空気中の有害物質を浄化する光触媒「アパタイト被覆酸化チタン」の光触媒活性を飛躍的に向上させる技術を確立 -SARS-CoV-2の感染リスクの減少にも寄与-
[22/11/28]
提供元:@Press
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中京大学工学部 野浪 亨教授の研究グループは、一般住宅やホテル、車両、建築物など様々な場面で実用化されている光触媒材料「アパタイト被覆酸化チタン*1」の機能を更に向上させる技術を開発し特許出願および研究発表を行いました。
なお、本研究成果は、国際学術雑誌『Ceramics International』にて掲載予定です。
【発表のポイント】
●酸化チタンなどの光触媒は、太陽光を当てることで強力な酸化還元反応(光触媒反応)を起こし、空気中の有害物質やウイルス・菌類を不活性化する性質を持ちます。
●野浪教授の研究グループは、この酸化チタンの粒子に、細菌を引き寄せる性質を持つアパタイトをコーティングした「アパタイト被覆酸化チタン*1」を開発し、すでに一般住宅やホテル、車両など、様々な場面で実用化されています。
●この「アパタイト被覆酸化チタン」は従来の光触媒と比較して、室内光ほどの低光量でも光触媒反応を起こす点と、夜間(暗所)でも菌やウイルスなどの有害物質を引き寄せる点に特徴があります。
●今回、研究グループは、この「アパタイト被覆酸化チタン」の光触媒活性を更に向上させる技術を確立しました。
●今後は、太陽光というクリーンエネルギーを使用し、更に低光量や暗所でも効果を発揮する「アパタイト被覆酸化チタン」の、環境浄化分野、建設分野、医療分野などあらゆる場面での応用利用が予想されます。
(1) これまでの研究で分かっていたこと(科学史的・歴史的な背景など)
光触媒には、酸化タングステンや酸化亜鉛などの金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物など、いくつかの種類が報告されています。これらの光触媒の中で、最も一般的に使用されているのが、コストと実用性の面で優れている酸化チタンです。
酸化チタンのアナタース相は、約380nm未満の波長の光と反応し、表面付近で酸素と水と反応して活性酸素種を生成します。これらの活性酸素種の非常に高い反応性により、酸化チタンは水と二酸化炭素分子に多くの有機化合物を分解することができます。しかし、酸化チタンは吸着能力が低いため、有機化合物の処理には効率的ではありません。
その一方で、アパタイトは吸着力に優れた素材です。人間の歯や骨の主成分であり、さまざまな物質、特に細菌やウイルスを吸着することができます。そのため、アパタイト製のフィルターはマスクや空気清浄機に応用されています。ただし欠点として、吸着された物質がアパタイトに残ることがあげられます。そのため、長期間使用するとフィルターが飽和するため、フィルターを交換する必要があります。
我々は、酸化チタンをアパタイトで被覆するアパタイト被覆酸化チタンを開発しました。アパタイト被覆酸化チタンは、酸化チタンの吸着性能の低さをアパタイトで補い、アパタイトの欠点である吸着の飽和を酸化チタンで補うという優れた性能を持つ素材として大きな注目を集めています。
酸化チタンに合化するアパタイト以外の材料として、カーボン、シリカ、活性炭などが報告されていますが、アパタイト被覆酸化チタンと他の複合材料との主な違いは合成方法にあります。
アパタイト被覆酸化チタンは、生体模倣(バイオミメティック)プロセスにより室温および常圧で合成でき、この方法は他の複合材料の合成法と比較して、環境への影響が大幅に低いです。
さらに、アパタイト被覆酸化チタンの光触媒活性は、酸化チタン単独の光触媒活性よりも高いです。
(2) 今回の研究で新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと
酸化チタンの光触媒活性を向上させるためには酸化チタンの結晶内の欠陥量を低減して結晶性を高める必要があります。そのためにはエネルギーを与えて結晶を構成する原子を再配列する必要がありますが、それは同時に酸化チタン粒子の粒成長、比表面積値の低下を助長してしまいます。比表面積が大きいことと結晶性を向上させることはトレードオフの関係にあり、両者をバランスさせた酸化チタンを製造することは容易ではありません。
