小学校年代の子どもにおける運動神経の特徴が明らかに
[23/06/30]
提供元:@Press
提供元:@Press
中京大学 スポーツ科学部 渡邊航平教授の研究グループは、6-12歳の子どもを対象とした力の正確性と運動神経活動との関連について調査し、力の正確性に関わる運動神経活動の変動性は、この年代の子どもの成長過程において顕著な変化を示さないことを明らかにしました。本研究結果は、中京大学 スポーツ科学部 渡邊航平研究室、特任助教・奥平柾道氏(現・岩手大学・教育学部・講師)を筆頭著者として、国際学術雑誌Pediatric Exercise Scienceに掲載されることが決定しました。
【本研究成果のポイント】
●これまで小学校年代の子どもにおいては、神経系の発育発達が顕著であると考えられ、各種運動プログラムに反映されてきました。
●神経系の働きを生理学的指標である運動神経活動を用いて検討したところ、6-12歳の子どもにおいて、年齢に関連した変化は観察されませんでした。
●この年代において特に発達すると考えられてきた神経系の特性に基づいて、調整力などを向上させるためのトレーニングが広く行われていますが、その生理学的根拠には検討の余地が残されている可能性があることが明らかになりました。
【背景】
6-12歳の年代はゴールデンエイジとも呼ばれ、神経系の発育発達に由来する基本的な動作の習得が重要な時期であるとされてきました。しかしながら、これらは解剖学的な側面に関連したものであり、機能的な側面に関する発達過程については不明な点が多く、さらに調整能力などの運動能力とどのように関連しているのかについては明らかになっていませんでした。
【内容】
本研究では小学校年代の子ども58名を対象とし、一定の力で膝を伸ばす運動を行わせた時の力の正確性を測定し、調整能力を評価しました。同時に、膝を伸ばす筋肉から高密度表面筋電図の測定を行い、特殊なアルゴリズムを用いて、神経から筋肉への最終的な指令を伝達している運動神経活動を評価しました。その結果、年齢と力の正確性との間には有意な負の相関関係が認められたことから、成長に伴って力の調整能力は向上することがわかりました。また、運動神経活動の変動性と力の正確性との間にも有意な負の相関関係が認められたことから、神経から筋肉への指令の変動性が小さい者ほど、力の調整能力が高いことがわかりました。
しかしながら、年齢と運動神経活動の変動性との間には有意な関連が認められず、成長に伴って神経から筋肉への指令の変動性が小さくなる傾向は認められませんでした。これらの結果は、小学校年代の子どもにおける筋力の調整能力の個人差を、神経系における機能的な側面と関連付けることは難しいことが示唆されました。
本研究は、愛知県みよし市にある「みよしスポーツアカデミー」の協力を得て実施されました。
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/359884/LL_img_359884_1.jpg
図1
【今後の展開】
今回行った横断的な研究に加えて、縦断的な調査を行うことで、調整力のような運動能力が、いつどのように獲得されていくのかについて、神経と筋の発育発達の観点から調査していきます。また、この時期に実施されている“運動神経”をよくするとされる運動が、本当に運動神経に作用しているのか?という点にも生理学的な観点から研究を進めていきたいと考えています。
【研究者のコメント】
神経系の発育発達が顕著とされ、ゴールデンエイジと呼ばれる年代において、調整能力に関わる運動神経活動が年齢と関連しないことを明らかにした点が、本研究の新規性であると思います。小学校年代の子どもに対して、調整力のような巧みな運動能力の改善を目的とした運動プログラムが、多く取り入れられていますが、その意義や効果について、生理学的な観点から詳細に検討する必要があると考えています。
【用語解説】
高密度表面筋電図:複数の電極が高密度に配置された表面筋電図。皮膚表面から非侵襲的に時空間的な筋の活動パターンを計測できる。
運動神経 :α運動ニューロンとも呼ばれる、筋が力を発揮するための最終的な指令を行う神経細胞。
【論文情報】
雑誌名 :Pediatric Exercise Science
タイトル:Motor Unit Firing Properties during Force Control Task and Associations with Neurological Clinical Tests in Children
著者 :Okudaira, M., Takeda, R., Hirono, T., NIshikawa, T., Kunugi, S., and Watanabe, K.
