環境省主催 初のWEB会議形式で実施。「国立公園満喫プロジェクト」国立公園×オフィシャルパートナー連携報告会意欲的な意見交換がなされる。各オフィシャルパートナー企業・国立公園からの取組報告
[20/03/31]
提供元:@Press
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環境省では「明日の日本を支える観光ビジョン」に基づき「国立公園満喫プロジェクト」を推進し、2020年に国立公園への訪日外国人利用客1000万人を目標に、世界水準の国立公園を目指し、多様な取組を推進しています。
その一環として、環境省と企業・団体が協力し、国立公園の魅力発信を行う「国立公園オフィシャルパートナーシッププログラム」を活用した取組みの一つとして、3月23日(月)に、国立公園および企業等による報告会を実施しました。(当初対面での実施を予定しておりましたが、新型コロナウイルス対策として、Web会議に変更)
<当日の様子>
当日は全国各地の環境省の国立公園担当者が計18名、またオフィシャルパートナー企業計13社が参加しました。そのうち、「国立公園満喫プロジェクト」に取り組む2つの国立公園の環境省担当職員や、4社のオフィシャルパートナーシップ企業が取組を報告いたしました。国立公園の利用促進のための取組や今後の展望について報告し、環境省とオフィシャルパートナー企業によるより強固な連携の推進を確認しました。
報告会終了後、「国立公園満喫プロジェクト」の担当者である環境省自然環境局国立公園課国立公園利用推進室の尾崎絵美氏と宮森由美子氏にインタビューを行いました。
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/208780/img_208780_1.png
<「国立公園満喫プロジェクト」 URL>
http://www.env.go.jp/nature/mankitsu-project/
「国立公園満喫プロジェクト」趣旨
環境省では「明日の日本を支える観光ビジョン」に基づき「国立公園満喫プロジェクト」を推進しています。34ある国立公園のうち、阿寒摩周国立公園、十和田八幡平国立公園、日光国立公園、伊勢志摩国立公園、大山隠岐国立公園、阿蘇くじゅう国立公園、霧島錦江湾国立公園、慶良間諸島国立公園の8国立公園において、訪日外国人を惹きつける取組を先行的・集中的に実施し、そこで得られたノウハウを他の国立公園にも展開していくこと、日本の国立公園を世界の旅行者が長期滞在したいと憧れる旅行目的地にすることを目指しています。
民間事業者等と連携することでより国内外からの国立公園利用者の増加と国立公園の所在する地域の活性化を図るべく、現在、75社が環境省と国立公園オフィシャルパートナーシップを締結しています。
<報告会レポート>
■「国立公園満喫プロジェクト」について
環境省 尾崎氏による挨拶
尾崎氏は、新型コロナウイルスの影響でweb会議となった本日の会議について「世界的に活動自粛モードとなっている中、このようなweb会議という形でお時間を頂きありがとうございます。オフィシャルパートナーの企業の皆様、事務所の皆様、お集まり頂きありがとうございます。昨年度もオフィシャルパートナーとの連携という形で勉強会を開催しましたが、今年度はより具体的に連携が進むように、国立公園の課題に対しての連携できる企業さまとのマッチング作業に取り組んでいるところです」と挨拶。2020年が本プロジェクトの最後の目標年であることから、国立公園事務所とオフィシャルパートナー企業の架け橋となり、より「国立公園満喫プロジェクト」の取組に力を入れたいという考えのもと、意欲を覗かせました。
阿寒摩周国立公園管理事務所 小林氏
阿寒摩周国立公園における満喫プロジェクトの取組概要
ひがし北海道の中心に位置する阿寒摩周国立公園は、3つのカルデラ湖から構成された国立公園です。公園内にはいたるところに火山の恵みやエネルギーを感じられる自然で溢れており、小林氏はこうした阿寒摩周国立公園の魅力を冒頭でアピールしました。魅力の多い阿寒摩周国立公園ですが、一方でインバウンドが最も多いのは道央の地域だというデータがあります。小林氏は「みなさん道央はすでにいらしていて、これから違う地域に進出していきたいと東北海道のエリア・釧路、根室方面というのはこれから伸び代があるのかなと思っています」と述べました。さらに、今後のインバウンド誘致において重要なキーワードになるのは「アドベンチャーツーリズム(AT)」であると小林氏は話します。
ATとは、自然、異文化体験、アクティビティの3つの要素の内、2つ以上で構成された旅行形態である。阿寒摩周国立公園では、ATの推進を重点的な取組の一つに掲げています。
