英語教育に「異文化理解」が必要な3つの理由
[20/08/26]
提供元:@Press
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グローバルに活躍する人材には、「語学力だけではなく、異文化コミュニケーションの能力が必要である」と言われ、小学校英語教育においても、異文化理解を促進することが求められるようになりました。
ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所(※以下、IBS)は、異文化コミュニケーションを専門とする東京外国語大学(東京・府中市) 岡田昭人教授への取材に基づき、「なぜ、異文化理解が必要なのか」という理由について考察します。
■ 「ステレオタイプ」「スキーマ」「非言語的要素」がコミュニケーションを妨げる
異文化理解や異文化コミュニケーションに関しては、グローバル企業では研修が行われるようになっており、大学でも専門的に学べるようになってきています。これは、小学校の英語教育にとっても決して無関係なことではありません。文部科学省(2017)の学習指導要領には「世界の人々と相互の立場を尊重、協調しながら交流を行っていけるようにすること」が目標に含まれ、授業では「英語の背景にある文化に対する関心を高め、理解を深めようとする態度を養う」ことができるようなテーマを扱うことが求められています。
現代はVUCA(*)時代。東京外国語大学の岡田昭人教授は、その中で従来の日本の学校教育では身につかない能力が必要とされており、誰とでも協調的な対話ができるコミュニケーション力はその一つと考えています。ただし、Aという文化圏の人とBという文化圏の人が接する場面では、メッセージを発する際にも、メッセージを受け取る際にも、A とBそれぞれの文化・社会的背景が影響し、ときには「ノイズ(コミュニケーションを妨げるもの)」となって円滑なコミュニケーションを邪魔すると指摘します。
*VUCA:Volatility(変動)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧)といった特徴をもつ予測不可能な状況
では何が「ノイズ」になるのでしょうか。岡田教授は以下の3つを挙げています。
[1] 相手の思考を無視してしまう「ステレオタイプ」
[2] 相手を見誤ってしまう「スキーマ」
[3] 誤解が生じやすい「非言語的要素」
「ステレオタイプ」は「アメリカは〜」「イギリス人は〜」「英語圏の人たちは〜」というような、国や人種、地域に関するものだけではなく、「関西の人はおもしろいことを言う」「A型の人はまじめ」というように、ごく身近なところにも存在します。ですが、同じ国や文化の中で生まれ育っても、全員が同じものを好きになり、同じ考え方をするわけではないのです。
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/223670/img_223670_1.jpg
また過去の反応や経験から得た情報をもとに、新しく入ってくる情報の枠組みを予想したり期待したりする「スキーマ」もノイズになり得ると岡田教授。私たちは、性別、家庭、学校、地域、国、宗教、職種や会社など、さまざまなグループに属しながら生活する過程で、そのグループでの常識を無意識に身につけ、それが当たり前だと考えながら行動するようになります。このような習慣や社会的規範は、「隠れた文化」と呼ばれ(岡田, 2015)、それぞれの文化特有のスキーマもあり、それがコミュニケーションを妨げるものになります。
非言語コミュニケーションには、その会話が行われている状況や背景のほか、表情、ジェスチャー、アイコンタクト、対人距離のとり方、時間の概念、沈黙の解釈、会話のリズムなど、さまざまな要素がありますが、特にジェスチャーは、誤解を生じさせやすいコミュニケーション方法だといいます。例えば、一見、世界共通のように思える「OK」サインが国によっては相手を傷つけてしまい、“Yes”という意味で首を縦に振る国もあれば、インドのように首を横に振る国もある、ということです。
■ 子どものころから異文化理解教育が需要
岡田教授は子どもの異文化理解教育においては、親や教師が異文化に興味をもち、さまざまな文化の違いを理解しているかどうか、理解しようとしているかどうかが大事だと指摘します。
また子どものころに外国の人と親しくなる体験が、外国語や異文化体験、国際交流、環境や貧困、戦争などの国際的な問題への興味・関心につながる要因の一つであることを示した研究(林原, 2011)が日本にもあることから、家庭や小学校で海外の子どもたちや地域にいる留学生と楽しく触れ合うだけでも英語教育にとって意義があるかもしれません。
「外国語によるコミュニケーションを円滑に行うためには、どうしたら相手により伝わるかを思考しながら、表現する内容や表現方法を自己選択し、尋ねたり答えたりするようにすることが大切である」(文部科学省, 2017)という学習指導要領での考えを実現するには、もう一歩踏み込んで、異文化に対する思い込みや先入観、日本では常識であることがほかの文化では通用しないということに気づく体験をすることが重要だと考えられます。
詳しい内容はIBS研究所で公開中の下記記事をご覧ください。
■英語教育に「異文化理解」が必要な理由 〜コミュニケーションの妨げになるものとは?〜
https://bilingualscience.com/english/%e8%8b%b1%e8%aa%9e%e6%95%99%e8%82%b2%e3%81%ab%e3%80%8c%e7%95%b0%e6%96%87%e5%8c%96%e7%90%86%e8%a7%a3%e3%80%8d%e3%81%8c%e5%bf%85%e8%a6%81%e3%81%aa%e7%90%86%e7%94%b1-%e3%80%9c%e3%82%b3%e3%83%9f%e3%83%a5/
■ワールド・ファミリーバイリンガル サイエンス研究所(World Family's Institute Of Bilingual Science)