そこで、我々は、アパタイトを被覆した複合材料を熱処理することで、酸化チタン単体と比べて酸化チタンのアナタース相のルチル相への転移温度の上昇、および比表面積減少の抑制が同時に実現できることを見出しました。
色素を分解する実験ではアパタイト被覆酸化チタンは、加熱していないアパタイト被覆酸化チタンと比べて約3倍の脱色速度がありました。加熱によりアナタース相の結晶性が向上し、光触媒活性が向上したと想定できます。
(3) 研究の波及効果や社会的影響
当グループが開発したアパタイト被覆酸化チタンは、太陽光の届きにくい室内や、蛍光灯の光でも作用するという特徴から、すでに、建造物の外壁のみならず、室内の壁や床、カーテンや観葉植物、空気清浄機のフィルターといった、既存の光触媒では実用困難であった箇所での実用化が始まっています。
今回の研究成果により、アパタイト被覆酸化チタンの光触媒活性が上昇したことで、活用の幅は更に広がりました。
また、新型コロナウイルスをはじめとしたウイルスや菌への有用性も示されていることから、上記のような環境浄化分野のみならず、白衣やマスクなどをはじめとした医療分野や、農業分野における鳥インフルエンザウイルスの防疫など様々な技術応用が見込まれます。
光触媒反応による有害物質の分解は、あらゆる生活空間において応用が可能です。また、太陽光を使用して反応を起こすため、枯渇性エネルギーを使用せず環境への影響が少ないという特徴があります。
Withコロナ社会、持続可能な社会の実現が求められる昨今において、当研究成果が社会にもたらす影響は非常に大きいと考えます。
(4) 今後の課題
今回、加熱処理によってアパタイト被覆酸化チタンの光触媒活性が大きく向上することが明らかになりました。今後は適切な条件の検証を行い、製造コストの減少を目指します。
(5) 研究者のコメント
今まで様々な分野で用いられてきた光触媒の一つである、アパタイト被覆酸化チタン光触媒の光触媒活性向上が製造プロセスを検討することで実現できました。「Withコロナ」の社会を実現するための安心・安全な環境の構築のためなどへの貢献が期待されます。
(6) 用語解説
*1 アパタイト被覆酸化チタン
酸化チタン光触媒の表面をアパタイトで覆うことにより、アパタイトが細菌や有機物質を吸着して酸化チタンが分解する多機能性セラミックスです。
アパタイトは生体内で生成されることから、アパタイトができやすいようにPHや組成を調整した擬似体液を調製し、体温に近い37℃に設定し酸化チタン粉末や薄膜を浸漬することで表面にアパタイトを析出させます。
酸化チタンの光触媒機能に加え、アパタイトのタンパク質やアンモニア臭、NOxなどの吸着機能を付与することで、光の有無に関わらず細菌やウイルスを吸着する事が可能になりました。
吸着した物質は、光が当たると酸化チタンの作用により分解されるため、アパタイトの吸着能力はその都度回復します。
さらに、アパタイトがスペーサーとなり酸化チタンが直接媒体と接触しないことにより、従来不可能であった有機系の媒体(繊維、樹脂、プラスチックス、木材、紙等)に練り込んだり被覆することもでき、光触媒の応用範囲を飛躍的に拡大する可能性があります。
(7) データ
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/334718/LL_img_334718_1.jpg
Fig. 1 800℃で加熱したアパタイト被覆酸化チタン(ApTi800)および従来のアパタイト被覆酸化チタン(ApTi)のSEM画像
アパタイト被覆酸化チタンを加熱した材料では新たに、粒子表面上に分散した無数の0.5 μm程度の粒状の生成物が確認されます。板状結晶であったアパタイトの表面が一部融解し球状に変化したものと考えられます。
画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/334718/LL_img_334718_2.jpg
Fig. 2 酸化チタン(Ti;数字は加熱温度)を焼成して得られた各試料のXRD図形
画像3: https://www.atpress.ne.jp/releases/334718/LL_img_334718_3.jpg
