アジア各国のホワイトカラー人材紹介市場の動向 2018年7月〜9月
[18/10/30]
提供元:@Press
提供元:@Press
世界10ヵ国で人材紹介事業を展開し、東南アジアでは最大級の規模(※1)を誇る株式会社ジェイ エイ シー リクルートメント(代表取締役社長:松園 健)は、この度、2018年第3四半期のアジア各国のホワイトカラー人材紹介市場の動向を纏めましたので、お知らせいたします。
※以下リンクより、より読みやすいPDF版のプレスリリースをご参照ください。
https://www.atpress.ne.jp/releases/169591/att_169591_1.pdf
【サマリー】
・2018年第3四半期はマレーシア、ベトナム、韓国が昨年同期比で求人増
・マレーシアでは、デジタル系サービス企業や医療機器・製薬業界の求人増により対前年四半期比104%
・インドネシアでは、インフラ関連や不動産関連企業からの求人増により対前四半期比109%
・韓国では半導体の輸出が好調で、関連企業からの求人増により対前期比、対前年同期比共に112%
■■マレーシア■■
企業の求人意欲は引き続き堅調。特に外資・地場企業の基本給5,000リンギット以上の層の求人が増加傾向
【求人数】
対前年四半期比 104%
対前四半期比 100%
JAC Recruitment マレーシア法人社長 大西 信彰
8月にVistage-MIER (マレーシア経済研究所)が発表したCEO Confidence Index(経済動向信頼感指数‐CEO回答数は625) によると、第3四半期は107.1ポイントとなり、2011年第2四半期以降の最高値を記録。また、景気が悪化していると回答した比率は全体の18%で、昨年同四半期の42%から大幅に減少しました。5月に発足した新政権下、前首相が資金洗浄などにより起訴されるなど政治が正常化に向かっていることに国民の期待が高まり、景況感向上への追い風となっています。
【企業の採用動向】
第3四半期の企業求人数は前四半期比では横ばい、前年同期比では4%増となりました。例年、第2四半期をピークに第3四半期から年末に向けて求人数が10〜20%前後減少していきますが、今年は、第3四半期になっても企業の求人意欲は衰えていません。
業界別では、引き続きBPO/SSC(シェアードサービスセンター)が日本人や日本語スピーカー等の多言語人材を重点的に採用。また、日系・非日系を問わずeコマース、ブロックチェーン、デジタルマーケティング、eギフトといったデジタル系サービス企業や医療機器・製薬業界の進出による求人の増加などが、上記に述べた求人総数の底上げとなった一因となりました。
基本給5,000リンギット以上の求人においては、日系求人全体に占める比率は56%(昨年同期も同率)であることに対し、外資・地場企業では同比率が80%と際立っており、昨年同期の57%と比較しても明らかに上昇していることから、高年収の人材の需要が一段と高まっていると言えます。
【求職者の動向】
求職者は年内の転職を控え、年明けの勤務開始日を目指す傾向が見られます。BPO/SSC(シェアードサービスセンター)等、年内に人材採用を目指す企業では退職通知期間(通常1〜2ヶ月)の買い取り(Buy-out:退職予定者が退職までの期間の業務を全うできない場合、当該期間の給与相当額の返還がペナルティーとして発生するが、それを新規採用企業が補償すること)により対応し、人材確保を行っている状況です。
政権交代後、初の国家予算発表を来月に控え、マレーシア国民もそれに注目しながら転職のタイミングを計っている様子が伺えます。但し第3四半期の当社の登録者数は、前年同期比で16.5%増加しており、潜在的な転職意欲は引き続き高いと判断できます。
■■シンガポール■■
景気回復の影響で管理系の求人は増加したが、
多くはシンガポール人または永住者向けで、外国人対象の求人は鈍化
【求人数】
対前年四半期比 88%
対前四半期比 92%
JAC Recruitment シンガポール法人社長 早瀬 恭
消費者物価指数(CPI)、コアインフレは2%近くに上昇しましたが、2018年第3四半期の実質GDP(国内総生産)の成長率は、前年同期比で2.6%増と鈍化しました(第2四半期は4.1%増)。その中でも建設業は不振な状態で、サービス業は堅調です。
製造業の景気を表すPMI値(購買担当者景況指数)は3.3%増と鈍化しており、背景として2017年が好調だった反動だけでなく、米中貿易摩擦をめぐる不透明感が影響を及ぼしています。業績の拡大、縮小の分かれ目となるPMI値のベンチマークである50ポイントは25ヶ月連続で維持しています。中小企業の先行き景況感は製造業の鈍化が顕著のため、低下しています。
【企業の採用動向】
就労ビザの厳格化による外国人引き締めの影響により、依然として外国人向けの求人は鈍化傾向が続いています。就労ビザを取得する必要のある外国人を採用する際には、ハイスキル・ハイポジションという給与に見合った採用を進めている企業もあり、そのような求人依頼が増えています。これまで外国人が活躍していたポジションの代替要員に、企業はシンガポール人や永住権保持者を検討するケースが続いており、特にシンガポール人向けの経理、人事など管理系の求人が増加しています。
また、シンガポール政府として力を入れている次世代技術(ブロックチェーン、FinTech、仮想通貨(ICO)、AI)の能力・経験が必要な人材の引き合いも増加傾向にあります。
【求職者の動向】
日本人の転職希望者の登録状況としては、上記の就労ビザの厳格化をめぐる状況から、専門職、管理職人材の登録が増加しており、登録者の平均年齢も上昇傾向にあります。登録者数としては横ばいとなっており、例年と変化はありません。
また、シンガポール人は第2四半期、第3四半期共に活発に転職活動をする時期です。シンガポール人向けの求人依頼が多く、昨年からの景気回復により活動を開始することを決めた方もいます。
