デング熱・チクングニヤ熱対策は神社仏閣がネック 〜宗教施設における媒介蚊への対策とその可能性に関する調査〜
[15/08/12]
提供元:@Press
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渡航医学の調査研究をおこなう関西福祉大学 勝田吉彰研究室(兵庫県赤穂市)では、多宗派を対象に、デング熱・チクングニヤ熱対策に関する、ボトルネックとなる点、負担感、リスクとともに、リスクコミュニケーションとして利用できる可能性について調査を実施し、2015年8月に当該調査結果が学術論文として日本医事新報(第4764号)に掲載されたことを報告致します。
■調査結果概要
今回の調査結果から、神社仏閣教会等の宗教施設には媒介蚊の生息地となる要素が多く、その対策は物理的、経済的、マンパワー的にも困難で、公的支援が必要なことが明らかになりました。一方で、説法等の場で感染症の話題が語られていることも分かり、公的機関から正確な情報が提供されればリスクコミュニケーションの手段として活用できる可能性も明らかになりました。
■調査結果のポイント
(1) デング熱に高い関心が持たれる一方で、媒介蚊対策には強い負担感
(2) 敷地内の対策には外部の一般人が関与するリスク
(3) 蚊の駆除に対し、28%が教義上抵抗感を感じている
(4) 説法等の場で44%が感染症の話題を話しており、リスクコミュニケーション手段として可能性
■調査結果の詳細
(1) デング熱に高い関心が持たれる一方で、媒介蚊対策には強い負担感
2014年のデング熱報道に対し、57%が関心は高かったとしています。敷地内には御手洗・側溝・庭園・防火用水・墓地花立等、水のたまる場所がさまざまに存在しています。また、草地・灌木の占める割合が50%以上となる施設も23%あり、媒介蚊の根絶に対し、不可能36%、かなり困難36%と、難しさが明らかになっています。さらに、「古都保存法指定地区に指定され手出しできない竹林」「隣の公営墓地の花立から湧く媒介蚊」「竹林だけで2,000坪」と付記してある回答もありました。
(2) 敷地内の対策には外部の一般人が関与するリスク
敷地内清掃に携わるのは聖職者および施設職員が多い一方で、信徒やボランティアといった外部の素人が関与する施設も11施設あり、媒介蚊によるリスクが考えられます。
(3) 蚊の駆除に対し、28%が教義上抵抗感を感じている
大量の殺虫剤を噴霧し媒介蚊を殺生することに対し、抵抗があると回答した方が28%、抵抗がないと回答した方も28%と拮抗しています(どちらともいえない40%)。仏教の五戒の中の不殺生戒が有名ですが、殺虫剤の大量噴霧は、宗教関係者に対して葛藤を強いることである前提で、丁寧な説明とアプローチが必要です。
(4) 説法等の場で44%が感染症の話題を話しており、リスクコミュニケーション手段として可能性
これまで説法等の場で感染症の話題を話したことがあるとする回答が半数近い44%となり、その内容としてSARS、エボラ出血熱、デング熱、O157、食中毒、一般衛生があげられています。この「いま既に存在し動いている仕組み」に対し、公的機関から正しい情報を提供することにより、リスクコミュニケーションの手段として活用できる可能性が考えられます。海外では、モスクの説法でMERS関連の情報提供が行われたり、メンタルヘルス分野でもスーダン・セネガル・ミャンマー等で宗教関係者の活用が行われています。
■考察
デング熱対策および国内発生が懸念されるチクングニヤ熱対策において、公園等と並んで神社仏閣教会等の宗教施設が重要となります。インバウンド観光客や国内旅行客、地元の人々が交わる一方で、その対策には関係者のマンパワーだけでは困難な現実が浮き上がり、公的支援の必要性が明らかになりました。一方で、2014年の代々木公園における発生時に地続きの明治神宮について世間の関心が低調であったように、本件に関し、国や地方公共団体や世間一般の関心が十分とは言い難く、報道で広く伝える必要があると考えられます。
また、困難な面とともに、リスクコミュニケーション等で積極的に活用できる可能性もあり、情報提供の形で支援することは有効と考えられます。
■調査概要
調査方法 :アンケート調査
調査期間 :2015年3月(学術論文として掲載 2015年8月日本医事新報 第4764号)
有効回答数 :25施設(13宗派)
回答者の属性:寺院56%、神社28%、教会16%
論文 :日本医事新報(第4764号)
■研究室概要
研究室: 関西福祉大学 勝田吉彰研究室
代表者: 勝田 吉彰 教授/社会福祉学研究科長
(外務省医務官OB、スーダン・セネガル・フランス・中国に在勤)
所在地: 〒678-0255 兵庫県赤穂市新田380-3
専門 : 渡航医学(国境を越える感染症・海外の医療)
