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20歳以上の約65%「かかりつけ医」がいると回答 「かかりつけ医と薬の処方」に関する調査結果を発表

AMR臨床リファレンスセンターは、2022年5月に全国の20歳以上の生活者を対象に「かかりつけ医と薬の処方」に関する調査を行いました。


「薬剤耐性(AMR)」が起こる要因の一つに、抗菌薬の不適切な使用があげられます。抗菌薬は病院よりもクリニック(診療所)で、内服薬として処方されることが多いのが日本の実情です。そのためAMR対策は病院だけでなく、クリニックなどの外来診療の場でも進めることが重要です。

昨今、患者さんが気軽に質問や相談ができ、患者さんと治療目標を共有し、必要な時、適切に専門の医師や医療機関に紹介できる「かかりつけ医」の役割が重要視されてきています。そのような背景をもとに今回は「かかりつけ医」と、薬の処方・服用、薬剤耐性に関する実態などを調査いたしました。
(当調査では、以下の厚生労働省「かかりつけ医」の定義を利用しています)

*「かかりつけ医」とは、健康に関することをなんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介してくれる、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師。

厚生労働省「上手な医療のかかり方.jp」定義より抜粋
https://kakarikata.mhlw.go.jp/kakaritsuke/motou.html


▼調査概要
1. 調査方法 :インターネット調査
2. 調査機関 :国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院
AMR臨床リファレンスセンター
3. 調査対象者:全国の20歳以上で、5年以内に病院・診療所・
クリニックで診察を受けた方
*健康診断や新型コロナウイルスのワクチン接種などでの受診を除く
4. 有効回答数:601サンプル(20代/30代/40代/50代/60代以上の
5つの年代属性で男女各60名ずつ)
*性別「その他」と回答した方は割付外とする
5. 調査実施日:2022年5月18日

<調査結果のポイント>
●「かかりつけ医」がいる人は約65%、65歳以上になると80%近くに
●「かかりつけ医」の決め手は「家から近い」、医師とのコミュニケーション重視
●「かかりつけ医」がいる方が、薬剤耐性、抗菌薬について説明を受ける割合が高い
●若い世代ほど、薬をのみ切らなかったり、あまった薬を人にあげたりしている
●処方された薬がやりとりされるのは家族間が多く、子どもにあげることも


【調査結果】
Q1 あなたには「かかりつけ医」がいますか (単数回答、n=601)

画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/322548/LL_img_322548_1.jpg
Q1

まず、「かかりつけ医」の有無を聞いたところ、全体では「いる」と回答した人は64.9%、50代、60代以上では7割を超えました。一方で、30代は51.7%と他の年代に比べ、低い結果となっています。

Q2 あなたがその「かかりつけ医」に通う理由をお答えください (複数回答、n=601)

画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/322548/LL_img_322548_2.jpg
Q2

「かかりつけ医」に通う理由は、「家から近い」48.7%、「話を聞いてくれる」26.9%、「説明が分かりやすい」26.4%がトップ3となりました。年代別では、年代が高いほど「家から近い」ところを選んでいます。

20代は「子どもの頃から通っている」という回答(22.9%)も多くみられました。その他、60代以上は「待ち時間が短い」が31.3%と他の年代に比べて高くなっていました。

年代によって「かかりつけ医」に通う理由に差があるようです。

Q3 あなたは抗菌薬(抗生物質)を処方された際、医師や薬剤師から抗菌薬(抗生物質)をのみ切ることの説明を受けたことがありますか (単数回答、n=307)

画像3: https://www.atpress.ne.jp/releases/322548/LL_img_322548_3.jpg
Q3

過去5年間に抗菌薬(抗生物質)を処方されたことがある307名に対し、抗菌薬(抗生物質)を処方された際、医師や薬剤師から抗菌薬(抗生物質)をのみ切ることの説明を受けたことがあるかとお聞きしました。「かかりつけ医」がいると回答した人では、83.1%が「ある」と回答しました。「かかりつけ医」がいないと回答した人は、61.4%にとどまる結果となり、その差は21.7ポイントとなりました。

Q4 あなたは抗菌薬(抗生物質)を処方された際、医師や薬剤師から抗菌薬(抗生物質)の副作用の説明を受けたことがありますか (単数回答、n=307)

画像4: https://www.atpress.ne.jp/releases/322548/LL_img_322548_4.jpg
Q4

抗菌薬(抗生物質)の副作用の説明を受けたことがあるかという質問には、「かかりつけ医」がいると回答した人では47.0%、「かかりつけ医」がいないと回答した人は36.4%が「聞いたことがある」と回答しました。


「抗菌薬」(抗生物質)
感染症を引き起こす原因には、細菌とウイルスがいます。細菌とウイルスは、大きさや仕組みがまったく違います。一般的な「かぜ」や「インフルエンザ」などはウイルスが原因です。「抗菌薬」(抗生物質)は細菌による感染症の治療に用いられる薬です。「かぜ」をひいて抗菌薬をのんでも、ウイルスには効かないので効果はありません。また、抗菌薬をのむことで、薬が効かない薬剤耐性菌が出現するリスクが高まります。必要な時に、必要な分だけ正しくのむことが大切です。

