<腸内細菌の「多様性」が病気になりづらい体質をつくる>
[18/01/16]
提供元:@Press
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腸内細菌叢がヒトの健康に多大な影響を及ぼしていることが、近年の腸内フローラ研究で明らかになってきました。腸内細菌叢やその代謝物が関係する疾病としては、たとえば、糖尿病、肥満、動脈硬化、炎症性腸疾患の他、自閉症などのメンタルヘルスなどもあげられます。
「腸の奥からの健康を考える研究会」委員の森田英利教授(岡山大学大学院環境生命科学研究科)に腸内細菌叢の多様性が生体(ヒト)に与える影響、またスーパー大麦「バーリーマックス」のプレバイオティクス効果による腸内細菌叢改善効果について伺いました。森田英利先生は、ヒトや動物の腸内細菌叢解析とその細菌叢のもつ機能解析を行う腸内細菌叢研究の専門家です。
■腸内細菌の菌種の多様性と人々の健康
腸内細菌叢を評価する上での重要な指標が、菌種の「多様性」です。ヒトと腸内細菌は共存しあって生きています。腸内細菌は消化管にすみつくことによって、エサ(エネルギー源など)を確保することができます。有用な腸内細菌にとっての栄養成分は発酵性食物繊維です。また、ヒトは食物繊維など自分では消化できない成分を腸内細菌に食べてもらうことによって、短鎖脂肪酸をはじめとする身体に有益な代謝物を作り出してもらっています。このように、ヒトの体内では生体と腸内細菌のインターラクション(物質供与や接触応答など)が起こっており、多様な腸内細菌の菌種、すなわち代謝系が混在している方が、その代謝物も多様になります。
様々な腸内細菌が多くの代謝物を作りだすことでヒトの健康が維持され、逆に腸内細菌の種類が減り、作り出される代謝物が減ると健康な状態が維持できなくなります。この状況はディスバイオシス(dysbiosis)として、種々の疾病で注目されています。このような理由から腸内細菌の多様性は人々の健康に重要な関わりがあると明らかになってきました。
■腸内細菌叢の「多様性」を保持することで病気を防ぐ
感染症は、体外からO157などの病原菌が入り込んで引き起こされます。一方で、ディスバイオシス、すなわち腸内細菌叢から特定の菌種の構成比が著しく減少し菌種の多様性が失われることで病気が起こるのではないか、という仮説についても研究や解析が進められています。また、体にストレスがかかることで腸内細菌が変動することがわかってきました。ホメオスタシス(恒常性)が働いているため、ストレスや暴飲暴食で腸内細菌のバランスが崩れてもまた復帰することができますが、ストレスや不摂生が繰り返されると腸内フローラの乱れが元に戻らずに、何かしらの病気を発症したり、健康な状態を損なうなど負のスパイラルが起こります。
病気になったときの、いわゆる“腸内細菌が減る”という現象は、細菌細胞数が減少するのではなく、菌種の多様性が失われることを意味しています。なお、特定の菌種の細胞数が激減してしまっても、その菌種がゼロになるわけではないので、また増やすことも可能です。網羅的な腸内細菌叢解析により測定限界以下に達してその菌がいないように見えても、少数になっても存在はしているはずです。従って、プレバイオティクスによって腸内細菌のエサとなる発酵性食物繊維を届ければ、また有用な腸内細菌を増やし多様化させることができるのです。腸内細菌叢の多様性が失われることで発症する代表的な病気は潰瘍性大腸炎やクローン病です。また、腸内細菌叢が関わる病気の多くは多様性の欠如が要因とみられています。
■日本人が独特の日本型「腸内細菌叢」を有する理由は長年の食習慣
2011年に「Nature」で発表された報告によると、人類の腸内細菌叢のパターン(エンテロタイプ)は3種に大別されることが分かりました。第1のタイプが「スウェーデン・日本人タイプ」、第2が「欧米タイプ」、第3が「アフリカ:南米タイプ」。3つのエンテロタイプには、それぞれ以下のような特徴があります。
(1) 「スウェーデン・日本人タイプ」
スウェーデン人と日本人に多いエンテロタイプ。ビフィドバクテリウム属、ルミノコッカス属の比率が他のエンテロタイプに比べ多いのが特徴。スウェーデン、日本とも農業と漁業の盛んな国特有の長年の食習慣が「スウェーデン・日本人タイプ」の腸内細菌叢が形成された要因と推察できる。食生活から考えて、穀物を主食とし、海産物を多く食べる食習慣がこのようなエンテロタイプを形成したと考えられる。
