連合調べ 2020年改正労働者派遣法の内容 「詳細まで知っていた」はわずか5%、不合理な格差解消へ「期待する」は45%
[19/07/26]
提供元:@Press
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日本労働組合総連合会(略称:連合、所在地:東京都千代田区、会長:神津 里季生)は、派遣労働に関する制度や法改正に対し派遣労働者がどのような意識を持ち、また、働く上でどのような実感を持っているか、派遣労働者の意識と実態を把握するため、「派遣労働者に関する調査」を2019年6月13日〜6月20日の8日間でインターネットリサーチにより実施し、全国の20歳〜69歳の派遣労働者(民間企業勤務)1,000名の有効サンプルを集計しました。(調査協力機関:ネットエイジア株式会社)
[調査結果]
≪2020年4月施行の改正労働者派遣法など同一労働同一賃金について≫
◆2020年改正労働者派遣法の内容 「詳細まで知っていた」は5%
派遣労働者の同一労働同一賃金の実現に向けて、2020年4月に改正労働者派遣法が施行されます。
まず、全国の20歳〜69歳の民間企業に勤務する派遣労働者1,000名(全回答者)に、2020年4月1日に労働者派遣法が改正されることを知っていたか聞いたところ、「詳細まで知っていた」のは、全体で5.2%、世代別にみると、60代が1.4%と最も低く、次いで20代と50代は4.5%でした。「詳しくではないが知っていた」も含めた認知率は、全体で51.4%となりました。
◆不合理な格差がなくなると「期待する」45%、「期待しない」13%、「わからない」42%
次に、全回答者(1,000名)に、この法改正によって、派遣労働者と派遣先の正社員との間の不合理な待遇差はなくなると期待するか聞いたところ、「期待する」は44.7%、「期待しない」は13.3%、「わからない」は42.0%となりました。
「期待しない」と回答した人(133名)に、その理由を聞いたところ、「結局は差があるままだと思うから」(20代女性)、「それでは問題が根本的に解決しないから」(30代男性)、「解雇される原因になるから」(40代男性)、「制度を作っても罰則がなければ守られないと思うから」(50代女性)といった回答がありました。
◆正社員と同じ働き方をしている人(労働時間、業務の内容・責任がすべて同じと回答)は23%、そのうち80%以上が「ボーナス」「退職金」の支給対象外と回答
派遣労働者の働き方や待遇は、派遣先の正社員と比べて、現状どのようになっているのでしょうか。
まず、全回答者(1,000名)に、労働時間や業務の内容・責任が派遣先の正社員と同じか、異なるかを聞いたところ、【労働時間】と【業務の内容】、【業務の責任】の全項目で「派遣先の正社員と同じ」と回答したのは23.1%と、2割以上が派遣先の正社員と同じ働き方でした。
項目別でみると、【労働時間】では「派遣先の正社員と同じ」が54.0%、「派遣先の正社員とは異なる」が46.0%でした。また、【業務の内容】では「派遣先の正社員と同じ」が49.2%、「派遣先の正社員とは異なる」が50.8%、【業務の責任】では「派遣先の正社員と同じ」が30.5%、「派遣先の正社員とは異なる」が69.5%となりました。業務の責任については、派遣先の正社員と責任の度合いが異なるというケースが多いようです。
続いて、通勤手当やボーナス、退職金について、自身が支給の対象になっているか聞いたところ、【通勤手当の支給】では『対象となっている(計)』(「派遣先の正社員と同じ内容・基準で」と「派遣先の正社員と異なる内容・基準で」の合計、以下同様)が51.8%で半数以上となったのに対し、【ボーナスの支給】では『対象となっている(計)』が10.5%、【退職金の支給】では『対象となっている(計)』が8.4%でどちらも約1割にとどまりました。働き方における正社員との同異に着目してみると、正社員とすべて同じ人※でも、【ボーナスの支給】は15.7%、【退職金の支給】は12.0%と、8割以上がボーナスや退職金の支給対象になっていませんでした。
