岡山大学が開発した炎症性腸疾患関連腫瘍AI診断システムの有用性を報告
[22/06/30]
提供元:@Press
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岡山大学学術研究院医歯薬学域の河原 祥朗教授、衣笠 秀明助教(研究責任者:光学医療診療部)、山本 峻平医員(現 日本赤十字社 姫路赤十字病院)、平岡 佐規子准教授(岡山大学病院炎症性腸疾患センター)、株式会社両備システムズの研究グループは人工知能(AI)を用いた炎症性腸疾患関連腫瘍の内視鏡診断システムを開発し、その有用性を検討しました。
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/315988/LL_img_315988_1.jpg
岡山大学/両備システムズ
炎症性腸疾患関連腫瘍の治療法には腫瘍を局所的に切除する内視鏡治療と大腸を全摘する外科手術があります。その選択には腫瘍の進行度に対する正確な診断が必要ですが、疾患頻度の低さから十分な診断経験を持つ医師が非常に少なく、また、背景の炎症の影響もあり内視鏡診断学自体が確立していないことから診断精度は依然不十分であるのが実情です。
今回、炎症性腸疾患関連腫瘍99病変862枚から構築した本AIシステムを検討したところ、約80%の正診率で腫瘍の進行度を正しく診断でき、経験ある専門医と同程度もしくはそれ以上の結果でした。今後このAIシステムを用いることで、全ての内視鏡医における診断能の均一化、正診率の向上、確実な治療法の選択が期待されます。
◆発表のポイント
・岡山大学と両備システムズが共同開発した炎症性腸疾患関連腫瘍AI診断システムの有用性を報告しました。
・炎症性腸疾患関連腫瘍は疾患頻度の低さや背景の炎症などから内視鏡診断学はいまだ確立しているとは言い難く、内視鏡診断精度は不十分なのが現状です。
・我々の開発したシステムは本研究により優れた診断精度が示され、今後より確実な治療法の選択に寄与できると思われます。
◆研究者からのひとこと
医療分野においても人工知能の応用は非常にホットな話題であり、多くの研究機関において開発競争がなされています。また、炎症性腸疾患関連腫瘍に対する内視鏡診断は世界中で大きな課題となっています。炎症性腸疾患センターを有する岡山大学病院のデータを使って開発したAIシステムの有用性が証明されたことで、日本のみならず世界の内視鏡診断に変革をもたらすものと期待しています。
画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/315988/LL_img_315988_2.jpg
岡山大学 河原教授(左)、衣笠助教(右)
■発表内容
<現状>
炎症性腸疾患は原因不明の難病ですが、日本における患者数は増加傾向が続いており世界2位の患者数となっています。内科治療の進歩に伴い長期的な罹患者も増加していますが、慢性的な炎症から発生する炎症性腸疾患関連腫瘍が非常に重要な問題となっています。炎症性腸疾患関連腫瘍には進行度にグレードがあり、Low grade dysplasiaには内視鏡による局所切除も選択されることもありますが、High grade dysplasiaと癌に対しては外科手術による大腸全摘が必要とされます。この進行度の診断は病変の内視鏡写真の所見などをもとに行っていますが、疾患頻度の低さや背景疾患に炎症を伴っていることなどからいまだ確立した内視鏡診断学は存在せず、また十分な診断経験をもつ医師は非常に少ないのが現状です。
そのため内視鏡治療も考慮される病変が外科的手術にまわったり、逆に最初から外科的手術を行うべきであった病変に内視鏡治療が行われたりするケースが少なからず存在します。
<研究成果の内容>
2019年、我々は両備システムズと共同で炎症性腸疾患関連腫瘍に対する進行度診断を行うAIシステムのプロトタイプを構築しました。その後改良を重ね精度の向上を図ってきました。
炎症性腸疾患関連腫瘍に対して治療法を選択するうえで、腫瘍をHigh grade dysplasiaもしくは癌と診断できることは非常に重要です。今回、炎症性腸疾患関連腫瘍99病変862枚の画像から構築したAI診断システム用いて、テスト画像への診断精度を検証しました。その結果AI診断システムによる診断の正診率79.0%でした。同画像に対する経験ある内視鏡医の診断の正診率77.8%でした。