また、ATをターゲットとした具体的な取組として阿寒摩周国立公園を中心としたロングトレイルの構想を検討しています。ひがし北海道にある3つの空港をトレイルでつなげるという壮大な構想です。小林氏はロングトレイル構想の実現に向け、オフィシャルパートナー企業での協力者を募りました。
来年度以降は、アドベンチャートラベルを軸に消費額の向上や長期滞在を目指すと話す小林氏。この取組に置いて重要なのが、持続可能な観光地であることだと言います。サスティナビリティが重視される昨今、こうした取組がインバウンド誘致において重要になるという考えを示しました。
日光国立公園管理事務所 水崎氏
湯ノ湖のほとりにある温泉街である日光国立公園の湯元地区。日光の課題は、冬にお客さんが少ないこと、日光東照宮を訪れ日帰りで帰ってしまうなど、長期滞在につながらないお客さんが多いことだと水崎氏は語ります。これについて水崎氏は、「日光の奥に位置する湯元温泉に人を運ぶ取組をして、日光地域全体の活性化に繋げたい」と今後の展望について話します。具体的には民間企業と連携をしながら、徹底した維持管理とイベントで地区再生をしていきたいと意欲を見せました。さらに軽井沢を例に、清掃員を配置した維持管理と、定期的なイベントでプレスを利用した活性化など成功事例を紹介。日光国立公園の中でもこうした整備をしたいと説明しました。
また水崎氏は、現在の日光は年間40〜55万人の宿泊者がいるが、4割が修学旅行などの学生団体だと話します。こうした状況に対して、日光国立公園内のメイン通りを歩行者天国にし、周りに商店を並べるなど、より魅力的な施設誘致・整備を目指し、さらにメイン通りの奥には日帰り温泉施設を誘致したいと施設の充実化について語りました。そのために、ブランディングを強化したいなど、オフィシャルパートナー企業との連携を強く望んでいる様子を見せました。応えられる企業とのマッチングに意欲を見せ、阿寒摩周国立公園に続きこちらもweb会議を最大限に活かした報告となりました。
■オフィシャルパートナー企業による報告「各社の強みを活かし国立公園活性化を目指す」
「国立公園満喫プロジェクト」に賛同するオフィシャルパートナー企業の4社(東京カメラ部株式会社、株式会社ワンダートランク、大分朝日放送株式会社、株式会社ヤマップ)が取組について報告しました。
東京カメラ部株式会社 代表取締役社長 塚崎氏
テーマ:写真を活用した国立公園のPRについて
報告内容:
世界の写真愛好家の力を借りて毎日2万枚の作品が投稿されているという東京カメラ部は、地方自治体や環境省のインスタグラムのアカウントを運営するなど、写真を活用した取組を行なっています。塚崎氏は、写真とSNSの関係について説明。現在消費者のインターネット視聴端末はスマホがほとんどであり、利用する頻度はブラウザよりもアプリの方が高いというデータを提示。そのため多くの人がアプリを既にDLしている有名SNS上で、かつ写真を活用して発信することが費用対効果が高いと説明しました。
また、塚崎氏は「写真は観光との相性がいい」と語ります。写真を撮るためには現地へ足を運ばなければならず、写真を撮った人がSNSで拡散させることで、さらに多くの撮りたい人・見たい人をその地に呼ぶことができるためです。さらに、「写真は言語の壁を越える」として、インバウンドにも大きく力があることを示しました。
また、環境省と東京カメラ部で、InstagramとFacebookを活用して開催した、国立公園の写真をテーマとしたオンラインのフォトコンテストについても紹介。集まった写真はフォトスポットサイトとしてエリアごとにまとめています。撮影された写真と地図を連携させ、同じ景色を撮りたい人がどこに行けばいいのかがわかるようなサイトとなっています。あわせて、毎年東京カメラ部が渋谷ヒカリエで企画している「東京カメラ部写真展2019」での、国立公園の写真展示、及び、環境省職員と写真家によるトークショーを通じた、国立公園の魅力発信についても語りました。
株式会社ワンダートランク 笠井氏
テーマ:阿寒摩周、知床等同等3公園+西表でのオリンパスとの協業事例(グランピング商品造成)発表
報告内容:
株式会社ワンダートランクの笠井氏は、国立公園における野生動物観光のあり方について説明しました。インバウンド向けのプロモーションからツアー販売まで行っているワンダートランクは、地域社会と外国人旅行者の相互理解を深めることを目的としてきます。広告・PR事業からツアーを販売まで一気通貫にやっていることを強みとし、外国人向けツアー開発では、環境省と共にグランピングと地域観光資源を活用したツアー開発に取り組んでいるそうです。既に阿寒摩周国立公園や大山隠岐国立公園ではグランピングを組み合わせた取組を展開しており、実際に事務所とオフィシャルパートナー企業として理想的な関係を築いています。そんな笠井氏は、旅のあり方が変化していることを感じていると言います。
