日中教育促進協会理事于雷のインタビュー記事を「人民日報海外版日本月刊」にて公開
[24/02/22]
提供元:@Press
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一橋大学大学院に所属している于雷氏は経営学分野の唯一の若手研究者として、ハーバード燕京研究所と香港大学中国制度研究センターとの共同プロジェクトに抜擢された。国際的視野を持つ彼は、世界から集まった十数名の優秀な学者たちと共に、現代中国の制度変化に関する分野横断的な研究に従事している。また、彼は多忙な研究活動の傍ら、日中教育促進協会で、留学・就業のサポートシステム構築の重責を担っている。
先日、われわれは、長年にわたり高等教育、グローバルな人材流動、イノベーション研究など、多岐にわたる研究領域に携わってきた于雷氏と語らい、新時代における中国人留学生が如何にして生き抜くべきかについて、彼の見解とアドバイスをうかがった。
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/385916/LL_img_385916_1.jpg
日中教育促進協会の于雷理事
■人生の選択肢は多いほどよい
言語は文化を伝える手段であり、外国語を学ぶことは、その文化の扉を開く鍵となり、世界をより深く理解する手段を提供する。于雷氏はそれを身をもって体験している。
幼い頃から外国語に強い関心を抱いていた于雷氏は、高校時代に偶然にも全国英語オリンピックコンテストに挑戦し、優勝した。彼の両親は彼を誇りに思いながらも、受賞後に将来には語学勉強を継続するか他の専攻に変えるか、彼に自ら考え、決断する自由を与えた。
情報が限られていた時代、于雷氏は全国大会で優秀な成績を収め、半年早く北京語言大学からの入学通知を受け取り、過酷な受験戦争を回避することができた。北京語言大学独自のカリキュラムにより、すべての学生は2年間の交換留学を経験することができ、彼にも世界への扉が開かれた。
大学受験や留学の面で、東アジアの教育はどんどん後れをとっていると言わざるを得ない。于雷氏は、近代における東洋と西洋諸国の不均衡な発展の歴史によって、東アジア社会は試行錯誤を余儀なくされ、コストがかさむこととなった。こうした時代背景の中で、東アジアの学生は情報格差という課題にも直面している。現代社会における情報爆発は、科学的に幅広い情報をもたらすという期待とは裏腹に、偏見に満ちた情報の繭を作り出す結果となり、留学生は再び情報の非対称性の泥沼に陥ってしまうという現状認識を示している。
于雷氏は、語学力を活かして大学受験を突破したことで、情報をつかみ、正しい選択をすることの大切さを知った。人生というレースで主導権を握る鍵は、より多くの選択肢をもつことである。留学を通じて、地理的な制約を超え、より質の高い教育資源へのアクセスを実現し、人生の選択肢を増やすための有効な手段と考えられてきた。留学の目的は、学問の研鑽だけでなく、文化体験を深めたり、チャレンジ精神を培うことである。氏は、グローバル化が進む今日、個人の成長にとって、異文化理解と適応力が特に重要であることを深く理解している。そして、留学によって、多様な考え方や視点に触れることができ、その経験が視野を大きく広げ、問題解決能力を高めると考えている。
■留学の目的は絶えず変化
「留学熱が年々低下している」という議論に対して、于雷氏は改革開放以降40年にわたる中国人留学生の特性と留学目的の変遷を社会学の観点から分析した。「海外に留学する中国人留学生の総数は減少傾向にありますが、留学の目的はより明確になっています」と彼が指摘している。
中国の総合的国力の上昇に伴い、中国人留学生の留学目的は、世界を理解し、世界に仲間入りすることから、世界を発見し、新たな世界を創造することへと進化している。
留学の意義は「外の世界を知る」ことから「自分の国を知る・自分を高める」ことに変化した。つまり、育った環境から脱却し、客観的、立体的、総合的観点から中国と異文化と比較分析し、自身に合った進路を見出すことである。