Fig. 3 アパタイト被覆酸化チタン(ApTi;数字は加熱温度)を焼成して得られた各試料のXRD図形
Fig. 2より、酸化チタンと単体で加熱した場合、700℃まではアナタースの単相ですが、800℃でルチル相が出現しています。一方、Fig. 3より、アパタイト被覆酸化チタンを加熱した場合、酸化チタンの結晶相は1,000℃でまでアナタース相で、ルチルが確認されたのが1,100℃で加熱した場合あることから、アパタイトの存在がアナタースからルチルへの転移を抑制していることが示唆されます。
画像4: https://www.atpress.ne.jp/releases/334718/LL_img_334718_4.jpg
Fig. 4 アパタイト被覆酸化チタン(ApTi)および酸化チタン(TiST)の加熱温度と比表面積
Fig. 4にアパタイト被覆酸化チタンおよび酸化チタンを焼成して得られた各試料の比表面積を示します。酸化チタンは300oCから比表面積が減少することがわかります。一方で、アパタイト被覆酸化チタンは500oC以降から比表面積が減少しました。このことから、アパタイトの存在が加熱に伴う酸化チタン粒子同士の凝集による比表面積の低下を抑制したと考えられます。 また、アパタイト被覆酸化チタンの加熱時における比表面積の低下の抑制は、 酸化チタン粒子間の原子の移動の抑制を示唆しており、これにより加熱時における酸化チタンのアナタース相からルチル相への転移温度の上昇が生じた可能性があります。
画像5: https://www.atpress.ne.jp/releases/334718/LL_img_334718_5.jpg
Fig. 5 アパタイト被覆酸化チタンおよび従来の酸化チタンの加熱温度と色素脱色速度の関係
光触媒活性を紫外光照射時における色素脱色能から評価しました。加熱していないアパタイト被覆酸化チタンと比べると、加熱温度500℃までは緩やかに脱色速度が大きくなる傾向が見られました。800℃で加熱することで約3倍に向上しました。
(8) 論文情報
雑誌名 :Ceramics International
論文名 :High activation of apatite-coated titanium dioxide using heat treatment
執筆者名:Shogo Saeki、Ikumi Nishimura、Ryushin Ono、Nanase Tsunekawa、Toru Nonami
なお、本研究成果は、国際学術雑誌『Ceramics International』にて掲載予定です。
【発表のポイント】
●酸化チタンなどの光触媒は、太陽光を当てることで強力な酸化還元反応(光触媒反応)を起こし、空気中の有害物質やウイルス・菌類を不活性化する性質を持ちます。
●野浪教授の研究グループは、この酸化チタンの粒子に、細菌を引き寄せる性質を持つアパタイトをコーティングした「アパタイト被覆酸化チタン*1」を開発し、すでに一般住宅やホテル、車両など、様々な場面で実用化されています。
●この「アパタイト被覆酸化チタン」は従来の光触媒と比較して、室内光ほどの低光量でも光触媒反応を起こす点と、夜間(暗所)でも菌やウイルスなどの有害物質を引き寄せる点に特徴があります。
●今回、研究グループは、この「アパタイト被覆酸化チタン」の光触媒活性を更に向上させる技術を確立しました。
●今後は、太陽光というクリーンエネルギーを使用し、更に低光量や暗所でも効果を発揮する「アパタイト被覆酸化チタン」の、環境浄化分野、建設分野、医療分野などあらゆる場面での応用利用が予想されます。
(1) これまでの研究で分かっていたこと(科学史的・歴史的な背景など)
光触媒には、酸化タングステンや酸化亜鉛などの金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物など、いくつかの種類が報告されています。これらの光触媒の中で、最も一般的に使用されているのが、コストと実用性の面で優れている酸化チタンです。
酸化チタンのアナタース相は、約380nm未満の波長の光と反応し、表面付近で酸素と水と反応して活性酸素種を生成します。これらの活性酸素種の非常に高い反応性により、酸化チタンは水と二酸化炭素分子に多くの有機化合物を分解することができます。しかし、酸化チタンは吸着能力が低いため、有機化合物の処理には効率的ではありません。