そのため、レジャーや癒しのためだけではなくて社会課題や生き方を考える旅が増えてくると話しました。その点において、野生動物プロジェクトは、人間と野生動物の共生、「保護」と「理解」が重要だと説明。そんな中、同じオフィシャルパートナーのオリンパスのプロカメラマンの中から、特に環境保護問題に関心があり、世界中で活躍される方々をツアーに招き、取材をし、共生について考える取組を実施したと話しました。
オリンパスとの協業事例であるこの取組では、ビーチクリーニングの様子を取材したり、環境省の野生動物保護センターを訪問し、詳しい説明を受けたり、地域のエコツアーガイドの方とともにトレッキングや野生動物観察ツアーを行うなど「保護」、「理解」とどちらの観点からも必要なテーマをツアーに取り入れています。撮影することを通して、動物たちとの距離感など、共生に必要な「理解」を促進させる意図を話し合いました。
大分朝日放送株式会社 橋本氏
テーマ:オーストラリア、ニュージーランドの地上波TVでの九州国立公園の魅力発信について
報告内容:
「じもっと!」というキャッチコピーで地元に根ざした情報を発信している大分朝日放送は、地上波での発信以外に、インターネットでの配信なども行なっています。民放で初めて4K撮影・放送を行った大分朝日放送は、4Kで美しい故郷を撮影するなど独自の強みを持っています。橋本氏は、海外展開事業を4Kで撮影する取組について紹介。タイ・台湾・ベトナムなどアジア圏で展開したことを説明しました。これについて橋本氏は、「アジアの人々は買い物が好きだという印象が強いと思いますが、自然に触れたいというニーズもある」と説明し、自然の豊かな場所の観光地を巡る番組を制作するなど、映像を使った誘致の取組について話しました。
オーストラリアやニュージーランドの人々は、自然体験やアクティビティが好きなことを受けて、九州の魅力を伝えるべく有名ラグビー選手を起用し、阿蘇くじゅう国立公園とタッグを組んで番組を制作しました。2019年からはさらにオーストラリアとニュージーランドへ訴求を強めます。取材エリアを阿蘇くじゅう、霧島錦江湾、雲仙天草に広げ、30分番組を4本制作し、30分番組のうち半分以上は国立公園を舞台にするなど、自然の豊かさをPRした番組は好評を博しました。橋本氏は、今後もオセアニアに向けて発信していきたい、全国に先駆けてローカルとして展開していきたいと意欲的な姿勢を見せました。
株式会社ヤマップ 大土氏
テーマ:山の日イベントPRについて(HP作成・動画作成・タイアップ・多言語地図の作成など)
報告内容:
地図アプリを提供しているヤマップは、直近のデータとして新型コロナウイルスで商業施設に行けない人々が、自然を求めてアウトドアに出向いているというデータを示しました。こうした時事問題に配慮しながら、大土氏はインバウンド向けの多重言語対応が必要になることなど、具体的な施策についても指摘。特に、観光分野での英語化の重要性について話し、実際にアプリに導入していることを説明しました。大土氏は、「ただ山に登って終わるだけでなく、街に降りてお金を使ってもらう」ことが重要だと話します。そのために、インバウンド向けに観光地をよりわかりやすく提示しているという取組を紹介しました。
その一方で、なかなか現実化しにくい問題をアプリの力で解決する施策に取り組んでいることも報告。具体的には、道標のアプリ対応です。これは道標をリアルに作ると、莫大な設置費用と許可申請の時間がかかってしまうために、アプリ内で作成し、表示させるという取組。道標のアップデートが簡単であることなどメリットが挙げられました。さらに今後の展望として、e-bikeの活用にも意欲を見せます。電動自転車の機能をロードバイクに搭載したe-bikeは、二次交通問題の解決の一助ともなると指摘。徒歩や公共交通機関で行きにくかった場所にも積極的に行けるようになるという利点を挙げました。さらにこのe-bikeについて大土氏は、幅広い年齢層にリーチでき、50、60代の人でも楽しめると話します。
しかし一方で、e-bikeが抱える課題として「単なる移動手段になってしまっているので、アクティビティとしての訴求が必要だ」とも語りました。既にユーザーへのアンケートの結果をもとに、ワークショップをして議論するなど、より強みになるアクティビティにするために意欲的に取り組んでいる様子が見られました。
<報告会の様子>
画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/208780/img_208780_2.png
■「国立公園満喫プロジェクト」担当者インタビュー
報告会後、「国立公園満喫プロジェクト」の担当者・環境省自然環境局国立公園課 国立公園利用推進室 室長補佐 尾崎絵美氏と同係長 宮森由美子氏にインタビューを行いました。
