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国境なき医師団調べ 相続税制改正で相続財産の寄付が増加の兆し? 4割強が「非課税になる認定NPOへの寄付を前向きに検討」

国境なき医師団日本(会長:加藤寛幸、事務局長:ジェレミィ・ボダン)は、2015年6月24日〜26日の3日間、50歳〜79歳の男女を対象に「遺贈に関する意識調査2015」をインターネットリサーチし、1,000名の有効サンプルの集計結果を公開しました。(調査協力会社:ネットエイジア株式会社)

【生活実態と老後の不安】
◆ 50代〜70代のうち、1割が独身 女性の6人に1人はひとり親
◆ 老後の生活「老老介護が不安」3割半 50代の4割半は老後の「生活苦」や「年金受給」を不安視
◆ 独身の4割弱は「孤独死」を不安視
◆ 高齢者向け食事宅配サービス「老後は利用したい」5割弱に ネットスーパーは4割強
◆ 「老後はサ高住利用したい」4割 女性は4割半

50〜79歳の男女1,000名(全回答者)に対し、配偶者と子どもの有無について聞いたところ、「子どもも配偶者もいない」(以下、独身と表記)が10.8%、「子どもはいるが配偶者がいない」(以下、ひとり親と表記)が11.4%、「配偶者はいるが子どもはいない」(以下、ふたり夫婦と表記)が7.7%、「子どもも配偶者もいる」(以下、父母子と表記)が70.1%となりました。
男女別にみると、女性は「ひとり親」が17.0%と男性(5.8%)よりも高くなっています。年代別にみると、50代は「独身」が18.9%、70代は「ひとり親」が20.5%と、それぞれ他の年代よりも高くなっています。

次に、老後の生活について、不安を感じることを聞いたところ、「体の不自由(寝たきりなど)」(60.9%)や「大きな病気・怪我」(60.3%)、「認知症」(59.4%)といった健康面の不安が6割となり、次いで、「老老介護(高齢者の介護を、同居する高齢者が行うこと)」(36.0%)と「医療費の自己負担増」(35.0%)が3割半、「生活苦」(31.8%)や「年金の受給」(28.0%)が約3割で続きました。健康面の不安、金銭面の不安と合わせ、高齢化社会が進んだことで社会問題化した高齢者同士の介護についての不安が上位回答となりました。
年代別にみると、50代は「生活苦」(46.4%)や「年金の受給」(45.8%)といった金銭面の不安の割合が他の年代よりも高くなっています。
また、配偶者と子どもの有無別にみると、「孤独死」を不安に感じる割合は独身で37.0%、ひとり親で25.4%、ふたり夫婦で27.3%と、父母子(9.7%)よりも高くなりました。

老後の生活には様々な不安があることがわかりましたが、昨今では老後の快適な暮らしに役立つサービスや商品が多数登場しています。そこで、それらのサービスや商品の利用状況や利用意向について聞いたところ、【高齢者向け食事宅配(健康に配慮した食事を、自宅まで届けてくれるサービス)】では、「既に利用している」(以下、利用率と表記)が1.5%、「利用していないが、(老後は)利用したいと思う」(以下、利用意向率と表記)が48.0%となり、【ネットスーパー(インターネットで注文した生鮮食品や日用雑貨などを、自宅まで届けてくれるサービス)】は利用率が15.9%、利用意向率が43.2%となりました。高齢者向け宅配サービスに限らず、ネットスーパーなどのオンラインサービスも老後の生活に取り入れようとする意識が窺えました。
合わせて、【高齢者向けスマートフォン(ボタン・アイコンが大きめに設計され、操作が簡単なスマートフォン)】についても聞いたところ、利用率は6.6%、利用意向率は31.6%となりました。
また、【安否確認サービス(定期的に自宅に電話や訪問をしてくれるサービス)】では、利用率は0.9%、利用意向率は43.2%となり、【サービス付き高齢者住宅(訪問介護や医療、食事の提供など、高齢者の支援サービスが充実した賃貸住宅)】では、利用率は0.3%、利用意向率は40.8%となりました。
男女別にみると、女性はこれらのサービス・施設の利用意向率が高く、【安否確認サービス】では48.6%(男性は37.8%)、【サービス付き高齢者住宅】では46.6%(男性は35.0%)となりました。
※インターネット調査による結果であることをご留意ください。


