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アジア各国のホワイトカラー人材紹介市場の動向 2019年7月〜9月

世界11ヵ国で人材紹介事業を展開し、東南アジアでは最大級の規模(※1)を誇る株式会社ジェイ エイ シー リクルートメント(代表取締役社長:松園 健)は、この度、2019年第3四半期のアジア各国のホワイトカラー人材紹介市場の動向を纏めましたので、お知らせいたします。
(※1) 自社調べ(アジアで人材紹介事業を展開する同業他社の売上規模を比較)

※以下リンクより、より読みやすいPDF版のプレスリリースをご参照ください。
https://www.atpress.ne.jp/releases/196966/att_196966_1.pdf


【サマリー】
・2019年第3四半期は、ベトナムとインドが昨年同期比で求人増
・第3四半期から米中貿易摩擦の影響によりシンガポールや中国などで企業が採用を控える傾向にある国が目立ち始めた一方で、タイでは貿易摩擦の影響により2020年から求人が増加する見通しも


■■マレーシア■■
市場は引き続き慎重姿勢ながら、多くの企業が1年先を見越した市場開拓や人材育成などに意欲

【求人数】
対前年四半期比 98%
対前四半期比 100%
JAC Recruitment マレーシア法人社長 大西 信彰

5月にVistage-MIER(マレーシア経済研究所)が発表したCEO Confidence Index(経済動向信頼感指数:DI指数に100を加えた指数、CEO回答数は670)によると、第3四半期は90.2ポイントとなり、2019年第2四半期に続き100ポイントを下回りました。2018年第1四半期以降のピークであった同第3四半期の107.1ポイント以降、4四半期連続で下落しています。売上げ増加を見込んでいたCEOの比率も51%となり、前年同期の59%より減少となっています。このような状況下、同研究所はCEOによるこの先12ヵ月の投資注力項目として、市場開拓、人材採用・育成、売上げ活性化の3点を挙げています。当社と取引がある10数社の製造業企業幹部にヒアリングしたところ、米中貿易摩擦による直接の影響(受注増減、生産移管)は特に見られません。

【企業の採用動向】
求人数は前期比では大きな変動はなく、前年同期比で2%の減少となりました。このうち日系企業が微減となった一方、外資系企業では前期比17%の増加となりました。要因は以下の通りです。
・職種では法務/コンプライアンス、ファクトリーオートメーション・ロボティクスに関わる技術者の求人が増加。
・昨年は低調していた建築・建設業界の求人が増加。昨年の政権交代後、鉄道や都市開発等のプロジェクトが仕掛かりとなっていたが、今年に入り徐々に動き始め、それに伴う求人が活発化。
前期同様、BPO/SSC(シェアードサービスセンター)業界についても引き続き引き合いが強い。
・プロジェクトごとに求められる多言語人材を短期間で確保する必要があるため需給が逼迫。結果、求人オファー時の年収も20-30%増加するケースが目立つ。
・電気電子部品の企業が多いペナンで特に求人の減少が目立ち、外資系を中心に年内一杯採用を凍結する動きが出ている。

【求職者の動向】
マレーシア人の登録者の動きに大きな変化はありませんが、景気の動向を気にしながら慎重に転職活動している様子が伺えます。同じく日本人の登録者数にも大きな変化はありませんが、この1年ほど日本在住の50〜60代男性で積極的に転職活動を行う方々が増加しているのが目立った動きと言えます。


■■シンガポール■■
米中の貿易摩擦の影響により製造業は低迷気味
転職希望者の登録数に影響はなし

【求人数】
対前年四半期比 82%
対前四半期比 93%
JAC Recruitment シンガポール法人社長 イルマス 純

今月中旬に発表予定の2019年第3四半期の実質GDP(国内総生産)速報値では1.5%増と予想されており、景気後退は回避される見通しです。一方で、米中貿易摩擦の影響により製造業が低迷。4月から8月まで4ヵ月連続で前年割れとなり、特に電子部品業界は不調です。伸びた業界としては生物医学が10.6%増、化学業界が2.7%増となりました。また同時期に通貨庁が金融政策を発表しますが、数ヵ月以内に総選挙が行われる見通しもあり、大型の景気政策を打ち出す可能性が高いといわれています。