第4四半期はボーナス支給待ちの時期のため、転職を決めた求職者は第3四半期の期間に転職先を決める動きが見受けられました。
■■タイ■■
景気は安定し改善傾向に。採用動向は横ばいが継続している状態。
引き続き売り手市場が続く
【求人数】
対前年四半期比 78%
対前四半期比 94%
JAC Recruitment タイランド法人社長 山下 勝弘
タイ経済が底を打った後、緩やかに景気が回復しているものの、まだ2012年の頃の力強さは感じられません。
政治は民政化に向かい、来年前半に予定されている選挙まで秒読み段階ではありますが、選挙後も軍の影響が残る可能性は残されており、不安定さが払拭できていない状態です。ただし、現在の軍事政権も日本がイメージするような統治目的のようなものではなく治安の安定を担保している面もあり、欧米など諸外国から軍事国家としてのイメージを持たれている誤解を除けば、メリットは多いと考えられます。
【企業の採用動向】
失業率1%前後の水準が長期間続いている影響で、在タイ企業の定年は年々55歳から60歳にシフトしつつあり、これはタイの多くの企業が人材不足の課題を抱えていることが要因です。当社の求人数は前四半期比で微減となりましたが、労働者からホワイトカラーまで引き続き人材の需要が高い状態です。また、製造業においては日本の働き方改革による日本国内の製造能力の減少や、中国の大気汚染(PM2.5)などの影響による稼働時間の制限により生産をタイにシフトする動きがあり、採用ニーズが増加しています。
【求職者の動向】
今年も例年と同様、第3四半期は転職希望者が1年の中で最後に転職活動を行う期間であるため、活発に活動をする方々が多かった時期でした。
一方で、第4四半期に入ると来年1月のボーナス支給まで転職活動を控える期間となるため、9月下旬以降から急募のポジションで採用を行わなければならない企業では、ボーナス待ちをする転職希望者に年内の入社を説得するため、現職で本来支給される額と同等のサインアップボーナスを支給して人材を採用する企業が出ています。
■■インドネシア■■
2019年大統領選挙を前に、インフラ、不動産などで大型投資が続く
【求人数】
対前年四半期比 80%
対前四半期比 109%
JAC Recruitment インドネシア法人社長 小林 千絵
8月18日〜9月2日のアジア競技大会、10月12日〜14日にバリで開催されたIMF世銀総会など大きなイベントが無事終了し、2019年に大統領選挙を控えるジョコウィ政権はさまざまな分野で最後の攻勢をかけています。現時点、懸念されていた選挙前の投資を控える動きはなく、インフラ関連、不動産関連中心に大型投資が続いています。2015年からの景気減速による購買力の低迷で景気は一時的に底を打ちましたが、2017年以降は回復傾向で、選挙活動による市場の活性化も期待されています。第3四半期は各地で地震や火山の噴火などの自然災害が発生しましたが、当社が拠点を構える首都ジャカルタや近辺の地域では経済や雇用に目立った影響はありません。
【企業の採用動向】
第2四半期に引き続き主にインフラ関連や不動産関連企業から多くの求人依頼を受け、対前四半期比109%増となりました。求人の多くは主に日系、韓国系、中国系の新規投資が継続したことが要因となっています。日系企業からは前期から引き続き、通訳、日本人向けのサポート業務、営業等などの職種の求人を多く受けました。日本語能力を持つインドネシア人や現地の日本人を対象に、駐在員の後任を担う求人も増加傾向にあります。外資系企業による展開が続いていることから、国内のグローバル人材の求人と紹介がひっ迫している状態です。
【求職者の動向】
インフラ関連の業界でエンジニア職の人材が不足していることから、転職の際年収アップの交渉が行われるケースが増え、関連職種の給与が上昇傾向にあります。また、日本人向けの求人は多く受けるものの、インドネシアはシンガポール、マレーシア、タイ、ベトナムよりも日本人の就業希望者が少ないことから、現地採用の若年層向けの営業職を中心に、紹介する人材の候補者が不足している状態が続いています。
■■ベトナム■■
内需拡大目的の求人が増加傾向
【求人数】
対前年四半期比 232%
対前四半期比 96%
JAC Recruitment ベトナム法人 ディレクター
Le Thuy Dieu Uyen(レー・トゥイ・ユー・ウィン)
ベトナム統計総局の発表によると、2018年1〜9月期の国内総生産成長率は6.98%増となり、1〜9月期では過去8年で最高値を記録しました。特に工業・建設業で8.89%増、製造業が12.65%増と寄与しました。また、サービス業も6.89%増、うち卸売・小売業が8.48%増となりました。GDPの構成は比率が大きい順に、サービス業:42.54%、工業・建設業:33.49%、農林水産業:13.93%となっています。
【企業の採用動向】
最近、ベトナム進出を計画する日本の中小企業が進出前に日本でベトナムの実習生・研修生を受け入れ、彼らの帰国と同時にベトナムに進出し、彼らを現地で雇用するというケースが増加傾向にあります。ベトナムでは賃金は高騰しているものの、近隣国の年収と比べるとまだ低めであるため、安い人件費目的での新規進出が引き続き多い状態です。
一方、新しい動きとして、今後拡大が見込まれる内需の囲い込みを目的に小売り、不動産開発、飲食、内装業などの日系企業の進出も増加傾向にあります。それらの企業は、日本語能力を持つ人材に対して従来のような単なる日本本社との橋渡し(翻訳通訳)の役割だけではなく、より実務に即した能力やマーケットの高度な知識なども求めるようになっています。
【求職者の動向】
ベトナムに進出する日系企業にとっては、人材採用の際の重要な条件が日本語能力であり、日本語力が高ければ高年収での転職が可能となるため日本語能力を武器に転職を希望する人が多い状態です。一方で、各職種の専門性が高い求職者は少ない傾向です。
