「デジタルリーダーの志向性調査」の結果を公開 デジタルリーダーの約半数が1年以内の転職を検討 〜DX推進のリーダーとなる人材確保には、優秀な組織と知的好奇心を刺激するミッションが鍵に〜
[21/03/25]
提供元:@Press
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株式会社NTTデータ経営研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:柳 圭一郎、以下 当社)は、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:塚本 良江)が提供する「NTTコム リサーチ」登録モニターを対象に「デジタルリーダーの志向性調査」(以下 本調査)を実施しました。
新型コロナウイルスの影響による生活様式の変化により、企業におけるデジタル・トランスフォーメーション(DX)の重要性はますます高まっています。しかし、さまざまな調査・リポートで述べられているように、人材不足によってDXを推進できていない企業が見受けられます。当社では、2019年9月にデジタル技術に秀でた『デジタルエンジニア』を対象に意識調査(注1)をしたところ、上司・リーダーを重要視することがわかりました。そのため、今回はデジタルエンジニアを率いてDXを推進する人材を『デジタルリーダー』と定義して、これに該当する人材を対象に意識調査を行いました。
調査の結果、デジタルリーダーはデジタルエンジニア以上にマーケットにおいて少数、かつ、転職志向が強く、企業が必要な人材を確保することが難しいことが明らかになりました。また、デジタルリーダーの志向性として、デジタルエンジニアと同様にスキルアップを重視するという傾向がみられた一方で、異なる点も明らかになりました。デジタルリーダーは、自身の専門領域に関わらず、さまざまな分野での経験を求めており、かつ、周囲と協調しながら自分を高めていきたい、という考えを持っています。
本志向性を踏まえると、企業がデジタルリーダーを確保するためには、優秀な人材が集まったチームやプロジェクトへの配属に加え、チャレンジングなミッションを与え、デジタルリーダーの知的好奇心を刺激し続けることが重要となります。
DXにおいて、デジタルリーダー/デジタルエンジニアいずれも必要な人材ですが、両者は異なる志向性を持っています。企業として、自社に必要な人材とその志向性を理解し、最適な環境を提供することが、人材の充足につながり、ひいてはDXの推進につながると考えられます。
【本調査におけるデジタルエンジニア・デジタルリーダーの定義】
本調査では、一般的なDXに関連する技術・サービス・手法へのかかわりを、デジタルエンジニアの判定項目として設定。いずれか一つでも、「実務が問題なくこなせるレベル」と回答した対象者を『デジタルエンジニア』と定義した。
また、上記に加え、DXプロジェクトでの役割・立場について、「プロジェクトリーダー」以上と回答し、かつ、ビジネススキルとして、得意分野を2つ以上保有する人を『デジタルリーダー』と定義した。
なお、いずれにもあてはまらない人材は、『非デジタル人材』としている。
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/252654/LL_img_252654_1.jpg
本調査における定義
【調査の背景】
I) DX推進に必要な人材
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、企業の取り巻く環境は大きく変化している。不要不急の外出の規制やソーシャルディスタンスを保った生活様式の促進により、サービスの在り方が対面から非対面へと変化し、企業活動もリモートワーク中心の業務形態に移行が進んでいる。そのため、企業・官公庁・教育機関に至るまで、テクノロジー指向のサービス開発や業務改善、いわゆる「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」の必要性が高まっている。
多くの企業は上述した状況を理解しており、DXを重要事項として掲げている。(注2)しかし、DXに必要な人材の不在によって、DX推進が阻害されている企業が見受けられる。(注3)これまでさまざまな調査・リポートでも、DX成功のカギは人材にあることが指摘されており(注3)、企業にとって人材確保は喫緊の課題となっている。