【企業の採用動向】
米中貿易摩擦の影響により、製造関連の中でも特に電気電子部品業界が採用を控えたことにより、全体の求人数は前期比・前年同期比では減少となりました。一方で、経理、人事、総務といった管理部門、IT業界(特にエンジニア、プロジェクトマネージャー、営業)に関しては前期に引き続き求人が増加傾向にあります。アジア地域で成長を図るために現地化を進めている企業が多く、特にアジア地域の統括機能を持つ企業からシンガポール人および永住権保持者の採用依頼が増加しています。日本人向けの求人については、シンガポール国内だけでなく、周辺のアジア各国向けの管理ポジションなどの求人依頼も受けています。

【求職者の動向】
登録者数に大きな変動はありませんが、常に良い条件の転職先を探す情報収集目的で日本語を話す人材と一度当社に登録をしたシンガポール人による登録者が増加傾向にあります。日本人求職者・転職希望者の登録状況としては、例年平均を上回る登録となっており、専門職・管理職人材の登録が引き続き見られます。現在の香港での政治的状況から、香港・シンガポール両方を検討していた求職者がシンガポールを第一希望とする傾向もあります。


■■タイ■■
自動車業界の不調が、全体の採用動向に影響

【求人数】
対前年四半期比 88%
対前四半期比 112%
JAC Recruitment タイランド法人社長 山下 勝弘

民主的な手法で生まれた軍政が組閣からさまざまな改革を繰り返している中、現在予算審議の直前となっています。予算が通れば長らく止まっていた新規公共投資が再開され、景気がプラスになることが期待されています。全体的な景況感としては、2015年以来の悪化の一途をたどっており、特にタイの好景気を牽引してきた自動車業界に全く勢いがない状況です。

【企業の採用動向】
自動車業界が低迷したことで対前年同期比では求人数は減少しましたが、空調機器業界は非常に好調でサプライヤーも含め工場はフル稼働しており、同業界からの直近の採用ニーズは旺盛で対前期比では増加しました。またIT業界も景気の影響を受けてはいるものの、業績と求人数の伸びは堅調です。一方で、米中貿易摩擦の影響などで2020年には多くの中国企業がチョンブリエリアに進出する見通しですが、そうなると現状1%前後の失業率で売り手市場のタイで人材不足がさらに深刻化し、採用難に追い打ちがかかることが考えられます。
一方でアユタヤエリアからは企業が徐々に撤退しているため、2011年の大洪水時に続き、製造業に従事する人はチョンブリへ、オフィス系ホワイトカラー職を求める人はバンコクへと、多くの人材の大移動が起こる可能性もあります。

【求職者の動向】
タイ人の求職・転職希望者の動きは米中貿易摩擦に影響されることはなく、失業率は依然として1%前後と周辺国と比較しても売り手市場の状態が続いています。また、景気は停滞気味であるものの、タイ人の給与は年々上昇しており、通常1:3程度のタイ人と日本人の給与格差も、非常に優秀なタイ人の人材には平均的な日本人よりもはるかに高い給与でオファーが出る事も増えてきています。今に始まったことではありませんが、どの分野においても格差が大きい社会であり、そこを踏まえた採用活動をすることが企業に求められます。具体的には「本当に優秀な人物の見極め」をベースに、「抜擢」「柔軟な給与の提示」が必要であると言えます。


■■インドネシア■■
消費財関連企業は引き続き採用ニーズ高

【求人数】
対前年四半期比 92%
対前四半期比 123%
JAC Recruitment インドネシア法人社長 小林 千絵

2019年のインドネシアは7月から11月まで祝日はすべて週末に重なり、振替休日がないため企業は十分な活動期間を得られることが考えられます。しかしながら、10月のジョコ大統領第2期目の新政権発足前に国会が出した現国会会期中に現議員に有利な法案をめぐり、各地で9月末から10月にかけてデモが繰り返されました。市場シェアの90%を誇る日系自動車市場は、米中貿易摩擦の影響により低迷し1月〜8月の累計で前年比13%減程度の状態が続いています。しかしながら、上位中間層の消費意欲は引き続き高く、内需はまだ伸びることが予想されます。