新たにベトナムに進出する日系企業は、日本の商習慣を理解している日系企業での勤務経験がある候補者を求める傾向が強く、現職よりも高い給与を提示して採用するケースもあります。そのため、市場の成長度や当人の経験やスキルに則さない賃金の高騰が起こっており、日本語能力を生かし高い年収を求める登録者が増えています。現在は、テト(旧正月:2019年初旬)明けの転職を目指し、情報収集に動いている求職者が多くなっており、年末年始に向け活動が活発化することが予想されます。
■■中国(上海・広州)■■
中国系最先端テクノロジー企業の人材採用強化に伴い、
同職種の人材の日系企業離れが加速する恐れも
【求人数】
対前年四半期比 80%
対前四半期比 88%
JAC Recruitment 中国法人社長 蓮子 哲也
某国営通信社によると工業関連企業による8月の前年同月比の実質成長率は6.1%となりました。7〜9月期の中国の成長率は6.5%と9年半ぶりの低水準となりましたが、新エネルギー車(NEV)や産業用ロボットなどの領域では生産台数が大幅に増加しました。また、全国消費者物価指数(CPI)は前年同期比で若干上昇し2.3%増となりました。一方で、一部米自動車メーカーでは米中貿易戦争の影響を受け中国新車販売台数が大幅に減少しています。
【企業の採用動向】
中国では10月1日から個人所得税改革が施行され、基礎控除額の引き上げや付加控除費用の取り消しなどの施策により社員の手取り給与が上昇しました。一方、手取り給与保証をしている企業では、上記の改革を受け給与増を求める社員の声も出始めており、労務規定を税込給与保証に変更するなどの対応を急ぐ企業も少なくありません。求人に関しては、上海・深セン地区でのR&Dセンターにて、ロボット技術者やAI技術者などの人材を求める中国民営企業が増加しています。また、最近では日本企業が中国在住の中国人の転職希望者を日本国内で就業させる目的で採用し、数年間日本で十分な経験を積んだ後に中国の1級・2級都市での拠点設立のタイミングで幹部として赴任させる動きも出始めています。
【求職者の動向】
中国の祝日である国慶節の影響もあり、9月末〜10月中旬までは転職希望者が減少しました。
また、年末や2月上旬の旧正月が近づくにつれ、ボーナスが支給された後に離職を望む転職希望者が例年相当数存在するため、今年も10月現時点で既にその動きが現れ始めています。そのため、求人数が増えても転職希望者の紹介が難しくなるという状態になりつつあります。
企業の採用動向でも述べた通り、日系企業が中国在住の中国人を日本での勤務目的で採用する動きがあることから、日本での勤務に対しても柔軟に検討する候補者が徐々に増えています。
■■香港■■
求人数に大幅な変化はないが、求人内容は二極化の傾向に
【求人数】
対前年四半期比 88%
対前四半期比 95%
JAC Recruitment 香港法人社長 蓮子 哲也
香港統計局(8月15日発表)によると、2018年第2四半期の香港の実質GDP成長率(前年同期比)は3.5%となりました。第1四半期(4.6%)より1.1ポイント低下となりましたが、直近10年の年平均成長率(2.7%)を7四半期連続で上回った結果となり、2018年上半期の成長率は4.0%となりました。2018年第1四半期のGDP公表時(5月11日)に発表した2018年通年の成長率予測値(3〜4%)を据え置いた形となりました。
【企業の採用動向】
求人数は第2四半期と比較して大きな変化はありませんでしたが、例年通り一定数の欠員補充の採用支援の依頼があった一方で、新規事業の立ち上げや事業拡大に向けた即戦力人材の要望や、香港を海外事業拡大の中心拠点とする設立に伴う求人依頼など、第3四半期は求人の傾向が大きく二極化した状況となりました。また、去年に引き続き中国系金融機関の拡大により、日系金融機関では優秀な人材の確保に苦戦を強いられています。これまで中国系金融機関は基本給を抑える傾向にありましたが、近年では見直しを行っていることで採用が順調に行われており、これが日系企業の採用に影響していることが考えられます。
【求職者の動向】
第2四半期と同様に7月〜8月は引き続き転職希望者が活発に活動を行い、良い条件の求人があれば転職を希望する方が多く見受けられました。直近では日系企業への転職希望者は若年層が多い状況に変わりありませんが、業績不振や景気の不透明感により将来を見据え転職を希望するミドルクラスの転職希望者も増加傾向にあります。転職時の給与額はもちろんの事、会社の将来性、そのポジションにおいてどのようにキャリアアップのチャンスとなるかという点についての情報収集や検討を行う候補者が増えています。ただ、第3四半期終盤になると翌年の転職を目指す候補者が出始めるため、第4四半期の転職活動は停滞しつつあります。
■■韓国■■
第3四半期の求人は増加したが、
最低賃金の大幅上昇による影響に今後注視する必要有り
【求人数】
対前年四半期比 112%
対前四半期比 112%
JAC Recruitment 韓国法人社長 土山 雄一郎
7月14日、韓国の最低賃金委員会は2019年度最低賃金を10.9%増の時給を8,350ウォンに決定しました。高い上昇額となりましたが昨年より引上げ幅は低く、ムン大統領が公約として掲げた2020年度時給である10,000ウォンの達成は実現が厳しくなりました。7月18日に発表された「下半期以降の経済状況および政策方向」は現在の経済環境の厳しさを反映し、実質GDP成長率を2.9%に下方修正し、「雇用創出」から「所得分配」へと、目標とする用語が変更されました。民間消費は伸び悩み、半導体事業以外の投資は減少しています。
【企業の採用動向】