現在、年齢に関係なく、数年間の職業経験の後で人生経験を深め、知識と能力を高めるために再度学び始める留学生が増えている。世界を席巻する科学研究の分野では、今まさに中国人留学生がますます重要な役割を果たしている。今の日本で学ぶ中国人留学生も、個人のニーズに応じて科学研究、就職、短期留学など、いくつかのカテゴリーに細分化されている。
多くの中国の保護者は、「日本の大企業へ就職するには、院卒ではなく学部卒の方が有利だ」「だから日本留学は早めに行ったほうがいいんだ」と誤解している。このことについて、国際的な視野で経営学を長年研究してきた于雷氏によると、「確かに日本の企業では、新入社員が入社時に専門的な知識がなくても、職場での実践的な訓練(OJT)や職場外での訓練(OFF-JT)を通じて、必要なスキルや知識を身につけることができます。しかし、この考え方が院卒者に不利だとは限りません。院卒の留学生は、高度な専門知識や研究経験を持っていることが多く、これらは日本の大企業においても非常に価値があるとされます。
特に、グローバル化が進む現代において、国際的なバックグラウンドを持つ留学生は、新しい視点やアイデアを企業にもたらすことができ、イノベーションの促進に貢献することが期待されます。また、異文化間コミュニケーション能力や国際的なネットワークの構築など、院卒留学生独自の強みも企業にとって魅力的です。」と指摘している。
21世紀に入り、高効率を重視する現代社会では分業化が進み、社会における個々の人間の役割も次第に特化している。于雷氏は、個々の状況に応じて専門的な知識体系を構築し、他に取って代わることのできない業務遂行能力を備えていなければ、長期的発展は望めないと述べている。
また、最近の中国人留学生は、家族構成、留学目的、経済状況など、大きな変化が見られる。社会的観点から見ると、中国人留学生の留学目的は留学先の国から先進技術や文化を学ぶことから、中国のイメージや文化を留学先の国に伝えることに変化し、中国人留学生と留学先の国の学生との間で、相互学習の新たなモデルが形成されている。「世界の言語で中国の物語を語る」ことは、新時代の海外華僑学者としての于雷の信念であり、彼が後輩たちに常に伝えてきた価値観である。
■留学・就業のサポートシステムを構築
于雷氏はアカデミアに入る前に、一度日本の大手証券会社で働き、日本や在日欧米資産管理会社にテクニカル分析や技術ソリューションを提供してきた。彼は中国の小さな町から世界へと視野を広げ、多くの人々に支えられながら、自分が感じたことをまた多くの人に伝えたいと考えてきた。于雷氏は客員講師として母校に戻り、学術と実業の両方での経験を活かし、後輩の進学・就職指導を行ってきた。
日本の大学で教鞭を取り、中国国内の高等教育機関の教員や学生と交流する中で、留学の必要性を強く感じた于雷氏は、他の在日中国人学者と経営者らと協力し、「サロン」という形式で留学生の支援活動を開始した。これは、受験準備、生活アドバイス、就職活動の情報提供、職業選択や面接の準備に関する経験を共有する場を提供するものである。この活動が、日中教育促進協会の始まりとなった。このサロンを通じて、中国に帰国する学生も、日本に留まり進学、就職や起業を志す学生も、ここで有用な情報やガイダンスを得ることができた。当初は小規模な講座から始まったが、口コミで参加者は急増した。
また、講座の恩恵を受けた学生が自発的に国内の母校に情報を広めたことで、天津外国語大学や蘇州農業職業技術学院をはじめとする国内の多くの教育機関からの協力の申し出があり、日本への短期留学プロジェクトや大学生のための日本企業訪問、インターンシップの機会が生まれた。これらの活動は、学問だけでなく、日本の経済や生産管理の現場を直接学び、実践的な経験を積むことを目的としている。
留学生の増加するニーズに応える形で、日中教育促進協会が設立された。この組織は、単なるサロンから、留学生の人生支援を目的としたプラットフォームへと成長した。専門知識の習得だけでなく、留学を通じて留学生が正しい人生観や価値観を確立できるようにサポートするという責任を担っている。それは、日中教育促進協会が掲げる理念であり、于雷氏をはじめとする海外華僑の共通の信念でもある。
