2%と、比較的高くなりました。
◆迷惑行為に対する対応 暴言を吐く消費者に半数近くが「丁重に謝罪」
次に、消費者から迷惑行為を受けたことがある人(569名)に、それぞれどのように対応したか聞いたところ、【暴言】【威嚇・脅迫的な態度】【説教など、権威的な態度】では、「丁重に謝罪した」(暴言47.4%、威嚇・脅迫的な態度44.2%、権威的な態度43.2%)が最多回答となりました。
他方、【同じクレームの執拗な繰り返し】【従業員の長時間拘束】では、「対応できる内容と、できない内容をはっきり説明した」(クレーム繰り返し50.9%、従業員の長時間拘束47.1%)が最多回答となりました。
◆消費者からの迷惑行為の解決率 「セクハラ行為」は66%、「暴力」は64%にとどまる
◆苦情・クレームを受けた人の6割が「同じようなことをしないと心掛けた」、「同じようなクレームを言った」は約1割
続けて、消費者から迷惑行為を受けたことがある人(569名)に、迷惑行為は解決したかどうかを聞いたところ、「解決した」と回答した人の割合を迷惑行為別にみると、「金品の要求」が最も多く86.8%、「威嚇・脅迫的な態度」が84.2%、「暴言」が83.1%、「説教など、権威的な態度」が82.3%で続きました。
他方、「セクハラ行為」(65.7%)と「暴力」(63.6%)は他の迷惑行為と比べると低く、6割半ばにとどまっていました。また、「SNS・インターネット上で誹謗中傷」(※)では39.1%(23人中9人)と、4割未満で、解決が困難な迷惑行為だった様子が窺えます。
※ n数が少ないため参考値
それでは、仕事で苦情やクレームを受けた経験は、日常生活に何か影響を及ぼすのでしょうか。
消費者から迷惑行為を受けたことがある人(569名)に、勤務先で苦情・クレームを受けた経験が、自分の普段の行動に影響を及ぼしたことがあるかどうかを聞いたところ、「自分が消費者として店やサービスを利用するとき、同じようなクレームを言わないように心掛けた」という人は59.2%、逆に「自分が消費者として店やサービスを利用するとき、同じようなクレームを言った」という人は8.3%となりました。苦情やクレームを受けたことがある人の多くは、消費者の立場では同じようなことをしないように心掛けたようですが、残念ながら、同じようなクレームを言ってしまった人も僅かにみられました。
◆勤務先が「迷惑行為についてのマニュアル作成や教育を行っていない」約6割
◆消費者の迷惑行為に関する悩みの相談相手 3割が「相談できる人がいない」と回答
続けて、接客業務従事者(1,000名)に、勤務先で、消費者の迷惑行為に関するマニュアル作成や教育などが実施されているかどうかを聞いたところ、「実施されている」が42.9%、「実施されていない」が57.1%となりました。約6割の勤務先で迷惑行為に対するマニュアル作成や教育が行われていないことが明らかになりました。消費者の迷惑行為に対するマニュアル整備や教育の実施など、企業の対応は十分とはいえない状況のようです。
業種別にみると、実施率(「実施されている」)が半数を超えたのは、公務(67.6%)と金融・保険(59.5%)の2つだけで、小売(37.5%)や飲食店・飲食サービス(33.8%)では3割台にとどまりました。
そして、接客業務従事者(1,000名)に、勤務先に消費者の迷惑行為に関する悩みを誰に相談できるか聞いたところ、「上司」(54.2%)が最も多く、「同僚・部下」(35.0%)、「企業内カウンセラー」(5.6%)と続きました。また、「相談できる人はいない」は29.4%でした。
≪消費者が行う迷惑行為に対する意識≫
◆他の消費者が行う迷惑行為を見聞きした経験あり 約6割
一般消費者(1,000名)に、他の消費者の迷惑行為を見聞きしたことがあるか(※ニュースなどで見聞きした場合は除く)聞いたところ、「暴言を吐く」が42.5%、「威嚇・脅迫的な態度を取る」が28.1%、「説教など、権威的な態度をとる」が19.1%、「何回も同じクレーム内容を執拗に繰り返す」が15.5%、「従業員を長時間拘束する」が11.9%でした。
また、「こうした行為を見聞きしたことはない」は41.6%で、そこから、いずれかの迷惑行為を見聞きしたことがある人の割合を算出したところ、58.4%になりました。お店などを利用していて、他の消費者の迷惑行為を目にしたことがある一般消費者は約6割もいるようです。
◆他の消費者の迷惑行為 一般消費者の8割以上が「不愉快」
消費者は、他の消費者が行う迷惑行為に対して、どのように感じているのでしょうか。
まず、一般消費者(1,000名)に、迷惑行為を提示(※)し、そのような言動を行う人に対してどう思うかを聞いたところ、「非常に不愉快」が66.9%、「やや不愉快」が17.7%で、合計した『不愉快(計)』は84.6%になりました。他の消費者が行う迷惑行為に対しては、大多数の人が快く思っていないようです。男女別に見ると、『不愉快(計)』は男性80.7%、女性88.3%と、女性の方が高くなりました。
※ 提示した行為は以下の通り
