日本人集団のゲノムワイド関連解析によりうつ状態や心理的苦痛※1の感受性に関係する遺伝子を新規に同定
[19/02/13]
提供元:@Press
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株式会社ジーンクエスト(本社:東京都港区、代表取締役:高橋 祥子)および、学校法人藤田学園 藤田医科大学(学長:星長 清隆)総合医科学研究所システム医科学研究部門、同大学医学部精神神経科学講座による、日本人のうつ状態や心理的苦痛と遺伝子多型(SNP)※2に関する共同研究の成果が、専門誌「Translational Psychiatry」のオンライン速報版で2019年1月31日に公開されました。
◆研究結果の概要
大うつ病性障害は最も一般的な精神疾患の一つであり、生涯有病率が約15%にのぼるにもかかわらず、遺伝的には未だ不明な点が多く、メカニズムの解明が急がれています。最近の大うつ病性障害の大規模研究では、ゲノムワイド関連解析(GWAS解析)※3という研究手法により44遺伝子座に大うつ病性障害との関連があることが報告されていましたが、ヨーロッパ系集団を主な対象としており、日本人での大規模研究は実施されていませんでした。大うつ病性障害と遺伝子の関係をより詳細に解明するためには、日本人を含めた様々な地域で、より多くの人数を対象にした研究を行う必要がありました。
そこで本研究では、大うつ病性障害と遺伝子との関係に新たな知見を得るために、消費者向け遺伝子検査サービスの利用者約1万人の日本人※4を対象に、大うつ病性障害と深く関係する心理的苦痛をウェブ調査により測定し、GWAS解析を用いて心理的ストレスと関連する遺伝子多型を網羅的に探索しました。心理的苦痛の測定には、心理的苦痛の簡易的な指標である日本語版K6テスト※5を用いました。ウェブ調査により取得された形質情報を用いた、ヨーロッパ系でない集団を対象とした大規模GWAS解析としては、本研究が世界で初めてのものです。
解析の結果、心理的苦痛と有意な関連を示すゲノム上の領域が新たに同定されました。この領域には複数の遺伝子が存在していますが、そのうちの一つはタンパク質分解酵素の阻害物質の一種であるWFDC11遺伝子でした。この遺伝子が実際に心理的苦痛や大うつ病性障害と関係しているかどうかは今後の課題ですが、心理的苦痛の遺伝的背景の解明のための新たな手がかりとなる可能性があります。
なお、WFDC11遺伝子の遺伝子多型も含め、一般的に個々のSNPが心理的苦痛や大うつ病性障害に与える影響度は小さく、本研究で同定したSNPを用いても個々人のうつ状態を予測することは困難であることに注意する必要があります。また、本研究には、検体数約1万人では依然として不十分である可能性がある点や、環境因子の影響を考慮していないため遺伝子と生活環境との関係が不明である点などの限界があります。裏付けのためには今後さらなる調査が不可欠ですが、本研究成果は日本人における心理的苦痛や大うつ病性障害と遺伝子の関係解明に寄与し、ゲノム情報を活用したメンタルヘルスケアの実現に役立つことが期待されます。
当社では今後も、共同研究によって生み出される成果を活かして、より信頼できる遺伝子解析サービスを提供し、遺伝子事業の発展に貢献できるよう取り組んでまいります。
※1 心理的苦痛(Psychological distress)とは、心理的な苦痛を感じている状態のことです。抑うつ・不安などを含みます。
※2 スニップと発音され、DNA上のたった一箇所の違いを意味しています。Single Nucleotide Polymorphismの略であり、一塩基多型と訳されます。ゲノム中には300万から1000万のSNPが存在していると考えられています。重要な遺伝子領域が作りだすタンパク質を変化させる可能性があり、生活習慣病などはSNPsが複雑に関係していると解明されてきています。
※3 ゲノムワイド関連解析(GWAS解析)は、ゲノム全体をほぼカバーする50万個以上のSNPの遺伝子型を決定し、主にSNPの頻度と、疾患をはじめとした形質との関連を統計的に調べる方法です(脳科学辞典: https://bsd.neuroinf.jp/wiki/ “ゲノムワイド関連解析”)。
※4 本研究は株式会社ジーンクエストとヤフー株式会社が共同で展開している遺伝子解析サービス、Yahoo! JAPAN - HealthData Labプロジェクトのデータを活用しています。
※5 K6テストは、 心の健康状態を調べるために開発された6個の質問からなる簡易テストです。心理的苦痛の評価や、精神疾患のスクリーニングに使用されています。一般にK6テスト結果の点数が高いほど、精神的な健康状態が悪化している可能性があると判断されます。
◆研究表題: Genome-wide association study identifies a novel locus associated with psychological distress in the Japanese population
DOI: https://doi.org/10.1038/s41398-019-0383-z
URL: https://www.nature.com/articles/s41398-019-0383-z
◆利益相反
責任著者の宮川 剛は株式会社ジーンクエストの社外アドバイザー、倫理審査委員会委員を務めています。
■企業情報
社名 : 株式会社ジーンクエスト
所在地 : 東京都港区芝5丁目29番11号 G-BASE田町3F
設立 : 2013年6月20日
資本金 : 110,000千円(資本準備金含む)
代表者 : 代表取締役 高橋 祥子
事業内容: 個人向け遺伝子解析事業
URL : https://genequest.jp/
■ジーンクエストリサーチについて
「ジーンクエストリサーチ」は、国内外の企業、研究者等と連携し、主に遺伝子解析キットを通じて蓄積されたゲノムデータを活用し、遺伝子多型と体質、疾患に関する幅広い研究に取り組んでおります。研究活用に関して同意が得られたユーザーのデータを匿名化し、倫理審査委員会により情報の取扱い、提携先における利用目的等の承認を受けた上で、研究活用します。今後も、共同研究パートナー企業、研究者とともに、サービスと研究のシナジーを創出し、新たな価値の創出を目指し実現してまいります。当社では、共同研究の研究者、パートナー企業様を広く募集しております。
