日本人集団における魚の摂取頻度に関与する遺伝子領域を発見
[19/07/29]
提供元:@Press
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株式会社ジーンクエスト(本社:東京都港区、代表取締役:高橋 祥子)および、国立大学法人東京大学大学院農学生命科学研究科 健康栄養機能学社会連携講座(東京都文京区、加藤 久典特任教授)による共同研究により、日本人を対象にしたゲノム解析からアジア人集団で初めて魚の摂取頻度に関連する遺伝子領域を同定し、その成果が、専門誌「Genes and Nutrition」のオンライン速報版で2019年7月5日に公開されました。
◆研究結果の概要
日本は世界でも有数の魚消費国です。その反面近年では、肉類の消費量が魚介類を上回り、食生活の欧米化が進んでいます。青魚のEPAやDHAは、生活習慣病予防や多動・双極性障害の症状改善が報告されていることから、個人に合わせて魚を積極的に摂取してもらうための取り組みが必要です。
一方、ゲノムの中の一塩基多型(SNP)※1は、遺伝的な体質に影響することが知られています。ヒトゲノムと生活習慣の研究によりSNPが食生活の個人差にも影響していることが判明しつつあり、最近では欧米の研究グループから魚の消費量に関わるSNPが報告されています。しかし日本人にはこのSNPを持つ人が極めて少ないため、地域によって魚の消費量に関与する別のSNPが存在している可能性がありました。
そこで本研究では、日本人約1万2千人のゲノム情報とWebアンケート情報を用いてゲノムワイド関連解析(GWAS)※2を行った結果、ヒト12番染色体上の12q24領域に存在するSNPsが魚の摂取頻度に関連していることを明らかにしました。
12q24領域にはアルコール代謝に関わる遺伝子やSNPsが存在します。解析の結果、お酒に弱い遺伝型を持つ人では、魚の摂取頻度が低下していることが分かりました。さらに、お酒に関わる遺伝型と魚の摂取頻度との関連を、男性と女性、および年齢の高い群と低い群に分けてそれぞれ解析した結果、男性、および年齢の高い群でより強い関連が認められました。すなわち、遺伝的にお酒に弱いためお酒を飲まない高齢の男性は比較的魚を摂取しにくい傾向があることが分かりました。
本研究成果を活用して、特に遺伝的にお酒に弱くお酒を飲む習慣がない高齢の男性に魚摂取を勧めるという、より効果的な健康増進アドバイスの実施が期待できます。本研究は、このように個々の遺伝的体質に応じた食事アドバイスを行う「パーソナルゲノム栄養」の実現に繋がると考えています。今回はWebアンケートで食物ごとの摂取頻度を調査した結果を用いましたが、今後は食事記録法による調査によって、このSNPにより魚摂取量にどの程度差が出るかを検証したいと考えています。また、分子生物的な手法を用いたメカニズムの解明や、日本人の食に関連する様々な新規の遺伝子領域を明らかにすることが必要です。
当社では今後も、共同研究によって生み出される成果を活かして、より信頼できる遺伝子解析サービスを提供し、遺伝子事業の発展に貢献できるよう取り組んでまいります。
※1 スニップと発音され、DNA上の一箇所の違いを意味しています。“Single Nucleotide Polymorphism”の略であり、一塩基多型と訳されます。ゲノム中には300万から1000万のSNPが存在していると考えられています。重要な遺伝子領域が作りだすタンパク質を変化させる可能性があり、生活習慣病などはSNPsが複雑に関係していることが解明されつつあります。
※2 ゲノムワイド関連解析(GWAS解析)は、ゲノム全体をほぼカバーする50万個以上のSNPの遺伝子型を決定し、主にSNPの頻度と、疾患をはじめとした形質との関連を統計的に調べる方法です(池田匡志 ゲノムワイド関連解析 脳科学辞典 https://bsd.neuroinf.jp/wiki/ “ゲノムワイド関連解析”)。
◆研究表題: Identification of the 12q24 locus associated with fish intake frequency by genome-wide meta-analysis in Japanese populations
DOI: 10.1186/s12263-019-0646-6
URL: https://genesandnutrition.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12263-019-0646-6
◆利益相反
責任著者の加藤久典は株式会社ジーンクエストの倫理審査委員会委員を務めています。
■企業情報
社名 : 株式会社ジーンクエスト
所在地 : 東京都港区芝五丁目29番11号 G-BASE田町
設立 : 2013年6月20日
資本金 : 110,000千円(資本準備金含む)
代表者 : 代表取締役 高橋 祥子
事業内容: 個人向け遺伝子解析事業
URL : https://genequest.jp/
■ジーンクエストリサーチについて
「ジーンクエストリサーチ」は、国内外の企業、研究者等と連携し、主に遺伝子解析キットを通じて蓄積されたゲノムデータを活用し、遺伝子多型と体質、疾患に関する幅広い研究に取り組んでおります。研究活用に関して同意が得られたユーザーのデータを匿名化し、倫理審査委員会により情報の取扱い、提携先における利用目的等の承認を受けた上で、研究活用します。今後も、共同研究パートナー企業、研究者とともに、サービスと研究のシナジーを創出し、新たな価値の創出を目指し実現してまいります。当社では、共同研究の研究者、パートナー企業様を広く募集しております。
