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IEEEがプレスセミナーを開催 『IoT・エッジ・5G・スマートシティーを読み解く』

IEEE(アイ・トルプルイー)は、2019年12月3日(火)に『IoT・エッジ・5G・スマートシティーを読み解く』と題したプレスセミナーを開催しました。

画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/201585/LL_img_201585_1.jpg
講演する西先生

今回は、IEEEメンバーで慶應義塾大学理工学部の西 宏章教授にご登壇いただきました。あらゆるモノやコトがインターネットにつながる環境を指す『IoT(Internet of Things)』。クラウドよりもユーザに近いネットワーク設備でデータ処理を行う『エッジコンピューティング』もしくは『フォグコンピューティング』。これまでの容量10倍、遅延は1/10に、端末数も100倍化する技術と言われる『5G』。こういった“バズワード”の解説に加えて、西先生が実際に行っている『スマートシティー』の例を紹介して頂きました。

『スマートシティー』とは、情報通信技術を活用してインフラを高度化、高効率化し、その結果、地域全体を効率化したり、生活しやすくしたりすること。西先生によれば、『インフラの情報化と融合化』ですが、明確な技術標準がまだなく、現在まさに世界中で議論されている最中だと言います。

そこで、西先生が注目をしているというのが『エッジ』。これと対比をするのは、地球規模でグローバルなサービスが可能な『クラウド』ですが、例えば、遠隔手術や自動運転を「クラウドで行います」と言われると「なんだか怖い」と思ってしまうのが、今の時代では正直なところ。そこでサービスの範囲を、もう少し街や家、より端末に近いパーソナルエリアで行うIoTに適しているというのが『エッジ』なのだと解説します。『スマートシティー』を実現するにあたり、これまでの『クラウド』で行えることもありますが、今後は『エッジ』と使い分けることで、より適材適所なサービスが行えると訴えました。

『5G』についても、前述のように飛躍的な技術革新のように言われたり、聞こえたりしますが、その5Gを使って、どんなサービスやシステムを行うかが重要だと、西先生は立ち返ります。『エッジ』や『5G』といった技術は、どこでどのように使うかを把握して、その目的にマッチさせることで『スマートシティー』が見えてくると説きます。

西先生は、現在、さいたま市で『ミソノ・データ・ミライ』というプロジェクトに『エッジ』を実験的に導入しています。具体的には『情報銀行』を運用。このエリアに住む家にセンサーを設置したり、位置情報を取得したり、住民の生活や行動と連携させています。ペットを購入する際や、自転車を買う時にもタグを配布し所有者の行動情報を分析しました。また、大型ショッピングセンター『イオンモール』において、モール内を歩いたり、体組成計で測ったり、食料品や日用品を購入したデータも預かっています。そうして、それぞれの人に役立つ情報をフィードバックし、より快適な生活ができるようにアドバイスや提案をしつつ、個人の様々なデータから地域全体の利益に還元していると紹介しました。

さいたま市のこの取り組みは、NHK『クローズアップ現代』のFacebookページでも取り上げられています。個人が情報を『情報銀行』に預けて管理してもらい、それを企業に売って、情報提供者には見返りを出すという仕組み。それをさいたま市はイオンと実施しています。

また、西先生は、“情報インフラが進んだ先”にある危惧についても指摘しました。例えば、ネットで商品を購入すると、隣町からトラックで配送されて、支払いはオンラインで終わっており、商品は購入者の手元に無事に届きます。ですが、この商取引において、商品購入者の住んでいる町に税金はいっさい落ちません。また現在はガソリン車はガソリンを給油する際にガソリン税を負担していますが、今後、電気自動車が普及すると、自宅で充電することや、電気自動車に充電された電気を自宅で使うことが可能になります。そうなるとどこに税金をかければいいのかわからなくなります。
このように今後情報インフラが進んだときに行われる商取引の形によっては、自治体等がうまく税収をコントロールできなくなるといった事態が増える可能性があると訴えます。

情報も重要なインフラであるなら、やはり地域で住民の情報を守り、管理して、課税できるようなシステムを構築していくべきだと、西先生は言います。住民の情報は、重要なプライバシーも含みますが、それは『エッジ』を使えば匿名化することも可能となり、これをうまく利用すれば地域で有効利用できるという解説もしました。

そもそも『スマートシティー』を作れば何がよくなるのか。そこで西先生が紹介するのは『ソーシャルキャピタル指数』という数値です。端的に言えば、地域住民の結びつきの強さ度合い。例えば、出かけるときに近所に声をかける、地元のお祭りに参加するといったことをアンケートから数値化します。また一方で、そのエリアに住む人に遠隔治療を行って改善した検査項目数も出します。『ソーシャルキャピタル指数』を横軸にして、改善した検査項目数を縦軸にすると、双方の数値が高いところほど、医療活動がうまくいくと言います。これを『スマートシティー』で様々なサービスを提供して双方の数値を高めるよう介入することで、住民の健康度がみるみる上がる。
住民たちが本質的に連携し、健康になれば、社会そのものがよくなっていく。これなら市町村も「スマートシティーは良さそうだからやってみよう」となるはずだとも言います。

つまり、『スマートシティー』を作るのには技術的に必要な問題解決もありますが、それは表層的なことでもあって、実は「社会問題の解決」も重要だと、西先生は見ています。『IoT』や『エッジ』や『5G』で技術的な問題は解決できるかもしれませんが、隠れた社会的な問題の解決と一緒に進めていかないと『スマートシティー』は実現できないと、西先生は実感を込めて述べました。
たくさんの情報を集める必要はあるが、それを使えるデータだけにして、どんどん人にサービスとして還元します。そこで再度、情報を集めて、指標に照らし合わせて、また還元していく。つまり情報・データを“まわす”ことで、人や地域に合うようにチューニングしていくことが、サステナブル=持続可能なインフラになると、西先生は強調します。

今後10年、15年、20年が経てば『IoT』の状況は固まってくるでしょう。より具体的な『スマートシティー』の形も、海外においてかもしれませんが、見えてくるはずです。そうなったとき、日本はどうすべきか。それを考える時期が来ています。今、西先生は各企業に相談を受けると、こう言います。「なぜ今、『エッジ』をしないのですか?」と。


■IEEEについて
IEEEは、世界最大の技術専門家の組織であり、人類に恩恵をもたらす技術の進展に貢献しています。160カ国、40万人以上のエンジニアや技術専門会の会員を擁する非営利団体で、論文誌の発行、国際会議の開催、技術標準化などを行うとともに、諸活動を通じて世界中の工学やその他専門技術職のための信用性の高い「声」として役立っています。
IEEEは、電機・電子工学およびコンピューターサイエンス分野における世界の文献の30%を出版、2,000以上の現行標準を策定し、年間1,800を超える国際会議を開催しています。

詳しくは http://www.ieee.org をご覧ください。
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