では、DXを成功させるには、どのような人材が必要となるのか。DXとは、デジタル技術を活用し、企業のビジネス全体を変革させることである。(注4)具体的には、新規事業の創出、対顧客業務の改革、バックオフィスの改革といった観点が挙げられる。テクノロジーが著しく進化する中では、企業はビジネスを取り巻く環境の変化に合わせ、経営層の描くビジョンに基づき、継続した変革を推進する必要がある。そのため、DXを推進する部隊には、「デジタル技術に秀でた人材」と「彼らをまとめながら、デジタル技術を事業や商品・サービス、業務の変革に結びつけ、プロジェクトを推進する人材」が必要となる。
本調査では、両者を「デジタル人材」とし、なかでも、前者を「デジタルエンジニア」、後者を「デジタルリーダー」と定義する。(図1)
画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/252654/LL_img_252654_2.jpg
図1:DXの推進体制例
「デジタルエンジニア」は高度なデジタルスキルを備えていることが人材要件である一方で「デジタルリーダー」はデジタル技術やデジタルエンジニアを活用するためのデジタルスキルだけでなく、事業やサービスを構想するためのビジネススキル、変革を牽引するための主体性・意欲・好奇心などのマインドセットのいずれも備えていることが要件となる。(注5)(図2)
両者とも、DX推進において重要な人材であることは間違いないが、当社が2019年に実施した調査(注1)において「デジタルエンジニア」の働く上での重視点として「上司・リーダーの選定」が挙がっており、DXの推進には「デジタルリーダー」の確保が肝要になると考えられる。
そこで「デジタルリーダー」とはどのような人物像で、彼らを確保するためには企業として何をすべきであるかを明らかにするため、本調査を行った。
画像3: https://www.atpress.ne.jp/releases/252654/LL_img_252654_3.jpg
図2:DX推進に必要な人材の要件
【主な調査結果と考察】
I) デジタルリーダーのボリュームと属性的な特徴
今回、20代〜40代の有職者を対象に調査を行ったところ、デジタルリーダーは全体の約2%しか存在しないことが分かった。(図3)デジタルエンジニアは全体の約6%(デジタル人材は約9%)であり、デジタルリーダーがいかに希少な存在であるかが分かる。
画像4: https://www.atpress.ne.jp/releases/252654/LL_img_252654_4.jpg
図3:デジタルリーダーのボリューム
デジタルリーダーの年代構成を見ると、デジタルエンジニアと比較し、年代が上がるほどボリュームが大きくなることが確認された。(図4)これは、DXを推進するには、牽引する力やビジネスの知見も必要とされることから、ある程度の社会経験が必要ということがわかる。その他にも、デジタルリーダーは、男性の割合が大きく、既婚率はやや高いこと、また、地方に少なく首都圏に多いことが確認された。以上のことから、デジタルリーダーの典型的な属性は、「首都圏に住む30代後半の既婚男性」と考えられ、際立った特徴は有していない。
画像5: https://www.atpress.ne.jp/releases/252654/LL_img_252654_5.jpg
図4:デジタルリーダーの属性的特徴
II) デジタルリーダーの転職流動性
次に、デジタルリーダーの転職流動性について確認した。(図5)デジタルリーダーは約85%が転職を経験しており、この転職経験者数はデジタルエンジニアの約1.4倍(一般層の約1.6倍)であった。また、デジタルリーダーの約83%は現在も転職の意向があり、約46%は1年以内の転職を考えている。1年以内の転職意向もデジタルエンジニアの約2倍(一般層の約7倍)であった。「デジタルエンジニアの転職流動性の高さ」は、これまで多くのリサーチデータによって示されてきたが、本調査の結果からデジタルリーダーはその傾向がより顕著であることが分かった。
画像6: https://www.atpress.ne.jp/releases/252654/LL_img_252654_6.jpg
図5:デジタルリーダーの転職流動性
上記を踏まえると、デジタルリーダーは、属性は特徴的でないが、存在は希少であり、転職流動性が極めて高い。適切な人材を確保しDXを推進するためにも、デジタルリーダーのキャリアや働き方に対する志向性を理解した上での人材確保が重要となる。
III) デジタルリーダーの仕事に対する志向性(1)
本調査では、デジタルリーダーの志向性をより詳細に確認するために、デジタルリーダーに対して転職理由や働く上で重視する点について調査を行った。(図6)