その一方で、アパタイトは吸着力に優れた素材です。人間の歯や骨の主成分であり、さまざまな物質、特に細菌やウイルスを吸着することができます。そのため、アパタイト製のフィルターはマスクや空気清浄機に応用されています。ただし欠点として、吸着された物質がアパタイトに残ることがあげられます。そのため、長期間使用するとフィルターが飽和するため、フィルターを交換する必要があります。
我々は、酸化チタンをアパタイトで被覆するアパタイト被覆酸化チタンを開発しました。アパタイト被覆酸化チタンは、酸化チタンの吸着性能の低さをアパタイトで補い、アパタイトの欠点である吸着の飽和を酸化チタンで補うという優れた性能を持つ素材として大きな注目を集めています。
酸化チタンに合化するアパタイト以外の材料として、カーボン、シリカ、活性炭などが報告されていますが、アパタイト被覆酸化チタンと他の複合材料との主な違いは合成方法にあります。
アパタイト被覆酸化チタンは、生体模倣(バイオミメティック)プロセスにより室温および常圧で合成でき、この方法は他の複合材料の合成法と比較して、環境への影響が大幅に低いです。
さらに、アパタイト被覆酸化チタンの光触媒活性は、酸化チタン単独の光触媒活性よりも高いです。
(2) 今回の研究で新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと
酸化チタンの光触媒活性を向上させるためには酸化チタンの結晶内の欠陥量を低減して結晶性を高める必要があります。そのためにはエネルギーを与えて結晶を構成する原子を再配列する必要がありますが、それは同時に酸化チタン粒子の粒成長、比表面積値の低下を助長してしまいます。比表面積が大きいことと結晶性を向上させることはトレードオフの関係にあり、両者をバランスさせた酸化チタンを製造することは容易ではありません。
そこで、我々は、アパタイトを被覆した複合材料を熱処理することで、酸化チタン単体と比べて酸化チタンのアナタース相のルチル相への転移温度の上昇、および比表面積減少の抑制が同時に実現できることを見出しました。
色素を分解する実験ではアパタイト被覆酸化チタンは、加熱していないアパタイト被覆酸化チタンと比べて約3倍の脱色速度がありました。加熱によりアナタース相の結晶性が向上し、光触媒活性が向上したと想定できます。
(3) 研究の波及効果や社会的影響
当グループが開発したアパタイト被覆酸化チタンは、太陽光の届きにくい室内や、蛍光灯の光でも作用するという特徴から、すでに、建造物の外壁のみならず、室内の壁や床、カーテンや観葉植物、空気清浄機のフィルターといった、既存の光触媒では実用困難であった箇所での実用化が始まっています。
今回の研究成果により、アパタイト被覆酸化チタンの光触媒活性が上昇したことで、活用の幅は更に広がりました。
また、新型コロナウイルスをはじめとしたウイルスや菌への有用性も示されていることから、上記のような環境浄化分野のみならず、白衣やマスクなどをはじめとした医療分野や、農業分野における鳥インフルエンザウイルスの防疫など様々な技術応用が見込まれます。
光触媒反応による有害物質の分解は、あらゆる生活空間において応用が可能です。また、太陽光を使用して反応を起こすため、枯渇性エネルギーを使用せず環境への影響が少ないという特徴があります。
Withコロナ社会、持続可能な社会の実現が求められる昨今において、当研究成果が社会にもたらす影響は非常に大きいと考えます。
(4) 今後の課題
今回、加熱処理によってアパタイト被覆酸化チタンの光触媒活性が大きく向上することが明らかになりました。今後は適切な条件の検証を行い、製造コストの減少を目指します。
(5) 研究者のコメント
今まで様々な分野で用いられてきた光触媒の一つである、アパタイト被覆酸化チタン光触媒の光触媒活性向上が製造プロセスを検討することで実現できました。「Withコロナ」の社会を実現するための安心・安全な環境の構築のためなどへの貢献が期待されます。
(6) 用語解説
*1 アパタイト被覆酸化チタン
酸化チタン光触媒の表面をアパタイトで覆うことにより、アパタイトが細菌や有機物質を吸着して酸化チタンが分解する多機能性セラミックスです。