「薬剤耐性」AMR:Antimicrobial Resistance
「薬剤耐性」とは、感染症の原因となる細菌に、抗菌薬(抗生物質)が効かなくなることです。細菌が体に入り病気を引き起こした時には、抗菌薬を服用して治療しますが、一部の菌は「薬剤耐性菌」に変化することがあります。また、抗菌薬は病原菌だけでなく健康バランスを保っている細菌(常在菌)も排除して、細菌同士のバランスも崩してしまうので、薬剤耐性菌が増えやすくなります。自己判断で服用したり、医師の処方を守らないと、治らないばかりか副作用が出たり、薬剤耐性菌が出現することにつながります。薬剤耐性は感染症の治療や予防の妨げになります。

Q5 あなたは抗菌薬(抗生物質)を処方された際、医師や薬剤師から病原菌の「薬剤耐性」に関する説明を受けたことがありますか (単数回答、n=307)

画像5: https://www.atpress.ne.jp/releases/322548/LL_img_322548_5.jpg
Q5

抗菌薬(抗生物質)を処方された際、医師や薬剤師から病原菌の「薬剤耐性」に関する説明を受けたことがあるかという質問には、「かかりつけ医」がいると回答した人では41.6%、「かかりつけ医」がいないと回答した人は、23.9%が「聞いたことがある」と回答しました。

Q3、Q4、Q5の結果から、「かかりつけ医」がいる人の方が抗菌薬(抗生物質)の正しいのみ方や、副作用、「薬剤耐性」について、医師や薬剤師から説明を受け、関心を持っている人が多いことが見受けられます。

Q6 あなたは過去5年間に、医師や薬剤師からのみ切るよう指示されたにも関わらず、薬の服用を途中でやめてのみ切らなかった経験がありますか (単数回答、n=601)

画像6: https://www.atpress.ne.jp/releases/322548/LL_img_322548_6.jpg
Q6

医師からのみ切るよう指示されたにも関わらず、薬の服用を途中でやめてのみ切らなかった経験が37.9%の人に「ある」ことがわかりました。特に20代で「ある」と回答した人は55.8%と半数を超え、次いで30代46.7%、40代32.5%でした。この結果からは、若い世代ほど、医師や薬剤師の指示を守っていないことがうかがえます。抗菌薬(抗生物質)が必要な病気では、このくらいの期間治療をすれば完治するだろう、という見込みのもとに薬が投与されています。自己判断で服用を中止するなどで治療期間を守らないと、症状が再燃したり、薬剤耐性菌が出現する原因を作ることになるかもしれません。

Q7 あなたに処方された薬を、似た症状が出ているなど、その他の理由で人にあげたことがありますか (単数回答、n=601)

画像7: https://www.atpress.ne.jp/releases/322548/LL_img_322548_7.jpg
Q7

処方された薬を、似た症状が出ているなどの理由で、人にあげたことがあるかを聞きました。その結果、「あげたことがある」、「あげたことはないが可能性はある」と回答した人は若い世代ほど多く、60代以上の計11.7%に対し、20代が計35.0%と最も高くなっていました。症状が似ていても違う病気かもしれません。また、体の大きさや健康状態で処方される薬は人によって異なります。副作用が出ることもあるので、自分に処方された薬を人にあげるのはやめましょう。

Q8 あなたが処方された薬をあげた、もしくはあげる可能性のある人をお答えください (複数回答、n=124)

画像8: https://www.atpress.ne.jp/releases/322548/LL_img_322548_8.jpg
Q8

Q7で処方された薬を「あげたことがある」、「あげたことはないが可能性はある」と回答した124名に対し、その対象者を聞きました。最も多い回答は「家族(成人)」が88.7%、次いで、「家族(子ども)」45.2%という結果となりました。

薬は各人の体の大きさや状態に合わせて処方されています。家族でも自分と同じ体の大きさや体質ではありません。まして子どもは体の大きさだけではなく薬の代謝も成人とは異なります。たとえ家族でも抗菌薬をシェアするのはやめましょう。


<総括>
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院 AMR臨床リファレンスセンター 情報・教育支援室 室長 藤友 結実子

画像9: https://www.atpress.ne.jp/releases/322548/LL_img_322548_9.jpg
藤友 結実子 AMR臨床リファレンスセンター 情報・教育支援室 室長

今回の調査では、「かかりつけ医」のいる人の方が、処方された抗菌薬ののみ方や副作用についての説明を医師や薬剤師から受けていることが多いという結果が得られました。また、「薬剤耐性」についても聞いたことがある人が多いことがわかりました。「かかりつけ医」をもつことで、日頃から健康や病気について相談しやすくなり、必要な時に適切な医療を受けやすくなります。

また「かかりつけ医」との良好なコミュニケーションによって、適切な医療の知識を得やすくなります。今回はそれを示す調査結果であったと思います。今回「かかりつけ医」がいると回答されたのは全体で約65%の方でしたが、今後、ますます多くの方が「かかりつけ医」と良好な関係を築いて、健康に関する正しい知識を得ていただきたいと思います。今回の調査では、若い世代の方が、服薬を中断したり、他の人にあげたことがあるといった不適切な使用をする傾向が見えました。

これまでの当センターの抗菌薬意識調査*でも、若い世代の方が、抗菌薬に関する正しい知識を持っている人の割合が低いこととも一致しています。当センターでは、今後、若い世代に対する教育啓発活動にも力を入れていきたいと考えております。

*抗菌薬意識調査 2021
https://amr.ncgm.go.jp/pdf/20211004_report.pdf
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