暴言/威嚇・脅迫/暴力行為/セクハラ行為/何回も同じ内容を繰り返すクレーム/長時間拘束/権威的(説教)態度/金品の要求/土下座の強要/SNS・インターネット上での誹謗中傷
接客業務従事者(1,000名)にも同じ質問を行ったところ、「非常に不愉快」が68.3%、「やや不愉快」が17.3%、合計した『不愉快(計)』は85.6%で、一般消費者と同程度の高さとなりました。
男女別に見ると、『不愉快(計)』は男性82.9%、女性88.3%と、こちらも女性の方が高くなりました。
◆消費者の迷惑行為 一般消費者の半数近くが「増えている」と回答
接客業務従事者の実感は「増えている」が5割半ば
◆迷惑行為の原因と思うこと 1位「消費者のモラル低下」一般消費者の約6割が回答
続いて、一般消費者(1,000名)に、消費者が、店員・係員に対して、迷惑行為を行うことが、近年増えていると思うかどうか聞いたところ、「増えている」は48.9%となり、一般消費者の約半数が迷惑行為が増えていると感じている結果になりました。
また、接客業務従事者(1,000名)にも、同じ質問をしたところ、「増えている」は56.4%でした。半数以上の接客業務従事者が、消費者の迷惑行為の増加を感じているようです。
次に、一般消費者(1,000名)に、消費者の迷惑行為が発生している原因は、どのようなことだと思うか聞いたところ、「消費者のモラルが低下した」(58.5%)が最も多く、以下、「(店員・係員は)ストレスのはけ口になりやすい」(41.2%)、「SNSの普及で情報が拡散しやすくなった」(34.9%)が続きました。消費者のモラル低下や、店員・係員が消費者のストレスのはけ口になりやすい立場になっていることが原因と考えている人が多いようです。
接客業務従事者(1,000名)にも同じ質問をしたところ、一般消費者と同様に、「消費者のモラルが低下した」(65.7%)が最も多く、「(店員・係員は)ストレスのはけ口になりやすい」(46.6%)が次いで多くなりましたが、いずれも割合は一般消費者より高くなりました(「消費者のモラルが低下した」は7.2ポイント、「ストレスのはけ口になりやすい」は5.4ポイント)。また、一般消費者では「SNSの普及で情報が拡散しやすくなった」が3番目に高くなっていましたが、接客業務従事者では、「サービスに対する消費者の期待が過剰になった」(34.8%)が3番目となりました。
◆消費者の迷惑行為をなくすために必要なこと 1位「消費者への啓発活動」一般消費者の4割半ばが回答
◆一般消費者の7割強が「消費者の迷惑行為に対する啓発や注意喚起を行うこと」を肯定
続いて、一般消費者(1,000名)に、店員・係員に対する消費者の迷惑行為をなくすためには、どのようなことが必要だと思うかを聞いたところ、「消費者への啓発活動」が最も多く46.0%でした。自分たち消費者側の意識改革が大切だと考える人が多いようです。以下、「企業のクレーマー対策の教育」(42.0%)、「法律による防止」(36.0%)が続きました。
また、接客業務従事者(1,000名)にも聞いたところ、「消費者への啓発活動」が最も多く49.5%、「企業のクレーマー対策の教育」(40.6%)、「法律による防止」(37.3%)が続き、一般消費者と、上位に大きな違いはみられませんでした。一般消費者と差がみられたのは「企業のマニュアル整備」(32.5%)で、一般消費者(26.9%)より高くなりました。接客業務従事者では、企業のマニュアルの整備が必要と考える人も少なくないようです。
消費者への啓発活動として、鉄道事業者が共同で暴力行為防止ポスターを作成し、駅構内に掲示するなどの例があります。
そこで、一般消費者(1,000名)に、事業者が、消費者の迷惑行為に対して啓発や注意喚起を行うことをどのように思うか聞いたところ、『やったほうがいい(計)』(「やったほうがいいと思う」「どちらかといえばやったほうがいいと思う」の合計)は、73.0%で、消費者・利用者への啓発や注意喚起に対して肯定的な人が大多数であることがわかりました。
接客業務従事者(1,000名)にも聞いたところ、『やったほうがいい(計)』は78.6%でした。消費者・利用者への啓発・注意喚起を期待する接客業務従事者も大多数のようです。
◆行き過ぎた苦情・クレームで“うつ病”になるケースがあること 接客業務従事者でも41%が「知らなかった」と回答
近年、店員・係員が、消費者・利用者からの社会通念上行き過ぎた苦情・クレームなどによって、うつ病を発症するケースが発生しています。
そこで、一般消費者(1,000名)に、店員・係員が、行き過ぎた苦情・クレームなどによって、うつ病を発症するケースがあることを知っていたか聞いたところ、「知っていた」は45.1%、「知らなかった」が54.9%と、知らなかった人のほうが多くなりました。
接客業務従事者(1,000名)にも、同じ質問をしたところ、「知っていた」が58.7%、「知らなかった」が41.3%でした。知っていた人ほうが多くなりましたが、知らなかった人も4割と少なくないようです。