<インタビュー>
画像3: https://www.atpress.ne.jp/releases/208780/img_208780_3.png
―国立公園のインバウンド需要の現状と今後の見通しについて
尾崎氏:環境省と致しましては、「国立公園満喫プロジェクト」として2020年までに国立公園の訪日外国人利用者数を1000万人にすることを目標とした取組を行なっています。最新の推計値だと、2018年で694万人というところまできていますが、日本全体でも韓国からの旅行者数の減少や災害などもあり、国立公園においてもその影響が出ているのが現状ですね。国立公園においては利用者数のみではなく、質に関する調査も行っていますが、昨年度の結果からは滞在全体の満足度については全体的に前年度と比べて向上しています。一方、国立公園内での旅行消費額については約66,000円と前年度と比べて大きな変化がなく、宿泊日数は国立公園内で1.9泊となり前年度からはやや伸びています。
人数に関する目標達成に向けさらなる取組を進めることはもちろん、消費額や滞在日数の増加といった部分にも力入れていきたいと考えています。
―新型コロナウイルスによるインバウンド需要への影響と今後の対策について
尾崎氏:インバウンド需要への影響は、国立公園のみならず日本全体が影響を受けていることは確かです。しかしながら、国内においてはキャンプ場などでは人が増えているという記事も出ています。外出控えの状況でもありますが、人混みがなく大自然を有する国立公園に来ていただき自然体験を楽しんでもらうにはいい機会かもしれませんね。政府全体の動向を見て、ではありますが、このような時だからこそ、改めて子供たち含め日本人の方々に国立公園という日本の自然の宝が集まっている場所に来て頂くことを呼び掛けていけたらと思っています。新型コロナウイルスが収まれば、時機をとらえて外国人向けにもさらにPRできるよう必要な受け入れ環境整備は引き続き進めていきたいと思います。
また、それぞれの国立公園の特性を活かしながらより多角的に色々な国々へのアプローチを増やしていければとも思います。
―環境省職員が思う国立公園の魅力について
宮森氏:国立公園は人が自然の中で暮らし、生活文化をはぐくみ、共に寄り添ってできてきた地域なので、長い間紡がれてきたその地域の本当の面白さが体感できる環境であると思っています。その地域の人にしかわからない面白さや自然の恵みを、訪れた人にも体験してもらいたいと思いますね。ただの観光ではなくて、そこに暮らしてきた人々の文化や自然を含めて体験してほしいです。オフィシャルパートナー企業とは、単なる観光商品開発やフィールド活用という文脈だけではなく、そこに住んでいる人にしかわからなかった地域の良さを一緒に体験することまで一緒にできたらいいなと思っています。また、それを発信する仲間として、強力なパートナーになっていただいていると思っています。
オフィシャルパートナー企業とより一層連携を強化、具体化することで、一般の人にも国立公園の魅力を体験してもらえるように取り組んでいきたいと思います。
■「国立公園満喫プロジェクト」について
画像4: https://www.atpress.ne.jp/releases/208780/img_208780_4.jpg
※日本の国立公園
【趣旨】
環境省では「明日の日本を支える観光ビジョン」に基づき国立公園満喫プロジェクトを推進しています。
阿寒摩周国立公園、十和田八幡平国立公園、日光国立公園、伊勢志摩国立公園、大山隠岐国立公園、阿蘇くじゅう国立公園、霧島錦江湾国立公園、慶良間諸島国立公園の8か所の国立公園で「国立公園ステップアッププログラム2020」を策定し、2020年を目標にインバウンド対応の取組を計画的・集中的に実施し、日本の国立公園を世界の旅行者が長期滞在したいと憧れる旅行目的地にします。
【背景】
政府全体で、2020年の訪日外国人旅行者数を4,000万人とする「明日の日本を支える観光ビジョン」の施策に取り組んでいます。
この観光ビジョンの10の施策のひとつとして、国立公園の「ナショナルパーク」としてのブランド化を目指し、まずは8か所の国立公園で、「国立公園ステップアッププログラム2020」を策定し、訪日外国人を惹きつける取組を計画的、集中的に実施します。
【特徴】
日本の国立公園は、優れた自然のみならず、その自然に育まれた伝統文化や食などの地元特有の人の暮らしに触れられるのが特徴です。
【課題】
インバウンドに対して、国立公園のポテンシャルが十分に引き出されていない。
1.外国人が満喫できるメニュー、快適な利用環境の未整備
2.外国人をも魅了する公園利用拠点の不備
3.外国人に日本の国立公園の魅力が伝わっていない
【方向性】