※【労働時間】【業務の内容】【業務の責任】の全項目で「派遣先の正社員と同じ」と回答した人
休憩室や食堂、駐車場といった施設について、自身が利用対象になっているか聞いたところ、【休憩室の利用】では『対象となっている(計)』が92.9%、【食堂の利用】では『対象となっている(計)』が81.0%、【駐車場の利用】では『対象となっている(計)』が65.1%でした。施設利用の点では、派遣労働者であっても多くが対象となっているものの、対象外となっているケースもあることがわかりました。働き方における正社員との同異に着目してみると、正社員とすべて同じ人※は、【駐車場の利用】では『対象となっている(計)』が77.7%と、全体に比べて差がみられました。
※【労働時間】【業務の内容】【業務の責任】の全項目で「派遣先の正社員と同じ」と回答した人
その他の制度として、慶弔休暇の取得や教育訓練、健康診断についても聞いたところ、【慶弔休暇の取得】では『対象となっている(計)』が51.4%、【教育訓練】では『対象となっている(計)』が50.7%、【健康診断】では『対象となっている(計)』が62.5%となりました。働き方における正社員との同異に着目してみると、正社員とすべて同じ人※は、【教育訓練】では『対象となっている(計)』が58.1%、【健康診断】では『対象となっている(計)』が67.4%と、全体に比べて差がみられました。
※【労働時間】【業務の内容】【業務の責任】の全項目で「派遣先の正社員と同じ」と回答した人
≪2015年改正労働者派遣法について≫
◆改正の内容 「詳細まで知っていた」は9%
全回答者(1,000名)に、派遣労働者の雇用安定やキャリアアップを図るため、2015年に労働者派遣法が改正されたことを知っていたか聞いたところ、「詳細まで知っていた」は全体で9.2%、世代別でみると、60代が0.0%と最も低く、次いで20代は5.6%、30代は9.7%でした。「詳しくではないが知っていた」も含めた認知率は、全体で60.9%となりました。
◆派遣期間3年以上の人への雇用安定措置 64%が未実施
派遣先の同じ職場(グループや課など)に継続して3年間派遣される見込みとなった場合、派遣労働者が働き続けることを希望するときは、派遣元(派遣会社)は雇用安定措置を講じる必要があることが2015年の労働者派遣法の改正で定められました。この改正に関し、雇用安定措置の実施状況や、希望状況・意向について質問しました。
まず、労働契約期間の定めがあり、派遣期間が3年以上の人(145名)の実施状況をみると、「いずれも講じられていない」が64.1%と、半数以上の人が雇用安定措置を講じられていない結果となりました。講じられた雇用安定措置では、「派遣元での無期雇用」が15.2%と最も高くなりました。
実施状況と希望状況を比べると、「派遣先への直接雇用の依頼」において、実施状況は7.6%、希望状況は14.5%と差がみられました。
雇用安定措置を希望した人(65名)のうち、24.6%が「いずれも講じられていない」と回答しており、希望しても対応されていないケースもあるようです。
また、労働契約期間の定めがあり、派遣期間が3年未満の人(532名)に、希望する雇用安定措置は何か聞いたところ、「新たな派遣先の提供」(38.9%)が最も高く、「派遣先への直接雇用の依頼」(32.3%)が続きました。
労働契約期間の定めがなく、雇用安定措置で無期労働契約になった人(66名)に、希望していた雇用安定措置は何か聞いたところ、「派遣元での無期雇用」が62.1%で最も高く、半数以上となりました。
雇用安定措置をいずれも希望しない、または、希望しなかった人(205名)に、その理由を聞いたところ、「その詳細がわからないから」(40代男性、期間の定めがあり・派遣期間3年以上)、「そのような話は初めて聞いたから」(50代女性、期間の定めがあり・派遣期間3年以上)、「今まで説明を受けたことがないから」(60代男性、期間の定めがあり・派遣期間3年以上)など周知が不十分なケースがみられました。他には、「正社員になりたいから」(20代女性、期間の定めがあり・派遣期間3年未満)、「無期雇用であっても正社員になれるとは限らないから」(30代男性、期間の定めがあり・派遣期間3年未満)、「形だけで条件が悪くなるだけだから」(40代女性、期間の定めがあり・派遣期間3年以上)といった回答もありました。