多文化間精神医学(国境を越えるメンタルヘルス)
URL : 新型インフルエンザ・ウォッチング日記 〜渡航医学のブログ〜
http://blog.goo.ne.jp/tabibito12
ミャンマーよもやま情報局
http://www.myanmarinfo.jp/
E-Mail: katsuda@tkk.att.ne.jp
■調査結果概要
今回の調査結果から、神社仏閣教会等の宗教施設には媒介蚊の生息地となる要素が多く、その対策は物理的、経済的、マンパワー的にも困難で、公的支援が必要なことが明らかになりました。一方で、説法等の場で感染症の話題が語られていることも分かり、公的機関から正確な情報が提供されればリスクコミュニケーションの手段として活用できる可能性も明らかになりました。
■調査結果のポイント
(1) デング熱に高い関心が持たれる一方で、媒介蚊対策には強い負担感
(2) 敷地内の対策には外部の一般人が関与するリスク
(3) 蚊の駆除に対し、28%が教義上抵抗感を感じている
(4) 説法等の場で44%が感染症の話題を話しており、リスクコミュニケーション手段として可能性
■調査結果の詳細
(1) デング熱に高い関心が持たれる一方で、媒介蚊対策には強い負担感
2014年のデング熱報道に対し、57%が関心は高かったとしています。敷地内には御手洗・側溝・庭園・防火用水・墓地花立等、水のたまる場所がさまざまに存在しています。また、草地・灌木の占める割合が50%以上となる施設も23%あり、媒介蚊の根絶に対し、不可能36%、かなり困難36%と、難しさが明らかになっています。さらに、「古都保存法指定地区に指定され手出しできない竹林」「隣の公営墓地の花立から湧く媒介蚊」「竹林だけで2,000坪」と付記してある回答もありました。
(2) 敷地内の対策には外部の一般人が関与するリスク
敷地内清掃に携わるのは聖職者および施設職員が多い一方で、信徒やボランティアといった外部の素人が関与する施設も11施設あり、媒介蚊によるリスクが考えられます。
(3) 蚊の駆除に対し、28%が教義上抵抗感を感じている
大量の殺虫剤を噴霧し媒介蚊を殺生することに対し、抵抗があると回答した方が28%、抵抗がないと回答した方も28%と拮抗しています(どちらともいえない40%)。仏教の五戒の中の不殺生戒が有名ですが、殺虫剤の大量噴霧は、宗教関係者に対して葛藤を強いることである前提で、丁寧な説明とアプローチが必要です。
(4) 説法等の場で44%が感染症の話題を話しており、リスクコミュニケーション手段として可能性
これまで説法等の場で感染症の話題を話したことがあるとする回答が半数近い44%となり、その内容としてSARS、エボラ出血熱、デング熱、O157、食中毒、一般衛生があげられています。この「いま既に存在し動いている仕組み」に対し、公的機関から正しい情報を提供することにより、リスクコミュニケーションの手段として活用できる可能性が考えられます。海外では、モスクの説法でMERS関連の情報提供が行われたり、メンタルヘルス分野でもスーダン・セネガル・ミャンマー等で宗教関係者の活用が行われています。
■考察
デング熱対策および国内発生が懸念されるチクングニヤ熱対策において、公園等と並んで神社仏閣教会等の宗教施設が重要となります。インバウンド観光客や国内旅行客、地元の人々が交わる一方で、その対策には関係者のマンパワーだけでは困難な現実が浮き上がり、公的支援の必要性が明らかになりました。一方で、2014年の代々木公園における発生時に地続きの明治神宮について世間の関心が低調であったように、本件に関し、国や地方公共団体や世間一般の関心が十分とは言い難く、報道で広く伝える必要があると考えられます。
また、困難な面とともに、リスクコミュニケーション等で積極的に活用できる可能性もあり、情報提供の形で支援することは有効と考えられます。
■調査概要
調査方法 :アンケート調査
調査期間 :2015年3月(学術論文として掲載 2015年8月日本医事新報 第4764号)
有効回答数 :25施設(13宗派)
回答者の属性:寺院56%、神社28%、教会16%
論文 :日本医事新報(第4764号)
■研究室概要
研究室: 関西福祉大学 勝田吉彰研究室
代表者: 勝田 吉彰 教授/社会福祉学研究科長
(外務省医務官OB、スーダン・セネガル・フランス・中国に在勤)
所在地: 〒678-0255 兵庫県赤穂市新田380-3
専門 : 渡航医学(国境を越える感染症・海外の医療)
多文化間精神医学(国境を越えるメンタルヘルス)
URL : 新型インフルエンザ・ウォッチング日記 〜渡航医学のブログ〜
http://blog.goo.ne.jp/tabibito12
ミャンマーよもやま情報局
http://www.myanmarinfo.jp/
E-Mail: katsuda@tkk.att.ne.jp