【企業の採用動向】
第2四半期に引き続き、人口増にともなう消費の増加が期待されていることから、不動産や消費財、サービス産業を中心に日系企業の採用活動は順調に続き、求人数は対前四半期比で23%増となりました。
さらに、ここ数年の政権続行を目指し、加速したインフラプロジェクトにともなうインフラ業界からの求人も増えています。日本語人材および日本人は変わらず売り手市場の状態が続いています。
非日系では製造業、商社、消費財関連企業で引き続き採用意欲は高い状態が続いています。

【求職者の動向】
昨今の企業や社会のIT化の加速にともない、多くのIT・エンジニア人材が活発に転職・就職活動を行っている傾向があります。中でも、多くのミレニアル世代の方々がインドネシアのオンライン配車大手GOJEK社に代表されるデジタル企業への興味が引き続き高いです。ジョコ第二期政権では賃金の上昇も落ち着き、人材育成にコミットを求められる局面が増えることが予測されています。


■■ベトナム■■
世界経済が減速傾向にある中、成長が続くベトナム

【求人数】
対前年四半期比 127%
対前四半期比 79%
JAC Recruitment ベトナム法人ディレクター
Le Thuy Dieu Uyen(レー・トゥイ・ユー・ウィン)

ベトナム統計総局によると、2019年第3四半期のGDP成長率は7.31%と予測されています。米中貿易摩擦によりアメリカが中国からの輸出に対する関税を高めたことで、他国からベトナムへの投資が加速する中、特に中国企業によるベトナム工場への投資が増加しました。日韓関係の悪化の影響でアジアの経済は減速傾向にありますが、ベトナム国内では需要の増加が経済成長を押し上げ、特に製造業が堅調な成長を維持しており、2019年第4四半期も高成長が続くことが予想されています。

【企業の採用動向】
これまで日系企業にベトナム人を紹介する際はアシスタント職の人材が中心でしたが、昨今の経済成長にともない高度人材が求められる傾向が強くなっています。業界によって求められる人材は異なり、製造業では管理職、商社ではベトナム内需を狙うためベトナム国内にネットワークを持つ人材、サービス業では高度な専門性を持つ人材を求めています。
ベトナムで事業を行う企業では中間管理職の人材不足が課題で、関連ポジションの求人の依頼が増加傾向にあります。また、好調な製造業が全体の求人数の増加の要因となり、加えて不動産やIT業界の求人も増えています。世界的なトレンドと同様に、国籍を問わない採用も増えつつあります。CFOやCOOなど経営の中核を担う人材のニーズも増え、経営幹部経験者からの問い合わせが増加傾向にあります。

【求職者の動向】
中国からメーカー関連の部品などの裾野産業や家具業界の進出企業が増加していることで、ベトナムでは新規進出企業数が今後1年で2倍、さらに電気、電子業界での高性能な部品の製造関連企業においては3倍に拡大することが予想されています。これらの急成長産業から人材ニーズが増加していることにともない、同業種での転職を目指す方々の登録が増えています。日系企業で働いていたベトナム人の中には「給与制度や昇進制度に魅力を感じない」、「(日本人駐在員が優先されることから)上級ポジションへの昇格は難しい」などの理由により、転職をする人が増えつつあります。


■■中国(上海・広州)■■
景気の先行き不透明性により、採用を様子見する状況が継続

【求人数】
対前年四半期比 95%
対前四半期比 98%
JAC Recruitment 上海法人総経理 小梁川 舞香
JAC Recruitment 広州法人総経理 小川 慎史郎