まず、転職理由については、デジタル人材に共通して「より高い報酬を得る」「スキルアップの学びができる環境で働く」ことが挙がった。デジタルリーダーは、上記2項目と並んで「能力が高く刺激しあえる人材と働く」ことを挙げており、社員同士でお互いの強みを高め合い、相乗的に成長する働き方を望む志向が確認された。一方、デジタルエンジニアは、上記2項目に次いで「より興味のある分野への挑戦」を挙げており、自身のスキルやテーマを深めるようなキャリア志向であることがわかった。
これらの結果から、デジタルリーダーは「人」を重視しチームや組織とともに成長する《チームワーク型》の働き方、デジタルエンジニアは「仕事」を軸に自分のスキルや領域を深める《専門化型》のキャリア志向と、それぞれ異なる志向性が確認された。
画像7: https://www.atpress.ne.jp/releases/252654/LL_img_252654_7.jpg
図6:デジタルリーダー・エンジニアの転職理由
IV) デジタルリーダーの仕事に対する志向性(2)
働く上で重視する点について、いくつかのテーマに分けて聴取した。そのうち〈人材〉〈組織〉〈評価・キャリア開発〉〈仕事内容〉〈職場環境〉の5つについて、デジタルリーダーの特徴が確認された。(図7)
画像8: https://www.atpress.ne.jp/releases/252654/LL_img_252654_8.jpg
図7:デジタルリーダー/デジタルエンジニアが働く上で重視すること(観点別上位2項目)
デジタルリーダーは、〈人材〉の観点において「能力が高く刺激し合える同僚」を重視する。転職理由にも挙がった「能力が高い人材と高め合う」働き方は、同僚に主眼を置いていることが明らかになった。また、〈組織〉については「互いに協力的で尊重し合える社風」を重視し、チームワークを重んじる傾向が読み取れた。〈職場環境〉〈仕事内容〉に対しては、「興味のあるナレッジへのアクセシビリティ」や「知的好奇心が満たされる仕事」を重視しており、自分の専門性を高める方向に限らず、関心のある領域に知識・スキルを広げていくキャリアを志向することが分かった。
〈評価・キャリア開発〉の観点では「会社からスキル形成の機会が提供されること」を重視し、デジタルリーダーが新たな領域に挑戦する上で、企業や組織に対してスキルアップの支援を期待することがうかがえる。
これらを踏まえ、デジタルリーダーは仕事や転職を通じた《スキルや領域の拡大》を実現することに主眼を置き、それに必要な要素として「スキル形成の機会」「優秀な同僚」「チームワーク」などを求めることが分かった。
デジタルエンジニアは、〈人材〉〈組織〉の観点として「自分と価値観の合う社員が多い」「風通しが良い」ことを挙げる。〈職場環境〉については「リモートワーク」「自分専用の席」など一人一人にあった環境の整備を重視する。デジタルリーダーがチームワークや同僚との高め合いを重んじる一方で、デジタルエンジニアは《個の働き方》を望み、コミュニケーションにおいて“摩擦”がない状態を好む。〈評価・キャリア開発〉の観点では、「評価基準やプロセスが明確」であることを重視し、社内の制度や基準等においても見通しが良い状態を求める傾向が分かった。また、〈仕事内容〉については「自分のスキルを生かせる」ことを重視し、彼らの専門性を追求する志向がより明確に表れた。
これらを踏まえ、デジタルエンジニアは個々に合った働き方ができる環境に身を置きながら、自分のスキルや領域を深化させるようなキャリア志向であることが読み取れた。
V) 考察
本調査の結果から、デジタルリーダーの特徴が明らかになったとともに、デジタルリーダーを確保するために押さえるべきポイントをつかむことができた。
デジタルリーダーは、デジタルエンジニア以上にマーケットにおいて少数、かつ、転職志向が強いため、企業はデジタルリーダーの志向性を理解した上で、確保にむけた施策を検討する必要がある。デジタルリーダーの志向性は、デジタルエンジニア同様、スキルアップを重視するという傾向がみられたものの、自身の専門領域に関わらず、さまざまな分野への挑戦や多様な人たちとの接触を通じて、自分を高めていきたい、という考えを持っている。本志向性を踏まえると、企業がデジタルリーダーを確保するためには、優秀な人材が集まったチームやプロジェクトへの配属に加え、彼らの知的好奇心を刺激するようなミッションを与え続けることが重要となる。
例えば、採用時には、加入する組織に優秀かつ多様なメンバーが揃っていること(揃えようとしていること)や、デジタルリーダーの興味をひくような先進的なプロジェクトや社運をかけたプロジェクトが進行していること(進行しようとしていること)を伝える必要がある。また、採用後に定着させるためには、デジタルリーダーのモチベーションや取り組んでいる仕事の状況を把握し、さらにチャレンジングな課題に取り組めるアサインメントや、それに紐づいたゴール設定をしていくことが肝要となる。そのため、デジタルリーダーの確保には、彼らを束ねる頭領・責任者(CDO)が大きな役割を担っており、CDOがデジタルリーダーの知的好奇心を刺激し続けられるかどうかがポイントになる。