◆計画的な教育訓練の実施は25%
また、派遣元(派遣会社)は、雇用している派遣労働者のキャリアアップを図るため、計画的な教育訓練や希望者に対するキャリア・コンサルティングを実施する必要があることが2015年の労働者派遣法の改正で定められました。
全回答者(1,000名)に、自身が契約している派遣元(派遣会社)は、計画的な教育訓練を実施しているか聞いたところ、「している」は24.7%、「していない」は33.0%と、未実施が多い結果となりました。
≪2012年改正労働契約法について≫
◆改正の内容 「詳細まで知っていた」は11%
全回答者(1,000名)に、有期契約労働者が安心して働き続けることができるようにするため、2012年に労働契約法が改正されたことを知っていたか聞いたところ、「詳細まで知っていた」のは全体で11.4%、世代別にみると、60代が4.2%と最も低く、次いで20代は6.7%、50代は8.1%でした。「詳しくではないが知っていた」も含めた認知率は、全体で66.1%となりました。
◆無期転換申込権保有者のうち26%が申込み、そのうち25%が「無期労働契約への転換申込をしたが、無期労働契約にならなかった」と回答
2012年の労働契約法改正では、有期労働契約がくり返し更新されて通算5年を超えたときは、無期労働契約への転換申込権が発生し、労働者の申込みにより無期労働契約に転換できることが定められましたが、転換申込権の保有状況や申込み意向はどのようになっているのでしょうか。
まず、労働契約期間の定めがある人(677名)に、無期労働契約への転換について質問しました。
無期労働契約への転換申込権の保有状況をみると、「申込権がある」が20.5%、「申込権はない」が79.5%で、保有していない人が多数派となりました。
無期労働契約への転換申込権がある人(139名)に、転換の申込み状況を聞いたところ、「すでに申し込みをした(計)」のは25.9%でした。
また、無期労働契約への転換申込みをした人(36名)に、申込みの結果、どのようになったかを聞いたところ、「無期労働契約にならなかった」は25.0%となっており、違法な対応を受けているケースがあることがわかりました。
他方、無期労働契約への転換申込権がない人(538名)に、転換の申込み意向を聞いたところ、全体では42.9%、雇用不安の有無※でみると、雇用不安がある人のうち53.1%が、「無期労働契約への転換申込権が発生したら、申し込みたい」と回答しました。
※不安や不満への回答内容についての詳細は後述
無期労働契約への転換申込権が発生しても、申し込んでいない、または、申し込みたいと思わない人(410名)に、その理由を聞いたところ、「申し込んでも特に変わらないと思うから」(20代男性、申込権なし)、「申込みをしたら不利益を被りそうだから」(30代女性、申込権あり)、「給料が上がらない、退職金もない、ボーナスもない状況で無期にされてもメリットが薄いから」(40代男性、申込権なし)、「派遣会社からの紹介を断れなくなるから」(50代女性、申込権あり)など、申し込んでもメリットがない、マイナスになるといった回答が散見されました。他には、「やりたい事が他にあるから」(30代女性、申込権あり)、「長く勤めるつもりがないから」(50代女性、申込権あり)といった回答もありました。
続いて、労働契約期間の定めがない人(232名)に、無期労働契約になった時期やきっかけについて聞いたところ、「契約当初から」が31.0%、「2012年改正労働契約法による無期労働契約への転換の結果」が8.6%、「2015年改正労働者派遣法による雇用安定措置の結果」が28.9%でした。契約当初からというケースと並んで、雇用安定措置が講じられたことで無期労働契約に転換したというケースも少なくないようです。
≪その他、法律や制度などについて≫
◆36協定の締結の必要性 「詳細まで知っていた」は11%