■取材後記
胡適が語ったように、教育とは人を良く見せるための華美な服装ではなく、世界をよりよく見るための力を授けるメガネである。美しい世界を目にすることのできた于雷氏は、多くの人びとが、自分に適したメガネを見つける手助けをしたいと願っている。
先日、われわれは、長年にわたり高等教育、グローバルな人材流動、イノベーション研究など、多岐にわたる研究領域に携わってきた于雷氏と語らい、新時代における中国人留学生が如何にして生き抜くべきかについて、彼の見解とアドバイスをうかがった。
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/385916/LL_img_385916_1.jpg
日中教育促進協会の于雷理事
■人生の選択肢は多いほどよい
言語は文化を伝える手段であり、外国語を学ぶことは、その文化の扉を開く鍵となり、世界をより深く理解する手段を提供する。于雷氏はそれを身をもって体験している。
幼い頃から外国語に強い関心を抱いていた于雷氏は、高校時代に偶然にも全国英語オリンピックコンテストに挑戦し、優勝した。彼の両親は彼を誇りに思いながらも、受賞後に将来には語学勉強を継続するか他の専攻に変えるか、彼に自ら考え、決断する自由を与えた。
情報が限られていた時代、于雷氏は全国大会で優秀な成績を収め、半年早く北京語言大学からの入学通知を受け取り、過酷な受験戦争を回避することができた。北京語言大学独自のカリキュラムにより、すべての学生は2年間の交換留学を経験することができ、彼にも世界への扉が開かれた。
大学受験や留学の面で、東アジアの教育はどんどん後れをとっていると言わざるを得ない。于雷氏は、近代における東洋と西洋諸国の不均衡な発展の歴史によって、東アジア社会は試行錯誤を余儀なくされ、コストがかさむこととなった。こうした時代背景の中で、東アジアの学生は情報格差という課題にも直面している。現代社会における情報爆発は、科学的に幅広い情報をもたらすという期待とは裏腹に、偏見に満ちた情報の繭を作り出す結果となり、留学生は再び情報の非対称性の泥沼に陥ってしまうという現状認識を示している。
于雷氏は、語学力を活かして大学受験を突破したことで、情報をつかみ、正しい選択をすることの大切さを知った。人生というレースで主導権を握る鍵は、より多くの選択肢をもつことである。留学を通じて、地理的な制約を超え、より質の高い教育資源へのアクセスを実現し、人生の選択肢を増やすための有効な手段と考えられてきた。留学の目的は、学問の研鑽だけでなく、文化体験を深めたり、チャレンジ精神を培うことである。氏は、グローバル化が進む今日、個人の成長にとって、異文化理解と適応力が特に重要であることを深く理解している。そして、留学によって、多様な考え方や視点に触れることができ、その経験が視野を大きく広げ、問題解決能力を高めると考えている。
■留学の目的は絶えず変化
「留学熱が年々低下している」という議論に対して、于雷氏は改革開放以降40年にわたる中国人留学生の特性と留学目的の変遷を社会学の観点から分析した。「海外に留学する中国人留学生の総数は減少傾向にありますが、留学の目的はより明確になっています」と彼が指摘している。
中国の総合的国力の上昇に伴い、中国人留学生の留学目的は、世界を理解し、世界に仲間入りすることから、世界を発見し、新たな世界を創造することへと進化している。
留学の意義は「外の世界を知る」ことから「自分の国を知る・自分を高める」ことに変化した。つまり、育った環境から脱却し、客観的、立体的、総合的観点から中国と異文化と比較分析し、自身に合った進路を見出すことである。
現在、年齢に関係なく、数年間の職業経験の後で人生経験を深め、知識と能力を高めるために再度学び始める留学生が増えている。世界を席巻する科学研究の分野では、今まさに中国人留学生がますます重要な役割を果たしている。今の日本で学ぶ中国人留学生も、個人のニーズに応じて科学研究、就職、短期留学など、いくつかのカテゴリーに細分化されている。