DXを推進するには、デジタルリーダー/デジタルエンジニアいずれも必要不可欠な存在であるが、両者は異なる志向性を持っている。企業として、自社に必要な人材とその志向性を理解し、デジタルリーダー/デジタルエンジニアそれぞれに最適な環境を提供することが、人材の充足につながり、ひいてはDXの推進につながると考えられる。
(注1) 出典:NTTデータ経営研究所「デジタル人材定着に向けたアンケート調査」(2019.09)
https://www.nttdata-strategy.com/newsrelease/190930.html
(注2) 出典:日経BP総合研究所「経営トップの4割弱がDXを現場任せ、調査で分かったコロナ禍でも変わらぬ現状」(2021.01)
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01526/011300002/
(注3) 出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進に向けた企業とIT人材の実態調査」(2020.05)
https://www.ipa.go.jp/ikc/reports/20200514_1.html
出典:三菱総合研究所「DX成功のカギはデジタル人材の育成」(2020.05)
https://www.mri.co.jp/knowledge/column/20200528.html
出典:電通デジタル「日本企業のDXはコロナ禍で加速するも推進の障壁はDX人材の育成」(2020.12)
https://www.dentsudigital.co.jp/release/2020/1218-000737/
(注4) 出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「デジタルトランスフォーメーションに必要な技術と人材」(2018)
https://www.ipa.go.jp/files/000067935.pdf
(注5) 本調査におけるデジタルリーダーの人材要件は下記を参考に定義
内山悟志「デジタル時代のイノベーション戦略」技術評論社(2019)
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」(2019.04)
https://www.ipa.go.jp/files/000073017.pdf
新型コロナウイルスの影響による生活様式の変化により、企業におけるデジタル・トランスフォーメーション(DX)の重要性はますます高まっています。しかし、さまざまな調査・リポートで述べられているように、人材不足によってDXを推進できていない企業が見受けられます。当社では、2019年9月にデジタル技術に秀でた『デジタルエンジニア』を対象に意識調査(注1)をしたところ、上司・リーダーを重要視することがわかりました。そのため、今回はデジタルエンジニアを率いてDXを推進する人材を『デジタルリーダー』と定義して、これに該当する人材を対象に意識調査を行いました。
調査の結果、デジタルリーダーはデジタルエンジニア以上にマーケットにおいて少数、かつ、転職志向が強く、企業が必要な人材を確保することが難しいことが明らかになりました。また、デジタルリーダーの志向性として、デジタルエンジニアと同様にスキルアップを重視するという傾向がみられた一方で、異なる点も明らかになりました。デジタルリーダーは、自身の専門領域に関わらず、さまざまな分野での経験を求めており、かつ、周囲と協調しながら自分を高めていきたい、という考えを持っています。
本志向性を踏まえると、企業がデジタルリーダーを確保するためには、優秀な人材が集まったチームやプロジェクトへの配属に加え、チャレンジングなミッションを与え、デジタルリーダーの知的好奇心を刺激し続けることが重要となります。
DXにおいて、デジタルリーダー/デジタルエンジニアいずれも必要な人材ですが、両者は異なる志向性を持っています。企業として、自社に必要な人材とその志向性を理解し、最適な環境を提供することが、人材の充足につながり、ひいてはDXの推進につながると考えられます。
【本調査におけるデジタルエンジニア・デジタルリーダーの定義】