1.「最大の魅力は自然そのもの」をコンセプトに、非日常な体験を世界の人々に提供
2.最高の自然環境をツーリズムに開放し、高品質・高付加価値のインバウンド市場を創造
<「国立公園満喫プロジェクト」 URL>
http://www.env.go.jp/nature/mankitsu-project/
その一環として、環境省と企業・団体が協力し、国立公園の魅力発信を行う「国立公園オフィシャルパートナーシッププログラム」を活用した取組みの一つとして、3月23日(月)に、国立公園および企業等による報告会を実施しました。(当初対面での実施を予定しておりましたが、新型コロナウイルス対策として、Web会議に変更)
<当日の様子>
当日は全国各地の環境省の国立公園担当者が計18名、またオフィシャルパートナー企業計13社が参加しました。そのうち、「国立公園満喫プロジェクト」に取り組む2つの国立公園の環境省担当職員や、4社のオフィシャルパートナーシップ企業が取組を報告いたしました。国立公園の利用促進のための取組や今後の展望について報告し、環境省とオフィシャルパートナー企業によるより強固な連携の推進を確認しました。
報告会終了後、「国立公園満喫プロジェクト」の担当者である環境省自然環境局国立公園課国立公園利用推進室の尾崎絵美氏と宮森由美子氏にインタビューを行いました。
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/208780/img_208780_1.png
<「国立公園満喫プロジェクト」 URL>
http://www.env.go.jp/nature/mankitsu-project/
「国立公園満喫プロジェクト」趣旨
環境省では「明日の日本を支える観光ビジョン」に基づき「国立公園満喫プロジェクト」を推進しています。34ある国立公園のうち、阿寒摩周国立公園、十和田八幡平国立公園、日光国立公園、伊勢志摩国立公園、大山隠岐国立公園、阿蘇くじゅう国立公園、霧島錦江湾国立公園、慶良間諸島国立公園の8国立公園において、訪日外国人を惹きつける取組を先行的・集中的に実施し、そこで得られたノウハウを他の国立公園にも展開していくこと、日本の国立公園を世界の旅行者が長期滞在したいと憧れる旅行目的地にすることを目指しています。
民間事業者等と連携することでより国内外からの国立公園利用者の増加と国立公園の所在する地域の活性化を図るべく、現在、75社が環境省と国立公園オフィシャルパートナーシップを締結しています。
<報告会レポート>
■「国立公園満喫プロジェクト」について
環境省 尾崎氏による挨拶
尾崎氏は、新型コロナウイルスの影響でweb会議となった本日の会議について「世界的に活動自粛モードとなっている中、このようなweb会議という形でお時間を頂きありがとうございます。オフィシャルパートナーの企業の皆様、事務所の皆様、お集まり頂きありがとうございます。昨年度もオフィシャルパートナーとの連携という形で勉強会を開催しましたが、今年度はより具体的に連携が進むように、国立公園の課題に対しての連携できる企業さまとのマッチング作業に取り組んでいるところです」と挨拶。2020年が本プロジェクトの最後の目標年であることから、国立公園事務所とオフィシャルパートナー企業の架け橋となり、より「国立公園満喫プロジェクト」の取組に力を入れたいという考えのもと、意欲を覗かせました。
阿寒摩周国立公園管理事務所 小林氏
阿寒摩周国立公園における満喫プロジェクトの取組概要
ひがし北海道の中心に位置する阿寒摩周国立公園は、3つのカルデラ湖から構成された国立公園です。公園内にはいたるところに火山の恵みやエネルギーを感じられる自然で溢れており、小林氏はこうした阿寒摩周国立公園の魅力を冒頭でアピールしました。魅力の多い阿寒摩周国立公園ですが、一方でインバウンドが最も多いのは道央の地域だというデータがあります。小林氏は「みなさん道央はすでにいらしていて、これから違う地域に進出していきたいと東北海道のエリア・釧路、根室方面というのはこれから伸び代があるのかなと思っています」と述べました。さらに、今後のインバウンド誘致において重要なキーワードになるのは「アドベンチャーツーリズム(AT)」であると小林氏は話します。
ATとは、自然、異文化体験、アクティビティの3つの要素の内、2つ以上で構成された旅行形態である。阿寒摩周国立公園では、ATの推進を重点的な取組の一つに掲げています。
また、ATをターゲットとした具体的な取組として阿寒摩周国立公園を中心としたロングトレイルの構想を検討しています。ひがし北海道にある3つの空港をトレイルでつなげるという壮大な構想です。小林氏はロングトレイル構想の実現に向け、オフィシャルパートナー企業での協力者を募りました。