<社会的な意義>
消化器内視鏡診療は、経験に基づく診断も重要な因子となります。そのため個々の医師によりその診断能にはバラツキがあり、今後の診療件数の増加に伴いさらに病変の見落としや誤診の増加が危惧されます。本研究によりAIによる消化器内視鏡の自動診断が実現されれば、自動診断ロジックを内視鏡機器に付加することで、リアルタイムで内視鏡自動診断が可能になり、現在個々の内視鏡医の診断能に頼っている現況が大きく改善されると思われます。自動診断による治療法の決定などの期待がなされ、国民に対する利益は非常に大きなものになると考えられます。
今後さらなる精度の向上、システムの実用化を目指して研究を継続したいと思います。
■論文情報
論文名: The diagnostic ability to classify neoplasias occurring
in inflammatory bowel disease by artificial intelligence
and endoscopists -pilot study-
掲載紙: Journal of gastroenterology and hepatology
著者 : Shumpei Yamamoto, Hideaki Kinugasa, Kenta Hamada,
Masahiro Tomiya, Takayoshi Tanimoto, Akimitsu Ohto,
Akira Toda, Daisuke Takei, Minoru Matsubara, Seiyu Suzuki,
Kosuke Inoue, Takehiro Tanaka, Sakiko Hiraoka,
Hiroyuki Okada, Yoshiro Kawahara
URL : https://onlinelibrary.wiley.com/journal/14401746
■会社概要
株式会社両備システムズ
本社所在地 : 岡山県岡山市南区豊成二丁目7番16号
代表者 : 代表取締役社長 松田 敏之
設立 : 1969年12月
資本金 : 3億円
事業内容 : 公共、医療、社会保障分野および民間企業向け情報サービスの提供
(システム構築、アウトソーシング事業)、ソフトウェア開発、
データセンター事業、ネットワーク構築サービス、セキュリティ事業、
ハードウェア販売および保守サービス
コーポレートサイト: https://www.ryobi.co.jp/
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/315988/LL_img_315988_1.jpg
岡山大学/両備システムズ
炎症性腸疾患関連腫瘍の治療法には腫瘍を局所的に切除する内視鏡治療と大腸を全摘する外科手術があります。その選択には腫瘍の進行度に対する正確な診断が必要ですが、疾患頻度の低さから十分な診断経験を持つ医師が非常に少なく、また、背景の炎症の影響もあり内視鏡診断学自体が確立していないことから診断精度は依然不十分であるのが実情です。
今回、炎症性腸疾患関連腫瘍99病変862枚から構築した本AIシステムを検討したところ、約80%の正診率で腫瘍の進行度を正しく診断でき、経験ある専門医と同程度もしくはそれ以上の結果でした。今後このAIシステムを用いることで、全ての内視鏡医における診断能の均一化、正診率の向上、確実な治療法の選択が期待されます。
◆発表のポイント
・岡山大学と両備システムズが共同開発した炎症性腸疾患関連腫瘍AI診断システムの有用性を報告しました。
・炎症性腸疾患関連腫瘍は疾患頻度の低さや背景の炎症などから内視鏡診断学はいまだ確立しているとは言い難く、内視鏡診断精度は不十分なのが現状です。
・我々の開発したシステムは本研究により優れた診断精度が示され、今後より確実な治療法の選択に寄与できると思われます。
◆研究者からのひとこと
医療分野においても人工知能の応用は非常にホットな話題であり、多くの研究機関において開発競争がなされています。また、炎症性腸疾患関連腫瘍に対する内視鏡診断は世界中で大きな課題となっています。炎症性腸疾患センターを有する岡山大学病院のデータを使って開発したAIシステムの有用性が証明されたことで、日本のみならず世界の内視鏡診断に変革をもたらすものと期待しています。