中国では依然、景気減速が続いている状態です。投資抑制策の影響、地方経済の低迷、それに引きずられた自動車市場の不振を主因に、小売の売上高も伸び悩んでいます。また、9月に実施された米国の制裁関税拡大が響き、対米輸出額は前年同月比22%減と、8月よりも大幅な落ち込みを記録しました。全体の輸出額も3%減とマイナス幅が拡大。景気減速や不透明感を背景に消費意欲の低迷が続き、中国自動車工業協会が発表した新車販売台数は15カ月連続で前年実績を下回りました。

【企業の採用動向】
米中貿易摩擦などを発端とする景気の不透明感を背景に、引き続き採用に慎重な企業が多く求人数は微減となりました。当社で受ける求人の目的の多くは欠員補充です。人手不足の状況に変わりはありませんが、採用基準が上がり優秀な人材の採用ができるまでは既存の人材で兼任させるという動きも増えてきています。また、貿易摩擦の長期化・コストの増加に伴い中小規模の製造業やOA・アパレル関連の企業は東南アジアへ拠点を移す動きが出ている一方で、広東省の日系自動車関連は好調です。また、年々増加する医療市場は製薬業界の市場開放が進む中、国内製薬企業が売上を拡大しています。

【求職者の動向】
企業側同様、景気の不透明性が求職者の転職意欲にも影響を与えており転職希望者の活動意欲はあまり高くない状況です。一方で、一部の日系企業では業績不振による人員整理や工場移転・オフィス移転により、転職活動を始める方々による登録が増えている傾向です。依然として、待遇面および事業内容の優位性を背景に日系企業から中国民営企業への転職する動向は歯止めがかからず、長期にわたり日系企業の環境で活躍した日本語人材の幹部職員ですら日系離れが進んでいます。
一方、日系企業では非日本語人材のスペシャリスト採用を進めている企業が増加傾向にありますが、日系企業の雰囲気や就業制度が合わないという理由で採用は難航しているため、就業制度など、待遇が良い欧米や民営企業をベンチマークする必要があります。


■■香港(中国香港特別行政区)■■
抗議活動と米中貿易摩擦 採用市場における影響拡大

【求人数】
対前年四半期比 100%
対前四半期比 92%
JAC Recruitment 香港法人社長 渥美 賢吾

第2四半期から第3四半期にかけて、香港における抗議活動は更に深刻化が増しています。
そもそもの発端となった条例については、9月4日に撤回のコメントが発表されたものの事態が沈静化する兆しは無く、企業活動にブレーキがかかりやすい状況が継続しています。香港貿易発展局(HKTDC)は9月23日、2019年第3四半期(7〜9月)の輸出指数が前期から9.9ポイント下落し、27.4ポイントだったと発表しましたが、各企業では以前にも増して悲観的な見通しをしている様子がうかがえます。

【企業の採用動向】
抗議活動が収束する目処が立たない状況と、米中貿易摩擦の影響深刻化もあり、急ぎの案件以外は一旦採用を停止し様子を見る、もしくは来年以降での検討に延期する企業が増加しています。特に、小売・飲食業界は閉店も相次いでおり、事業への影響はさらに大きくなっています。金融業界においては、オフィス閉鎖等の動きは少ないものの、採用の見直しを検討する企業が増加。香港では例年7月〜9月は非常に採用が活発になる時機ですが、今年は8月以降に求人の勢いが大幅に減速しました。一方、採用活動を継続している企業においては、人材の流動性が低下したため人材確保に難航するケースも発生しています。

【求職者の動向】
社会情勢が不透明なため転職活動を控えて様子見をする人が増加傾向にあります。また、抗議活動に積極的に参加している層は自身の転職への優先度が下がっており、全体的に人材の流動性は低下しています。
例年、年末(特に12月)にかけては、ボーナスや給与+ボーナスのダブルペイの支給を待つ人々が増え、転職市場では求職者が少なくなりますが、第3四半期の時点で既に年末のように動きがない状況である一方、家族の安全を考慮し国外への転職を検討する候補者が増加傾向にあります。金融業界においては、重要市場である香港に関心を寄せる国外在住者も継続して存在しますが、ビザの取得手続に要する時間が以前よりかかるケースが散見されます。