ジーンクエストリサーチURL: https://genequest.jp/forbiz/
◆研究結果の概要
大うつ病性障害は最も一般的な精神疾患の一つであり、生涯有病率が約15%にのぼるにもかかわらず、遺伝的には未だ不明な点が多く、メカニズムの解明が急がれています。最近の大うつ病性障害の大規模研究では、ゲノムワイド関連解析(GWAS解析)※3という研究手法により44遺伝子座に大うつ病性障害との関連があることが報告されていましたが、ヨーロッパ系集団を主な対象としており、日本人での大規模研究は実施されていませんでした。大うつ病性障害と遺伝子の関係をより詳細に解明するためには、日本人を含めた様々な地域で、より多くの人数を対象にした研究を行う必要がありました。
そこで本研究では、大うつ病性障害と遺伝子との関係に新たな知見を得るために、消費者向け遺伝子検査サービスの利用者約1万人の日本人※4を対象に、大うつ病性障害と深く関係する心理的苦痛をウェブ調査により測定し、GWAS解析を用いて心理的ストレスと関連する遺伝子多型を網羅的に探索しました。心理的苦痛の測定には、心理的苦痛の簡易的な指標である日本語版K6テスト※5を用いました。ウェブ調査により取得された形質情報を用いた、ヨーロッパ系でない集団を対象とした大規模GWAS解析としては、本研究が世界で初めてのものです。
解析の結果、心理的苦痛と有意な関連を示すゲノム上の領域が新たに同定されました。この領域には複数の遺伝子が存在していますが、そのうちの一つはタンパク質分解酵素の阻害物質の一種であるWFDC11遺伝子でした。この遺伝子が実際に心理的苦痛や大うつ病性障害と関係しているかどうかは今後の課題ですが、心理的苦痛の遺伝的背景の解明のための新たな手がかりとなる可能性があります。
なお、WFDC11遺伝子の遺伝子多型も含め、一般的に個々のSNPが心理的苦痛や大うつ病性障害に与える影響度は小さく、本研究で同定したSNPを用いても個々人のうつ状態を予測することは困難であることに注意する必要があります。また、本研究には、検体数約1万人では依然として不十分である可能性がある点や、環境因子の影響を考慮していないため遺伝子と生活環境との関係が不明である点などの限界があります。裏付けのためには今後さらなる調査が不可欠ですが、本研究成果は日本人における心理的苦痛や大うつ病性障害と遺伝子の関係解明に寄与し、ゲノム情報を活用したメンタルヘルスケアの実現に役立つことが期待されます。
当社では今後も、共同研究によって生み出される成果を活かして、より信頼できる遺伝子解析サービスを提供し、遺伝子事業の発展に貢献できるよう取り組んでまいります。
※1 心理的苦痛(Psychological distress)とは、心理的な苦痛を感じている状態のことです。抑うつ・不安などを含みます。
※2 スニップと発音され、DNA上のたった一箇所の違いを意味しています。Single Nucleotide Polymorphismの略であり、一塩基多型と訳されます。ゲノム中には300万から1000万のSNPが存在していると考えられています。重要な遺伝子領域が作りだすタンパク質を変化させる可能性があり、生活習慣病などはSNPsが複雑に関係していると解明されてきています。
※3 ゲノムワイド関連解析(GWAS解析)は、ゲノム全体をほぼカバーする50万個以上のSNPの遺伝子型を決定し、主にSNPの頻度と、疾患をはじめとした形質との関連を統計的に調べる方法です(脳科学辞典: https://bsd.neuroinf.jp/wiki/ “ゲノムワイド関連解析”)。
※4 本研究は株式会社ジーンクエストとヤフー株式会社が共同で展開している遺伝子解析サービス、Yahoo! JAPAN - HealthData Labプロジェクトのデータを活用しています。
※5 K6テストは、 心の健康状態を調べるために開発された6個の質問からなる簡易テストです。心理的苦痛の評価や、精神疾患のスクリーニングに使用されています。一般にK6テスト結果の点数が高いほど、精神的な健康状態が悪化している可能性があると判断されます。
◆研究表題: Genome-wide association study identifies a novel locus associated with psychological distress in the Japanese population
DOI: https://doi.org/10.1038/s41398-019-0383-z
URL: https://www.nature.com/articles/s41398-019-0383-z
◆利益相反
責任著者の宮川 剛は株式会社ジーンクエストの社外アドバイザー、倫理審査委員会委員を務めています。
■企業情報
社名 : 株式会社ジーンクエスト
所在地 : 東京都港区芝5丁目29番11号 G-BASE田町3F
設立 : 2013年6月20日
資本金 : 110,000千円(資本準備金含む)
代表者 : 代表取締役 高橋 祥子
事業内容: 個人向け遺伝子解析事業
URL : https://genequest.jp/
■ジーンクエストリサーチについて
「ジーンクエストリサーチ」は、国内外の企業、研究者等と連携し、主に遺伝子解析キットを通じて蓄積されたゲノムデータを活用し、遺伝子多型と体質、疾患に関する幅広い研究に取り組んでおります。研究活用に関して同意が得られたユーザーのデータを匿名化し、倫理審査委員会により情報の取扱い、提携先における利用目的等の承認を受けた上で、研究活用します。今後も、共同研究パートナー企業、研究者とともに、サービスと研究のシナジーを創出し、新たな価値の創出を目指し実現してまいります。当社では、共同研究の研究者、パートナー企業様を広く募集しております。
ジーンクエストリサーチURL: https://genequest.jp/forbiz/