日経平均は4日ぶり大幅反落、さすがに「いいとこ取り」過ぎた
[21/05/11]
提供元:株式会社フィスコ
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ランチタイムコメント
日経平均は4日ぶり大幅反落。812.39円安の28705.95円(出来高概算6億2000万株)
で前場の取引を終えている。
週明け10日の米株式市場でNYダウは6日ぶりに反落し、34ドル安となった。4月雇用統計を受けた金融緩和の長期化観測、それに景気回復への期待から景気敏感株の買いが続き、300ドル超上昇する場面もあった。しかし、インフレ加速懸念や長期金利の上昇で主力ハイテク株の売りがかさみ、ナスダック総合指数は2.6%の下落。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は4.7%の大幅下落となった。本日の日経平均はこうした流れを嫌気して279円安からスタートすると、寄り付き後も下げ幅を拡大。前引け直前には28693.26円(825.08円安)まで下落する場面があり、取引時間中としては4月21日以来の安値を付けた。
個別では、売買代金トップのソフトバンクG<9984>が5%超下落しているほか、東エレク<8035>、ソニーG<6758>、レーザーテック<6920>といった値がさ株の軟調ぶりが目立つ。ファーストリテ<9983>やトヨタ自<7203>もさえない。決算発表銘柄ではパナソニック<6752>が6%を超える下落となり、住友鉱<5713>やヤマハ<7951>も大きく下落。また、ホクシン<7897>などが東証1部下落率上位に顔を出している。一方、任天堂
<7974>が小高く、日本製鉄<5401>は5日続伸。前日、決算発表後に売られた郵船<9101>
は反発している。引け後の決算発表銘柄では味の素<2802>、グリー<3632>などが大きく上昇し、日ケミコン<6997>やLITALICO<7366>は東証1部上昇率上位に顔を出している。
セクターでは、精密機器、非鉄金属、ガラス・土石製品などが下落率上位で、その他も全般軟調。海運業のみ小幅に上昇した。東証1部の値下がり銘柄は全体の81%、対して値上がり銘柄は15%となっている。
米ハイテク株の大幅安を受け、本日の日経平均は800円を超える下落で前場を折り返した。日米市場とも景気敏感株の一角への投資資金シフトが見られるが、国内外投資家の米ハイテク株へのエクスポージャーはかなり大きいだろうから、やはり市場全体への影響は避けられない。
4月雇用統計の発表直後、米市場では景気敏感株からハイテク株まで総じて買われていたが、さすがに「いいとこ取り」が過ぎただろう。単に発表前に手控えられていた買いが入ったに過ぎないのかもしれない。内容が消化されるとともに「政府・連邦準備理事会(FRB)は積極的な財政・金融緩和策を維持するだろうが、インフレは一段と加速する」と受け止められ、ハイテク株の売りにつながったようだ。ブレークイーブン・インフレ率(期待インフレ率の指標)は上昇が止まらず、10日には2.54%(+0.05pt)となっている。
米4月雇用統計は、アトランタ地区連銀のボスティック総裁が事前に示した「100万人以上の雇用者増加」という見通しを大きく下回る内容となった。手厚い失業給付で低賃金職への就業が手控えられているのが主因で、特例加算が失効すれば労働人口は増えるだろうとの見方が多い。ただ、4月分の予想が「大外れ」となった後にしては、やや楽観的過ぎる見方という印象は拭えない。コロナ禍前後の産業構造の変化などによる雇用のミスマッチ、それにコロナ禍で一段と進んだ所得格差への根強い不満などが過小評価されてはいないだろうか。
コロナ禍以降、日米で個人の株式投資熱の高まりが見られるが、これは労働分配率が一向に上向かず、雇用そのものすら不安定化するなかで「金融緩和による資本家の恩恵に預かろう」とする動きのように思える。労働需給のギャップが思いのほか長期化するようであれば、需要・供給の両面で景気回復の足かせになる可能性はあるだろう。緩和マネーに支えられて商品市況が高止まりし、コストプッシュ型のインフレともなれば、一段と消費が冷え込む恐れもある。
本日の米国では3年物国債入札に加え、FRB高官の発言が多く予定されている。米経済情勢や金融政策の行方を睨み、不安定な市場環境が続くことも十分想定しておきたい。
最後に東京株式市場の概況についても触れておきたい。ゴールデンウィークの5連休後の株価上昇でトレンド好転に期待する向きもあったが、前日の先物手口を見ると外資系証券はさほど買い越しに傾いていなかった。連休直後の海外勢による先物買いはやはり「ヘッジ売りの解消」によるものとみられ、相場全体の方向感を決める海外マクロ系ファンドなどの買いはいまだ乏しいと言わざるを得ない。
また、4月30日申し込み時点の信用買い残高(東京・名古屋2市場、制度・一般信用合計)は3兆2941億円と4週ぶりに減少したが、減少幅は64億円にとどまった。連休前には中小型株を中心に信用買いの手仕舞いと思われる動きが見られたが、市場全体としては信用買いの整理はさほど進まなかったと言える。また、日経レバETF<1570>