(2)「欧米タイプ」
欧米人や中国人によく見られるエンテロタイプ。タンパク質や脂肪を多く摂取する食習慣をもつ人に特徴的なタイプ。バクテロイデス属の比率が高い。
(3)「アフリカ・南米タイプ」
中南米やアフリカ大陸に住む人に多いエンテロタイプ。穀物を主食にしている人に多くみられる。プレボテラ属が多い。
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/147373/LL_img_147373_1.jpg
腸内細菌叢の3つのエンテロタイプ
腸内細菌叢のバランスを考えるときに、分類学の第一階層の「門」のレベルの変化に着目するのは興味深いです。変化による生体への影響は、分類学の上の階層の変化の方が大きいからです。長年の食事の形態によって「門」レベルでエンテロタイプが変わります。それが、前述の「スウェーデン・日本人タイプ」、「欧米タイプ」、「アフリカ・南米タイプ」です。
「スウェーデン・日本人タイプ」、「欧米タイプ」、「アフリカ・南米タイプ」のエンテロタイプは、非常に強固であり、それぞれのタイプが混じり合ったり、他のタイプに移行することはありません。すなわち、そのエンテロタイプの中で、それぞれのエンテロタイプに健常型と非健常型があります。非健常型の腸内細菌叢を健常型の腸内細菌叢に変えることは可能です。非健常型の腸内細菌叢は菌種の構成比の視点から多様性が失われている場合が多いため、常在菌のエサとなる食物繊維を摂取するプレバイオティクスは多様性を回復するために有効な手段といえます。
生体の分類と菌(株)の位置づけ
https://www.atpress.ne.jp/releases/147373/img_147373_2.jpg
■スーパー大麦バーリーマックス継続摂取で腸内細菌 が“抗肥満型”へ
腸内細菌叢の多様性を保持していくうえで、多種の発酵性食物繊維を含有するスーパー大麦「バーリーマックス」の摂取は有効だと考えられます。スーパー大麦に豊富に含まれるフルクタン、β-グルカン、レジスタントスターチは発酵の速度が異なるため、腸の入り口から奥までまんべんなく届き、大腸全体の有用腸内細菌のエサとなります。
また最近の研究で、スーパー大麦バーリーマックスの継続摂取で短鎖脂肪酸を産生する腸内細菌の比率が増えることがあきらかになりました。30代〜50代の肥満傾向の女性5名がスーパー大麦を1日12g摂取したところ、5人中4人が抗肥満型腸内細菌の合計(バクテロイデーテス門+ビフィドバクテリウム属+フィーカリバクテリウム属)が増加傾向となりました。
すなわち、酪酸をつくる細菌が含まれるバクテロイデーテス門やフィーカリバクテリウム属、酢酸を作るビフィドバクテリウム属が増えています。酪酸は血糖値の急上昇を抑えるGLP-1や食欲を抑えるペプチドYYなど消化管ホルモンの分泌を促し、脂肪が貯まりにくい体質にします。
もともと日本人は米だけでなく、大麦などの穀物も主食として毎日、食べてきました。しかし、日本人における食の欧米化などで穀物の摂取が減るにつれ、食物繊維の摂取量も減少傾向をたどってきました。近年は、日本人の食事摂取基準と照合しますと、食物繊維の摂取量は一日当たり約6g不足していると言われています。バーリーマックスを始めとする食物繊維を豊富に含有する穀類を、主食あるいは副食(手軽な食材)とする食習慣を定着させていくことが、「スウェーデン・日本人タイプ」の腸内細菌叢を健常な状態に保持する一助となるでしょう。
スーパー大麦摂取による腸内細菌叢の変化
https://www.atpress.ne.jp/releases/147373/img_147373_3.jpg
※グラフの数値は、抗肥満型腸内細菌(バクテロイデーテス門+ビフィドバクテリウム属+フィーカリバクテリウム属)の摂取前後の構成比の増減を示している
スーパー大麦摂取により“抗肥満型”の腸内細菌叢にシフト
https://www.atpress.ne.jp/releases/147373/img_147373_4.jpg
■『腸の奥からの健康を考える研究会』概要
『腸の奥からの健康を考える研究会』は、食物繊維による腸内環境改善、特に大腸の奥の改善からもたらされる様々な健康効果、肌荒れ・肌の張り・ニキビ等の美容効果に対するメカニズムの研究を行い、そのエビデンスをベースに、本質的な健康についての啓発を行うことを目的として発足。
