日経平均は小幅反落、それでも崩れない株式市場を捉え直す
[20/07/10]
提供元:株式会社フィスコ
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ランチタイムコメント
日経平均は小幅反落。52.55円安の22476.74円(出来高概算6億1000万株)で前場の取引を終えている。
9日の米株式市場でNYダウは反落し、361ドル安となった。先週分の新規失業保険申請件数が予想以上に減少したことを好感する一方、フロリダ州で1日の新型コロナウイルス感染者数が過去最多に上り、国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長が「シャットダウン(経済活動の停止)を真剣に検討すべきだ」と述べたことで警戒感が広がった。ただ、ハイテク比率の高いナスダック総合指数は連日で過去最高値を更新。
米国株が高安まちまちとなるなか、本日の日経平均は5円高からスタートした。寄り付き後は国内外での新型コロナ再拡大への懸念から22417.97円(111.32円安)まで下落する場面もあったが、おおむね前日終値近辺での小動きとなった。なお、オプション7月物の特別清算指数(SQ)は概算で22601.81円となっている。
個別では、通期業績予想を下方修正したファーストリテ<9983>が2%超の下落。任天堂<7974>、トヨタ自<7203>、三菱UFJ<8306>などのメガバンク株もさえない。決算発表銘柄ではローソン<2651>が売られているほか、乃村工芸<9716>やくら寿司<2695>、久光薬<4530>は東証1部下落率上位に顔を出した。一方、ソフトバンクG<9984>やソニー<6758>が堅調。ソフトバンクGは引き続き中国アリババ集団などのハイテク株高が追い風となり、出資先企業の上場計画も伝わった。米半導体株高を引き継いで東エレク<8035>、レーザーテック<6920>、アドバンテス<6857>も上昇。また、中小型の好決算銘柄に物色が向かい、C&R社<4763>やエスクローAJ<6093>、SHIFT<3697>が東証1部上昇率上位に顔を出した。
セクターでは、鉱業、証券、不動産業などが下落率上位で、その他も全般軟調。電気機器と情報・通信業の2業種のみ小幅に上昇した。東証1部の値下がり銘柄は全体の75%、対して値上がり銘柄は21%となっている。
本日の日経平均は小安い水準でもみ合う場面が多くなっている。前日の米株式市場の動向では、ハイテク株高こそ追い風となるものの、やはり新型コロナ再拡大への懸念は根強い。国内でも9日、東京都の新規感染者数が224人と過去最多になった。また、8日に続き上場投資信託(ETF)の分配金捻出に絡んだ売りが出るとみられていることも株式相場の重しとなっているだろう。日経平均の日足チャートを見ると、22500円前後に5日移動平均線と25日移動平均線が収れんし、こう着感を一段と強めてきた印象。
売買代金上位では、米ハイテク株高の流れを引き継いで半導体関連を中心とした値がさのグロース(成長)株が堅調。6月工作機械受注の回復を受けてファナック<6954>
なども買われている。反面、自動車株や金融株といった大型のバリュー(割安)株は軟調。NYダウの下落とともに米長期金利が低下し、グロース株優位、バリュー株劣位の構図を支えているとみられる。
新興市場ではマザーズ指数が反発。相対的に堅調な値動きを見せており、前引け時点では1015pt近辺に位置する25日移動平均線をやや上回っている。引き続き新興グロース株への追い風を受け、この水準での戻り待ちの売りを押し返せるか注視したい。
なお、本日ジャスダックへ新規上場したSpeee<4499>は公開価格を8割弱上回る初値を付けた。
アジア株式市場では中国・上海総合指数や香港ハンセン指数が軟調。また、本日同様にETFによる売り観測があった8日は日経平均が後場から軟化した。前引けの東証株価指数(TOPIX)は0.63%の下落となっており、日銀によるETF買いが実施される公算は大きいものの、後場の日経平均は売りに押される場面が出てくることも想定しておきたい。
さて、前日の先物手口を見るとモルガン・スタンレーMUFG証券によるTOPIX先物の売り越しが目立った。他の外資系証券の動向を見ても、海外勢が足元買い戻しに動いている感はない。日経ダブルイン<1357>の純資産総額も高水準を維持しているが、それでも株式相場は崩れない。当欄で従前から描いてきた「ETFによる売りをこなした後、買い戻し主導での意外高」というシナリオが現実味を帯びてきたように思える。
米長期金利は経済指標が急回復しても伸び悩む。もちろんコロナ禍への懸念もあるだろうが、政府債務が記録的な水準に膨らむなかで金利を低水準に抑え込む「強烈な金融緩和」の効果が大きいことを再確認すべきではないだろうか。債券市場に比べれば株式市場などは規模が小さい。あふれ出したマネーは「買える資産」に向かい、安全資産あるいはインフレヘッジ資産に位置付けられる金相場は高値更新が続いている。コロナ禍でも堅調な業績が期待でき、低金利の恩恵を受けるハイテク株も同様の文脈で捉えられるだろう。
