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-地方と都市部の抗菌薬の処方に関する調査- 地方と都市部での知識の差は少ない、しかし行動には違いが!

住んでいる地域や環境によって病院へのアクセスや日常での薬の情報収集方法等は変わるものです。発熱やのどの痛み、鼻水などかぜの症状が出た際の対応方法や医師とのかかわり方は地方と都市部ではどういった違いがあるのでしょうか。
AMR臨床リファレンスセンターは、2023年11月に、全国の地方と都市部を対象とした「抗菌薬(抗生物質)に関する調査」を行いました。今回は、地方と都市部での抗菌薬への知識や行動を中心に調査しました。
昨今、話題となっている抗菌薬が効かない「薬剤耐性(AMR)」が起こる要因の一つに、抗菌薬の不適切な使用があげられています。抗菌薬を正しく使用するための第一歩として、地方と都市部が一体となって正しく理解し取り組むことが重要です。


【調査概要】
1. 調査方法 :インターネット調査
2. 調査機関 :国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院
AMR臨床リファレンスセンター
3. 調査対象者:直近3年以内に熱・のどの痛み・鼻水等の症状で
病院を受診した地方と都市部の20歳-59歳の方
地方 :二次医療圏における100km2あたりの
医療機関数が20.0未満の地域(113地域)
都市部:二次医療圏における100km2あたりの
医療機関数が1000.0以上の地域(22地域)
4. 有効回答数:400サンプル(地方 :200サンプル(平均年齢:40.9歳)、
都市部:200サンプル(平均年齢:37.7歳))
5. 調査実施日:2023年11月23日-11月25日

*本調査では小数点第2位を四捨五入しています。
そのため数字の合計が100%とならない場合があります。


【調査結果のポイント】
●地方、都市部ともに「抗菌薬・抗生物質はウイルスをやっつける」と誤った回答をした人が73.0%と74.5%という結果に。知識に関する地域差はほぼ見受けられない。
●かぜで病院を受診した際に、地方の26.0%、都市部の20.5%が処方薬を「多めに欲しい」と考えている。さらに、地方の23.0%、都市部の36.0%が、かぜで「抗菌薬を処方してほしい」と医師に直接希望したことがあることも判った。
●薬についての情報収集方法で「インターネット(製薬会社等の企業サイト)」が最も多く38.5%、「SNS」関連では、地方と都市部では傾向が異なり、X、Instagram、TikTokにおいては地方ではそれぞれ5.0%、4.0%、0.5%に対して都市部では13.5%、10.0%、4.0%と2倍以上の差がでている。


Q. あなたはかかりつけ医がいますか。(単数回答、n=400)
また、かかりつけ医として選んだ理由を教えてください。(自由回答、n=256)

画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/383360/LL_img_383360_1.png
図1

地方
★自宅から近くて、土曜日も午前、午後からも診察してもらえるから。(女性/50代/京都府)
★評判が良かったから。(男性/50代/富山県)
★同級生が事務をしていて、また先生も有名で感じがいいから。(男性/40代/山形県)

都市部
★自宅の最寄りの病院で通院しやすいから。(男性/20代/東京都)
★通院しやすく、感じの良い先生なので。(女性/40代/神奈川県)
★話をじっくり聞いてくれる先生なので相談しやすい。(女性/50代/東京都)

20代-50代で直近3年以内に熱・のどの痛み・鼻水等で病院を受診した、地方と都市部の人に対してかかりつけ医の有無を聞いたところ、地方では59.5%、都市部では68.5%という結果となりました。
また、かかりつけ医として選んだ理由としては、地方、都市部ともに自宅から近い、相談しやすいなどが多くあげられました。また、地方においては「評判が良い」という理由もあることが判明しました。


Q. あなたはかぜで病院を受診した際に抗菌薬を処方してほしいと思いますか。(単数回答、n=400)

画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/383360/LL_img_383360_2.png
図2