第3四半期の企業求人状況は対前期比で12%増、前四半期比でも12%増となりました。これは半導体の輸出が好調なため、関連の製造装置メーカーや化学素材メーカーからの求人増によるものです。主に技術営業職やサービスエンジニア職の採用が顕著です。また、現地法人が現地化を進める上で幹部候補の採用を検討するケースも出てきています。一方で、自動車や造船業界は景況感が鈍化しており、慎重に採用活動を行っていますが、一方で最低賃金の上昇や週52時間労働制の影響により、特に工場を持つメーカーや一部小売業で、採用が一段と減速する可能性があります。
【求職者の動向】
秋夕(チュソク)休暇を終え求職者が活発に活動を行う時期ですが、景況感が良いとはいえないため前年同期と比べると大きな変化はありません。但し、貿易事務や営業事務を希望する求職者は比較的多いです。
9月から財閥大手企業が公開採用を始めたことで、在韓日系企業は新卒の採用活動において競争相手となるケースが出てきています。また、近年は優秀な新卒人材の給与提示額が上昇傾向にあるため、在韓日系企業が財閥大手企業や欧米系企業との人材獲得競争となる場合は給与額の見直しなどの対応策が必要です。
■■インド■■
7月は求人が増加したが、8月〜9月は落ち着きを見せた状況に
【求人数】
対前年四半期比 62%
対前四半期比 85%
JAC Recruitment インド法人社長 筧 裕樹
8月31日、インド中央統計局(CSO)は2018年度第1四半期(2018年4〜6月)の実質GDP成長率(2011年基準)推計値を発表しました。成長率は8.2%と前年同期の5.6%から大きく回復し、高額紙幣の廃止、物品・サービス税(GST)導入による停滞していた経済が明確に回復していることがわかります。また、直近の2017年度第4四半期(2018年1〜3月)の7.7%からも伸長し、特に製造業は1.8%減から13.5%増と大幅な伸びを見せました。
【企業の採用動向】
日本人求人については前四半期の流れから7月に増加しましたが、8月〜9月は減少傾向となりました。多くの企業では10月から下半期が始まることから、企業側が様子見状態であったことがうかがえます。現地では人材を採用したくても、上半期の決算間際という時期でもあり日本の本社側から保留を求められるケースもありました。インド人向けの求人については引き続き横ばいで推移しています。
【求職者の動向】
日本人の転職希望者数は横ばいの状態が続いており、引き続き他国との併願での登録が多いです。最近では女性の候補者が増えており、従来4:6で女性の方が多かったのが、直近では3:7の割合となっていることから、男性が優位な状態となっています。インド人の転職希望者は案件次第で活動をする方が多く、市場に求人がある場合は常に活動を続ける傾向があります。
■■日本■■
海外事業関連の求人は昨年同期比24%の大幅増
海外工場の生産性向上目的の要員やIoT関連の求人が顕著
【求人数】(日本企業の海外事業関連求人)
対前年四半期比 124%
対前四半期比 94%
JAC Recruitment(日本) 海外進出支援室 室長 佐原 賢治
厚労省が発表した7月の有効求人倍率は1.63倍と、依然高水準が続いています。一方、足元の景気は、インバウンド需要や、自動車、産業機械の生産が堅調であるものの、度重なる自然災害や米中貿易摩擦により心理面での冷え込みが見られ、景気DIは50をわずかながら下回っています。また海外投資は、米中貿易摩擦を危惧する製造業で再び「チャイナ・プラスワン」の動きがみられるほか、コンビニを含む小売や飲食、不動産などの業種でASEANを中心とした進出が活発な状況です。
【企業の採用動向】
7月〜9月に当社に寄せられた海外事業要員の求人数は、昨年同時期比124%と大幅な増加となりました。好調が続く産業機械関連のほか、化学、建設、物流などの業界で依然として即戦力人材の需要が高止まりしています。また、海外工場の生産性向上やモニタリング強化のためのIoTの導入や、海外子会社を含めたグループ会社の会計インフラ統合などを目的とするIT関連投資に伴う社内SEの求人も増加しました。地域的には、京都の大手メーカーによる海外M&Aや増産投資、大阪を中心とする関西地区で求人が増加しました。また、米中貿易摩擦に伴い、北米での増産対応によるマネジメント人材増強のための求人も出始めています。
【求職者の動向】
多くの企業では今夏のボーナス額が昨夏から更に上昇したことに伴い、求職者の現年収や希望年収も上昇傾向にあります。求人数も増加している中、都市部の大企業に比べて地方の中堅中小企業では、一層即戦力人材の確保が難しくなっています。一方、海外事業の中核を担う人材として外国人留学生の募集が一層活発化しており、その余波は中途採用市場にも及んでいます。
※各国の求人数の増減については、その国々の景況感による変動や各国が講じた戦略(高額帯年収の求人やスペシャリスト層求人に特化など)により、意図的に減る場合もございます。そのため、求人数の増減は直接各国の業績に結び付くものではありません。
(※1) 自社調べ(アジアで人材紹介事業を展開する同業他社の売上規模を比較)
◆株式会社ジェイ エイ シー リクルートメントについて◆
1988年設立。スペシャリストや管理職の人材紹介に特化し、企業と人材を一人のコンサルタントが同時に担当する「両面型」のビジネスモデルとして国内最大規模の東証一部上場企業です。国際ビジネス経験をもつ人材の紹介も強みの一つで、日本国内では外資系企業や日系企業の海外事業などのグローバル領域の売上が全体の50%以上を占めています。外資系企業の人材紹介に特化した JAC International、ジョブサイトの「キャリアクロス」を運営するシー・シー・コンサルティング、英国およびアジア8ヵ国で人材紹介業を展開するJAC Recruitment Asia Ltdのグループ会社を傘下に、世界10ヵ国、25拠点で事業を展開するグローバル企業です。
日本 :[URL] http://corp.jac-recruitment.jp (コーポレートサイト)
