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日経平均は急反落、注視すべきは「マネー変調」に「未来図」

ランチタイムコメント
 日経平均は急反落。722.10円安の29446.17円(出来高概算7億3000万株)で前場の取引を終えている。

 25日の米株式市場でNYダウは大幅反落し、559ドル安となった。7年債入札結果の不振などから長期金利が一時1.61%まで急上昇し、幅広い銘柄に売りがでた。特にハイテク株の下げがきつく、ナスダック総合指数は3.5%の下落。「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は28.89(+7.55)に上昇した。本日の東京市場でもリスク回避目的の売りが先行し、日経平均は414円安からスタートすると、朝方には一時29219.15円(949.12円安)まで下落。その後、米長期金利の伸び悩みを受けて押し目買いが入り、29000円台半ばでもみ合う展開となった。

 個別では、ソフトバンクG<9984>、任天堂<7974>、ファーストリテ<9983>、東エレク<8035>、ソニー<6758>といった売買代金上位が軒並み軟調。アドバンテス<6857>は5%を超える下落となっている。業績下方修正を発表した西武HD<9024>も下げが目立つ。また、成長期待の高かったIT・インターネット関連株などは特に売りがかさみ、GMOペパボ<3633>やSansan<4443>が東証1部下落率上位に顔を出している。一方、売買代金上位では武田薬<4502>が小幅ながら逆行高。メガチップス<6875>は業績上方修正を好感した買いが入り、スマートフォンゲームの共同開発を発表したエイチーム<3662>はストップ高水準で前場を折り返した。

 セクターでは、全33業種がマイナスとなり、その他製品、不動産業、電気機器、ガラス・土石製品、建設業などが下落率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の79%、対して値上がり銘柄は18%となっている。

 前日の米金融市場の急変を受け、本日の日経平均は朝方に一時900円を超える下落となった。その後は米長期金利の伸び悩みもあっていったん下げが一服。29000円台に位置する25日移動平均線近くまで調整し、押し目買いを拾う動きも出やすかったのだろう。とりわけマザーズ指数の戻りが大きいところを見ると、買いの主体は個人投資家と考えられる。日経平均が節目の3万円台を回復すると高値警戒感も広がったが、その後の下落局面では日経レバETF<1570>の信用買いが膨らみ、個人投資家の押し目買い意欲が根強いことが窺えた。前日ジャスダック市場に新規上場したアピリッツ<4174>、また本日マザーズ市場に新規上場したcoly<4175>はいまだ買い気配が続いており、ここだけ見れば個人投資家の物色意欲は旺盛な印象だ。

 ただ、マザーズ指数に比べ日経平均の戻りが鈍いところを見ると、海外勢を含む大方の機関投資家は静観ムードなのかもしれない。

 このところ「米長期金利の上昇は『良い』か『悪い』か」といった議論が多く見受けられたが、筆者にはやや違和感があったし、おそらく市場参加者の多くも同様であったと考えている。実際、金利上昇で逆風が強まると目されているマザーズの新興株には押し目買いの動きも出ている。問題は「金利上昇などの直近の動きが金融市場や経済にどのような影響をもたらすか」であり、市場参加者の関心もそこにあるのだろう。

 そのうえでまず警戒されるのは「マネーの変調」だ。実際、急変が生じているのは株式市場や米国債市場だけではない。マネー変調の影響が色濃く出る投資不適格級の
「ジャンク債」を扱う上場投資信託(ETF)、新興国通貨なども軒並み下げがきつい。
これらでダメージを受けた投資家の持ち高を手仕舞う動きは他市場にも波及する可能性がある。

 コロナショック後の戻り相場で多くの機関投資家が学んだことは、おそらく「できる限り上昇相場に踏みとどまること」だろう。でないと一定期間内のベンチマーク
(指標)対比でのパフォーマンスが劣ってしまう。また、コロナショック後に投資を始めた個人投資家の多くは急落をまだ知らないだろう。これらは下落局面で株価変動率(ボラティリティ)を高める要因となる可能性がある。

 また、昨日の当欄で述べたが、市場参加者の目線はさらにその先の「コロナ後の経済」にあるのかもしれない。ここ数日の米連邦準備理事会(FRB)高官の発言は金利上昇やインフレの加速を警戒・けん制する内容ではなかった。今週に入り明らかに値動きが強かったのは、景気敏感系というより商品高の恩恵を受ける銘柄だったとの印象もある。重ねて言うが、本日と同様に日経平均が大きく下落した一昨日、逆行高を演じたのが不動産株やファーストリテだったのは市場が描く「未来図」だと思えてならない。
(小林大純)


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