次に、かぜで病院を受診した際に抗菌薬を処方してほしいと思うかについて聞いたところ、地方では「絶対に処方してほしい」16.5%、「できれば処方してほしい」46.0%と合計62.5%の方が抗菌薬を処方してほしいと考えている実態が判明しました。
また、都市部では「絶対に処方してほしい」24.0%、「できれば処方してほしい」45.0%と合計69.0%となっており、処方を希望する割合は都市部の方が6.5ポイント多いことが判明しました。


Q. あなたはかぜで病院を受診した際に抗菌薬を処方してほしいと医師に依頼したことがありますか。(単数回答、n=400)

画像3: https://www.atpress.ne.jp/releases/383360/LL_img_383360_3.png
図3

次に、かぜで病院を受診した際に抗菌薬を処方してほしいと医師に依頼したことがあるかどうか聞いたところ、地方では23.0%に対して都市部では36.0%という結果となりました。


Q. かぜで病院を受診した際に処方される薬についてあなたの希望としてあてはまるものをお答えください。(単数回答、n=400)

画像4: https://www.atpress.ne.jp/releases/383360/LL_img_383360_4.png
図4

次に、かぜで病院を受診した際に処方される薬についての希望を聞いたところ、「多めに欲しい」と回答した人の割合が地方では26.0%、都市部では20.5%いることが判明しました。
また、全体で約8%の方が「少なめで欲しい」と希望しており、合計で約3割近い方が「適正な量」以外の処方を望んでいる実態が判明しました。


Q. かぜで病院・薬局を訪問した際に薬に関する質問をしたことがありますか。(複数回答、n=400)

画像5: https://www.atpress.ne.jp/releases/383360/LL_img_383360_5.png
図5

かぜで病院・薬局を訪問した際に薬に関する質問をしたことがあるかどうか聞いたところ、全体では「医師に質問をしたことがある」は40.5%、「薬剤師に質問したことがある」36.3%で、質問したことがない人39.5%を除いた「質問をしたことがある」人は合計で60.5%という結果となりました。
地方と都市部では「医師に質問をしたことがある」人の割合が31.0%と50.0%という結果となり、19.0ポイントの差があることが判明しました。


Q. あなたの家には取っておいてある抗菌薬がありますか。(単数回答、n=400)

画像6: https://www.atpress.ne.jp/releases/383360/LL_img_383360_6.png
図6

次に、家に取ってある抗菌薬があるかどうかを聞いたところ地方では21.0%の人、都市部では34.5%の人が「ある」と回答しました。


Q. あなたはかぜの時に家に取っておいてあった抗菌薬を使ったことがありますか。(複数回答、n=111)

画像7: https://www.atpress.ne.jp/releases/383360/LL_img_383360_7.png
図7

家に取ってある抗菌薬があるとお答えの方に取っておいた抗菌薬を使ったことがあるかどうかを聞いたところ、全体で91.9%の人が取っておいた抗菌薬を使ったことがあると回答しました。
使った抗菌薬としては「自身が以前処方された抗菌薬」が72.1%、「自身以外に処方された抗菌薬」が34.2%という結果となりました。


Q. 抗菌薬に対して当てはまると思うものをそれぞれお答えください。(それぞれ単数回答、n=400)

画像8: https://www.atpress.ne.jp/releases/383360/LL_img_383360_8.png
図8

上記の質問項目は、抗菌薬に対してすべてあてはまりません。
抗菌薬の知識に関して、最も間違いが多いのは地方、都市部ともに「抗菌薬・抗生物質はウイルスをやっつける」で73.0%と74.5%という結果となりました。
次いで、「抗菌薬・抗生物質はかぜに効く」が地方で60.0%、都市部で61.5%となりました。
ほとんどの項目において地方よりも都市部の方が間違いの割合が多くなっておりますが明確な知識の差があるとは言えません。


Q. あなたは自身の薬に関する知識が十分だと思いますか。(単数回答、n=400)

画像9: https://www.atpress.ne.jp/releases/383360/LL_img_383360_9.png
図9

次に、自身の薬に関する知識について十分だと思うかどうかをお聞きしたところ、地方では「十分だと思う」6.0%、「やや十分だと思う」25.0%の計31.0%の方が十分だと思っていることが判明しました。
また、都市部では「十分だと思う」10.0%、「やや十分だと思う」31.0%の計41.0%と地方よりも10ポイント高い結果となりました。