http://www.jac-recruitment.jp (転職サイト)
アジア:[URL] http://www.jac-recruitmentasia.com/
※以下リンクより、より読みやすいPDF版のプレスリリースをご参照ください。
https://www.atpress.ne.jp/releases/169591/att_169591_1.pdf
【サマリー】
・2018年第3四半期はマレーシア、ベトナム、韓国が昨年同期比で求人増
・マレーシアでは、デジタル系サービス企業や医療機器・製薬業界の求人増により対前年四半期比104%
・インドネシアでは、インフラ関連や不動産関連企業からの求人増により対前四半期比109%
・韓国では半導体の輸出が好調で、関連企業からの求人増により対前期比、対前年同期比共に112%
■■マレーシア■■
企業の求人意欲は引き続き堅調。特に外資・地場企業の基本給5,000リンギット以上の層の求人が増加傾向
【求人数】
対前年四半期比 104%
対前四半期比 100%
JAC Recruitment マレーシア法人社長 大西 信彰
8月にVistage-MIER (マレーシア経済研究所)が発表したCEO Confidence Index(経済動向信頼感指数‐CEO回答数は625) によると、第3四半期は107.1ポイントとなり、2011年第2四半期以降の最高値を記録。また、景気が悪化していると回答した比率は全体の18%で、昨年同四半期の42%から大幅に減少しました。5月に発足した新政権下、前首相が資金洗浄などにより起訴されるなど政治が正常化に向かっていることに国民の期待が高まり、景況感向上への追い風となっています。
【企業の採用動向】
第3四半期の企業求人数は前四半期比では横ばい、前年同期比では4%増となりました。例年、第2四半期をピークに第3四半期から年末に向けて求人数が10〜20%前後減少していきますが、今年は、第3四半期になっても企業の求人意欲は衰えていません。
業界別では、引き続きBPO/SSC(シェアードサービスセンター)が日本人や日本語スピーカー等の多言語人材を重点的に採用。また、日系・非日系を問わずeコマース、ブロックチェーン、デジタルマーケティング、eギフトといったデジタル系サービス企業や医療機器・製薬業界の進出による求人の増加などが、上記に述べた求人総数の底上げとなった一因となりました。
基本給5,000リンギット以上の求人においては、日系求人全体に占める比率は56%(昨年同期も同率)であることに対し、外資・地場企業では同比率が80%と際立っており、昨年同期の57%と比較しても明らかに上昇していることから、高年収の人材の需要が一段と高まっていると言えます。
【求職者の動向】
求職者は年内の転職を控え、年明けの勤務開始日を目指す傾向が見られます。BPO/SSC(シェアードサービスセンター)等、年内に人材採用を目指す企業では退職通知期間(通常1〜2ヶ月)の買い取り(Buy-out:退職予定者が退職までの期間の業務を全うできない場合、当該期間の給与相当額の返還がペナルティーとして発生するが、それを新規採用企業が補償すること)により対応し、人材確保を行っている状況です。
政権交代後、初の国家予算発表を来月に控え、マレーシア国民もそれに注目しながら転職のタイミングを計っている様子が伺えます。但し第3四半期の当社の登録者数は、前年同期比で16.5%増加しており、潜在的な転職意欲は引き続き高いと判断できます。
■■シンガポール■■
景気回復の影響で管理系の求人は増加したが、
多くはシンガポール人または永住者向けで、外国人対象の求人は鈍化
【求人数】
対前年四半期比 88%
対前四半期比 92%
JAC Recruitment シンガポール法人社長 早瀬 恭
消費者物価指数(CPI)、コアインフレは2%近くに上昇しましたが、2018年第3四半期の実質GDP(国内総生産)の成長率は、前年同期比で2.6%増と鈍化しました(第2四半期は4.1%増)。その中でも建設業は不振な状態で、サービス業は堅調です。
製造業の景気を表すPMI値(購買担当者景況指数)は3.3%増と鈍化しており、背景として2017年が好調だった反動だけでなく、米中貿易摩擦をめぐる不透明感が影響を及ぼしています。業績の拡大、縮小の分かれ目となるPMI値のベンチマークである50ポイントは25ヶ月連続で維持しています。中小企業の先行き景況感は製造業の鈍化が顕著のため、低下しています。
【企業の採用動向】
就労ビザの厳格化による外国人引き締めの影響により、依然として外国人向けの求人は鈍化傾向が続いています。就労ビザを取得する必要のある外国人を採用する際には、ハイスキル・ハイポジションという給与に見合った採用を進めている企業もあり、そのような求人依頼が増えています。これまで外国人が活躍していたポジションの代替要員に、企業はシンガポール人や永住権保持者を検討するケースが続いており、特にシンガポール人向けの経理、人事など管理系の求人が増加しています。
また、シンガポール政府として力を入れている次世代技術(ブロックチェーン、FinTech、仮想通貨(ICO)、AI)の能力・経験が必要な人材の引き合いも増加傾向にあります。
【求職者の動向】
日本人の転職希望者の登録状況としては、上記の就労ビザの厳格化をめぐる状況から、専門職、管理職人材の登録が増加しており、登録者の平均年齢も上昇傾向にあります。登録者数としては横ばいとなっており、例年と変化はありません。
また、シンガポール人は第2四半期、第3四半期共に活発に転職活動をする時期です。シンガポール人向けの求人依頼が多く、昨年からの景気回復により活動を開始することを決めた方もいます。
第4四半期はボーナス支給待ちの時期のため、転職を決めた求職者は第3四半期の期間に転職先を決める動きが見受けられました。
■■タイ■■
