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ビジネスパーソンの6割が「勤務先の震災対策は不十分」と評価

 民間調査機関の財団法人労務行政研究所(理事長:矢田 敏雄、所在地:東京都港区東麻布1-4-2)ジンジュール編集部では、ビジネスパーソンを対象として「3.11大震災以降の職場と個人の実情に関するアンケート」を実施し、東日本大震災からまもなく1年を迎える現時点での地震・災害への備えや、職場内での変化、ボランティア参加の実情などについて調査いたしました。


【調査結果のポイント】
●勤務先の企業・団体で行われている震災対策の現状を、6割が「不十分」と評価
●「ボランティア休暇が勤務先にあれば利用したい」と3割が回答
●「震災の教訓への意識が薄らいでいる」と感じている人は6割に上る


【調査概要】
調査名 :3.11大震災以降の職場と個人の実情に関するアンケート
調査主体:労務行政研究所 ジンジュール編集部調べ
調査期間:2012年1月27〜31日
調査方法:インターネットリサーチ
調査対象:岩手、宮城、福島の3県を除く全国の20〜59歳のビジネスパーソン485人
     (正社員のほか契約社員、派遣社員を含む)

調査内容PDF: http://www.atpress.ne.jp/releases/25436/a_5.pdf


[1] 勤務先の震災対策は「不十分」が6割占める
  〜震災対策の実施状況と現状への評価

1-1 震災対策として実施割合が高いのは「社内連絡網の整備」
   〜地震・災害対策の実施状況 [図表1]
 まず、勤務先で行われている地震・災害対策について、8つの施策の選択肢で尋ねたところ、「実施している」(震災前から現在の内容で実施・震災後に従来から実施内容を見直し・震災後新たに実施の合計)と答えた割合が最も多かったのは「(1)社内連絡網の整備」64.4%で、全体のほぼ3分の2を占めた[図表1]。次いで「(2)防災・避難訓練の実施」53.2%、「(3)非常時向けの備品の購入・配置」52.9%の順となっている。「震災後新たに実施」した割合は、「(3)非常時向けの備品の購入・配置」が10.1%で最も高い。震災直後、ラジオや懐中電灯、電池などの非常時用品が一斉に店頭から姿を消したことが記憶に新しいが、企業でもこうした備品の確保を急いだところが多かったようだ。
 一方、「実施している」割合が最も低いのは「(8)災害で出社困難な場合の対応ルールの周知」で38.4%にとどまっている。状況を見据えたケースバイケースの対応を原則としている企業も少なくないと見られるが、社員の安全と事業継続の面からは、今後さらに対応の検討が必要なポイントの一つと言えるだろう。

1-2 現状に対して6割が「不十分」と評価
   〜勤務先の地震・災害対策への評価 [図表2]
 次に、[図表1]に挙げた施策を含めて、勤務先で行われている地震・災害対策全体についての評価を尋ねたところ、「十分である」と答えた割合はわずか4.1%、「ほぼ十分である」を合わせても全体の4割程度にとどまった[図表2]。対して、「全く足りない」と答えた割合は28.0%と3割近くを占めた。さらに、「やや足りない」31.5%を合わせるとほぼ6割が勤務先の対策の現状を「不十分」と見ていることが分かる。
 これら評価の理由を自由回答で尋ねた結果では、「対策が何も行われていない」「対策の内容を知らされていない」という答えが多数を占めたほか、「会社(あるいは上司・管理者)の意識が低い」という厳しい指摘も少なからず見られた。