■■韓国■■
世界景気減速や米中貿易摩擦、日韓関係悪化等が採用動向に影響

【求人数】
対前年四半期比 63%
対前四半期比 76%
JAC Recruitment 韓国法人社長 土山 雄一郎

7月25日、韓国銀行が発表した2019年第2四半期(4月〜6月)のGDP成長率は、対前年四半期比で2.1%となりました。対前期比で回復基調にありますが、依然として米中貿易摩擦や世界景気の悪化より設備投資の不振や民間消費の鈍化が見られます。8月5日、韓国の雇用労働部は2020年度最低賃金を2.87%増の時給8,590ウォンと決定しました。1988年に最低賃金法が施行されて以来、過去3番目に低い引上げ率となりました。

【企業の採用動向】
韓国経済の低迷に加え、輸出管理強化や日本製品不買運動は在韓日系各社に一定の影響を与えており、第3四半期の求人数は対前期比で24%減、対前年四半期比で37%減と大幅な減少となりました。
特に一般消費者向けの事業を展開する在韓日系企業の業績への影響は大きく、それらの企業が採用を控えています。また半導体関連企業は、半導体輸出の不振により設備投資に一服感が見え、同じく採用を控える傾向となっています。

【求職者の動向】
秋夕(チュソク)休暇後に積極的に転職活動をする方が多くなるのが例年の動向ですが、景気低迷の長期化が要因となり、韓国人の転職希望者の動きは全体的に鈍化しています。
一方で新卒者、新卒予定者は財閥大手企業による秋の公開採用が始まったため、積極的に就職活動を始めており、新卒採用を検討する会社は財閥大手企業が採用競合会社になる事例が増えています。当社が行った求職者向けの調査結果では、会社選択時に重視する要素の上位に「企業の安定性」が挙げられています。優秀な新卒社員を採用するためには、給与条件の見直しだけでなく、企業の安定性を説明することは有効な手段となります。


■■インド■■
経済の停滞により採用活動に落ち着きを見せるが、コア人材の採用は引き続き注力

【求人数】
対前年四半期比 106%
対前四半期比 85%
JAC Recruitment インド法人社長 小牧 一雄

インド経済はこの10年平均8%近くの成長率を維持していましたが、最近になり約5%の成長率とやや鈍化し、低迷気味となっています。主な原因としては排ガス規制による自動車の買い控え、ノンバンクの経営不振による貸し渋り、自動車販売の不振により自動車に関連する企業の収益悪化など悪循環に陥っている状況です。
しかし、これは一時的な経済成長の鈍化という見方が大多数であり、30年までに世界第三位の経済大国を目指すための高速鉄道整備計画など、インフラ整備の推進や外資規制緩和、税率の引き下げ、「Make in India」を掲げ世界の製造業のハブ化を目指すなど非常に大きなポテンシャルを秘めており、経済改革を推し進めていくことで再び高い経済成長率を取り戻すことができると考えられます。

【企業の採用動向】
インド経済の鈍化により積極的な採用を控え、様子見の企業が見られます。落ち着きを見せているインド経済ですが、一方で来年以降の経済回復を見越し、このタイミングで組織全体の強化を図りたいと考える企業も多く見られ、マネージャークラスの求人が増加傾向にあります。これは、経営と現場とのギャップを改善しようと考え、経営目線でビジネスを捉えることのできる人材を採用したいと考える企業の採用背景によるものです。
全体的な転職市場の傾向としては、日系企業のインドの進出をサポートするコンサルティング業界、また自動車業界を中心とした部品メーカーの人事、経理、品質管理、日本語スピーカーなどの求人が目立ちました。

【求職者の動向】
日本人の求職者の動向としては他国と併願してインド国内での就業を検討される方が多いですが、最近ではインドのみを希望する候補者も少しづつ増加傾向にあります。その理由としては英語力を生かせる仕事に就きたい、経済発展が著しい環境下に自ら身を置くことで自己成長をしたいと考える日本人求職者が増加していることが挙げられます。インド人においては10月にインドの新年を祝うお正月として重要な祝日のディワリがあり、またこの時期にボーナスが支給されることから、採用マーケットが一時的に落ち着きを見せますが、ディワリ後は再び転職マーケットが活発化します。インド人の傾向として給与アップ、ポジションアップなどの条件および待遇面の改善を転職によって実現しようと考えます。
インドにおける年次昇給率が約10%程度であり、転職の際の給与上昇率が20〜30%であることから、転職をした方が年収が上がるという環境が大きく起因している状況です。