景気は安定し改善傾向に。採用動向は横ばいが継続している状態。
引き続き売り手市場が続く
【求人数】
対前年四半期比 78%
対前四半期比 94%
JAC Recruitment タイランド法人社長 山下 勝弘
タイ経済が底を打った後、緩やかに景気が回復しているものの、まだ2012年の頃の力強さは感じられません。
政治は民政化に向かい、来年前半に予定されている選挙まで秒読み段階ではありますが、選挙後も軍の影響が残る可能性は残されており、不安定さが払拭できていない状態です。ただし、現在の軍事政権も日本がイメージするような統治目的のようなものではなく治安の安定を担保している面もあり、欧米など諸外国から軍事国家としてのイメージを持たれている誤解を除けば、メリットは多いと考えられます。
【企業の採用動向】
失業率1%前後の水準が長期間続いている影響で、在タイ企業の定年は年々55歳から60歳にシフトしつつあり、これはタイの多くの企業が人材不足の課題を抱えていることが要因です。当社の求人数は前四半期比で微減となりましたが、労働者からホワイトカラーまで引き続き人材の需要が高い状態です。また、製造業においては日本の働き方改革による日本国内の製造能力の減少や、中国の大気汚染(PM2.5)などの影響による稼働時間の制限により生産をタイにシフトする動きがあり、採用ニーズが増加しています。
【求職者の動向】
今年も例年と同様、第3四半期は転職希望者が1年の中で最後に転職活動を行う期間であるため、活発に活動をする方々が多かった時期でした。
一方で、第4四半期に入ると来年1月のボーナス支給まで転職活動を控える期間となるため、9月下旬以降から急募のポジションで採用を行わなければならない企業では、ボーナス待ちをする転職希望者に年内の入社を説得するため、現職で本来支給される額と同等のサインアップボーナスを支給して人材を採用する企業が出ています。
■■インドネシア■■
2019年大統領選挙を前に、インフラ、不動産などで大型投資が続く
【求人数】
対前年四半期比 80%
対前四半期比 109%
JAC Recruitment インドネシア法人社長 小林 千絵
8月18日〜9月2日のアジア競技大会、10月12日〜14日にバリで開催されたIMF世銀総会など大きなイベントが無事終了し、2019年に大統領選挙を控えるジョコウィ政権はさまざまな分野で最後の攻勢をかけています。現時点、懸念されていた選挙前の投資を控える動きはなく、インフラ関連、不動産関連中心に大型投資が続いています。2015年からの景気減速による購買力の低迷で景気は一時的に底を打ちましたが、2017年以降は回復傾向で、選挙活動による市場の活性化も期待されています。第3四半期は各地で地震や火山の噴火などの自然災害が発生しましたが、当社が拠点を構える首都ジャカルタや近辺の地域では経済や雇用に目立った影響はありません。
【企業の採用動向】
第2四半期に引き続き主にインフラ関連や不動産関連企業から多くの求人依頼を受け、対前四半期比109%増となりました。求人の多くは主に日系、韓国系、中国系の新規投資が継続したことが要因となっています。日系企業からは前期から引き続き、通訳、日本人向けのサポート業務、営業等などの職種の求人を多く受けました。日本語能力を持つインドネシア人や現地の日本人を対象に、駐在員の後任を担う求人も増加傾向にあります。外資系企業による展開が続いていることから、国内のグローバル人材の求人と紹介がひっ迫している状態です。
【求職者の動向】
インフラ関連の業界でエンジニア職の人材が不足していることから、転職の際年収アップの交渉が行われるケースが増え、関連職種の給与が上昇傾向にあります。また、日本人向けの求人は多く受けるものの、インドネシアはシンガポール、マレーシア、タイ、ベトナムよりも日本人の就業希望者が少ないことから、現地採用の若年層向けの営業職を中心に、紹介する人材の候補者が不足している状態が続いています。
■■ベトナム■■
内需拡大目的の求人が増加傾向
【求人数】
対前年四半期比 232%
対前四半期比 96%
JAC Recruitment ベトナム法人 ディレクター
Le Thuy Dieu Uyen(レー・トゥイ・ユー・ウィン)
ベトナム統計総局の発表によると、2018年1〜9月期の国内総生産成長率は6.98%増となり、1〜9月期では過去8年で最高値を記録しました。特に工業・建設業で8.89%増、製造業が12.65%増と寄与しました。また、サービス業も6.89%増、うち卸売・小売業が8.48%増となりました。GDPの構成は比率が大きい順に、サービス業:42.54%、工業・建設業:33.49%、農林水産業:13.93%となっています。
【企業の採用動向】
最近、ベトナム進出を計画する日本の中小企業が進出前に日本でベトナムの実習生・研修生を受け入れ、彼らの帰国と同時にベトナムに進出し、彼らを現地で雇用するというケースが増加傾向にあります。ベトナムでは賃金は高騰しているものの、近隣国の年収と比べるとまだ低めであるため、安い人件費目的での新規進出が引き続き多い状態です。
一方、新しい動きとして、今後拡大が見込まれる内需の囲い込みを目的に小売り、不動産開発、飲食、内装業などの日系企業の進出も増加傾向にあります。それらの企業は、日本語能力を持つ人材に対して従来のような単なる日本本社との橋渡し(翻訳通訳)の役割だけではなく、より実務に即した能力やマーケットの高度な知識なども求めるようになっています。
【求職者の動向】
ベトナムに進出する日系企業にとっては、人材採用の際の重要な条件が日本語能力であり、日本語力が高ければ高年収での転職が可能となるため日本語能力を武器に転職を希望する人が多い状態です。一方で、各職種の専門性が高い求職者は少ない傾向です。