【相続についての意識】
◆ どこか他人ごと?「親の遺産で“争続”避けたい」8割弱も、「自分の遺産で“争続”になるかも」は1割半
◆ 不動産は大丈夫?一都三県居住者の半数「相続税は自分には縁がない話」
◆ 60代の4割半、70代の4割弱は「相続のことを話題にしづらい」と回答
◆ 相続の相談が有益な相手 「一親等の家族」に次ぐ「弁護士」、一方「弁護士との相談は気後れする」の声も

全回答者(1,000名)に対し、相続に関する意識について、どの程度そう思うか聞いたところ、【親の遺産で、争続(相続で争うこと)になることは避けたい】では、『そう思う』(「非常にそう思う」と「ややそう思う」の合計、以下同様)が77.0%となり、【自分の遺産で、争続(相続で争うこと)になる可能性がある】では、『そう思う』が14.5%となりました。相続人としての立場では、親族間で争うようなことは避けたいと多くの方が考えている一方で、自分が被相続人になるときは、争いにならないだろうと楽観的に捉えている方が多数となっています。
また、【相続税は、自分には縁のない話だと思う】では『そう思う』が55.4%と半数以上となりました。今年の相続税制改正で基礎控除額が縮小され、“都市部に自宅があるだけで相続税が課税されるケースが生じる”などと、課税対象となる方が多くなったことが話題になりましたが、半数以上の方が相続税を自分ごとだと捉えていないようです。
居住地域別にみると、一都三県の居住者は『そう思う』が50.3%と、そのほかの地域に比べて低い割合のため、相続税を自分ごととして捉えている方は比較的多いようですが、それでも2人に1人は“相続税なんて自分には縁のない話”だと楽観視している様子が窺えました。相続税制改正によって、より身近になった相続税の話題ですが、“自分が被相続人になったとき”のことを意識している方は少ないことが浮き彫りになりました。“争続”を避けるためにも、注意喚起・啓蒙活動など、専門家などの働きかけが、今後、必要とされているのではないでしょうか。

さらに、相続の話をすることについて、【相続は話題にしづらいテーマだ】と思うか聞いたところ、『そう思う』が46.5%となりました。年代別に『そう思う』と回答した割合をみると、50代は56.3%、60代は45.2%、70代は37.9%と、年代があがるにつれて割合も低くなっていますが、60代で4割半、70代でも4割弱の方が相続の話を切り出しづらいと感じている様子が窺えました。
また、【お盆を機に、相続について話をしたい】と思うか聞いたところ、『そう思う』が23.6%と、およそ4人に1人の割合となっています。祖先の供養を行うお盆シーズンには親戚同士で集まることも多いため、ふだんよりも相続の話題を持ち出しやすい機会だと考えられているのではないでしょうか。

それでは、実際に相続について相談するなら、誰に相談をしようと思うのでしょうか。
全回答者(1,000名)に対し、相続について相談できたら有益だと思う相手は誰か聞いたところ、「パートナー(配偶者・恋人)」が43.7%で最も高く、「息子」が31.5%、「娘」が25.8%で続きました。実際に相続人となる身近な家族と相続について相談できるなら、有益な話し合いになると思う方が多いようです。以下、相談相手に専門家をあげる回答が続き、「弁護士(法律の専門家)」が16.2%、「税理士・司法書士(税務の専門家)」が13.5%となっています。
同様に、相談するのに勇気がいると感じる(気後れする)相手について聞いたところ、「弁護士」は11.0%、「税理士・司法書士」は6.8%、「銀行・信託銀行」は4.5%となりました。専門家との相談は敷居が高く感じるためか、気後れする方が多いようです。弁護士をはじめ、税理士や金融機関などは、相談者が敷居を下げて気軽に相談できるような環境づくりが必要なのかもしれません。