本調査では、一般的なDXに関連する技術・サービス・手法へのかかわりを、デジタルエンジニアの判定項目として設定。いずれか一つでも、「実務が問題なくこなせるレベル」と回答した対象者を『デジタルエンジニア』と定義した。
また、上記に加え、DXプロジェクトでの役割・立場について、「プロジェクトリーダー」以上と回答し、かつ、ビジネススキルとして、得意分野を2つ以上保有する人を『デジタルリーダー』と定義した。
なお、いずれにもあてはまらない人材は、『非デジタル人材』としている。
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/252654/LL_img_252654_1.jpg
本調査における定義
【調査の背景】
I) DX推進に必要な人材
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、企業の取り巻く環境は大きく変化している。不要不急の外出の規制やソーシャルディスタンスを保った生活様式の促進により、サービスの在り方が対面から非対面へと変化し、企業活動もリモートワーク中心の業務形態に移行が進んでいる。そのため、企業・官公庁・教育機関に至るまで、テクノロジー指向のサービス開発や業務改善、いわゆる「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」の必要性が高まっている。
多くの企業は上述した状況を理解しており、DXを重要事項として掲げている。(注2)しかし、DXに必要な人材の不在によって、DX推進が阻害されている企業が見受けられる。(注3)これまでさまざまな調査・リポートでも、DX成功のカギは人材にあることが指摘されており(注3)、企業にとって人材確保は喫緊の課題となっている。
では、DXを成功させるには、どのような人材が必要となるのか。DXとは、デジタル技術を活用し、企業のビジネス全体を変革させることである。(注4)具体的には、新規事業の創出、対顧客業務の改革、バックオフィスの改革といった観点が挙げられる。テクノロジーが著しく進化する中では、企業はビジネスを取り巻く環境の変化に合わせ、経営層の描くビジョンに基づき、継続した変革を推進する必要がある。そのため、DXを推進する部隊には、「デジタル技術に秀でた人材」と「彼らをまとめながら、デジタル技術を事業や商品・サービス、業務の変革に結びつけ、プロジェクトを推進する人材」が必要となる。
本調査では、両者を「デジタル人材」とし、なかでも、前者を「デジタルエンジニア」、後者を「デジタルリーダー」と定義する。(図1)
画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/252654/LL_img_252654_2.jpg
図1:DXの推進体制例
「デジタルエンジニア」は高度なデジタルスキルを備えていることが人材要件である一方で「デジタルリーダー」はデジタル技術やデジタルエンジニアを活用するためのデジタルスキルだけでなく、事業やサービスを構想するためのビジネススキル、変革を牽引するための主体性・意欲・好奇心などのマインドセットのいずれも備えていることが要件となる。(注5)(図2)
両者とも、DX推進において重要な人材であることは間違いないが、当社が2019年に実施した調査(注1)において「デジタルエンジニア」の働く上での重視点として「上司・リーダーの選定」が挙がっており、DXの推進には「デジタルリーダー」の確保が肝要になると考えられる。
そこで「デジタルリーダー」とはどのような人物像で、彼らを確保するためには企業として何をすべきであるかを明らかにするため、本調査を行った。
画像3: https://www.atpress.ne.jp/releases/252654/LL_img_252654_3.jpg
図2:DX推進に必要な人材の要件
【主な調査結果と考察】
I) デジタルリーダーのボリュームと属性的な特徴
今回、20代〜40代の有職者を対象に調査を行ったところ、デジタルリーダーは全体の約2%しか存在しないことが分かった。(図3)デジタルエンジニアは全体の約6%(デジタル人材は約9%)であり、デジタルリーダーがいかに希少な存在であるかが分かる。
画像4: https://www.atpress.ne.jp/releases/252654/LL_img_252654_4.jpg
図3:デジタルリーダーのボリューム
デジタルリーダーの年代構成を見ると、デジタルエンジニアと比較し、年代が上がるほどボリュームが大きくなることが確認された。(図4)これは、DXを推進するには、牽引する力やビジネスの知見も必要とされることから、ある程度の社会経験が必要ということがわかる。その他にも、デジタルリーダーは、男性の割合が大きく、既婚率はやや高いこと、また、地方に少なく首都圏に多いことが確認された。以上のことから、デジタルリーダーの典型的な属性は、「首都圏に住む30代後半の既婚男性」と考えられ、際立った特徴は有していない。