会社が労働者に残業を命じる場合は、労働者の過半数を組織する労働組合(ない場合は労働者の過半数を代表するもの)との間で労使協定(いわゆる36協定)を結ぶことが必要ですが、全回答者(1,000名)に、このことを知っていたか聞いたところ、「詳細まで知っていた」は全体で11.4%、世代別でみると、20代が10.1%と最も低く、次いで30代は10.5%、40代は11.1%でした。「詳しくではないが知っていた」も含めた認知率は、全体で61.8%となりました。
◆産前・産後休業や育児休業、介護休業 取得が可能だと「詳細まで知っていた」は14%
派遣労働者であっても、産前・産後休業や育児休業、介護休業を取得できますが、このことを知っていたか聞いたところ、「詳細まで知っていた」は全体で13.9%、世代別でみると、50代が9.4%と最も低く、次いで60代は9.9%、40代は13.1%でした。「詳しくではないが知っていた」も含めた認知率は、全体で59.2%となりました。
また、自身や自身が契約している派遣元(派遣会社)の派遣労働者は、産前・産後休業や育児休業、介護休業を取得しているか聞いたところ、「している」は10.7%、「していない」は35.7%、「わからない」は53.6%でした。実際に休業を取得しているケースが少ない一方で、そもそも情報を得ていないというケースが半数を上回っており、まず取得実態の周知が課題となっていることがうかがえました。
◆法改正や制度についての認知経路 いずれにおいても「派遣元からの説明」は半数以下
労働に関する法改正や制度について知っていた人に、そのことを何から知ったか聞いたところ、「マスコミ(テレビや新聞報道など)」と並んで、「派遣元(派遣会社)からの説明」が高い結果となったものの、いずれにおいても「派遣元(派遣会社)からの説明」は半数以下となりました。
≪派遣労働者が働く上で感じる不満や不安について≫
◆「給料が上がらない」45%、「給料が安い」44%と、賃金面での不満や不安が多い
全回答者(1,000名)に、現在、派遣社員として働いていて感じる不満や不安を聞いたところ、全体では、「給料が上がらない」(44.7%)が最も高く、次いで、「給料が安い」(44.4%)、「いつ解雇されるかわからない」(27.6%)となりました。世代別でみると、全世代で「給料が上がらない」「給料が安い」が高く、年代に関わらず賃金面で不満や不安を抱えている人が多いことがわかりました。一方、「いつ解雇されるかわからない」は、50代が33.6%、20代が9.0%と、年代によって大きな差がありました。
[調査結果]
≪2020年4月施行の改正労働者派遣法など同一労働同一賃金について≫
◆2020年改正労働者派遣法の内容 「詳細まで知っていた」は5%
派遣労働者の同一労働同一賃金の実現に向けて、2020年4月に改正労働者派遣法が施行されます。
まず、全国の20歳〜69歳の民間企業に勤務する派遣労働者1,000名(全回答者)に、2020年4月1日に労働者派遣法が改正されることを知っていたか聞いたところ、「詳細まで知っていた」のは、全体で5.2%、世代別にみると、60代が1.4%と最も低く、次いで20代と50代は4.5%でした。「詳しくではないが知っていた」も含めた認知率は、全体で51.4%となりました。
◆不合理な格差がなくなると「期待する」45%、「期待しない」13%、「わからない」42%
次に、全回答者(1,000名)に、この法改正によって、派遣労働者と派遣先の正社員との間の不合理な待遇差はなくなると期待するか聞いたところ、「期待する」は44.7%、「期待しない」は13.3%、「わからない」は42.0%となりました。
「期待しない」と回答した人(133名)に、その理由を聞いたところ、「結局は差があるままだと思うから」(20代女性)、「それでは問題が根本的に解決しないから」(30代男性)、「解雇される原因になるから」(40代男性)、「制度を作っても罰則がなければ守られないと思うから」(50代女性)といった回答がありました。
◆正社員と同じ働き方をしている人(労働時間、業務の内容・責任がすべて同じと回答)は23%、そのうち80%以上が「ボーナス」「退職金」の支給対象外と回答
