日経平均は大幅反発、イベント通過で早々に29000円台回復だが…
[21/05/28]
提供元:株式会社フィスコ
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ランチタイムコメント
日経平均は大幅反発。562.40円高の29111.41円(出来高概算6億3000万株)で前場の取引を終えている。
27日の米株式市場でNYダウは続伸し、141ドル高となった。週間の新規失業保険申請件数がコロナショック以降の最低水準まで減少し、バイデン大統領が28日公表する予算案で歳出が年6兆ドルに拡大するとの報道も伝わって、景気敏感株を中心に買いが入った。一方、長期金利の上昇によりナスダック総合指数は小幅に下落。東京市場では前日の引けにかけてMSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)指数構成銘柄見直しに伴う売り需要が発生したが、本日の日経平均はイベント通過によるあく抜け感もあって363円高からスタートした。寄り付き後も強含みの展開となり、前引けにかけて29130.55円(581.54円高)まで上昇する場面があった。
個別では、ソフトバンクG<9984>やレーザーテック<6920>、東エレク<8035>が2%超の上昇。値がさハイテク株に加え、新型コロナワクチン普及による経済活動再開への期待からリクルートHD<6098>やOLC<4661>の上げが目立つ。その他売買代金上位も任天堂<7974>、トヨタ自<7203>、ソニーG<6758>、ファーストリテ<9983>など全般堅調。また、旧村上系ファンドの大量保有報告書が提出された富士石油<5017>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。一方、サイバー<4751>は利益確定売り優勢で3%超の下落。エイベックス<7860>の筆頭株主になるとも伝わっている。武田薬<4502>
やアドバンテス<6857>も軟調。事業再生ADR(裁判以外の紛争解決)が成立したワタベ
<4696>は売りがかさみ、スターティアH<3393>などが東証1部下落率上位に顔を出している。
セクターでは、鉄鋼、機械、非鉄金属などが上昇率上位で、その他も全般堅調。下落したのはパルプ・紙のみだった。東証1部の値上がり銘柄は全体の78%、対して値下がり銘柄は18%となっている。
前日のMSCIリバランスを通過し、日経平均は急反発する展開となっている。6000〜7000億円規模の売り需要が発生したとみられていることから、その反動はそれなりに大きいだろう。株価指数への影響が大きい値がさ株や時価総額上位銘柄は揃って堅調。
日経平均の日足チャートを見ると、窓を開けての急伸となり、28600円台半ばに位置する25日移動平均線を一気に上抜けてきた。また、米国では失業保険申請が予想以上に減少し、バイデン氏が大規模予算案を提示する見通しと報じられたこともあって、景気敏感株をけん引役にNYダウが続伸。さらに、日本でも新型コロナワクチンの接種率向上に伴ってサービス業を中心とした景況感改善が期待できるとの指摘があり、OLCなどの上昇が目立っている。本日ここまでの東証1部売買代金は1兆4000億円あまりとまずまず多い。
前日の当欄で予想したとおり(やや急ではあるが)、日経平均はMSCIリバランスを通過して29000円水準まで値を戻してきた。ただ、3万円近辺まで歩を進めてくるかというと、いまだ慎重な見方であることに変わりはない。当面の上値めどは75日移動平均線の位置する29200円台半ばあたりとみておきたい。
まず、海外ファンドが景気敏感株の売り持ち調整に動き、NYダウや日経平均の上昇を演出したと考えられる。直近では米経済指標の改善ペースや長期金利の上昇にピークアウト感が漂っていたことなどから、ファンド勢の一角がハイテク株、あるいはより保守的にディフェンシブ株の持ち高増加に動いていたという。バイデン氏の大規模予算案や労働市場の改善がそれにいったん歯止めをかけた格好だろう。
もっとも、再び景気敏感株の買い持ちにまで傾いてくるとは予想しづらい。来週から6月に入り、5月雇用統計(6月4日)を中心に主要な米経済指標の発表が相次ぐ。ひとまずこれらの内容を見極めたいとの思惑が強まるのは必至だろう。市場では4-6月期ないし7-9月期に米経済指標の改善がピークを迎えるとの見方が多い。他方、仮に経済指標が想定以上に良好な内容だった場合、またぞろ市場は金融・財政政策の過剰修正を迫る動きを見せてくる可能性もある。
景気敏感色の強い日本株に関しても、海外マクロ系ファンドによる多少の売り持ち調整が生じたとして、積極的な買い持ちにまで傾いてくるとは目先考えにくい。
東京市場の需給状況も改めて見ておこう。日本取引所グループの発表している投資主体別売買動向を見ると、5月第2〜3週(10〜21日)に外国人投資家は現物株・株価指数先物の合計で1兆5000億円あまり売り越していた。これを吸収したのは第2週に見られた個人投資家の押し目買いと、第3週に見られた投信・生損保・信託銀行の買いだ。
投信・生損保・信託銀行は株価急落に伴い、資産構成比率の修復を目的とした買いを入れたとみられている。
もっとも、前日の当欄で指摘したとおり、個人投資家はその後の戻り相場で早々に利益確定売り姿勢に転じてきている。投信・生損保・信託銀行も株価回復に伴い、どこかのタイミングでリバランスの売りを出してくるだろう。これらはあくまで「下値を買う投資家」だ。海外マクロ系ファンドなどが日本株の買い持ち姿勢に転じてこないと、なかなか上値は期待しづらい。