【終活についての意識】
◆ 「エンディングノート準備は必要」は8割弱、「公正遺言書」は6割半
◆ シニアライフで目指すはミニマリスト?「老前整理・生前整理は必要」8割弱
◆ エンディングノートに書いておきたいこと 「延命治療について」7割弱、「資産について」は6割半

生前から人生の終末期について準備をしておく終活に関して、どの程度の方が必要性を感じ、実際に準備をしているのか質問を行いました。
全回答者(1,000名)に対し、【エンディングノート(※1)を作成すること】について、どのような気持ち・状況かを聞いたところ、「既に準備を済ませた」が3.6%、「まだ準備していないが、準備は必要だと思う」は73.9%となりました。合計すると『準備は必要』との思いを抱いている方が77.5%となっています。
【遺言書(公正遺言書)(※2)を作成すること】についても同様に質問したところ、『準備は必要』は64.3%となりました。必要に感じている方が多数派なものの、エンディングノートよりは少ない割合となっています。
相続税に対する意識別にみると、相続税は自分には縁がない話だと思う方は遺言書の『準備は必要』が57.2%、自分に関係があることだと捉えている方(縁がない話だと思わない方)は73.1%となりました。相続税を自分ごとだと感じている方は、しっかりと法的効力のある書面を残しておきたいと考える傾向にあるようです。
また、【任意後見契約(※3)を結ぶこと】については、『準備は必要』が53.5%で、こちらも相続税を自分に関係があることだと捉えている方は60.3%と、縁がない話だと思う方(48.1%)に比べて高くなりました。
そのほか、【老前整理・生前整理(※4)】では『準備は必要』が78.4%となりました。老後や死後の手続きに備え、身の回りの不要品を整理しておくことは必要だと考えている方が多いようです。

※1:緊急時(重い病気にかかったときや死亡したとき)に身近な人に知っておいてほしいことをまとめたノート。遺産分割については、法的な効力がない。
※2:自分が死亡したとき、誰にどれだけどのように遺産を託すかを記載したもの。遺産分割について、法的な効力がある。
※3:認知症などで判断能力を欠いたとき、誰にどれだけ財産管理などを託すかを記載した契約。判断能力を欠いたときに効力がある(欠かなければ、効力はない)。
※4:住まいにある不要品を処分し、遺品整理の手間を減らすこと。また、金融資産などを現金化しておくこと。

それでは、終活をすることで、どのようなことに備えておきたいと考えているのでしょうか。
エンディングノートの準備は必要だと感じている方(775名)に対し、エンディングノートにはどんなことを書いておきたいか聞いたところ、「延命治療(希望するか、など)」が67.4%、「資産(現金や株式、生命保険の一覧や分け方など)」が66.2%、「葬儀(遺影にして欲しい写真や葬儀で無駄だと思うこと(省略して欲しいこと)など)」が53.9%で続きました。元気で判断力があるうちに自身の希望する“人生の終末期”を伝える手段を持っておきたいとの思いと同等に、遺された家族が困らないように、資産について記しておきたいとの思いがあるようです。


【遺贈についての意識】
◆ 社会に役立てるための遺贈 4人に1人が「前向きに検討」 独身では2人に1人
◆ 相続税制改正で相続財産の寄付が増加の兆し? もしも相続税がかかるなら?4割強が「非課税になる認定NPOへの寄付を前向きに検討」
◆ 遺贈・遺産の寄付がもっと普及するには啓蒙活動が重要? 遺贈・遺産の寄付に抱く不安は「手続きがわからない」や「寄付する団体選び」
◆ 遺贈先に求めるのは「営利目的でない」、「資金の使い道の透明性」、「共感できる活動内容」 70代は「非営利」や「公に認められている」ことを重視
◆ 「遺贈をテーマに家族で話をしたい」3割、遺贈を前向きに検討している方では5割半に
◆ 「遺贈が社会現象化すれば、より良い社会になる」5割強、「遺贈は将来日本で社会現象化する」2割半

