国内初!オフィス環境改善による座りすぎ解消効果を確認
[20/02/13]
提供元:@Press
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公益財団法人 明治安田厚生事業団体力医学研究所(本部:東京都新宿区、理事長:中熊 一仁)、株式会社オカムラ(本社:神奈川県横浜市、代表取締役:中村 雅行、以下 オカムラ)、株式会社電通国際情報サービス(本社:東京都港区、代表取締役社長:名和 亮一、以下 ISID)の3社で2018年10月より共同で開始したオフィス環境改善による働き方改革に関する実証実験結果について報告しました。またこの結果が、環境と公衆衛生分野の国際学術雑誌「International Journal of Environmental Research and Public Health」に掲載されました。
近年、誰もが自然と健康的な生活を送ることができる環境づくりである「0次予防※1」が注目されています。本実証実験では、オフィスワーカーの重要な健康課題である「座りすぎ※2」に着目し、オフィス環境改善による0次予防の有効性を明らかにしました。さらに、人工知能(AI)を用いた画像解析技術によりオフィス内の活用スペースを特定し、今後のオフィス環境づくりに役立つ知見を示しました。
※1 0次予防:人々が健康的に生活することができる環境やまちづくりに取り組むこと。主に個人の生活習慣改善を指す「1次予防」の前段階として位置付けられる。
※2 座りすぎ:オフィスワーカーの新たな健康リスク。長時間継続して座り続けていると、生活習慣病を発症しやすく、死亡リスクが増加する。
■結果のポイント
◎オフィス環境改善により、座りすぎが約40分/日減少
◎座りすぎ解消に伴い、立ったり歩いたりという低強度の身体活動が増加
◎AIを用いた画像解析で、入口近くや窓際の共用席、回遊型通路の活用を確認
本研究の成果は、「International Journal of Environmental Research and Public Health」に2020年1月1日付で公開されました。本研究は、文部科学省科学研究費補助金の助成を受けて実施されました。なお研究実施の際には、利益相反に該当しないよう十分配慮しました。
<論文>
題名:Impact of activity-based working and height-adjustable desks on physical activity, sedentary
behavior, and space utilization among office workers: A natural experiment
(アクティビティベースドワーキングと上下昇降デスクがオフィスワーカーの身体活動、座位行動、スペース活用に与える影響:自然の実験)
著者名:Jindo T, Kai Y, Kitano N, Wakaba K, Makishima M, Takeda K, Iida M, Igarashi K, Arao T
書誌情報:International Journal of Environmental Research and Public Health, 17(1), 236. 2020
■実験のねらいと概要
近年、「働き方改革」や「健康経営」が喫緊の経営課題となっており、その一環として様々な施策をオフィスに導入する企業が増加しています。オフィス施策は、そこで働く全ての人に対して影響力を持つため、健康無関心層をも巻き込む「0次予防」としての効果も期待されます。特にオフィスでは、長時間座っている「座りすぎ」による健康影響が指摘されており、効果的な施策が求められています。しかし、オフィス施策と座りすぎの研究は欧米諸国中心に行われており、世界一座っている時間が長いといわれる我が国からの知見はありませんでした。
本実証実験では、ABW(Activity Based Working)という新しい働き方を取り入れたオフィスリノベーションに注目しました。ABWとは「従業員がその時の仕事内容に適した場所や作業席を選択できる働き方」です。リノベーションの前後で、座りすぎの解消効果をみるとともに、定点カメラによる動画撮影と最新のディープラーニング※3を活用した画像解析技術を用いることで、ABWの導入に伴う活用スペースの変化を検証しました。
※3 ディープラーニング:音声の認識、画像の特定、予測など人間が行うようなタスクをコンピューターに学習させる機械学習の手法の一つ。人工知能の急速な発展を支える技術として、様々な分野への応用が進んでいる。
■実験の内容と結果
<リノベーションについて>
リノベーションは、オカムラが推進する働き方改革プロジェクトのコンセプトに基づき、「心と体の健康」「社員ひとりひとりが生き生きと働く」を試行錯誤できる「ラボ(実験場)」での実証実験として実施しました。ABWの考え方を取り入れ、立位作業が可能な上下昇降デスクの導入や自由に選択できる共用席の増設、様々な目的地にアクセスするための回遊型通路の設置を実施しました。
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/205132/LL_img_205132_1.jpg
リノベーションの概要
検証(1)リノベーションによる座りすぎ解消効果
リノベーション実施の拠点をリノベーション群(13名)、他の2拠点を対照群(29名)としました。対象者全員に活動量計を装着してもらい、座位行動を中心とした行動のデータを取得しました。測定期間はリノベーション前後の各2週間(計4週間)とし、各日とも睡眠・入浴時等を除いた終日としました。