来年度以降は、アドベンチャートラベルを軸に消費額の向上や長期滞在を目指すと話す小林氏。この取組に置いて重要なのが、持続可能な観光地であることだと言います。サスティナビリティが重視される昨今、こうした取組がインバウンド誘致において重要になるという考えを示しました。
日光国立公園管理事務所 水崎氏
湯ノ湖のほとりにある温泉街である日光国立公園の湯元地区。日光の課題は、冬にお客さんが少ないこと、日光東照宮を訪れ日帰りで帰ってしまうなど、長期滞在につながらないお客さんが多いことだと水崎氏は語ります。これについて水崎氏は、「日光の奥に位置する湯元温泉に人を運ぶ取組をして、日光地域全体の活性化に繋げたい」と今後の展望について話します。具体的には民間企業と連携をしながら、徹底した維持管理とイベントで地区再生をしていきたいと意欲を見せました。さらに軽井沢を例に、清掃員を配置した維持管理と、定期的なイベントでプレスを利用した活性化など成功事例を紹介。日光国立公園の中でもこうした整備をしたいと説明しました。
また水崎氏は、現在の日光は年間40〜55万人の宿泊者がいるが、4割が修学旅行などの学生団体だと話します。こうした状況に対して、日光国立公園内のメイン通りを歩行者天国にし、周りに商店を並べるなど、より魅力的な施設誘致・整備を目指し、さらにメイン通りの奥には日帰り温泉施設を誘致したいと施設の充実化について語りました。そのために、ブランディングを強化したいなど、オフィシャルパートナー企業との連携を強く望んでいる様子を見せました。応えられる企業とのマッチングに意欲を見せ、阿寒摩周国立公園に続きこちらもweb会議を最大限に活かした報告となりました。
■オフィシャルパートナー企業による報告「各社の強みを活かし国立公園活性化を目指す」
「国立公園満喫プロジェクト」に賛同するオフィシャルパートナー企業の4社(東京カメラ部株式会社、株式会社ワンダートランク、大分朝日放送株式会社、株式会社ヤマップ)が取組について報告しました。
東京カメラ部株式会社 代表取締役社長 塚崎氏
テーマ:写真を活用した国立公園のPRについて
報告内容:
世界の写真愛好家の力を借りて毎日2万枚の作品が投稿されているという東京カメラ部は、地方自治体や環境省のインスタグラムのアカウントを運営するなど、写真を活用した取組を行なっています。塚崎氏は、写真とSNSの関係について説明。現在消費者のインターネット視聴端末はスマホがほとんどであり、利用する頻度はブラウザよりもアプリの方が高いというデータを提示。そのため多くの人がアプリを既にDLしている有名SNS上で、かつ写真を活用して発信することが費用対効果が高いと説明しました。
また、塚崎氏は「写真は観光との相性がいい」と語ります。写真を撮るためには現地へ足を運ばなければならず、写真を撮った人がSNSで拡散させることで、さらに多くの撮りたい人・見たい人をその地に呼ぶことができるためです。さらに、「写真は言語の壁を越える」として、インバウンドにも大きく力があることを示しました。
また、環境省と東京カメラ部で、InstagramとFacebookを活用して開催した、国立公園の写真をテーマとしたオンラインのフォトコンテストについても紹介。集まった写真はフォトスポットサイトとしてエリアごとにまとめています。撮影された写真と地図を連携させ、同じ景色を撮りたい人がどこに行けばいいのかがわかるようなサイトとなっています。あわせて、毎年東京カメラ部が渋谷ヒカリエで企画している「東京カメラ部写真展2019」での、国立公園の写真展示、及び、環境省職員と写真家によるトークショーを通じた、国立公園の魅力発信についても語りました。
株式会社ワンダートランク 笠井氏
テーマ:阿寒摩周、知床等同等3公園+西表でのオリンパスとの協業事例(グランピング商品造成)発表
報告内容:
株式会社ワンダートランクの笠井氏は、国立公園における野生動物観光のあり方について説明しました。インバウンド向けのプロモーションからツアー販売まで行っているワンダートランクは、地域社会と外国人旅行者の相互理解を深めることを目的としてきます。広告・PR事業からツアーを販売まで一気通貫にやっていることを強みとし、外国人向けツアー開発では、環境省と共にグランピングと地域観光資源を活用したツアー開発に取り組んでいるそうです。既に阿寒摩周国立公園や大山隠岐国立公園ではグランピングを組み合わせた取組を展開しており、実際に事務所とオフィシャルパートナー企業として理想的な関係を築いています。そんな笠井氏は、旅のあり方が変化していることを感じていると言います。
そのため、レジャーや癒しのためだけではなくて社会課題や生き方を考える旅が増えてくると話しました。その点において、野生動物プロジェクトは、人間と野生動物の共生、「保護」と「理解」が重要だと説明。そんな中、同じオフィシャルパートナーのオリンパスのプロカメラマンの中から、特に環境保護問題に関心があり、世界中で活躍される方々をツアーに招き、取材をし、共生について考える取組を実施したと話しました。