遺産は配偶者や子どもなど相続人に相続させる以外にも、遺言に基づいて特定の個人や団体に譲り渡すこと(このことを「遺贈」と言います)ができます。遺贈について、どの程度関心が持たれているか質問を行いました。
全回答者(1,000名)に対し、社会の役に立てるために、自分の遺産(の一部)を寄付(=遺贈)したいと思うか聞いたところ、「遺贈をしたい」が2.5%、「遺贈をしてもよい」が24.3%となり、合わせて26.8%の方が『遺贈に前向き』な姿勢を示しました。社会の役に立つなら、自分の遺産を寄付したい・してもよいとの思いを持つ方が4人に1人程度の割合で存在するようです。
配偶者と子どもの有無別にみると、『遺贈に前向き』の割合は、独身で50.0%、ふたり夫婦で46.8%と、子どもがいる方(ひとり親21.0%、父母子21.9%)に比べて高くなりました。

また、相続人が認定NPO団体に相続財産を寄付した場合、寄付をした財産に対しては相続税が課税されなくなります。このことを説明したうえで、相続税がかかるなら、親族から相続する財産(の一部)を認定NPO法人に寄付したいと思うか聞いたところ、「寄付をしたい」が5.4%、「寄付をしてもよい」が36.2%となり、合わせて41.6%の方が『寄付に前向き』であることがわかりました。今年は相続税制改正で相続税の課税対象となる方が多くなりましたが、このことをきっかけに遺贈や相続財産の寄付を考える方が今後増えてくるかもしれません。

では、遺贈や相続財産の寄付を検討する方にとって、どのような不安が遺贈や寄付の障害となるのでしょうか。
遺贈、または相続財産の寄付に前向きな方(445名)に対し、遺贈や相続財産の寄付について、どのようなことに不安を感じるか聞いたところ、「遺贈の方法(どんな手続きが必要か不安、など)」が36.2%で最も高く、「寄付する団体選び(詐欺にあわないか不安、など)」が33.0%と3割台で続きました。遺贈や寄付の手続きが複雑だと感じるようなことがあった場合、遺贈や寄付に前向きな気持ちにブレーキがかかってしまうのかもしれません。また、遺産という故人の気持ちがこもった財産を寄付するにあたり、しっかりとした団体を選びたいとの思いが窺えました。以下、「寄付した遺産の使い道(どんなことに役立てるかわからず不安、など)」が29.0%、「寄付する団体の活動内容(公益性があるか不安、など)」が25.8%、「家族の反対」が21.1%で続いています。

次に、遺贈、または相続財産の寄付に前向きな方(445名)に対し、もし実際に遺贈や相続財産の寄付を行うとしたら、どのようなポイントを重視して遺贈先の団体を選別するか聞いたところ、「営利目的でない(NPO法人など)」が54.6%で最も高く、「資金の使い道が明確(透明性がある)」が47.4%、「活動内容に共感できる」が46.3%、「公益性が公に認められている」が42.5%で続きました。
年代別にみると、70代は「営利目的でない」(60.9%)や「公益性が公に認められている」(49.6%)の割合が、そのほかの年代に比べて高くなりました。営利組織でないことや、公の“お墨付き”の団体に寄付をしたいと考えるご年配の方が多いようです。

続いて、遺贈を検討することについての意識を聞いたところ、【遺贈について考えることは、これからの生き方を考えることに繋がる】では『そう思う』が40.4%、遺贈に前向きな方では64.6%となり、【遺贈をテーマに家族で話をしてみたい】では『そう思う』が29.1%、遺贈に前向きな方では56.0%となりました。遺贈の検討をすることは今後の人生について考えることに繋がると感じ、家族で話題にしてみたいとの思いを抱く方は少なくないようです。

また、遺贈の普及に関する意識について聞いたところ、【遺贈が社会現象化すれば、より良い社会になる】では『そう思う』が52.2%となりました。遺贈が社会現象化するくらい広く行われるようになれば、社会に良い影響があると思われているようです。また、【将来日本で遺贈は社会現象化する】では『そう思う』が24.9%となりました。寄付による社会貢献や終活を行う方が珍しくなくなった現在、遺贈が社会現象化するという日本の将来の姿を4人に1人がイメージしているようです。
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