(小林大純)
<AK>
27日の米株式市場でNYダウは続伸し、141ドル高となった。週間の新規失業保険申請件数がコロナショック以降の最低水準まで減少し、バイデン大統領が28日公表する予算案で歳出が年6兆ドルに拡大するとの報道も伝わって、景気敏感株を中心に買いが入った。一方、長期金利の上昇によりナスダック総合指数は小幅に下落。東京市場では前日の引けにかけてMSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)指数構成銘柄見直しに伴う売り需要が発生したが、本日の日経平均はイベント通過によるあく抜け感もあって363円高からスタートした。寄り付き後も強含みの展開となり、前引けにかけて29130.55円(581.54円高)まで上昇する場面があった。
個別では、ソフトバンクG<9984>やレーザーテック<6920>、東エレク<8035>が2%超の上昇。値がさハイテク株に加え、新型コロナワクチン普及による経済活動再開への期待からリクルートHD<6098>やOLC<4661>の上げが目立つ。その他売買代金上位も任天堂<7974>、トヨタ自<7203>、ソニーG<6758>、ファーストリテ<9983>など全般堅調。また、旧村上系ファンドの大量保有報告書が提出された富士石油<5017>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。一方、サイバー<4751>は利益確定売り優勢で3%超の下落。エイベックス<7860>の筆頭株主になるとも伝わっている。武田薬<4502>
やアドバンテス<6857>も軟調。事業再生ADR(裁判以外の紛争解決)が成立したワタベ
<4696>は売りがかさみ、スターティアH<3393>などが東証1部下落率上位に顔を出している。
セクターでは、鉄鋼、機械、非鉄金属などが上昇率上位で、その他も全般堅調。下落したのはパルプ・紙のみだった。東証1部の値上がり銘柄は全体の78%、対して値下がり銘柄は18%となっている。
前日のMSCIリバランスを通過し、日経平均は急反発する展開となっている。6000〜7000億円規模の売り需要が発生したとみられていることから、その反動はそれなりに大きいだろう。株価指数への影響が大きい値がさ株や時価総額上位銘柄は揃って堅調。
日経平均の日足チャートを見ると、窓を開けての急伸となり、28600円台半ばに位置する25日移動平均線を一気に上抜けてきた。また、米国では失業保険申請が予想以上に減少し、バイデン氏が大規模予算案を提示する見通しと報じられたこともあって、景気敏感株をけん引役にNYダウが続伸。さらに、日本でも新型コロナワクチンの接種率向上に伴ってサービス業を中心とした景況感改善が期待できるとの指摘があり、OLCなどの上昇が目立っている。本日ここまでの東証1部売買代金は1兆4000億円あまりとまずまず多い。
前日の当欄で予想したとおり(やや急ではあるが)、日経平均はMSCIリバランスを通過して29000円水準まで値を戻してきた。ただ、3万円近辺まで歩を進めてくるかというと、いまだ慎重な見方であることに変わりはない。当面の上値めどは75日移動平均線の位置する29200円台半ばあたりとみておきたい。
まず、海外ファンドが景気敏感株の売り持ち調整に動き、NYダウや日経平均の上昇を演出したと考えられる。直近では米経済指標の改善ペースや長期金利の上昇にピークアウト感が漂っていたことなどから、ファンド勢の一角がハイテク株、あるいはより保守的にディフェンシブ株の持ち高増加に動いていたという。バイデン氏の大規模予算案や労働市場の改善がそれにいったん歯止めをかけた格好だろう。
もっとも、再び景気敏感株の買い持ちにまで傾いてくるとは予想しづらい。来週から6月に入り、5月雇用統計(6月4日)を中心に主要な米経済指標の発表が相次ぐ。ひとまずこれらの内容を見極めたいとの思惑が強まるのは必至だろう。市場では4-6月期ないし7-9月期に米経済指標の改善がピークを迎えるとの見方が多い。他方、仮に経済指標が想定以上に良好な内容だった場合、またぞろ市場は金融・財政政策の過剰修正を迫る動きを見せてくる可能性もある。
景気敏感色の強い日本株に関しても、海外マクロ系ファンドによる多少の売り持ち調整が生じたとして、積極的な買い持ちにまで傾いてくるとは目先考えにくい。
東京市場の需給状況も改めて見ておこう。日本取引所グループの発表している投資主体別売買動向を見ると、5月第2〜3週(10〜21日)に外国人投資家は現物株・株価指数先物の合計で1兆5000億円あまり売り越していた。これを吸収したのは第2週に見られた個人投資家の押し目買いと、第3週に見られた投信・生損保・信託銀行の買いだ。
投信・生損保・信託銀行は株価急落に伴い、資産構成比率の修復を目的とした買いを入れたとみられている。
もっとも、前日の当欄で指摘したとおり、個人投資家はその後の戻り相場で早々に利益確定売り姿勢に転じてきている。投信・生損保・信託銀行も株価回復に伴い、どこかのタイミングでリバランスの売りを出してくるだろう。これらはあくまで「下値を買う投資家」だ。海外マクロ系ファンドなどが日本株の買い持ち姿勢に転じてこないと、なかなか上値は期待しづらい。
(小林大純)
<AK>