新たにベトナムに進出する日系企業は、日本の商習慣を理解している日系企業での勤務経験がある候補者を求める傾向が強く、現職よりも高い給与を提示して採用するケースもあります。そのため、市場の成長度や当人の経験やスキルに則さない賃金の高騰が起こっており、日本語能力を生かし高い年収を求める登録者が増えています。現在は、テト(旧正月:2019年初旬)明けの転職を目指し、情報収集に動いている求職者が多くなっており、年末年始に向け活動が活発化することが予想されます。
■■中国(上海・広州)■■
中国系最先端テクノロジー企業の人材採用強化に伴い、
同職種の人材の日系企業離れが加速する恐れも
【求人数】
対前年四半期比 80%
対前四半期比 88%
JAC Recruitment 中国法人社長 蓮子 哲也
某国営通信社によると工業関連企業による8月の前年同月比の実質成長率は6.1%となりました。7〜9月期の中国の成長率は6.5%と9年半ぶりの低水準となりましたが、新エネルギー車(NEV)や産業用ロボットなどの領域では生産台数が大幅に増加しました。また、全国消費者物価指数(CPI)は前年同期比で若干上昇し2.3%増となりました。一方で、一部米自動車メーカーでは米中貿易戦争の影響を受け中国新車販売台数が大幅に減少しています。
【企業の採用動向】
中国では10月1日から個人所得税改革が施行され、基礎控除額の引き上げや付加控除費用の取り消しなどの施策により社員の手取り給与が上昇しました。一方、手取り給与保証をしている企業では、上記の改革を受け給与増を求める社員の声も出始めており、労務規定を税込給与保証に変更するなどの対応を急ぐ企業も少なくありません。求人に関しては、上海・深セン地区でのR&Dセンターにて、ロボット技術者やAI技術者などの人材を求める中国民営企業が増加しています。また、最近では日本企業が中国在住の中国人の転職希望者を日本国内で就業させる目的で採用し、数年間日本で十分な経験を積んだ後に中国の1級・2級都市での拠点設立のタイミングで幹部として赴任させる動きも出始めています。
【求職者の動向】
中国の祝日である国慶節の影響もあり、9月末〜10月中旬までは転職希望者が減少しました。
また、年末や2月上旬の旧正月が近づくにつれ、ボーナスが支給された後に離職を望む転職希望者が例年相当数存在するため、今年も10月現時点で既にその動きが現れ始めています。そのため、求人数が増えても転職希望者の紹介が難しくなるという状態になりつつあります。
企業の採用動向でも述べた通り、日系企業が中国在住の中国人を日本での勤務目的で採用する動きがあることから、日本での勤務に対しても柔軟に検討する候補者が徐々に増えています。
■■香港■■
求人数に大幅な変化はないが、求人内容は二極化の傾向に
【求人数】
対前年四半期比 88%
対前四半期比 95%
JAC Recruitment 香港法人社長 蓮子 哲也
香港統計局(8月15日発表)によると、2018年第2四半期の香港の実質GDP成長率(前年同期比)は3.5%となりました。第1四半期(4.6%)より1.1ポイント低下となりましたが、直近10年の年平均成長率(2.7%)を7四半期連続で上回った結果となり、2018年上半期の成長率は4.0%となりました。2018年第1四半期のGDP公表時(5月11日)に発表した2018年通年の成長率予測値(3〜4%)を据え置いた形となりました。
【企業の採用動向】
求人数は第2四半期と比較して大きな変化はありませんでしたが、例年通り一定数の欠員補充の採用支援の依頼があった一方で、新規事業の立ち上げや事業拡大に向けた即戦力人材の要望や、香港を海外事業拡大の中心拠点とする設立に伴う求人依頼など、第3四半期は求人の傾向が大きく二極化した状況となりました。また、去年に引き続き中国系金融機関の拡大により、日系金融機関では優秀な人材の確保に苦戦を強いられています。これまで中国系金融機関は基本給を抑える傾向にありましたが、近年では見直しを行っていることで採用が順調に行われており、これが日系企業の採用に影響していることが考えられます。
【求職者の動向】
第2四半期と同様に7月〜8月は引き続き転職希望者が活発に活動を行い、良い条件の求人があれば転職を希望する方が多く見受けられました。直近では日系企業への転職希望者は若年層が多い状況に変わりありませんが、業績不振や景気の不透明感により将来を見据え転職を希望するミドルクラスの転職希望者も増加傾向にあります。転職時の給与額はもちろんの事、会社の将来性、そのポジションにおいてどのようにキャリアアップのチャンスとなるかという点についての情報収集や検討を行う候補者が増えています。ただ、第3四半期終盤になると翌年の転職を目指す候補者が出始めるため、第4四半期の転職活動は停滞しつつあります。
■■韓国■■
第3四半期の求人は増加したが、
最低賃金の大幅上昇による影響に今後注視する必要有り
【求人数】
対前年四半期比 112%
対前四半期比 112%
JAC Recruitment 韓国法人社長 土山 雄一郎
7月14日、韓国の最低賃金委員会は2019年度最低賃金を10.9%増の時給を8,350ウォンに決定しました。高い上昇額となりましたが昨年より引上げ幅は低く、ムン大統領が公約として掲げた2020年度時給である10,000ウォンの達成は実現が厳しくなりました。7月18日に発表された「下半期以降の経済状況および政策方向」は現在の経済環境の厳しさを反映し、実質GDP成長率を2.9%に下方修正し、「雇用創出」から「所得分配」へと、目標とする用語が変更されました。民間消費は伸び悩み、半導体事業以外の投資は減少しています。
【企業の採用動向】
第3四半期の企業求人状況は対前期比で12%増、前四半期比でも12%増となりました。これは半導体の輸出が好調なため、関連の製造装置メーカーや化学素材メーカーからの求人増によるものです。主に技術営業職やサービスエンジニア職の採用が顕著です。また、現地法人が現地化を進める上で幹部候補の採用を検討するケースも出てきています。一方で、自動車や造船業界は景況感が鈍化しており、慎重に採用活動を行っていますが、一方で最低賃金の上昇や週52時間労働制の影響により、特に工場を持つメーカーや一部小売業で、採用が一段と減速する可能性があります。