スーパー大麦「バーリーマックス」を中心とする食物繊維のメカニズムの研究及び、学会・論文発表を行っています。また生活者に腸内環境を整えることによる健康保持についての啓発を行っています。
研究会ホームページ: http://www.cholabo.org/
「腸の奥からの健康を考える研究会」委員の森田英利教授(岡山大学大学院環境生命科学研究科)に腸内細菌叢の多様性が生体(ヒト)に与える影響、またスーパー大麦「バーリーマックス」のプレバイオティクス効果による腸内細菌叢改善効果について伺いました。森田英利先生は、ヒトや動物の腸内細菌叢解析とその細菌叢のもつ機能解析を行う腸内細菌叢研究の専門家です。
■腸内細菌の菌種の多様性と人々の健康
腸内細菌叢を評価する上での重要な指標が、菌種の「多様性」です。ヒトと腸内細菌は共存しあって生きています。腸内細菌は消化管にすみつくことによって、エサ(エネルギー源など)を確保することができます。有用な腸内細菌にとっての栄養成分は発酵性食物繊維です。また、ヒトは食物繊維など自分では消化できない成分を腸内細菌に食べてもらうことによって、短鎖脂肪酸をはじめとする身体に有益な代謝物を作り出してもらっています。このように、ヒトの体内では生体と腸内細菌のインターラクション(物質供与や接触応答など)が起こっており、多様な腸内細菌の菌種、すなわち代謝系が混在している方が、その代謝物も多様になります。
様々な腸内細菌が多くの代謝物を作りだすことでヒトの健康が維持され、逆に腸内細菌の種類が減り、作り出される代謝物が減ると健康な状態が維持できなくなります。この状況はディスバイオシス(dysbiosis)として、種々の疾病で注目されています。このような理由から腸内細菌の多様性は人々の健康に重要な関わりがあると明らかになってきました。
■腸内細菌叢の「多様性」を保持することで病気を防ぐ
感染症は、体外からO157などの病原菌が入り込んで引き起こされます。一方で、ディスバイオシス、すなわち腸内細菌叢から特定の菌種の構成比が著しく減少し菌種の多様性が失われることで病気が起こるのではないか、という仮説についても研究や解析が進められています。また、体にストレスがかかることで腸内細菌が変動することがわかってきました。ホメオスタシス(恒常性)が働いているため、ストレスや暴飲暴食で腸内細菌のバランスが崩れてもまた復帰することができますが、ストレスや不摂生が繰り返されると腸内フローラの乱れが元に戻らずに、何かしらの病気を発症したり、健康な状態を損なうなど負のスパイラルが起こります。
病気になったときの、いわゆる“腸内細菌が減る”という現象は、細菌細胞数が減少するのではなく、菌種の多様性が失われることを意味しています。なお、特定の菌種の細胞数が激減してしまっても、その菌種がゼロになるわけではないので、また増やすことも可能です。網羅的な腸内細菌叢解析により測定限界以下に達してその菌がいないように見えても、少数になっても存在はしているはずです。従って、プレバイオティクスによって腸内細菌のエサとなる発酵性食物繊維を届ければ、また有用な腸内細菌を増やし多様化させることができるのです。腸内細菌叢の多様性が失われることで発症する代表的な病気は潰瘍性大腸炎やクローン病です。また、腸内細菌叢が関わる病気の多くは多様性の欠如が要因とみられています。
■日本人が独特の日本型「腸内細菌叢」を有する理由は長年の食習慣
2011年に「Nature」で発表された報告によると、人類の腸内細菌叢のパターン(エンテロタイプ)は3種に大別されることが分かりました。第1のタイプが「スウェーデン・日本人タイプ」、第2が「欧米タイプ」、第3が「アフリカ:南米タイプ」。3つのエンテロタイプには、それぞれ以下のような特徴があります。
(1) 「スウェーデン・日本人タイプ」
スウェーデン人と日本人に多いエンテロタイプ。ビフィドバクテリウム属、ルミノコッカス属の比率が他のエンテロタイプに比べ多いのが特徴。スウェーデン、日本とも農業と漁業の盛んな国特有の長年の食習慣が「スウェーデン・日本人タイプ」の腸内細菌叢が形成された要因と推察できる。食生活から考えて、穀物を主食とし、海産物を多く食べる食習慣がこのようなエンテロタイプを形成したと考えられる。
(2)「欧米タイプ」
欧米人や中国人によく見られるエンテロタイプ。タンパク質や脂肪を多く摂取する食習慣をもつ人に特徴的なタイプ。バクテロイデス属の比率が高い。
(3)「アフリカ・南米タイプ」
