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日経平均は反落、週末米株高も虚しく買い戻し進まず、国内要因が長期的な重しか

ランチタイムコメント
 日経平均は反落。330.64円安の27753.83円(出来高概算5億9591万株)で前場の取引を終えている。

 前週末14日の米国株式市場では主要株価3指数が揃って大幅続伸。4月米小売売上高が市場予想を下回ったこともあり、前の日の「インフレ懸念一服・長期金利低下」の動きが続き、ハイテク株を中心に大きく続伸した。NYダウが1.06%高だったのに対し、ナスダック総合指数は2.32%高、フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)は3.02%高となった。「恐怖指数」とされる米VIX指数も4.32pt低下(18.68%安)の18.81ptと、警戒水準の20ptを下回った。この米株高を受けて週明けの日経平均は225円高の2
8310.46円でスタートしたが、寄り付き直後から急失速し、間もなくマイナスに転換。
その後は28000円を挟んだ一進一退の動きが続いたが、前引けにかけては下げ幅を拡げる展開となった。

 個別では、前週末に決算を発表したところで、ホンダ<7267>が3%安と売られ、フジクラ<5803>、ゆうちょ銀行<7182>、コニカミノルタ<4902>、三菱マテリアル<5711>などは大幅に売られている。そのほか、マーケットE<3135>はストップ安売り気配で終えた。一方、対照的に良好な決算を発表した、みずほ<8411>が2%高となっており、ギフティ<4449>はストップ高まで買い進まれた。また、AOITYOHoldings<
3975>がストップ高買い気配で終えている。

 売買代金上位では、東京エレクトロン<8035>やレーザーテック<6920>などの半導体関連が大幅に下落。そのほか、ソフトバンクグループ<9984>、ファーストリテイリング<9983>、日本電産<6594>、三井住友<8316>などが軟調。一方、トヨタ<7203>、任天堂<7974>、アサヒ<2502>、武田薬<4502>などが大きく買われており、ソニーグループ<
6758>、キーエンス<6861>も堅調。

 セクターでは、非鉄金属、機械、建設業、情報・通信業、繊維製品などが下落率上位となった。一方、空運業、その他製品、倉庫・運輸関連業、陸運業、不動産業などが上昇率上位となっている。東証1部の値上がり銘柄は全体の43%、値下がり銘柄は52%となっている。

 2月半ば以降、米国をはじめとした海外市場と比べた際の日経平均の弱さが目立っていたが、前週からの弱さが際立っている。前週は「インフレ加速・長期金利上昇」への警戒感で米国株も大きく下落したものの、日経平均は3日間だけで2000円超と下落し、欧州市場と比べても明らかに下落がきつかった。そして、前週末の米国株の大幅続伸を受けての今日のこの軟調さが特に日本単独の弱さを印象付ける。本日は、台湾加権指数が大幅に下落しているため、これが影響している可能性があるものの、中国市場や香港市場は堅調推移となっている。

 前週末14日に日経平均は600円超と大幅に反発したが、それは直前の13日の米株式市場でインフレに対する過度な警戒感が一服し、買い戻しが入ったことを受けての反発であり、それまでの2000円を超える日経平均の下落分も踏まえれば、自律反発としても説明がつく。今日の弱さを、前週末の大幅反発が翌日14日の米株高までを織り込んでいたとする説明はどうも腑に落ちない。明らかに日本の弱さが際立っている印象だ。

 こうした背景としては、多方面でもすでに上がっているが、日本独自の買い材料が乏しく、むしろ、ワクチン接種の遅れなど、売り材料の方が目立つからだろう。日本でも来週から東京や大阪で大規模接種センターでのワクチン接種が開始されるとのことだが、打ち手の不足などもあり、接種ペースは諸外国と比べてかなり緩慢だ。先進国の中でもいち早くワクチン接種をはじめたイギリスでは、100人あたりのワクチン累計接種回数は82.1(5月14日)と大きく進展しており、一般市民がマスクを着用せずに外食できるレベルにまで至っている。

 米国でもワクチンの普及が予想以上に速やかに進み、都市封鎖を再開していたカリフォルニア州や活動をかなり長い間制限してきたニューヨーク市、NJ州、コネチカット州では19日から全パンデミック規制が撤廃される。また、米疾病対策センター(CDC)はマスク着用令も解除し、経済活動正常化が一段と進展している。

 こうした実体経済面での差が、グロースマクロ系のヘッジファンドの日本株の買い手控えへと繋がって、ひいては株価指数のパフォーマンス格差にも繋がっていると考えても不思議ではないだろう。また、新型コロナウイルス対応を巡っての菅政権の対応の遅れへの批判が高まっている。政権支持率の低迷により、政権発足当初のスガノミクスへの期待もいまや消え失せており、海外投資家の長期目線での日本株の買い意欲をも後退させているようだ。下落する際にはどこよりも大きく下げ、反発する時はどこよりも戻りが鈍い、こうした株式市場でのパフォーマンス格差が解消されるには暫く時間がかかりそうか。

 また、需給面でも厳しい環境が続く可能性がある。前週の計2000円を超す日経平均の急落局面での先物手口をみると、クレディ・スイス、シティグループ、BNPパリバ、JPモルガンなど海外勢が広く、大量に日経平均先物を売り越していた。一方、週末の反発局面では、ゴールドマン・サックスによる買い越しは見られたが、急落局面で大きく売りに回っていた筋の買い越しは殆ど確認されなかった。それまでの下落分を考えれば早々に買い戻しに転じてもおかしくはない場面だったと思うが、そうした動きが確認されなかったということは、当面、日本株は上値の重い展開にならざるを得ないと見ているということだろうか。

 急落前に信用買い残が大きく積み上がっていたことを考えると、含み損を抱えている個人投資家は多いと思われる。日銀による上場投資信託(ETF)買いも政策方針の転換後は殆ど入っていない。海外勢の売り方による買い戻しも入らないとなれば、日本株が当面は上値の重い動きとなることは避けられないかもしれない。



<AK>

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