派遣労働者の働き方や待遇は、派遣先の正社員と比べて、現状どのようになっているのでしょうか。
まず、全回答者(1,000名)に、労働時間や業務の内容・責任が派遣先の正社員と同じか、異なるかを聞いたところ、【労働時間】と【業務の内容】、【業務の責任】の全項目で「派遣先の正社員と同じ」と回答したのは23.1%と、2割以上が派遣先の正社員と同じ働き方でした。
項目別でみると、【労働時間】では「派遣先の正社員と同じ」が54.0%、「派遣先の正社員とは異なる」が46.0%でした。また、【業務の内容】では「派遣先の正社員と同じ」が49.2%、「派遣先の正社員とは異なる」が50.8%、【業務の責任】では「派遣先の正社員と同じ」が30.5%、「派遣先の正社員とは異なる」が69.5%となりました。業務の責任については、派遣先の正社員と責任の度合いが異なるというケースが多いようです。
続いて、通勤手当やボーナス、退職金について、自身が支給の対象になっているか聞いたところ、【通勤手当の支給】では『対象となっている(計)』(「派遣先の正社員と同じ内容・基準で」と「派遣先の正社員と異なる内容・基準で」の合計、以下同様)が51.8%で半数以上となったのに対し、【ボーナスの支給】では『対象となっている(計)』が10.5%、【退職金の支給】では『対象となっている(計)』が8.4%でどちらも約1割にとどまりました。働き方における正社員との同異に着目してみると、正社員とすべて同じ人※でも、【ボーナスの支給】は15.7%、【退職金の支給】は12.0%と、8割以上がボーナスや退職金の支給対象になっていませんでした。
※【労働時間】【業務の内容】【業務の責任】の全項目で「派遣先の正社員と同じ」と回答した人
休憩室や食堂、駐車場といった施設について、自身が利用対象になっているか聞いたところ、【休憩室の利用】では『対象となっている(計)』が92.9%、【食堂の利用】では『対象となっている(計)』が81.0%、【駐車場の利用】では『対象となっている(計)』が65.1%でした。施設利用の点では、派遣労働者であっても多くが対象となっているものの、対象外となっているケースもあることがわかりました。働き方における正社員との同異に着目してみると、正社員とすべて同じ人※は、【駐車場の利用】では『対象となっている(計)』が77.7%と、全体に比べて差がみられました。
※【労働時間】【業務の内容】【業務の責任】の全項目で「派遣先の正社員と同じ」と回答した人
その他の制度として、慶弔休暇の取得や教育訓練、健康診断についても聞いたところ、【慶弔休暇の取得】では『対象となっている(計)』が51.4%、【教育訓練】では『対象となっている(計)』が50.7%、【健康診断】では『対象となっている(計)』が62.5%となりました。働き方における正社員との同異に着目してみると、正社員とすべて同じ人※は、【教育訓練】では『対象となっている(計)』が58.1%、【健康診断】では『対象となっている(計)』が67.4%と、全体に比べて差がみられました。
※【労働時間】【業務の内容】【業務の責任】の全項目で「派遣先の正社員と同じ」と回答した人
≪2015年改正労働者派遣法について≫
◆改正の内容 「詳細まで知っていた」は9%
全回答者(1,000名)に、派遣労働者の雇用安定やキャリアアップを図るため、2015年に労働者派遣法が改正されたことを知っていたか聞いたところ、「詳細まで知っていた」は全体で9.2%、世代別でみると、60代が0.0%と最も低く、次いで20代は5.6%、30代は9.7%でした。「詳しくではないが知っていた」も含めた認知率は、全体で60.9%となりました。
◆派遣期間3年以上の人への雇用安定措置 64%が未実施
派遣先の同じ職場(グループや課など)に継続して3年間派遣される見込みとなった場合、派遣労働者が働き続けることを希望するときは、派遣元(派遣会社)は雇用安定措置を講じる必要があることが2015年の労働者派遣法の改正で定められました。この改正に関し、雇用安定措置の実施状況や、希望状況・意向について質問しました。