【求職者の動向】
秋夕(チュソク)休暇を終え求職者が活発に活動を行う時期ですが、景況感が良いとはいえないため前年同期と比べると大きな変化はありません。但し、貿易事務や営業事務を希望する求職者は比較的多いです。
9月から財閥大手企業が公開採用を始めたことで、在韓日系企業は新卒の採用活動において競争相手となるケースが出てきています。また、近年は優秀な新卒人材の給与提示額が上昇傾向にあるため、在韓日系企業が財閥大手企業や欧米系企業との人材獲得競争となる場合は給与額の見直しなどの対応策が必要です。
■■インド■■
7月は求人が増加したが、8月〜9月は落ち着きを見せた状況に
【求人数】
対前年四半期比 62%
対前四半期比 85%
JAC Recruitment インド法人社長 筧 裕樹
8月31日、インド中央統計局(CSO)は2018年度第1四半期(2018年4〜6月)の実質GDP成長率(2011年基準)推計値を発表しました。成長率は8.2%と前年同期の5.6%から大きく回復し、高額紙幣の廃止、物品・サービス税(GST)導入による停滞していた経済が明確に回復していることがわかります。また、直近の2017年度第4四半期(2018年1〜3月)の7.7%からも伸長し、特に製造業は1.8%減から13.5%増と大幅な伸びを見せました。
【企業の採用動向】
日本人求人については前四半期の流れから7月に増加しましたが、8月〜9月は減少傾向となりました。多くの企業では10月から下半期が始まることから、企業側が様子見状態であったことがうかがえます。現地では人材を採用したくても、上半期の決算間際という時期でもあり日本の本社側から保留を求められるケースもありました。インド人向けの求人については引き続き横ばいで推移しています。
【求職者の動向】
日本人の転職希望者数は横ばいの状態が続いており、引き続き他国との併願での登録が多いです。最近では女性の候補者が増えており、従来4:6で女性の方が多かったのが、直近では3:7の割合となっていることから、男性が優位な状態となっています。インド人の転職希望者は案件次第で活動をする方が多く、市場に求人がある場合は常に活動を続ける傾向があります。
■■日本■■
海外事業関連の求人は昨年同期比24%の大幅増
海外工場の生産性向上目的の要員やIoT関連の求人が顕著
【求人数】(日本企業の海外事業関連求人)
対前年四半期比 124%
対前四半期比 94%
JAC Recruitment(日本) 海外進出支援室 室長 佐原 賢治
厚労省が発表した7月の有効求人倍率は1.63倍と、依然高水準が続いています。一方、足元の景気は、インバウンド需要や、自動車、産業機械の生産が堅調であるものの、度重なる自然災害や米中貿易摩擦により心理面での冷え込みが見られ、景気DIは50をわずかながら下回っています。また海外投資は、米中貿易摩擦を危惧する製造業で再び「チャイナ・プラスワン」の動きがみられるほか、コンビニを含む小売や飲食、不動産などの業種でASEANを中心とした進出が活発な状況です。
【企業の採用動向】
7月〜9月に当社に寄せられた海外事業要員の求人数は、昨年同時期比124%と大幅な増加となりました。好調が続く産業機械関連のほか、化学、建設、物流などの業界で依然として即戦力人材の需要が高止まりしています。また、海外工場の生産性向上やモニタリング強化のためのIoTの導入や、海外子会社を含めたグループ会社の会計インフラ統合などを目的とするIT関連投資に伴う社内SEの求人も増加しました。地域的には、京都の大手メーカーによる海外M&Aや増産投資、大阪を中心とする関西地区で求人が増加しました。また、米中貿易摩擦に伴い、北米での増産対応によるマネジメント人材増強のための求人も出始めています。
【求職者の動向】
多くの企業では今夏のボーナス額が昨夏から更に上昇したことに伴い、求職者の現年収や希望年収も上昇傾向にあります。求人数も増加している中、都市部の大企業に比べて地方の中堅中小企業では、一層即戦力人材の確保が難しくなっています。一方、海外事業の中核を担う人材として外国人留学生の募集が一層活発化しており、その余波は中途採用市場にも及んでいます。
※各国の求人数の増減については、その国々の景況感による変動や各国が講じた戦略(高額帯年収の求人やスペシャリスト層求人に特化など)により、意図的に減る場合もございます。そのため、求人数の増減は直接各国の業績に結び付くものではありません。
(※1) 自社調べ(アジアで人材紹介事業を展開する同業他社の売上規模を比較)
◆株式会社ジェイ エイ シー リクルートメントについて◆
1988年設立。スペシャリストや管理職の人材紹介に特化し、企業と人材を一人のコンサルタントが同時に担当する「両面型」のビジネスモデルとして国内最大規模の東証一部上場企業です。国際ビジネス経験をもつ人材の紹介も強みの一つで、日本国内では外資系企業や日系企業の海外事業などのグローバル領域の売上が全体の50%以上を占めています。外資系企業の人材紹介に特化した JAC International、ジョブサイトの「キャリアクロス」を運営するシー・シー・コンサルティング、英国およびアジア8ヵ国で人材紹介業を展開するJAC Recruitment Asia Ltdのグループ会社を傘下に、世界10ヵ国、25拠点で事業を展開するグローバル企業です。
日本 :[URL] http://corp.jac-recruitment.jp (コーポレートサイト)
http://www.jac-recruitment.jp (転職サイト)
アジア:[URL] http://www.jac-recruitmentasia.com/