中南米やアフリカ大陸に住む人に多いエンテロタイプ。穀物を主食にしている人に多くみられる。プレボテラ属が多い。
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/147373/LL_img_147373_1.jpg
腸内細菌叢の3つのエンテロタイプ
腸内細菌叢のバランスを考えるときに、分類学の第一階層の「門」のレベルの変化に着目するのは興味深いです。変化による生体への影響は、分類学の上の階層の変化の方が大きいからです。長年の食事の形態によって「門」レベルでエンテロタイプが変わります。それが、前述の「スウェーデン・日本人タイプ」、「欧米タイプ」、「アフリカ・南米タイプ」です。
「スウェーデン・日本人タイプ」、「欧米タイプ」、「アフリカ・南米タイプ」のエンテロタイプは、非常に強固であり、それぞれのタイプが混じり合ったり、他のタイプに移行することはありません。すなわち、そのエンテロタイプの中で、それぞれのエンテロタイプに健常型と非健常型があります。非健常型の腸内細菌叢を健常型の腸内細菌叢に変えることは可能です。非健常型の腸内細菌叢は菌種の構成比の視点から多様性が失われている場合が多いため、常在菌のエサとなる食物繊維を摂取するプレバイオティクスは多様性を回復するために有効な手段といえます。
生体の分類と菌(株)の位置づけ
https://www.atpress.ne.jp/releases/147373/img_147373_2.jpg
■スーパー大麦バーリーマックス継続摂取で腸内細菌 が“抗肥満型”へ
腸内細菌叢の多様性を保持していくうえで、多種の発酵性食物繊維を含有するスーパー大麦「バーリーマックス」の摂取は有効だと考えられます。スーパー大麦に豊富に含まれるフルクタン、β-グルカン、レジスタントスターチは発酵の速度が異なるため、腸の入り口から奥までまんべんなく届き、大腸全体の有用腸内細菌のエサとなります。
また最近の研究で、スーパー大麦バーリーマックスの継続摂取で短鎖脂肪酸を産生する腸内細菌の比率が増えることがあきらかになりました。30代〜50代の肥満傾向の女性5名がスーパー大麦を1日12g摂取したところ、5人中4人が抗肥満型腸内細菌の合計(バクテロイデーテス門+ビフィドバクテリウム属+フィーカリバクテリウム属)が増加傾向となりました。
すなわち、酪酸をつくる細菌が含まれるバクテロイデーテス門やフィーカリバクテリウム属、酢酸を作るビフィドバクテリウム属が増えています。酪酸は血糖値の急上昇を抑えるGLP-1や食欲を抑えるペプチドYYなど消化管ホルモンの分泌を促し、脂肪が貯まりにくい体質にします。
もともと日本人は米だけでなく、大麦などの穀物も主食として毎日、食べてきました。しかし、日本人における食の欧米化などで穀物の摂取が減るにつれ、食物繊維の摂取量も減少傾向をたどってきました。近年は、日本人の食事摂取基準と照合しますと、食物繊維の摂取量は一日当たり約6g不足していると言われています。バーリーマックスを始めとする食物繊維を豊富に含有する穀類を、主食あるいは副食(手軽な食材)とする食習慣を定着させていくことが、「スウェーデン・日本人タイプ」の腸内細菌叢を健常な状態に保持する一助となるでしょう。
スーパー大麦摂取による腸内細菌叢の変化
https://www.atpress.ne.jp/releases/147373/img_147373_3.jpg
※グラフの数値は、抗肥満型腸内細菌(バクテロイデーテス門+ビフィドバクテリウム属+フィーカリバクテリウム属)の摂取前後の構成比の増減を示している
スーパー大麦摂取により“抗肥満型”の腸内細菌叢にシフト
https://www.atpress.ne.jp/releases/147373/img_147373_4.jpg
■『腸の奥からの健康を考える研究会』概要
『腸の奥からの健康を考える研究会』は、食物繊維による腸内環境改善、特に大腸の奥の改善からもたらされる様々な健康効果、肌荒れ・肌の張り・ニキビ等の美容効果に対するメカニズムの研究を行い、そのエビデンスをベースに、本質的な健康についての啓発を行うことを目的として発足。
スーパー大麦「バーリーマックス」を中心とする食物繊維のメカニズムの研究及び、学会・論文発表を行っています。また生活者に腸内環境を整えることによる健康保持についての啓発を行っています。
研究会ホームページ: http://www.cholabo.org/