Q. あなたが普段、薬について調べる情報収集方法としてあてはまるものをお答えください。(複数回答、n=400)

画像10: https://www.atpress.ne.jp/releases/383360/LL_img_383360_10.png
図10

最後に、普段の薬についての情報収集方法をお伺いしたところ、全体の87.0%の人が何らかの方法で情報収集をしており、地方では「インターネット検索(製薬会社等の企業サイト)」が最も多く38.0%、次いで「病院等を受診した際に聞く」26.5%という結果となりました。
都市部では「インターネット検索(製薬会社等の企業サイト)」が39.0%で最も多く、次いで「インターネット検索(厚生労働省等公的機関のサイト)」が36.5%という結果となりました。
地方と都市部においては「SNS」関連で傾向が異なり、X、Instagram、TikTokが地方ではそれぞれ5.0%、4.0%、0.5%に対して都市部では13.5%、10.0%、4.0%と2倍以上の差がある結果となりました。


<総括>
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院
AMR臨床リファレンスセンター 情報・教育支援室長
藤友 結実子

画像11: https://www.atpress.ne.jp/releases/383360/LL_img_383360_11.png
図11

今回の調査では、100km2あたりの医療機関数が20.0未満の地域を地方、1000.0以上の地域を都市部と定義し、医療機関へのアクセスによる違いで、抗菌薬の知識や受療行動に違いがあるかを調査しました。その結果、「抗菌薬はかぜには効かない」などの抗菌薬に関する基本的な知識にはほぼ差がなかったものの、かぜで病院を受診した際に抗菌薬を処方してほしいと医師に依頼したことがある人、家に抗菌薬を取り置きしている人の割合は都市部の方が多い、という結果でした。また、病院や薬局での医師や薬剤師との関わり方が、地方と都市部で違うことが示唆されました。薬についての情報収集方法も、都市部ではインターネット検索やSNSを使うことが地方に比べると多いという違いがありました。
今回の結果からは、正しい知識を得るためには、医療機関へのアクセスのよさはあまり関係なく、情報収集の仕方がキーになる可能性が示唆されたのではないかと思います。また受療行動と現場でのコミュニケーションは、地方と都市部での医師-患者間の関係性の違いなども背景にあると思われます。こういった都市部と地方との違いを踏まえ、患者さんからの意思表明がある場合には、医師や薬剤師はそれに応えるべくコミュニケーションを図る必要があり、また、情報発信の方法についても、地方と都市部の違いを考えていく必要があると思われます。


■感染症を引き起こす原因には、細菌とウイルスがいます。細菌とウイルスは、大きさや仕組みがまったく違います。一般的な「かぜ」や「インフルエンザ」などは、ウイルスが原因です。「抗菌薬」は細菌による感染症の治療に用いられる薬です。また、不適切に抗菌薬をのむことで、薬が効かない薬剤耐性菌が出現するリスクが高まります。

・抗菌薬は細菌だけをやっつける薬で、ウイルスには効きません
・抗菌薬は処方された日数、用量を守ってのみ切りましょう
・抗菌薬はかぜを早く治すことはありません
・抗菌薬はかぜやインフルエンザの熱を下げる効果はありません
・抗菌薬はのどの痛みに効果はありません
・抗菌薬をのんでもかぜの鼻水は止まりません


■「薬剤耐性(AMR:Antimicrobial Resistance)」
「薬剤耐性」とは、感染症の原因となる細菌に、抗菌薬が効かなくなることです。細菌が体に入り、病気を引き起こした時には、抗菌薬を服用して治療することもありますが、一部の菌は「薬剤耐性菌」に変化することがあります。
また、抗菌薬は病原菌だけでなく健康バランスを保っている細菌(常在菌)も排除して、細菌同士のバランスも崩してしまうので、薬剤耐性菌が増えやすくなります。自己判断で抗菌薬を服用したり、医師の処方指示を守らずに服用しなかったりすると、病気が治らないばかりか、副作用や薬剤耐性菌の出現などの問題に直面します。
「薬剤耐性」は感染症の治療や予防の妨げになります。
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