アパタイトは生体内で生成されることから、アパタイトができやすいようにPHや組成を調整した擬似体液を調製し、体温に近い37℃に設定し酸化チタン粉末や薄膜を浸漬することで表面にアパタイトを析出させます。
酸化チタンの光触媒機能に加え、アパタイトのタンパク質やアンモニア臭、NOxなどの吸着機能を付与することで、光の有無に関わらず細菌やウイルスを吸着する事が可能になりました。
吸着した物質は、光が当たると酸化チタンの作用により分解されるため、アパタイトの吸着能力はその都度回復します。
さらに、アパタイトがスペーサーとなり酸化チタンが直接媒体と接触しないことにより、従来不可能であった有機系の媒体(繊維、樹脂、プラスチックス、木材、紙等)に練り込んだり被覆することもでき、光触媒の応用範囲を飛躍的に拡大する可能性があります。
(7) データ
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/334718/LL_img_334718_1.jpg
Fig. 1 800℃で加熱したアパタイト被覆酸化チタン(ApTi800)および従来のアパタイト被覆酸化チタン(ApTi)のSEM画像
アパタイト被覆酸化チタンを加熱した材料では新たに、粒子表面上に分散した無数の0.5 μm程度の粒状の生成物が確認されます。板状結晶であったアパタイトの表面が一部融解し球状に変化したものと考えられます。
画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/334718/LL_img_334718_2.jpg
Fig. 2 酸化チタン(Ti;数字は加熱温度)を焼成して得られた各試料のXRD図形
画像3: https://www.atpress.ne.jp/releases/334718/LL_img_334718_3.jpg
Fig. 3 アパタイト被覆酸化チタン(ApTi;数字は加熱温度)を焼成して得られた各試料のXRD図形
Fig. 2より、酸化チタンと単体で加熱した場合、700℃まではアナタースの単相ですが、800℃でルチル相が出現しています。一方、Fig. 3より、アパタイト被覆酸化チタンを加熱した場合、酸化チタンの結晶相は1,000℃でまでアナタース相で、ルチルが確認されたのが1,100℃で加熱した場合あることから、アパタイトの存在がアナタースからルチルへの転移を抑制していることが示唆されます。
画像4: https://www.atpress.ne.jp/releases/334718/LL_img_334718_4.jpg
Fig. 4 アパタイト被覆酸化チタン(ApTi)および酸化チタン(TiST)の加熱温度と比表面積
Fig. 4にアパタイト被覆酸化チタンおよび酸化チタンを焼成して得られた各試料の比表面積を示します。酸化チタンは300oCから比表面積が減少することがわかります。一方で、アパタイト被覆酸化チタンは500oC以降から比表面積が減少しました。このことから、アパタイトの存在が加熱に伴う酸化チタン粒子同士の凝集による比表面積の低下を抑制したと考えられます。 また、アパタイト被覆酸化チタンの加熱時における比表面積の低下の抑制は、 酸化チタン粒子間の原子の移動の抑制を示唆しており、これにより加熱時における酸化チタンのアナタース相からルチル相への転移温度の上昇が生じた可能性があります。
画像5: https://www.atpress.ne.jp/releases/334718/LL_img_334718_5.jpg
Fig. 5 アパタイト被覆酸化チタンおよび従来の酸化チタンの加熱温度と色素脱色速度の関係
光触媒活性を紫外光照射時における色素脱色能から評価しました。加熱していないアパタイト被覆酸化チタンと比べると、加熱温度500℃までは緩やかに脱色速度が大きくなる傾向が見られました。800℃で加熱することで約3倍に向上しました。
(8) 論文情報
雑誌名 :Ceramics International
論文名 :High activation of apatite-coated titanium dioxide using heat treatment
執筆者名:Shogo Saeki、Ikumi Nishimura、Ryushin Ono、Nanase Tsunekawa、Toru Nonami