多くの中国の保護者は、「日本の大企業へ就職するには、院卒ではなく学部卒の方が有利だ」「だから日本留学は早めに行ったほうがいいんだ」と誤解している。このことについて、国際的な視野で経営学を長年研究してきた于雷氏によると、「確かに日本の企業では、新入社員が入社時に専門的な知識がなくても、職場での実践的な訓練(OJT)や職場外での訓練(OFF-JT)を通じて、必要なスキルや知識を身につけることができます。しかし、この考え方が院卒者に不利だとは限りません。院卒の留学生は、高度な専門知識や研究経験を持っていることが多く、これらは日本の大企業においても非常に価値があるとされます。
特に、グローバル化が進む現代において、国際的なバックグラウンドを持つ留学生は、新しい視点やアイデアを企業にもたらすことができ、イノベーションの促進に貢献することが期待されます。また、異文化間コミュニケーション能力や国際的なネットワークの構築など、院卒留学生独自の強みも企業にとって魅力的です。」と指摘している。
21世紀に入り、高効率を重視する現代社会では分業化が進み、社会における個々の人間の役割も次第に特化している。于雷氏は、個々の状況に応じて専門的な知識体系を構築し、他に取って代わることのできない業務遂行能力を備えていなければ、長期的発展は望めないと述べている。
また、最近の中国人留学生は、家族構成、留学目的、経済状況など、大きな変化が見られる。社会的観点から見ると、中国人留学生の留学目的は留学先の国から先進技術や文化を学ぶことから、中国のイメージや文化を留学先の国に伝えることに変化し、中国人留学生と留学先の国の学生との間で、相互学習の新たなモデルが形成されている。「世界の言語で中国の物語を語る」ことは、新時代の海外華僑学者としての于雷の信念であり、彼が後輩たちに常に伝えてきた価値観である。
■留学・就業のサポートシステムを構築
于雷氏はアカデミアに入る前に、一度日本の大手証券会社で働き、日本や在日欧米資産管理会社にテクニカル分析や技術ソリューションを提供してきた。彼は中国の小さな町から世界へと視野を広げ、多くの人々に支えられながら、自分が感じたことをまた多くの人に伝えたいと考えてきた。于雷氏は客員講師として母校に戻り、学術と実業の両方での経験を活かし、後輩の進学・就職指導を行ってきた。
日本の大学で教鞭を取り、中国国内の高等教育機関の教員や学生と交流する中で、留学の必要性を強く感じた于雷氏は、他の在日中国人学者と経営者らと協力し、「サロン」という形式で留学生の支援活動を開始した。これは、受験準備、生活アドバイス、就職活動の情報提供、職業選択や面接の準備に関する経験を共有する場を提供するものである。この活動が、日中教育促進協会の始まりとなった。このサロンを通じて、中国に帰国する学生も、日本に留まり進学、就職や起業を志す学生も、ここで有用な情報やガイダンスを得ることができた。当初は小規模な講座から始まったが、口コミで参加者は急増した。
また、講座の恩恵を受けた学生が自発的に国内の母校に情報を広めたことで、天津外国語大学や蘇州農業職業技術学院をはじめとする国内の多くの教育機関からの協力の申し出があり、日本への短期留学プロジェクトや大学生のための日本企業訪問、インターンシップの機会が生まれた。これらの活動は、学問だけでなく、日本の経済や生産管理の現場を直接学び、実践的な経験を積むことを目的としている。
留学生の増加するニーズに応える形で、日中教育促進協会が設立された。この組織は、単なるサロンから、留学生の人生支援を目的としたプラットフォームへと成長した。専門知識の習得だけでなく、留学を通じて留学生が正しい人生観や価値観を確立できるようにサポートするという責任を担っている。それは、日中教育促進協会が掲げる理念であり、于雷氏をはじめとする海外華僑の共通の信念でもある。
■取材後記
胡適が語ったように、教育とは人を良く見せるための華美な服装ではなく、世界をよりよく見るための力を授けるメガネである。美しい世界を目にすることのできた于雷氏は、多くの人びとが、自分に適したメガネを見つける手助けをしたいと願っている。