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日経平均は4日続落、「リスクオフ」でなく「リスクヘッジ」?

ランチタイムコメント
 日経平均は4日続落。156.53円安の23261.98円(出来高概算4億8000万株)で前場の取引を終えている。

 28日の米株式市場でNYダウは大幅に4日続落し、943ドル安となった。欧米で新型コロナウイルス感染が再拡大しており、ドイツやフランスが行動規制を強化したことで欧州株は大幅に下落。米国株も欧州株安を嫌気したうえ、大統領選を巡る不透明感が重なって大きく値を下げた。本日の日経平均はこうした流れを引き継いで247円安からスタート。ただ、寄り付きをこの日の安値に下げ幅を縮めると、23200円台でもみ合う展開となった。ソニー<6758>などの好決算銘柄に買いが入ったほか、日銀の上場投資信託(ETF)買い入れによる相場下支えが期待されたようだ。

 個別では、ソフトバンクG<9984>、ファーストリテ<9983>、トヨタ自<7203>、日本電産<6594>などがさえない。第3四半期決算が減益となった花王<4452>は売りが先行したものの下げ渋り。今期予想が市場コンセンサスに届かなかったサイバー<4751>は3%超の下落。また、今期大幅赤字見通しが嫌気されたぐるなび<2440>は東証1部下落率上位に顔を出している。一方、前述のソニー<6758>は売買代金トップで6%を超える上昇。今期営業利益見通しを従来の6200億円から市場予想コンセンサスを上回る7000億円(前期比17.2%減)に上方修正している。コマツ<6301>や日立<6501>も決算を受けて堅調。大日住薬<4506>やNRI<4307>はソニーと同様に大幅高となり、メルコ<6676>はストップ高を付けている。

 セクターでは、証券、石油・石炭製品、鉄鋼などが下落率上位で、その他も全般軟調。半面、電気機器、医薬品、銀行業の3業種は上昇した。東証1部の値下がり銘柄は全体の79%、対して値上がり銘柄は18%となっている。

 前日の欧米株は独DAXが-4.17%、仏CAC40が-3.37%、米NYダウが-3.43%と軒並み大幅な下落を強いられた。「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は40.28(+6.93)と6月中旬以来の水準に上昇。一昨日の当欄でも述べたが、直近のVIX先物の投機筋による持ち高推移を見ると、買い持ち高がじりじり減少する一方、売り持ち高はやや増加。差し引き10万枚超の売り越し(ネットショート)となっていた。11月の米国の大統領選及び議会選で野党・民主党が圧勝し、大規模な財政支出のもと経済が上向くとのシナリオが有力視される場面があったため、金融市場は楽観(弛緩とも言っていい)に傾き過ぎていたのだろう。VIX上昇に伴う米国株の波乱はある程度想定されたものでもある。

 新型コロナ再拡大に伴い、仏政府は全土で1カ月の外出制限を実施。独政府も飲食店や娯楽施設などの営業禁止を発表した。米大統領選を巡っては、期日前投票の集計遅れなどから11月3日の投開票日に大勢が判明しない可能性があるなどと指摘され始めた。「債券王」の異名を持つ米ダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック氏は前回同様に現職・トランプ大統領の再選を予想しつつ、「今回ははるかに不透明」などと述べている。こうした動きが金融市場の楽観を修正しつつあるのだろう。

 ただ、前日の連鎖株安の震源地となった欧州で、トレーダーからは比較的落ち着いた発言が出ているという。新型コロナ流行初期は行動規制導入により経済への影響に対する懸念が強まったが、これまでの新型コロナとの戦いにより、今回は影響がある程度見通せると受け止められているようだ。また、政府・中央銀行による更なる支援策が見込めるとの思惑も透けて見える。それだけに本日の欧州中央銀行(ECB)理事会や11月4〜5日の米連邦公開市場委員会(FOMC)への注目度が急速に高まったとも言える。ともかく、大方の投資家は米大統領選を前になお持ち高を大きく傾けてはいないと考えられる。

 これらを踏まえると、足元の金融市場の動きは「リスクオフ」というより「リスクヘッジ」、つまり「リスクに身構え始めた」ものと考えられる。もちろん米大統領選の行方は不透明であるし、新型コロナ再拡大も憂慮すべき事態だ。しかし、4年前の大統領選で大方の予想に反してトランプ氏が勝利した際や、新型コロナ流行初期に比べれば、金融市場の備えが進みつつあるとも解される。

 さらに、東京市場では日経平均が前引け時点で0.67%の下落にとどまっている。朝方は23000円近辺での攻防を予想する向きも多かったが、ふたを開けてみれば寄り付きの23170.76円をこの日の安値に下げ渋る展開だ。一昨日の当欄で述べた「米国株が多少荒れ模様でも、日本株はこう着ムードが続く」との見立てどおりだろう。日銀のETF買いとともに、日本企業の収益改善などが背景にあると考えられるが、長くなってきたのでこのあたりの話はまた次回以降としたい。
(小林大純)


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