このところ当欄の内容に対し、「確かに思ったより相場が崩れない」との声が増えてきた。危機下での金融フレームワーク(枠組み)が市場にどのような影響をもたらしているのか、改めて捉え直す必要があるだろう。
(小林大純)
<AK>
9日の米株式市場でNYダウは反落し、361ドル安となった。先週分の新規失業保険申請件数が予想以上に減少したことを好感する一方、フロリダ州で1日の新型コロナウイルス感染者数が過去最多に上り、国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長が「シャットダウン(経済活動の停止)を真剣に検討すべきだ」と述べたことで警戒感が広がった。ただ、ハイテク比率の高いナスダック総合指数は連日で過去最高値を更新。
米国株が高安まちまちとなるなか、本日の日経平均は5円高からスタートした。寄り付き後は国内外での新型コロナ再拡大への懸念から22417.97円(111.32円安)まで下落する場面もあったが、おおむね前日終値近辺での小動きとなった。なお、オプション7月物の特別清算指数(SQ)は概算で22601.81円となっている。
個別では、通期業績予想を下方修正したファーストリテ<9983>が2%超の下落。任天堂<7974>、トヨタ自<7203>、三菱UFJ<8306>などのメガバンク株もさえない。決算発表銘柄ではローソン<2651>が売られているほか、乃村工芸<9716>やくら寿司<2695>、久光薬<4530>は東証1部下落率上位に顔を出した。一方、ソフトバンクG<9984>やソニー<6758>が堅調。ソフトバンクGは引き続き中国アリババ集団などのハイテク株高が追い風となり、出資先企業の上場計画も伝わった。米半導体株高を引き継いで東エレク<8035>、レーザーテック<6920>、アドバンテス<6857>も上昇。また、中小型の好決算銘柄に物色が向かい、C&R社<4763>やエスクローAJ<6093>、SHIFT<3697>が東証1部上昇率上位に顔を出した。
セクターでは、鉱業、証券、不動産業などが下落率上位で、その他も全般軟調。電気機器と情報・通信業の2業種のみ小幅に上昇した。東証1部の値下がり銘柄は全体の75%、対して値上がり銘柄は21%となっている。
本日の日経平均は小安い水準でもみ合う場面が多くなっている。前日の米株式市場の動向では、ハイテク株高こそ追い風となるものの、やはり新型コロナ再拡大への懸念は根強い。国内でも9日、東京都の新規感染者数が224人と過去最多になった。また、8日に続き上場投資信託(ETF)の分配金捻出に絡んだ売りが出るとみられていることも株式相場の重しとなっているだろう。日経平均の日足チャートを見ると、22500円前後に5日移動平均線と25日移動平均線が収れんし、こう着感を一段と強めてきた印象。
売買代金上位では、米ハイテク株高の流れを引き継いで半導体関連を中心とした値がさのグロース(成長)株が堅調。6月工作機械受注の回復を受けてファナック<6954>
なども買われている。反面、自動車株や金融株といった大型のバリュー(割安)株は軟調。NYダウの下落とともに米長期金利が低下し、グロース株優位、バリュー株劣位の構図を支えているとみられる。
新興市場ではマザーズ指数が反発。相対的に堅調な値動きを見せており、前引け時点では1015pt近辺に位置する25日移動平均線をやや上回っている。引き続き新興グロース株への追い風を受け、この水準での戻り待ちの売りを押し返せるか注視したい。
なお、本日ジャスダックへ新規上場したSpeee<4499>は公開価格を8割弱上回る初値を付けた。
アジア株式市場では中国・上海総合指数や香港ハンセン指数が軟調。また、本日同様にETFによる売り観測があった8日は日経平均が後場から軟化した。前引けの東証株価指数(TOPIX)は0.63%の下落となっており、日銀によるETF買いが実施される公算は大きいものの、後場の日経平均は売りに押される場面が出てくることも想定しておきたい。
さて、前日の先物手口を見るとモルガン・スタンレーMUFG証券によるTOPIX先物の売り越しが目立った。他の外資系証券の動向を見ても、海外勢が足元買い戻しに動いている感はない。日経ダブルイン<1357>の純資産総額も高水準を維持しているが、それでも株式相場は崩れない。当欄で従前から描いてきた「ETFによる売りをこなした後、買い戻し主導での意外高」というシナリオが現実味を帯びてきたように思える。
米長期金利は経済指標が急回復しても伸び悩む。もちろんコロナ禍への懸念もあるだろうが、政府債務が記録的な水準に膨らむなかで金利を低水準に抑え込む「強烈な金融緩和」の効果が大きいことを再確認すべきではないだろうか。債券市場に比べれば株式市場などは規模が小さい。あふれ出したマネーは「買える資産」に向かい、安全資産あるいはインフレヘッジ資産に位置付けられる金相場は高値更新が続いている。コロナ禍でも堅調な業績が期待でき、低金利の恩恵を受けるハイテク株も同様の文脈で捉えられるだろう。
このところ当欄の内容に対し、「確かに思ったより相場が崩れない」との声が増えてきた。危機下での金融フレームワーク(枠組み)が市場にどのような影響をもたらしているのか、改めて捉え直す必要があるだろう。
(小林大純)
<AK>