オリンパスとの協業事例であるこの取組では、ビーチクリーニングの様子を取材したり、環境省の野生動物保護センターを訪問し、詳しい説明を受けたり、地域のエコツアーガイドの方とともにトレッキングや野生動物観察ツアーを行うなど「保護」、「理解」とどちらの観点からも必要なテーマをツアーに取り入れています。撮影することを通して、動物たちとの距離感など、共生に必要な「理解」を促進させる意図を話し合いました。
大分朝日放送株式会社 橋本氏
テーマ:オーストラリア、ニュージーランドの地上波TVでの九州国立公園の魅力発信について
報告内容:
「じもっと!」というキャッチコピーで地元に根ざした情報を発信している大分朝日放送は、地上波での発信以外に、インターネットでの配信なども行なっています。民放で初めて4K撮影・放送を行った大分朝日放送は、4Kで美しい故郷を撮影するなど独自の強みを持っています。橋本氏は、海外展開事業を4Kで撮影する取組について紹介。タイ・台湾・ベトナムなどアジア圏で展開したことを説明しました。これについて橋本氏は、「アジアの人々は買い物が好きだという印象が強いと思いますが、自然に触れたいというニーズもある」と説明し、自然の豊かな場所の観光地を巡る番組を制作するなど、映像を使った誘致の取組について話しました。
オーストラリアやニュージーランドの人々は、自然体験やアクティビティが好きなことを受けて、九州の魅力を伝えるべく有名ラグビー選手を起用し、阿蘇くじゅう国立公園とタッグを組んで番組を制作しました。2019年からはさらにオーストラリアとニュージーランドへ訴求を強めます。取材エリアを阿蘇くじゅう、霧島錦江湾、雲仙天草に広げ、30分番組を4本制作し、30分番組のうち半分以上は国立公園を舞台にするなど、自然の豊かさをPRした番組は好評を博しました。橋本氏は、今後もオセアニアに向けて発信していきたい、全国に先駆けてローカルとして展開していきたいと意欲的な姿勢を見せました。
株式会社ヤマップ 大土氏
テーマ:山の日イベントPRについて(HP作成・動画作成・タイアップ・多言語地図の作成など)
報告内容:
地図アプリを提供しているヤマップは、直近のデータとして新型コロナウイルスで商業施設に行けない人々が、自然を求めてアウトドアに出向いているというデータを示しました。こうした時事問題に配慮しながら、大土氏はインバウンド向けの多重言語対応が必要になることなど、具体的な施策についても指摘。特に、観光分野での英語化の重要性について話し、実際にアプリに導入していることを説明しました。大土氏は、「ただ山に登って終わるだけでなく、街に降りてお金を使ってもらう」ことが重要だと話します。そのために、インバウンド向けに観光地をよりわかりやすく提示しているという取組を紹介しました。
その一方で、なかなか現実化しにくい問題をアプリの力で解決する施策に取り組んでいることも報告。具体的には、道標のアプリ対応です。これは道標をリアルに作ると、莫大な設置費用と許可申請の時間がかかってしまうために、アプリ内で作成し、表示させるという取組。道標のアップデートが簡単であることなどメリットが挙げられました。さらに今後の展望として、e-bikeの活用にも意欲を見せます。電動自転車の機能をロードバイクに搭載したe-bikeは、二次交通問題の解決の一助ともなると指摘。徒歩や公共交通機関で行きにくかった場所にも積極的に行けるようになるという利点を挙げました。さらにこのe-bikeについて大土氏は、幅広い年齢層にリーチでき、50、60代の人でも楽しめると話します。
しかし一方で、e-bikeが抱える課題として「単なる移動手段になってしまっているので、アクティビティとしての訴求が必要だ」とも語りました。既にユーザーへのアンケートの結果をもとに、ワークショップをして議論するなど、より強みになるアクティビティにするために意欲的に取り組んでいる様子が見られました。
<報告会の様子>
画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/208780/img_208780_2.png
■「国立公園満喫プロジェクト」担当者インタビュー
報告会後、「国立公園満喫プロジェクト」の担当者・環境省自然環境局国立公園課 国立公園利用推進室 室長補佐 尾崎絵美氏と同係長 宮森由美子氏にインタビューを行いました。
<インタビュー>
画像3: https://www.atpress.ne.jp/releases/208780/img_208780_3.png
―国立公園のインバウンド需要の現状と今後の見通しについて