画像5: https://www.atpress.ne.jp/releases/252654/LL_img_252654_5.jpg
図4:デジタルリーダーの属性的特徴
II) デジタルリーダーの転職流動性
次に、デジタルリーダーの転職流動性について確認した。(図5)デジタルリーダーは約85%が転職を経験しており、この転職経験者数はデジタルエンジニアの約1.4倍(一般層の約1.6倍)であった。また、デジタルリーダーの約83%は現在も転職の意向があり、約46%は1年以内の転職を考えている。1年以内の転職意向もデジタルエンジニアの約2倍(一般層の約7倍)であった。「デジタルエンジニアの転職流動性の高さ」は、これまで多くのリサーチデータによって示されてきたが、本調査の結果からデジタルリーダーはその傾向がより顕著であることが分かった。
画像6: https://www.atpress.ne.jp/releases/252654/LL_img_252654_6.jpg
図5:デジタルリーダーの転職流動性
上記を踏まえると、デジタルリーダーは、属性は特徴的でないが、存在は希少であり、転職流動性が極めて高い。適切な人材を確保しDXを推進するためにも、デジタルリーダーのキャリアや働き方に対する志向性を理解した上での人材確保が重要となる。
III) デジタルリーダーの仕事に対する志向性(1)
本調査では、デジタルリーダーの志向性をより詳細に確認するために、デジタルリーダーに対して転職理由や働く上で重視する点について調査を行った。(図6)
まず、転職理由については、デジタル人材に共通して「より高い報酬を得る」「スキルアップの学びができる環境で働く」ことが挙がった。デジタルリーダーは、上記2項目と並んで「能力が高く刺激しあえる人材と働く」ことを挙げており、社員同士でお互いの強みを高め合い、相乗的に成長する働き方を望む志向が確認された。一方、デジタルエンジニアは、上記2項目に次いで「より興味のある分野への挑戦」を挙げており、自身のスキルやテーマを深めるようなキャリア志向であることがわかった。
これらの結果から、デジタルリーダーは「人」を重視しチームや組織とともに成長する《チームワーク型》の働き方、デジタルエンジニアは「仕事」を軸に自分のスキルや領域を深める《専門化型》のキャリア志向と、それぞれ異なる志向性が確認された。
画像7: https://www.atpress.ne.jp/releases/252654/LL_img_252654_7.jpg
図6:デジタルリーダー・エンジニアの転職理由
IV) デジタルリーダーの仕事に対する志向性(2)
働く上で重視する点について、いくつかのテーマに分けて聴取した。そのうち〈人材〉〈組織〉〈評価・キャリア開発〉〈仕事内容〉〈職場環境〉の5つについて、デジタルリーダーの特徴が確認された。(図7)
画像8: https://www.atpress.ne.jp/releases/252654/LL_img_252654_8.jpg
図7:デジタルリーダー/デジタルエンジニアが働く上で重視すること(観点別上位2項目)
デジタルリーダーは、〈人材〉の観点において「能力が高く刺激し合える同僚」を重視する。転職理由にも挙がった「能力が高い人材と高め合う」働き方は、同僚に主眼を置いていることが明らかになった。また、〈組織〉については「互いに協力的で尊重し合える社風」を重視し、チームワークを重んじる傾向が読み取れた。〈職場環境〉〈仕事内容〉に対しては、「興味のあるナレッジへのアクセシビリティ」や「知的好奇心が満たされる仕事」を重視しており、自分の専門性を高める方向に限らず、関心のある領域に知識・スキルを広げていくキャリアを志向することが分かった。
〈評価・キャリア開発〉の観点では「会社からスキル形成の機会が提供されること」を重視し、デジタルリーダーが新たな領域に挑戦する上で、企業や組織に対してスキルアップの支援を期待することがうかがえる。
これらを踏まえ、デジタルリーダーは仕事や転職を通じた《スキルや領域の拡大》を実現することに主眼を置き、それに必要な要素として「スキル形成の機会」「優秀な同僚」「チームワーク」などを求めることが分かった。