【本研究成果のポイント】
●これまで小学校年代の子どもにおいては、神経系の発育発達が顕著であると考えられ、各種運動プログラムに反映されてきました。
●神経系の働きを生理学的指標である運動神経活動を用いて検討したところ、6-12歳の子どもにおいて、年齢に関連した変化は観察されませんでした。
●この年代において特に発達すると考えられてきた神経系の特性に基づいて、調整力などを向上させるためのトレーニングが広く行われていますが、その生理学的根拠には検討の余地が残されている可能性があることが明らかになりました。
【背景】
6-12歳の年代はゴールデンエイジとも呼ばれ、神経系の発育発達に由来する基本的な動作の習得が重要な時期であるとされてきました。しかしながら、これらは解剖学的な側面に関連したものであり、機能的な側面に関する発達過程については不明な点が多く、さらに調整能力などの運動能力とどのように関連しているのかについては明らかになっていませんでした。
【内容】
本研究では小学校年代の子ども58名を対象とし、一定の力で膝を伸ばす運動を行わせた時の力の正確性を測定し、調整能力を評価しました。同時に、膝を伸ばす筋肉から高密度表面筋電図の測定を行い、特殊なアルゴリズムを用いて、神経から筋肉への最終的な指令を伝達している運動神経活動を評価しました。その結果、年齢と力の正確性との間には有意な負の相関関係が認められたことから、成長に伴って力の調整能力は向上することがわかりました。また、運動神経活動の変動性と力の正確性との間にも有意な負の相関関係が認められたことから、神経から筋肉への指令の変動性が小さい者ほど、力の調整能力が高いことがわかりました。
しかしながら、年齢と運動神経活動の変動性との間には有意な関連が認められず、成長に伴って神経から筋肉への指令の変動性が小さくなる傾向は認められませんでした。これらの結果は、小学校年代の子どもにおける筋力の調整能力の個人差を、神経系における機能的な側面と関連付けることは難しいことが示唆されました。
本研究は、愛知県みよし市にある「みよしスポーツアカデミー」の協力を得て実施されました。
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/359884/LL_img_359884_1.jpg
図1
【今後の展開】
今回行った横断的な研究に加えて、縦断的な調査を行うことで、調整力のような運動能力が、いつどのように獲得されていくのかについて、神経と筋の発育発達の観点から調査していきます。また、この時期に実施されている“運動神経”をよくするとされる運動が、本当に運動神経に作用しているのか?という点にも生理学的な観点から研究を進めていきたいと考えています。
【研究者のコメント】
神経系の発育発達が顕著とされ、ゴールデンエイジと呼ばれる年代において、調整能力に関わる運動神経活動が年齢と関連しないことを明らかにした点が、本研究の新規性であると思います。小学校年代の子どもに対して、調整力のような巧みな運動能力の改善を目的とした運動プログラムが、多く取り入れられていますが、その意義や効果について、生理学的な観点から詳細に検討する必要があると考えています。
【用語解説】
高密度表面筋電図:複数の電極が高密度に配置された表面筋電図。皮膚表面から非侵襲的に時空間的な筋の活動パターンを計測できる。
運動神経 :α運動ニューロンとも呼ばれる、筋が力を発揮するための最終的な指令を行う神経細胞。
【論文情報】
雑誌名 :Pediatric Exercise Science
タイトル:Motor Unit Firing Properties during Force Control Task and Associations with Neurological Clinical Tests in Children
著者 :Okudaira, M., Takeda, R., Hirono, T., NIshikawa, T., Kunugi, S., and Watanabe, K.