まず、労働契約期間の定めがあり、派遣期間が3年以上の人(145名)の実施状況をみると、「いずれも講じられていない」が64.1%と、半数以上の人が雇用安定措置を講じられていない結果となりました。講じられた雇用安定措置では、「派遣元での無期雇用」が15.2%と最も高くなりました。
実施状況と希望状況を比べると、「派遣先への直接雇用の依頼」において、実施状況は7.6%、希望状況は14.5%と差がみられました。
雇用安定措置を希望した人(65名)のうち、24.6%が「いずれも講じられていない」と回答しており、希望しても対応されていないケースもあるようです。
また、労働契約期間の定めがあり、派遣期間が3年未満の人(532名)に、希望する雇用安定措置は何か聞いたところ、「新たな派遣先の提供」(38.9%)が最も高く、「派遣先への直接雇用の依頼」(32.3%)が続きました。
労働契約期間の定めがなく、雇用安定措置で無期労働契約になった人(66名)に、希望していた雇用安定措置は何か聞いたところ、「派遣元での無期雇用」が62.1%で最も高く、半数以上となりました。
雇用安定措置をいずれも希望しない、または、希望しなかった人(205名)に、その理由を聞いたところ、「その詳細がわからないから」(40代男性、期間の定めがあり・派遣期間3年以上)、「そのような話は初めて聞いたから」(50代女性、期間の定めがあり・派遣期間3年以上)、「今まで説明を受けたことがないから」(60代男性、期間の定めがあり・派遣期間3年以上)など周知が不十分なケースがみられました。他には、「正社員になりたいから」(20代女性、期間の定めがあり・派遣期間3年未満)、「無期雇用であっても正社員になれるとは限らないから」(30代男性、期間の定めがあり・派遣期間3年未満)、「形だけで条件が悪くなるだけだから」(40代女性、期間の定めがあり・派遣期間3年以上)といった回答もありました。
◆計画的な教育訓練の実施は25%
また、派遣元(派遣会社)は、雇用している派遣労働者のキャリアアップを図るため、計画的な教育訓練や希望者に対するキャリア・コンサルティングを実施する必要があることが2015年の労働者派遣法の改正で定められました。
全回答者(1,000名)に、自身が契約している派遣元(派遣会社)は、計画的な教育訓練を実施しているか聞いたところ、「している」は24.7%、「していない」は33.0%と、未実施が多い結果となりました。
≪2012年改正労働契約法について≫
◆改正の内容 「詳細まで知っていた」は11%
全回答者(1,000名)に、有期契約労働者が安心して働き続けることができるようにするため、2012年に労働契約法が改正されたことを知っていたか聞いたところ、「詳細まで知っていた」のは全体で11.4%、世代別にみると、60代が4.2%と最も低く、次いで20代は6.7%、50代は8.1%でした。「詳しくではないが知っていた」も含めた認知率は、全体で66.1%となりました。
◆無期転換申込権保有者のうち26%が申込み、そのうち25%が「無期労働契約への転換申込をしたが、無期労働契約にならなかった」と回答
2012年の労働契約法改正では、有期労働契約がくり返し更新されて通算5年を超えたときは、無期労働契約への転換申込権が発生し、労働者の申込みにより無期労働契約に転換できることが定められましたが、転換申込権の保有状況や申込み意向はどのようになっているのでしょうか。
まず、労働契約期間の定めがある人(677名)に、無期労働契約への転換について質問しました。
無期労働契約への転換申込権の保有状況をみると、「申込権がある」が20.5%、「申込権はない」が79.5%で、保有していない人が多数派となりました。
無期労働契約への転換申込権がある人(139名)に、転換の申込み状況を聞いたところ、「すでに申し込みをした(計)」のは25.9%でした。
また、無期労働契約への転換申込みをした人(36名)に、申込みの結果、どのようになったかを聞いたところ、「無期労働契約にならなかった」は25.0%となっており、違法な対応を受けているケースがあることがわかりました。