デジタルエンジニアは、〈人材〉〈組織〉の観点として「自分と価値観の合う社員が多い」「風通しが良い」ことを挙げる。〈職場環境〉については「リモートワーク」「自分専用の席」など一人一人にあった環境の整備を重視する。デジタルリーダーがチームワークや同僚との高め合いを重んじる一方で、デジタルエンジニアは《個の働き方》を望み、コミュニケーションにおいて“摩擦”がない状態を好む。〈評価・キャリア開発〉の観点では、「評価基準やプロセスが明確」であることを重視し、社内の制度や基準等においても見通しが良い状態を求める傾向が分かった。また、〈仕事内容〉については「自分のスキルを生かせる」ことを重視し、彼らの専門性を追求する志向がより明確に表れた。
これらを踏まえ、デジタルエンジニアは個々に合った働き方ができる環境に身を置きながら、自分のスキルや領域を深化させるようなキャリア志向であることが読み取れた。
V) 考察
本調査の結果から、デジタルリーダーの特徴が明らかになったとともに、デジタルリーダーを確保するために押さえるべきポイントをつかむことができた。
デジタルリーダーは、デジタルエンジニア以上にマーケットにおいて少数、かつ、転職志向が強いため、企業はデジタルリーダーの志向性を理解した上で、確保にむけた施策を検討する必要がある。デジタルリーダーの志向性は、デジタルエンジニア同様、スキルアップを重視するという傾向がみられたものの、自身の専門領域に関わらず、さまざまな分野への挑戦や多様な人たちとの接触を通じて、自分を高めていきたい、という考えを持っている。本志向性を踏まえると、企業がデジタルリーダーを確保するためには、優秀な人材が集まったチームやプロジェクトへの配属に加え、彼らの知的好奇心を刺激するようなミッションを与え続けることが重要となる。
例えば、採用時には、加入する組織に優秀かつ多様なメンバーが揃っていること(揃えようとしていること)や、デジタルリーダーの興味をひくような先進的なプロジェクトや社運をかけたプロジェクトが進行していること(進行しようとしていること)を伝える必要がある。また、採用後に定着させるためには、デジタルリーダーのモチベーションや取り組んでいる仕事の状況を把握し、さらにチャレンジングな課題に取り組めるアサインメントや、それに紐づいたゴール設定をしていくことが肝要となる。そのため、デジタルリーダーの確保には、彼らを束ねる頭領・責任者(CDO)が大きな役割を担っており、CDOがデジタルリーダーの知的好奇心を刺激し続けられるかどうかがポイントになる。
DXを推進するには、デジタルリーダー/デジタルエンジニアいずれも必要不可欠な存在であるが、両者は異なる志向性を持っている。企業として、自社に必要な人材とその志向性を理解し、デジタルリーダー/デジタルエンジニアそれぞれに最適な環境を提供することが、人材の充足につながり、ひいてはDXの推進につながると考えられる。
(注1) 出典:NTTデータ経営研究所「デジタル人材定着に向けたアンケート調査」(2019.09)
https://www.nttdata-strategy.com/newsrelease/190930.html
(注2) 出典:日経BP総合研究所「経営トップの4割弱がDXを現場任せ、調査で分かったコロナ禍でも変わらぬ現状」(2021.01)
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01526/011300002/
(注3) 出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進に向けた企業とIT人材の実態調査」(2020.05)
https://www.ipa.go.jp/ikc/reports/20200514_1.html
出典:三菱総合研究所「DX成功のカギはデジタル人材の育成」(2020.05)
https://www.mri.co.jp/knowledge/column/20200528.html
出典:電通デジタル「日本企業のDXはコロナ禍で加速するも推進の障壁はDX人材の育成」(2020.12)
https://www.dentsudigital.co.jp/release/2020/1218-000737/
(注4) 出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「デジタルトランスフォーメーションに必要な技術と人材」(2018)
https://www.ipa.go.jp/files/000067935.pdf
(注5) 本調査におけるデジタルリーダーの人材要件は下記を参考に定義
内山悟志「デジタル時代のイノベーション戦略」技術評論社(2019)
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」(2019.04)
https://www.ipa.go.jp/files/000073017.pdf