の純資産総額も連休前からやや減少したとはいえ、引き続き3000億円を超える高水準となっている。需給的にも株価の上値は当面重いかもしれない。
(小林大純)
<AK>
で前場の取引を終えている。
週明け10日の米株式市場でNYダウは6日ぶりに反落し、34ドル安となった。4月雇用統計を受けた金融緩和の長期化観測、それに景気回復への期待から景気敏感株の買いが続き、300ドル超上昇する場面もあった。しかし、インフレ加速懸念や長期金利の上昇で主力ハイテク株の売りがかさみ、ナスダック総合指数は2.6%の下落。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は4.7%の大幅下落となった。本日の日経平均はこうした流れを嫌気して279円安からスタートすると、寄り付き後も下げ幅を拡大。前引け直前には28693.26円(825.08円安)まで下落する場面があり、取引時間中としては4月21日以来の安値を付けた。
個別では、売買代金トップのソフトバンクG<9984>が5%超下落しているほか、東エレク<8035>、ソニーG<6758>、レーザーテック<6920>といった値がさ株の軟調ぶりが目立つ。ファーストリテ<9983>やトヨタ自<7203>もさえない。決算発表銘柄ではパナソニック<6752>が6%を超える下落となり、住友鉱<5713>やヤマハ<7951>も大きく下落。また、ホクシン<7897>などが東証1部下落率上位に顔を出している。一方、任天堂
<7974>が小高く、日本製鉄<5401>は5日続伸。前日、決算発表後に売られた郵船<9101>
は反発している。引け後の決算発表銘柄では味の素<2802>、グリー<3632>などが大きく上昇し、日ケミコン<6997>やLITALICO<7366>は東証1部上昇率上位に顔を出している。
セクターでは、精密機器、非鉄金属、ガラス・土石製品などが下落率上位で、その他も全般軟調。海運業のみ小幅に上昇した。東証1部の値下がり銘柄は全体の81%、対して値上がり銘柄は15%となっている。
米ハイテク株の大幅安を受け、本日の日経平均は800円を超える下落で前場を折り返した。日米市場とも景気敏感株の一角への投資資金シフトが見られるが、国内外投資家の米ハイテク株へのエクスポージャーはかなり大きいだろうから、やはり市場全体への影響は避けられない。
4月雇用統計の発表直後、米市場では景気敏感株からハイテク株まで総じて買われていたが、さすがに「いいとこ取り」が過ぎただろう。単に発表前に手控えられていた買いが入ったに過ぎないのかもしれない。内容が消化されるとともに「政府・連邦準備理事会(FRB)は積極的な財政・金融緩和策を維持するだろうが、インフレは一段と加速する」と受け止められ、ハイテク株の売りにつながったようだ。ブレークイーブン・インフレ率(期待インフレ率の指標)は上昇が止まらず、10日には2.54%(+0.05pt)となっている。
米4月雇用統計は、アトランタ地区連銀のボスティック総裁が事前に示した「100万人以上の雇用者増加」という見通しを大きく下回る内容となった。手厚い失業給付で低賃金職への就業が手控えられているのが主因で、特例加算が失効すれば労働人口は増えるだろうとの見方が多い。ただ、4月分の予想が「大外れ」となった後にしては、やや楽観的過ぎる見方という印象は拭えない。コロナ禍前後の産業構造の変化などによる雇用のミスマッチ、それにコロナ禍で一段と進んだ所得格差への根強い不満などが過小評価されてはいないだろうか。
コロナ禍以降、日米で個人の株式投資熱の高まりが見られるが、これは労働分配率が一向に上向かず、雇用そのものすら不安定化するなかで「金融緩和による資本家の恩恵に預かろう」とする動きのように思える。労働需給のギャップが思いのほか長期化するようであれば、需要・供給の両面で景気回復の足かせになる可能性はあるだろう。緩和マネーに支えられて商品市況が高止まりし、コストプッシュ型のインフレともなれば、一段と消費が冷え込む恐れもある。
本日の米国では3年物国債入札に加え、FRB高官の発言が多く予定されている。米経済情勢や金融政策の行方を睨み、不安定な市場環境が続くことも十分想定しておきたい。
最後に東京株式市場の概況についても触れておきたい。ゴールデンウィークの5連休後の株価上昇でトレンド好転に期待する向きもあったが、前日の先物手口を見ると外資系証券はさほど買い越しに傾いていなかった。連休直後の海外勢による先物買いはやはり「ヘッジ売りの解消」によるものとみられ、相場全体の方向感を決める海外マクロ系ファンドなどの買いはいまだ乏しいと言わざるを得ない。
また、4月30日申し込み時点の信用買い残高(東京・名古屋2市場、制度・一般信用合計)は3兆2941億円と4週ぶりに減少したが、減少幅は64億円にとどまった。連休前には中小型株を中心に信用買いの手仕舞いと思われる動きが見られたが、市場全体としては信用買いの整理はさほど進まなかったと言える。また、日経レバETF<1570>
の純資産総額も連休前からやや減少したとはいえ、引き続き3000億円を超える高水準となっている。需給的にも株価の上値は当面重いかもしれない。
(小林大純)
<AK>