他方、無期労働契約への転換申込権がない人(538名)に、転換の申込み意向を聞いたところ、全体では42.9%、雇用不安の有無※でみると、雇用不安がある人のうち53.1%が、「無期労働契約への転換申込権が発生したら、申し込みたい」と回答しました。
※不安や不満への回答内容についての詳細は後述
無期労働契約への転換申込権が発生しても、申し込んでいない、または、申し込みたいと思わない人(410名)に、その理由を聞いたところ、「申し込んでも特に変わらないと思うから」(20代男性、申込権なし)、「申込みをしたら不利益を被りそうだから」(30代女性、申込権あり)、「給料が上がらない、退職金もない、ボーナスもない状況で無期にされてもメリットが薄いから」(40代男性、申込権なし)、「派遣会社からの紹介を断れなくなるから」(50代女性、申込権あり)など、申し込んでもメリットがない、マイナスになるといった回答が散見されました。他には、「やりたい事が他にあるから」(30代女性、申込権あり)、「長く勤めるつもりがないから」(50代女性、申込権あり)といった回答もありました。
続いて、労働契約期間の定めがない人(232名)に、無期労働契約になった時期やきっかけについて聞いたところ、「契約当初から」が31.0%、「2012年改正労働契約法による無期労働契約への転換の結果」が8.6%、「2015年改正労働者派遣法による雇用安定措置の結果」が28.9%でした。契約当初からというケースと並んで、雇用安定措置が講じられたことで無期労働契約に転換したというケースも少なくないようです。
≪その他、法律や制度などについて≫
◆36協定の締結の必要性 「詳細まで知っていた」は11%
会社が労働者に残業を命じる場合は、労働者の過半数を組織する労働組合(ない場合は労働者の過半数を代表するもの)との間で労使協定(いわゆる36協定)を結ぶことが必要ですが、全回答者(1,000名)に、このことを知っていたか聞いたところ、「詳細まで知っていた」は全体で11.4%、世代別でみると、20代が10.1%と最も低く、次いで30代は10.5%、40代は11.1%でした。「詳しくではないが知っていた」も含めた認知率は、全体で61.8%となりました。
◆産前・産後休業や育児休業、介護休業 取得が可能だと「詳細まで知っていた」は14%
派遣労働者であっても、産前・産後休業や育児休業、介護休業を取得できますが、このことを知っていたか聞いたところ、「詳細まで知っていた」は全体で13.9%、世代別でみると、50代が9.4%と最も低く、次いで60代は9.9%、40代は13.1%でした。「詳しくではないが知っていた」も含めた認知率は、全体で59.2%となりました。
また、自身や自身が契約している派遣元(派遣会社)の派遣労働者は、産前・産後休業や育児休業、介護休業を取得しているか聞いたところ、「している」は10.7%、「していない」は35.7%、「わからない」は53.6%でした。実際に休業を取得しているケースが少ない一方で、そもそも情報を得ていないというケースが半数を上回っており、まず取得実態の周知が課題となっていることがうかがえました。
◆法改正や制度についての認知経路 いずれにおいても「派遣元からの説明」は半数以下
労働に関する法改正や制度について知っていた人に、そのことを何から知ったか聞いたところ、「マスコミ(テレビや新聞報道など)」と並んで、「派遣元(派遣会社)からの説明」が高い結果となったものの、いずれにおいても「派遣元(派遣会社)からの説明」は半数以下となりました。
≪派遣労働者が働く上で感じる不満や不安について≫
◆「給料が上がらない」45%、「給料が安い」44%と、賃金面での不満や不安が多い
全回答者(1,000名)に、現在、派遣社員として働いていて感じる不満や不安を聞いたところ、全体では、「給料が上がらない」(44.7%)が最も高く、次いで、「給料が安い」(44.4%)、「いつ解雇されるかわからない」(27.6%)となりました。世代別でみると、全世代で「給料が上がらない」「給料が安い」が高く、年代に関わらず賃金面で不満や不安を抱えている人が多いことがわかりました。一方、「いつ解雇されるかわからない」は、50代が33.6%、20代が9.0%と、年代によって大きな差がありました。