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日経平均は反落、引き続き米長期金利上昇を警戒

ランチタイムコメント
 日経平均は反落。232.21円安の29923.82円(出来高概算8億1412万株)で前場の取引を終えている。

 前日23日の米国株式市場はまちまち。ダウ平均は15.66ドル高の31537.35ドル、ナスダックは67.85ポイント安の13465.20で取引を終了した。パウエルFRB議長の議会証言を控え金融緩和縮小への警戒感に寄り付き後、大きく下落した。特にナスダックは一時4%近く急落。しかし、パウエル議長が強力な金融緩和を続ける方針を改めて強調すると、長期金利の上昇も一服し、下げ幅を縮小。ダウは引けにかけてプラスに転じ、ナスダックは下げ幅を縮小した。東京市場の休日前に比べ、ダウ平均は43.03ドル上昇、ナスダックは409.26ポイント下落となった。

 米国株式相場を受けた今日の東京株式市場は売りが先行した。米長期金利の上昇が警戒されたことに加え、朝方の外為市場で1ドル=105円20銭台と一昨日22日15時頃に比べ40銭ほど円高・ドル安に振れたことなどが株価の重しとなった。一方、国内で新型コロナの新規感染が縮小傾向となり、政府が6府県で緊急事態宣言を今月末に解除する方向で調整に入ったと報じられるなど、経済活動の本格的な再開への期待が株価下支え要因となった。また、パウエルFRB議長が金融緩和を続ける姿勢を改めて強調したことも買い安心感となったが、前場は概ね売り優勢の展開だった。

 個別では、2月度の既存店売上高が前年同月度比0.6%減と2カ月連続で前年割れとなった西松屋チェ<7545>、ビットコイン価格の下落が嫌気されたマネックスG<8698>、ナスダックの不安定な動きから投資事業の収益不透明感が台頭したソフトバンクG<9984>が下げた。また、米国市場でハイテク株が下げたことを受けキーエンス<6861>、村田製<6981>、日本電産<6594>などのハイテク株やレーザーテック<6920>、スクリーンHD<7735>、ルネサス<6723>など半導体関連株が総じて軟調だった。

 一方、販売用不動産16物件724戸の販売を発表したグッドコムA<3475>、自社株買いを発表した東亜建<1885>、コクヨ<7984>、21年3月期純利益予想を上方修正したペガサス<6262>、脱炭素技術の実用化推進すると化学工業日報で報じられた洋エンジ<6330>
が上げた。また、コロナ収束後の業績回復が期待されたJAL<9201>、ANA<9202>
の空運株なども堅調だった。

 セクターでは、精密機器、電気機器、情報・通信業、パルプ・紙、金属製品などが値下がり率上位。一方、空運業、不動産業、鉱業、海運業、鉄鋼などが値上がり率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の52%、対して値上がり銘柄は42%となっている。

 一昨日22日の当欄で、日経平均や米国ダウ平均の銘柄入れ替えについて簡単に触れた。少し詳しく見てみる。ダウ平均30銘柄の中で、現在注目度が高いのは、30年前には構成銘柄ではなかったアップルやマイクロソフト、セールスフォース・ドットコムなどだ。米国での新興企業の成長は、市場関係者の間では「新陳代謝」といったキーワードで語られることがあるが、本質を表しているのだろうか。

 目を国内に転じてみる。20年4-12月期決算発表で印象に残った企業の一つに富士フイルム<4901>がある。21年3月期純利益予想を過去最高に上方修正し、株価は上場来高値に躍り出た。同社はその社名にあるように、元々は写真フィルムのメーカーだが、その市場は今はほぼない。しかし変革を繰り返し、今の姿になった。一方、フィルムの時代に同社の目標だったコダックは時代に対応できず倒産した(現在のコダックは当時とは別法人)。

 米国は次々と新しい企業が華々しく出てきて古い企業は消え去る。片や日本は、新しい企業が派手に出てくることは少ないが、既存の企業が時間を掛けながら事業構造を大きく変える。結果、株価指数を構成する「銘柄」は米国では派手に入れ替わるが、日本は指数を構成する「事業」が大きく変わる。事業の変革は、利害関係者に負荷をかけることが少ない「日本流の新陳代謝」と言えるのではないだろうか。こうした、自らを新陳代謝する企業をみつけ、資金を投じることこそ、投資家にとっての醍醐味のような気もする。

 昨日のダウ平均は31537ドル。今日前場の日経平均は29923円。その差1614。久しぶりにダウの背中が見えてきた。逆転すれば、およそ5年ぶりのことだ。アフターコロナでは「日本流の新陳代謝」が進み、再び日経平均がダウ平均をリードする姿を見たいものだ。

 さて、後場の東京市場で日経平均はもみ合いとなりそうだ。経済活動の本格的な再開への期待が強く、押し目買い意欲は引き続き強そうだ。一方、米長期金利上昇への警戒感は継続しており、特にナスダックをはじめ米ハイテク株の動向を見極めたいとするムードが強く、積極的な買いは限定的となりそうだ。ただ、前場のTOPIXは0.89%
下落しており、日銀によるETF買い観測が強まれば、底堅く推移する可能性もある。
(小山 眞一)



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