■■日本■■
景気の悪化が顕著だが、成長分野への投資には虎視眈々

【求人数】
対前年四半期比 73%
対前四半期比 102%
(日本企業の海外事業関連求人)
JAC Recruitment(日本) 海外進出支援室 室長 佐原 賢治

日銀が9月に発表した短観によると、大企業の製造業の景気判断を示す指数は前回の調査より2ポイント低下し、更に先行きに対しては5ポイント低下しています。また中堅企業、中小企業と企業規模が小さくなるほど先行きに向けた不安感が数値上で顕著であり、製造業における景気の冷え込みはこれから本格化するとの見方もあります。また、4-6月期の対外直接投資は前四半期比66%、前年同時期比91%と大幅に低下しました。一方、昨年から大幅に受注高を減らした工作機械には依然として国内および新興国での底堅い需要があること、また5G(第5世代移動通信システム)関連部品の増産に向けた大型投資の計画も目白押しで、決して企業の投資活動が全面的に停滞しているわけではありません。

【企業の採用動向】
上記の影響もあり、当社が受ける日本企業の海外事業関連求人の件数も前年同期比で73%と減少しました。そのような状況で、製造業各社の求人には幾つかの傾向が見られます。
まず顕著なのが、IoTなどを用いた国内工場の効率化を進めるための要員募集です。これは国内の生産性向上や人手不足対応のほか、国内のマザー工場で開発された技術を海外工場に移管することを企図するものも増えています。次に目立つのは、一般消費財の業界で行われている海外への拡販に伴うグローバルロジスティクス要員の募集で、有力な候補者を巡って獲得競争が熾烈な状況です。また、米中貿易摩擦対策の長期化に伴い、ベトナム等ASEANへの生産移管が行われる一方、中国国内の販売を強化するための要員(駐在要員)募集が増加しています。
これらの動きから読み取れるのは、各社は景気低迷の中においても成長分野や将来の成長戦略に対しては人的資源への投資を継続しているということであり、その対象となる高度なスキル、経験を持つ人材に関しては、一層獲得競争が熾烈であるということです。

【求職者の動向】
7-9月の新規求職者(海外事業経験者の登録者)数は、前四半期比112%と増加しました。当社の主要な登録者層である35歳以上の人材が一層流動化しています。しかし各社の動向に不透明さが見られる中、求職者の動きは慎重で、特にAIやIoTなど最先端分野や海外勤務などの知見・経験を有する人材には選択肢も多いことから獲得の難度も高いままです。全般的に、現在の勤務先に留まることを選択肢としたまま慎重に転職活動をする転職希望者が増えていることから、採用企業においては募集から入社までのリードタイムを長めに想定しておく必要があります。


◆株式会社ジェイ エイ シー リクルートメントについて◆
1988年設立。スペシャリストや管理職の人材紹介に特化し、企業と人材を一人のコンサルタントが同時に担当する「両面型」のビジネスモデルとして国内最大規模の東証一部上場企業です。国際ビジネス経験をもつ人材の紹介も強みの一つで、日本国内では外資系企業や日系企業の海外事業などのグローバル領域の売上が全体の50%以上を占めています。外資系企業の人材紹介に特化したJAC International、ジョブサイトの「キャリアクロス」を運営するシー・シー・コンサルティング、英国、ドイツおよびアジア8ヵ国で人材紹介業を展開するJAC Recruitment Asia Ltdのグループ会社を傘下に、世界11ヵ国、25拠点で事業を展開するグローバル企業です。

日本 : http://corp.jac-recruitment.jp (コーポレートサイト)
http://www.jac-recruitment.jp (転職サイト)
アジア: http://www.jac-recruitmentasia.com/
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