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日経平均は3日続伸、急伸後の反動安こなす強い動き、ただ楽観シナリオ再考を迫る要因も

ランチタイムコメント
 日経平均は3日続伸。34.71円高の27404.14円(出来高概算5億5946万株)で前場の取引を終えている。

 前日の米株式市場はメモリアル・デーの祝日で休場。一方、欧州市場ではドイツDAXやイギリスFTSE100、フランスCAC40など主要株価指数が揃って堅調に推移した。前日に600円近くと大幅に上昇した日経平均は51.34円安と小幅反落でスタート。欧州株高を好感して一時27463.33円(93.90円高)と上昇に転じる場面があったが、時間外取引のNYダウ先物が下落に転じたこともあり失速。欧州の対ロ追加制裁を背景とした原油高による実体経済への影響懸念も重石となり、一時は27250.70円(118.73円安)まで下落。一方でナスダック100先物の堅調推移や為替の円安進行が投資家心理を下支えし、日経平均は下げ渋ると前引けにかけて再びプラス圏に浮上した。

 個別では、原油高を追い風にINPEX<1605>が5%高で、三井物産<8031>も高い。東証プライム売買代金上位ではレーザーテック<6920>やダブル・スコープ<6619>が大きく上昇。米長期金利の上昇を受けて東京海上<8766>やMS&AD<8725>も買い優勢。円安進行を手掛かりにSUBARU<7270>が4%高。フジクラ<5803>はカバレッジ開始、ミネベア<6479>はレーティング格上げで大幅高。パイオラックス<5988>は配当計画の大幅引き上げが引き続き好感され、連日で急伸。国民皆歯科検診の導入検討の報道を受けて松風<7979>が東証プライム値上がり率トップとなった。ほか、ニトリHD<9843>や良品計画<7453>、ライオン<4912>、東洋水産<2875>などが高い。

 一方、川崎汽船<9107>や商船三井<9104>など海運株が前日に続き軟調。ベイカレント<6532>やSHIFT<3697>などのグロース(成長)株は前日の急伸の反動で下落。レーティング格下げを受けてDMG森精機<6141>や住友電工<5802>が大きく下落。

 セクターでは鉱業、保険、石油・石炭が上昇率上位となった一方、不動産、海運、空運が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の46%、対して値下がり銘柄は50%となっている。

 前場の日経平均は朝方にプラス転換した矢先に下落したかと思いきや、前引けにかけて再び上昇に転じるなど一進一退の展開。しかし、前日の急伸後を踏まえれば底堅い以上に強いと評価できる。先週末にかけて連日で上昇した米国市場が、連休明けの今晩も上昇基調を維持できるかを見極めたい思惑もあり、模様眺めムードが支配的になるのは致し方のないところ。こうした中、前日の上昇分をしっかりと保持していることは好印象で、今晩の米国市場次第では、短期的には200日移動平均線が位置する28000円近辺に向けた動きも期待できそうだ。

 一方で、インフレピークアウト(景気後退懸念も含むが)を背景とした米債券市場での名目金利や期待インフレ率の低下基調、景気に配慮したハト派姿勢への転換を示唆した米連邦準備制度理事会(FRB)高官らの発言を拠り所としたグロース株の復調期待に水を差しかねない状況が再び台頭してきている。

 前日に発表されたドイツの5月の消費者物価指数(CPI)は前年比で+7.9%と予想(+7.6%)を上回った。前月比でも+0.9%と予想(+0.6%)を大きく超過し、過去最高を記録。これを受けて、欧州中央銀行(ECB)による早期の金融引き締め観測が高まり、前日の欧州市場では債券価格が大きく下落(利回りは大幅上昇)した。

 また、欧州連合(EU)は30日にロシア産石油の一部禁輸で合意。追加制裁の発動後ただちに3分の2の輸入が止まり、年内には90%以上になるという。これを受けて、原油先物相場は大幅に上昇。北海ブレント原油先物価格(7月限)は30日に1バレル=120ドルを上回り、終値で3月8日以来の高値121.67ドルを付けた。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート、7月物)も1バレル=117ドル台後半と、先週末の115ドルから上伸している。

 さらに、米国では前日、FRBのウォラー理事が「インフレ率が当局の目標である2%
に近づくまでは、0.5ptの利上げは常に選択肢にある」と発言。直近の高官発言からは、今後2会合(6月、7月)での0.5ptの利上げ後については、いったん利上げ幅が0.25ptに縮小するのではといった見方が優勢になってきていたため、今回のウォラー氏の発言はタカ派サプライズ感がある。

 米国景気の減速で「金利は上がりにくい」、「株の買い戻し余地がある」といった声が足元では増えていたが、前日にかけて観測されたドイツCPIの上振れ、EUの対ロ追加制裁による原油高、ウォラーFRB理事の発言などを背景に、金利低下基調を背景とした楽観論は早くも修正を強いられそうな状況となってきた。

 先週25日に米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(5月3-4日分)が公表された直後には、金利先物市場が織り込む6月と7月の両会合での利上げ幅の合計が1pt未満となる動きが一時見られるなど、FRBのタカ派姿勢の後退を予想するような極端な動きも見られていた。金利低下基調の一服感とともに市場の見通しも修正を迫られる余地が大きそうだ。

 東京時間の本稿執筆時点での米10年債利回りは2.83%と、先週末の2.74%からは大きく上昇しているものの、5月6日に付けた3.14%にはまだ距離がある。また、薄商いながらも、同時点における時間外取引のナスダック100先物は堅調に推移している。こうした背景から、まだ楽観的な見方が完全に萎んだわけではなさそうだが、前日まで抱いていた程の楽観的な見方を維持することには危うさが伴う。短期的にはグロース株にリバウンド妙味があるとの見方は維持するが、値幅が出たら早い段階で利益を確定するなど細やかなケアは依然として必要そうだ。

 後場の日経平均は前日終値を挟んだ一進一退が続きそうだ。手掛かり材料難のなか、時間外取引の米株価指数先物やアジア市況を睨んだ展開となろうが、どちらも現状は小動きで方向感に乏しい。今晩の米国市場の動きを見極めたい思惑もあり、後場の東京市場は模様眺めムードがより支配的になりそうだ。
(仲村幸浩)


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