尾崎氏:環境省と致しましては、「国立公園満喫プロジェクト」として2020年までに国立公園の訪日外国人利用者数を1000万人にすることを目標とした取組を行なっています。最新の推計値だと、2018年で694万人というところまできていますが、日本全体でも韓国からの旅行者数の減少や災害などもあり、国立公園においてもその影響が出ているのが現状ですね。国立公園においては利用者数のみではなく、質に関する調査も行っていますが、昨年度の結果からは滞在全体の満足度については全体的に前年度と比べて向上しています。一方、国立公園内での旅行消費額については約66,000円と前年度と比べて大きな変化がなく、宿泊日数は国立公園内で1.9泊となり前年度からはやや伸びています。
人数に関する目標達成に向けさらなる取組を進めることはもちろん、消費額や滞在日数の増加といった部分にも力入れていきたいと考えています。
―新型コロナウイルスによるインバウンド需要への影響と今後の対策について
尾崎氏:インバウンド需要への影響は、国立公園のみならず日本全体が影響を受けていることは確かです。しかしながら、国内においてはキャンプ場などでは人が増えているという記事も出ています。外出控えの状況でもありますが、人混みがなく大自然を有する国立公園に来ていただき自然体験を楽しんでもらうにはいい機会かもしれませんね。政府全体の動向を見て、ではありますが、このような時だからこそ、改めて子供たち含め日本人の方々に国立公園という日本の自然の宝が集まっている場所に来て頂くことを呼び掛けていけたらと思っています。新型コロナウイルスが収まれば、時機をとらえて外国人向けにもさらにPRできるよう必要な受け入れ環境整備は引き続き進めていきたいと思います。
また、それぞれの国立公園の特性を活かしながらより多角的に色々な国々へのアプローチを増やしていければとも思います。
―環境省職員が思う国立公園の魅力について
宮森氏:国立公園は人が自然の中で暮らし、生活文化をはぐくみ、共に寄り添ってできてきた地域なので、長い間紡がれてきたその地域の本当の面白さが体感できる環境であると思っています。その地域の人にしかわからない面白さや自然の恵みを、訪れた人にも体験してもらいたいと思いますね。ただの観光ではなくて、そこに暮らしてきた人々の文化や自然を含めて体験してほしいです。オフィシャルパートナー企業とは、単なる観光商品開発やフィールド活用という文脈だけではなく、そこに住んでいる人にしかわからなかった地域の良さを一緒に体験することまで一緒にできたらいいなと思っています。また、それを発信する仲間として、強力なパートナーになっていただいていると思っています。
オフィシャルパートナー企業とより一層連携を強化、具体化することで、一般の人にも国立公園の魅力を体験してもらえるように取り組んでいきたいと思います。
■「国立公園満喫プロジェクト」について
画像4: https://www.atpress.ne.jp/releases/208780/img_208780_4.jpg
※日本の国立公園
【趣旨】
環境省では「明日の日本を支える観光ビジョン」に基づき国立公園満喫プロジェクトを推進しています。
阿寒摩周国立公園、十和田八幡平国立公園、日光国立公園、伊勢志摩国立公園、大山隠岐国立公園、阿蘇くじゅう国立公園、霧島錦江湾国立公園、慶良間諸島国立公園の8か所の国立公園で「国立公園ステップアッププログラム2020」を策定し、2020年を目標にインバウンド対応の取組を計画的・集中的に実施し、日本の国立公園を世界の旅行者が長期滞在したいと憧れる旅行目的地にします。
【背景】
政府全体で、2020年の訪日外国人旅行者数を4,000万人とする「明日の日本を支える観光ビジョン」の施策に取り組んでいます。
この観光ビジョンの10の施策のひとつとして、国立公園の「ナショナルパーク」としてのブランド化を目指し、まずは8か所の国立公園で、「国立公園ステップアッププログラム2020」を策定し、訪日外国人を惹きつける取組を計画的、集中的に実施します。
【特徴】
日本の国立公園は、優れた自然のみならず、その自然に育まれた伝統文化や食などの地元特有の人の暮らしに触れられるのが特徴です。
【課題】
インバウンドに対して、国立公園のポテンシャルが十分に引き出されていない。
1.外国人が満喫できるメニュー、快適な利用環境の未整備
2.外国人をも魅了する公園利用拠点の不備
3.外国人に日本の国立公園の魅力が伝わっていない
【方向性】
1.「最大の魅力は自然そのもの」をコンセプトに、非日常な体験を世界の人々に提供
2.最高の自然環境をツーリズムに開放し、高品質・高付加価値のインバウンド市場を創造
<「国立公園満喫プロジェクト」 URL>
http://www.env.go.jp/nature/mankitsu-project/