[2] 節電意識以外にあまり大きな変化はなし
  〜震災とその対応を経た後の職場の変化[図表3]
 大地震と大津波、次いで起きた原発事故による甚大な被害。心の不安と現実の混乱への対応を余儀なくされた震災後から今日まで、職場の中ではどのような変化が現れているのだろうか。回答では「使わない電灯や機器の電源を切るなど節電意識が高まった」のみが突出して多く、「そう思う」が35.1%、「ややそう思う」も合わせた割合は全体の4分の3あまりに上った[図表3]。夏場に政府が定めた一律15%減の節電目標への対応、首都圏では短期間とはいえ実際に行われた計画停電などの経験から、節電への意識と行動が根付いているといえるだろう。
 これに対し、他の選択肢では「そう思う」の割合が押しなべて低く、「なるべく残業を控える意識が高まった」は「そう思う」が1割をわずかに超えているが、逆に「そう思わない」割合は28.9%と3倍近くに上っている。
 なお、[図表3]での表示は省略しているが、回答者の役職による違いが最も大きかったのが「顧客や取引先向けの業務やサービス提供に当たり、非常時の対応を織り込んで検討するようになった」への回答で、「そう思う+ややそう思う」の割合が課長クラス以上の管理職層では36.4%となった一方、一般社員層は28.8%にとどまっている。


[3] 3分の2の企業・団体が「義援金の寄付」を実施、「ボランティア休暇がある」は2割
  〜勤務先の被災地支援

3-1 「義援金の寄付」が65.2%、「ボランティアを募り派遣」は26.0%
   〜勤務先が行った被災地支援 [図表4]
 回答者の勤務先が企業・団体としてこれまでに行った被災地支援の内容を尋ねたところ、最も多かったのが「義援金の寄付」で65.2%、全体のほぼ3分の2を占めた[図表4]。これに比べて割合は大きく下がるが、2番目に多かったのが「社内から参加者を募り、被災地へボランティアとして派遣」で26.0%。自社商品や自社以外の商品を寄付・寄贈したという回答もそれぞれ2割強見られた。これら以外に実施した支援の内容を自由回答で尋ねたところ、被災地の子どもを招待するイベントやスポーツ行事などのチャリティイベント開催や、原発事故被害を受けた地域での放射能検査・除染作業を行ったという答えもわずかながら見られた。

3-2 「ボランティア休暇があれば利用したい」が3割
   〜ボランティア休暇の導入状況と意向 [図表5]
 震災以降、被災地の生活再建や復興支援のために、社員のボランティア参加を支援するための休暇制度を設ける企業が相次いでみられた。回答者のビジネスパーソンに、勤務先のボランティア休暇制度の有無について尋ねたところ、「制度あり」は20.0%となった[図表5]。
 こうした制度を導入する契機として、社会貢献に取り組む企業スタンスに加え、ボランティア参加を希望する社員の声に後押しされて制度化を図った例もしばしば聞かれる。そこで、現在、勤務先にボランティア休暇制度がない(「分からない」を含む)と答えたビジネスパーソンに、「もし制度があれば利用したいか」を尋ねてみた。回答結果は、4割近くが「分からない」としているものの、「利用したいと思う」も31.4%に上り、「利用したいとは思わない」28.6%をわずかながら上回っている。


[4] 自らの災害対策は物品の確保がまず第一、個人として義援金に協力した人は7割に上る
  〜ビジネスパーソン自身の災害対策と被災地支援

4-1 災害の備えは「物品の確保」がトップ、2割は「対策行わず」
   〜個人としての災害対策 [図表6]
 震災とその後の経験は、ビジネスパーソン自身の災害対策にどのように生かされているのだろうか。個人として、実際に行っている対策の内容を複数回答で尋ねてみた[図表6]。最も多かったのが「非常時に必要な物品の確保(懐中電灯、電池、ラジオなど)で、47.6%と5割近くを占めた。これに「非常食、飲料水等の備蓄」42.3%が続き、まずは生活維持に必要な品々の準備が最優先、という様子が見て取れる。3番目に多かったのが「家族との連絡手段の確保・確認」41.6%で、上位3項目まで全体の4割以上が実施している形となった。その一方、選択肢に挙げたような対策を全く実施していないという人も2割程度見られている。