画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/315988/LL_img_315988_2.jpg
岡山大学 河原教授(左)、衣笠助教(右)
■発表内容
<現状>
炎症性腸疾患は原因不明の難病ですが、日本における患者数は増加傾向が続いており世界2位の患者数となっています。内科治療の進歩に伴い長期的な罹患者も増加していますが、慢性的な炎症から発生する炎症性腸疾患関連腫瘍が非常に重要な問題となっています。炎症性腸疾患関連腫瘍には進行度にグレードがあり、Low grade dysplasiaには内視鏡による局所切除も選択されることもありますが、High grade dysplasiaと癌に対しては外科手術による大腸全摘が必要とされます。この進行度の診断は病変の内視鏡写真の所見などをもとに行っていますが、疾患頻度の低さや背景疾患に炎症を伴っていることなどからいまだ確立した内視鏡診断学は存在せず、また十分な診断経験をもつ医師は非常に少ないのが現状です。
そのため内視鏡治療も考慮される病変が外科的手術にまわったり、逆に最初から外科的手術を行うべきであった病変に内視鏡治療が行われたりするケースが少なからず存在します。
<研究成果の内容>
2019年、我々は両備システムズと共同で炎症性腸疾患関連腫瘍に対する進行度診断を行うAIシステムのプロトタイプを構築しました。その後改良を重ね精度の向上を図ってきました。
炎症性腸疾患関連腫瘍に対して治療法を選択するうえで、腫瘍をHigh grade dysplasiaもしくは癌と診断できることは非常に重要です。今回、炎症性腸疾患関連腫瘍99病変862枚の画像から構築したAI診断システム用いて、テスト画像への診断精度を検証しました。その結果AI診断システムによる診断の正診率79.0%でした。同画像に対する経験ある内視鏡医の診断の正診率77.8%でした。
<社会的な意義>
消化器内視鏡診療は、経験に基づく診断も重要な因子となります。そのため個々の医師によりその診断能にはバラツキがあり、今後の診療件数の増加に伴いさらに病変の見落としや誤診の増加が危惧されます。本研究によりAIによる消化器内視鏡の自動診断が実現されれば、自動診断ロジックを内視鏡機器に付加することで、リアルタイムで内視鏡自動診断が可能になり、現在個々の内視鏡医の診断能に頼っている現況が大きく改善されると思われます。自動診断による治療法の決定などの期待がなされ、国民に対する利益は非常に大きなものになると考えられます。
今後さらなる精度の向上、システムの実用化を目指して研究を継続したいと思います。
■論文情報
論文名: The diagnostic ability to classify neoplasias occurring
in inflammatory bowel disease by artificial intelligence
and endoscopists -pilot study-
掲載紙: Journal of gastroenterology and hepatology
著者 : Shumpei Yamamoto, Hideaki Kinugasa, Kenta Hamada,
Masahiro Tomiya, Takayoshi Tanimoto, Akimitsu Ohto,
Akira Toda, Daisuke Takei, Minoru Matsubara, Seiyu Suzuki,
Kosuke Inoue, Takehiro Tanaka, Sakiko Hiraoka,
Hiroyuki Okada, Yoshiro Kawahara
URL : https://onlinelibrary.wiley.com/journal/14401746
■会社概要
株式会社両備システムズ
本社所在地 : 岡山県岡山市南区豊成二丁目7番16号
代表者 : 代表取締役社長 松田 敏之
設立 : 1969年12月
資本金 : 3億円
事業内容 : 公共、医療、社会保障分野および民間企業向け情報サービスの提供
(システム構築、アウトソーシング事業)、ソフトウェア開発、
データセンター事業、ネットワーク構築サービス、セキュリティ事業、
ハードウェア販売および保守サービス
コーポレートサイト: https://www.ryobi.co.jp/