ジーンクエストリサーチURL: https://genequest.jp/forbiz/
◆研究結果の概要
日本は世界でも有数の魚消費国です。その反面近年では、肉類の消費量が魚介類を上回り、食生活の欧米化が進んでいます。青魚のEPAやDHAは、生活習慣病予防や多動・双極性障害の症状改善が報告されていることから、個人に合わせて魚を積極的に摂取してもらうための取り組みが必要です。
一方、ゲノムの中の一塩基多型(SNP)※1は、遺伝的な体質に影響することが知られています。ヒトゲノムと生活習慣の研究によりSNPが食生活の個人差にも影響していることが判明しつつあり、最近では欧米の研究グループから魚の消費量に関わるSNPが報告されています。しかし日本人にはこのSNPを持つ人が極めて少ないため、地域によって魚の消費量に関与する別のSNPが存在している可能性がありました。
そこで本研究では、日本人約1万2千人のゲノム情報とWebアンケート情報を用いてゲノムワイド関連解析(GWAS)※2を行った結果、ヒト12番染色体上の12q24領域に存在するSNPsが魚の摂取頻度に関連していることを明らかにしました。
12q24領域にはアルコール代謝に関わる遺伝子やSNPsが存在します。解析の結果、お酒に弱い遺伝型を持つ人では、魚の摂取頻度が低下していることが分かりました。さらに、お酒に関わる遺伝型と魚の摂取頻度との関連を、男性と女性、および年齢の高い群と低い群に分けてそれぞれ解析した結果、男性、および年齢の高い群でより強い関連が認められました。すなわち、遺伝的にお酒に弱いためお酒を飲まない高齢の男性は比較的魚を摂取しにくい傾向があることが分かりました。
本研究成果を活用して、特に遺伝的にお酒に弱くお酒を飲む習慣がない高齢の男性に魚摂取を勧めるという、より効果的な健康増進アドバイスの実施が期待できます。本研究は、このように個々の遺伝的体質に応じた食事アドバイスを行う「パーソナルゲノム栄養」の実現に繋がると考えています。今回はWebアンケートで食物ごとの摂取頻度を調査した結果を用いましたが、今後は食事記録法による調査によって、このSNPにより魚摂取量にどの程度差が出るかを検証したいと考えています。また、分子生物的な手法を用いたメカニズムの解明や、日本人の食に関連する様々な新規の遺伝子領域を明らかにすることが必要です。
当社では今後も、共同研究によって生み出される成果を活かして、より信頼できる遺伝子解析サービスを提供し、遺伝子事業の発展に貢献できるよう取り組んでまいります。
※1 スニップと発音され、DNA上の一箇所の違いを意味しています。“Single Nucleotide Polymorphism”の略であり、一塩基多型と訳されます。ゲノム中には300万から1000万のSNPが存在していると考えられています。重要な遺伝子領域が作りだすタンパク質を変化させる可能性があり、生活習慣病などはSNPsが複雑に関係していることが解明されつつあります。
※2 ゲノムワイド関連解析(GWAS解析)は、ゲノム全体をほぼカバーする50万個以上のSNPの遺伝子型を決定し、主にSNPの頻度と、疾患をはじめとした形質との関連を統計的に調べる方法です(池田匡志 ゲノムワイド関連解析 脳科学辞典 https://bsd.neuroinf.jp/wiki/ “ゲノムワイド関連解析”)。
◆研究表題: Identification of the 12q24 locus associated with fish intake frequency by genome-wide meta-analysis in Japanese populations
DOI: 10.1186/s12263-019-0646-6
URL: https://genesandnutrition.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12263-019-0646-6
◆利益相反
責任著者の加藤久典は株式会社ジーンクエストの倫理審査委員会委員を務めています。
■企業情報
社名 : 株式会社ジーンクエスト
所在地 : 東京都港区芝五丁目29番11号 G-BASE田町
設立 : 2013年6月20日
資本金 : 110,000千円(資本準備金含む)
代表者 : 代表取締役 高橋 祥子
事業内容: 個人向け遺伝子解析事業
URL : https://genequest.jp/
■ジーンクエストリサーチについて
「ジーンクエストリサーチ」は、国内外の企業、研究者等と連携し、主に遺伝子解析キットを通じて蓄積されたゲノムデータを活用し、遺伝子多型と体質、疾患に関する幅広い研究に取り組んでおります。研究活用に関して同意が得られたユーザーのデータを匿名化し、倫理審査委員会により情報の取扱い、提携先における利用目的等の承認を受けた上で、研究活用します。今後も、共同研究パートナー企業、研究者とともに、サービスと研究のシナジーを創出し、新たな価値の創出を目指し実現してまいります。当社では、共同研究の研究者、パートナー企業様を広く募集しております。
ジーンクエストリサーチURL: https://genequest.jp/forbiz/