<結果>
・対照群と比較して、リノベーション群の座位行動が40分/日減少しました。
・立ったり歩いたりという低強度の身体活動が24分/日増加しました。
画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/205132/LL_img_205132_2.jpg
リノベーションによる座りすぎ解消効果
検証(2)活用スペースの特定:AIによる画像解析
定点カメラで撮影した映像データに、ディープラーニング・アルゴリズムを活用した画像解析技術を適用し、いつ、オフィス内のどこに、何人の従業員がいたかを認識・検出しました。オフィス図面上の各エリアの人数を経過時間ごとに集計するシステムを開発し、検出したデータを分析しました。
<結果>
・リノベーション前は通路ごとの活用度に差は見られませんでしたが、事後では回遊型通路の活用が多くなっていました。
・増設された共用席の中では、入口近くや窓際の活用度が高いという特徴が見出されました。
画像3: https://www.atpress.ne.jp/releases/205132/LL_img_205132_3.jpg
活用スペースの特定:AIによる画像解析
■まとめと展望
ABWと上下昇降デスクを導入したオフィスリノベーションは、座りすぎ解消に有効であることが示唆されました。さらにAIの画像解析により、ABWが実践できている様子が確認できました。
本実証実験で得られた知見は、オフィス環境における0次予防の具体策として今後のオフィスづくりに役立つことが期待されます。今後は、オフィス施策による座りすぎ解消や働き方の変化が、従業員の健康や労働関連指標にも影響を及ぼすかという点についても検討を進めていきます。
■各社の役割
本実証実験における各社の役割は次のとおりです。
【明治安田厚生事業団 体力医学研究所】 https://www.my-zaidan.or.jp/
・国民の健康増進を目的とした学術研究を行っており、現在は主に座りすぎの健康影響とその解決策について研究しています。
・本実証実験では、プロジェクト全体の企画立案・統括と、活動量計と画像解析のデータを組み合わせた分析と効果検証を担当しました。
・引き続き、座りすぎ解消による健康指標や労働関連指標等への影響を検討し、公表していく予定です。
【オカムラ】 http://www.okamura.co.jp
・組織の個性を最大限に引き出すワークプレイスづくりを提案しています。
・本実証実験では、都内4拠点に設けた「ラボオフィス」のひとつを実験場とし、効果検証の場を提供しました。
・上記成果は、働き方改革に取り組む顧客企業を支援するオフィスソリューションサービスに還元します。
【ISID】 https://www.isid.co.jp/
・ディープラーニングによる画像解析技術を様々な産業領域で社会実装する取り組みを進めています。
・本実証実験では、室内空間の画像解析に適したディープラーニング・アルゴリズムの適用と、解析結果を可視化するプロトタイプシステムの開発を担当しました。
・本実証実験で得られたデータを起点に、画像解析精度の向上と様々な産業領域への社会実装を目指します。
近年、誰もが自然と健康的な生活を送ることができる環境づくりである「0次予防※1」が注目されています。本実証実験では、オフィスワーカーの重要な健康課題である「座りすぎ※2」に着目し、オフィス環境改善による0次予防の有効性を明らかにしました。さらに、人工知能(AI)を用いた画像解析技術によりオフィス内の活用スペースを特定し、今後のオフィス環境づくりに役立つ知見を示しました。
※1 0次予防:人々が健康的に生活することができる環境やまちづくりに取り組むこと。主に個人の生活習慣改善を指す「1次予防」の前段階として位置付けられる。
※2 座りすぎ:オフィスワーカーの新たな健康リスク。長時間継続して座り続けていると、生活習慣病を発症しやすく、死亡リスクが増加する。
■結果のポイント
◎オフィス環境改善により、座りすぎが約40分/日減少
◎座りすぎ解消に伴い、立ったり歩いたりという低強度の身体活動が増加
◎AIを用いた画像解析で、入口近くや窓際の共用席、回遊型通路の活用を確認
本研究の成果は、「International Journal of Environmental Research and Public Health」に2020年1月1日付で公開されました。本研究は、文部科学省科学研究費補助金の助成を受けて実施されました。なお研究実施の際には、利益相反に該当しないよう十分配慮しました。
<論文>
題名:Impact of activity-based working and height-adjustable desks on physical activity, sedentary
behavior, and space utilization among office workers: A natural experiment
(アクティビティベースドワーキングと上下昇降デスクがオフィスワーカーの身体活動、座位行動、スペース活用に与える影響:自然の実験)
著者名:Jindo T, Kai Y, Kitano N, Wakaba K, Makishima M, Takeda K, Iida M, Igarashi K, Arao T
書誌情報:International Journal of Environmental Research and Public Health, 17(1), 236. 2020