事業内容:教育に関する研究機関
所 長:大井静雄(東京慈恵医科大学脳神経外科教授/医学博士)
設 立:2016年10 月
URL :https://bilingualscience.com/
ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所(※以下、IBS)は、異文化コミュニケーションを専門とする東京外国語大学(東京・府中市) 岡田昭人教授への取材に基づき、「なぜ、異文化理解が必要なのか」という理由について考察します。
■ 「ステレオタイプ」「スキーマ」「非言語的要素」がコミュニケーションを妨げる
異文化理解や異文化コミュニケーションに関しては、グローバル企業では研修が行われるようになっており、大学でも専門的に学べるようになってきています。これは、小学校の英語教育にとっても決して無関係なことではありません。文部科学省(2017)の学習指導要領には「世界の人々と相互の立場を尊重、協調しながら交流を行っていけるようにすること」が目標に含まれ、授業では「英語の背景にある文化に対する関心を高め、理解を深めようとする態度を養う」ことができるようなテーマを扱うことが求められています。
現代はVUCA(*)時代。東京外国語大学の岡田昭人教授は、その中で従来の日本の学校教育では身につかない能力が必要とされており、誰とでも協調的な対話ができるコミュニケーション力はその一つと考えています。ただし、Aという文化圏の人とBという文化圏の人が接する場面では、メッセージを発する際にも、メッセージを受け取る際にも、A とBそれぞれの文化・社会的背景が影響し、ときには「ノイズ(コミュニケーションを妨げるもの)」となって円滑なコミュニケーションを邪魔すると指摘します。
*VUCA:Volatility(変動)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧)といった特徴をもつ予測不可能な状況
では何が「ノイズ」になるのでしょうか。岡田教授は以下の3つを挙げています。
[1] 相手の思考を無視してしまう「ステレオタイプ」
[2] 相手を見誤ってしまう「スキーマ」
[3] 誤解が生じやすい「非言語的要素」
「ステレオタイプ」は「アメリカは〜」「イギリス人は〜」「英語圏の人たちは〜」というような、国や人種、地域に関するものだけではなく、「関西の人はおもしろいことを言う」「A型の人はまじめ」というように、ごく身近なところにも存在します。ですが、同じ国や文化の中で生まれ育っても、全員が同じものを好きになり、同じ考え方をするわけではないのです。
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/223670/img_223670_1.jpg
また過去の反応や経験から得た情報をもとに、新しく入ってくる情報の枠組みを予想したり期待したりする「スキーマ」もノイズになり得ると岡田教授。私たちは、性別、家庭、学校、地域、国、宗教、職種や会社など、さまざまなグループに属しながら生活する過程で、そのグループでの常識を無意識に身につけ、それが当たり前だと考えながら行動するようになります。このような習慣や社会的規範は、「隠れた文化」と呼ばれ(岡田, 2015)、それぞれの文化特有のスキーマもあり、それがコミュニケーションを妨げるものになります。
非言語コミュニケーションには、その会話が行われている状況や背景のほか、表情、ジェスチャー、アイコンタクト、対人距離のとり方、時間の概念、沈黙の解釈、会話のリズムなど、さまざまな要素がありますが、特にジェスチャーは、誤解を生じさせやすいコミュニケーション方法だといいます。例えば、一見、世界共通のように思える「OK」サインが国によっては相手を傷つけてしまい、“Yes”という意味で首を縦に振る国もあれば、インドのように首を横に振る国もある、ということです。
■ 子どものころから異文化理解教育が需要
岡田教授は子どもの異文化理解教育においては、親や教師が異文化に興味をもち、さまざまな文化の違いを理解しているかどうか、理解しようとしているかどうかが大事だと指摘します。
また子どものころに外国の人と親しくなる体験が、外国語や異文化体験、国際交流、環境や貧困、戦争などの国際的な問題への興味・関心につながる要因の一つであることを示した研究(林原, 2011)が日本にもあることから、家庭や小学校で海外の子どもたちや地域にいる留学生と楽しく触れ合うだけでも英語教育にとって意義があるかもしれません。
「外国語によるコミュニケーションを円滑に行うためには、どうしたら相手により伝わるかを思考しながら、表現する内容や表現方法を自己選択し、尋ねたり答えたりするようにすることが大切である」(文部科学省, 2017)という学習指導要領での考えを実現するには、もう一歩踏み込んで、異文化に対する思い込みや先入観、日本では常識であることがほかの文化では通用しないということに気づく体験をすることが重要だと考えられます。
詳しい内容はIBS研究所で公開中の下記記事をご覧ください。
■英語教育に「異文化理解」が必要な理由 〜コミュニケーションの妨げになるものとは?〜
https://bilingualscience.com/english/%e8%8b%b1%e8%aa%9e%e6%95%99%e8%82%b2%e3%81%ab%e3%80%8c%e7%95%b0%e6%96%87%e5%8c%96%e7%90%86%e8%a7%a3%e3%80%8d%e3%81%8c%e5%bf%85%e8%a6%81%e3%81%aa%e7%90%86%e7%94%b1-%e3%80%9c%e3%82%b3%e3%83%9f%e3%83%a5/
■ワールド・ファミリーバイリンガル サイエンス研究所(World Family's Institute Of Bilingual Science)
事業内容:教育に関する研究機関
所 長:大井静雄(東京慈恵医科大学脳神経外科教授/医学博士)
設 立:2016年10 月
URL :https://bilingualscience.com/