4-2 「募金・義援金への協力」が7割占める
   〜個人としての被災地支援 [図表7]
 ビジネスパーソンが個人として行った被災地支援の活動(複数回答)では、勤務先の企業の実施内容と同様に「募金・義援金への協力」が72.0%で最多となった[図表7]。実際に「被災地に出向いてのボランティア活動」に参加した割合は3.3%、回答者485人のうち16人で、勤務先の都道府県別では「東京」が5人で最も多かった。
 ボランティア参加者に自由回答で活動の内容を尋ねたところ、瓦礫やごみ、泥の撤去作業がほとんどを占め、このほかでは避難施設での炊き出しの手伝い、救援物資の仕分け作業などが数件見られた。


[5] 6割が「震災の教訓への意識が薄らいでいる」と回答
  〜震災の教訓への現在の意識と今後 [図表8〜9]
 震災直後、不測の災害に備えて安全を守るために、人々がその経験を生かそうと考えたこと、意識したことは決して少なくなかったはず。その教訓や意識は、発災から1年近くを経てどのように変わったのだろう。ビジネスパーソンに、自分の周囲で震災の教訓に対する意識・関心が薄らいでいるかを尋ねたところ、「ややそう思う」が42.3%で最も多く、これに「そう思う」17.3%を合わせた割合は全体のほぼ6割に上った[図表8]。
 そう考える理由を尋ねた自由回答で最も多く見られたのは「話題に上らなくなった」という答えで、具体的には「マスコミ、ニュースで取り上げられる機会が減った」「原発事故の話題に移ってきた」など報道の影響力を指摘する意見が散見された。また、「緊張感が薄れてきた」「地震に慣れてきた」という答えも少なからず見られ、震災の直接の影響が少ない地域で生活する人々の間では、時間とともに震災の教訓が徐々に風化している様子が見られている。

 最後に、震災の教訓を風化させないために、勤務先に望むこと、勤務先以外の機関や社会に求められると思うことを自由回答で尋ねてみた。[図表9]は、自由回答の内容に即して9つのグループに整理し、それぞれに当てはまる件数から割合を示したものである。最も多かったのは、教訓を風化させないために、訓練などの定期的な行動で定着を図るべき、というもの(26.1%)。次いで、帰宅困難や非常物資の不足、設備面の不安など震災で表面化した勤務先での問題について、教訓を生かして具体的な対応を進めるべきという意見が2番目に多かった(21.4%)。これとほぼ同率(21.0%)で続いたのが、継続的な情報提供・共有を図るべきという意見。とりわけ、“継続的な情報提供”に関しては、震災の経験を風化させないために、マスメディアが中心となって、世間の意識に働き掛けていくべきという指摘が多く見られた。


■ジンジュールの概要 http://www.jinjour.jp/
 労務行政研究所が編集する企業の人事担当者を対象とした人事・労務の専門情報誌『労政時報』の情報提供のノウハウをベースに、「jin-jour ジンジュール」は、“働く現場をもっと元気に!”というコンセプトの下、働くすべての人々に関心の高い、人と会社にまつわるさまざまな情報を、月曜日から金曜日まで毎日更新するWebサイト( http://www.jinjour.jp/ )で発信しています。


■ジンジュールがこれまでに実施したアンケート一覧
1 .上司・先輩からみた新入社員のイメージ調査 2010年7月
2 .職場における上司の実像 2010年9月
3 .ビジネスパーソンの冬のボーナス予想 2010年11月
4 .ビジネスパーソンの健康事情 2011年1月
5 .ビジネスパーソンの“資格取得”事情 2011年3月
6 .ビジネスパーソンの東日本大震災に関するアンケート 2011年4月
7 .人事担当者の仕事に関するアンケート 2011年5月
8 .節電時代における夏のオフィスファッションアンケート 2011年7月
9 .ビジネスパーソンの体力・運動事情 2011年10月
10.ビジネスパーソンの年末事情に関するアンケート 2011年12月


【本調査項目の関連記事】
勤務先の震災対策について
http://www.jinjour.jp/special/49111.html
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