■実験のねらいと概要
近年、「働き方改革」や「健康経営」が喫緊の経営課題となっており、その一環として様々な施策をオフィスに導入する企業が増加しています。オフィス施策は、そこで働く全ての人に対して影響力を持つため、健康無関心層をも巻き込む「0次予防」としての効果も期待されます。特にオフィスでは、長時間座っている「座りすぎ」による健康影響が指摘されており、効果的な施策が求められています。しかし、オフィス施策と座りすぎの研究は欧米諸国中心に行われており、世界一座っている時間が長いといわれる我が国からの知見はありませんでした。
本実証実験では、ABW(Activity Based Working)という新しい働き方を取り入れたオフィスリノベーションに注目しました。ABWとは「従業員がその時の仕事内容に適した場所や作業席を選択できる働き方」です。リノベーションの前後で、座りすぎの解消効果をみるとともに、定点カメラによる動画撮影と最新のディープラーニング※3を活用した画像解析技術を用いることで、ABWの導入に伴う活用スペースの変化を検証しました。
※3 ディープラーニング:音声の認識、画像の特定、予測など人間が行うようなタスクをコンピューターに学習させる機械学習の手法の一つ。人工知能の急速な発展を支える技術として、様々な分野への応用が進んでいる。
■実験の内容と結果
<リノベーションについて>
リノベーションは、オカムラが推進する働き方改革プロジェクトのコンセプトに基づき、「心と体の健康」「社員ひとりひとりが生き生きと働く」を試行錯誤できる「ラボ(実験場)」での実証実験として実施しました。ABWの考え方を取り入れ、立位作業が可能な上下昇降デスクの導入や自由に選択できる共用席の増設、様々な目的地にアクセスするための回遊型通路の設置を実施しました。
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/205132/LL_img_205132_1.jpg
リノベーションの概要
検証(1)リノベーションによる座りすぎ解消効果
リノベーション実施の拠点をリノベーション群(13名)、他の2拠点を対照群(29名)としました。対象者全員に活動量計を装着してもらい、座位行動を中心とした行動のデータを取得しました。測定期間はリノベーション前後の各2週間(計4週間)とし、各日とも睡眠・入浴時等を除いた終日としました。
<結果>
・対照群と比較して、リノベーション群の座位行動が40分/日減少しました。
・立ったり歩いたりという低強度の身体活動が24分/日増加しました。
画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/205132/LL_img_205132_2.jpg
リノベーションによる座りすぎ解消効果
検証(2)活用スペースの特定:AIによる画像解析
定点カメラで撮影した映像データに、ディープラーニング・アルゴリズムを活用した画像解析技術を適用し、いつ、オフィス内のどこに、何人の従業員がいたかを認識・検出しました。オフィス図面上の各エリアの人数を経過時間ごとに集計するシステムを開発し、検出したデータを分析しました。
<結果>
・リノベーション前は通路ごとの活用度に差は見られませんでしたが、事後では回遊型通路の活用が多くなっていました。
・増設された共用席の中では、入口近くや窓際の活用度が高いという特徴が見出されました。
画像3: https://www.atpress.ne.jp/releases/205132/LL_img_205132_3.jpg
活用スペースの特定:AIによる画像解析
■まとめと展望
ABWと上下昇降デスクを導入したオフィスリノベーションは、座りすぎ解消に有効であることが示唆されました。さらにAIの画像解析により、ABWが実践できている様子が確認できました。
本実証実験で得られた知見は、オフィス環境における0次予防の具体策として今後のオフィスづくりに役立つことが期待されます。今後は、オフィス施策による座りすぎ解消や働き方の変化が、従業員の健康や労働関連指標にも影響を及ぼすかという点についても検討を進めていきます。
■各社の役割
本実証実験における各社の役割は次のとおりです。
【明治安田厚生事業団 体力医学研究所】 https://www.my-zaidan.or.jp/
・国民の健康増進を目的とした学術研究を行っており、現在は主に座りすぎの健康影響とその解決策について研究しています。
・本実証実験では、プロジェクト全体の企画立案・統括と、活動量計と画像解析のデータを組み合わせた分析と効果検証を担当しました。
・引き続き、座りすぎ解消による健康指標や労働関連指標等への影響を検討し、公表していく予定です。
【オカムラ】 http://www.okamura.co.jp
・組織の個性を最大限に引き出すワークプレイスづくりを提案しています。
・本実証実験では、都内4拠点に設けた「ラボオフィス」のひとつを実験場とし、効果検証の場を提供しました。
・上記成果は、働き方改革に取り組む顧客企業を支援するオフィスソリューションサービスに還元します。
【ISID】 https://www.isid.co.jp/
・ディープラーニングによる画像解析技術を様々な産業領域で社会実装する取り組みを進めています。
・本実証実験では、室内空間の画像解析に適したディープラーニング・アルゴリズムの適用と、解析結果を可視化するプロトタイプシステムの開発を担当しました。
・本実証実験で得られたデータを起点に、画像解析精度の向上と様々な産業領域への社会実装を目指します。