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日経平均は大幅反落、欧州・米国・日本それぞれに気掛かり要素

ランチタイムコメント
 日経平均は大幅反落。442.30円安の25979.75円(出来高概算6億2458万株)で前場の取引を終えている。

 29日の米株式市場でダウ平均は458.13ドル安(-1.54%)と大幅反落。4-6月期価格指数確定値が1981年以来で最高となったほか、週次新規失業保険申請件数が予想外に減少したため大幅利上げを織り込む長期金利の上昇で売りが先行。一部企業が売上見通しに悲観的見解を示したため景気後退懸念も更なる売り圧力となり終日軟調に推移した。ナスダック総合指数は-2.84%と3日ぶり大幅反落。欧米株安を受けて日経平均は182.05円安からスタート。寄り付きから断続的に売りが続き、前引けまでほぼ一本調子で下げ続ける展開となった。アジア市況のマイナス転換なども嫌気され、前引け直前には26000円を割り込んだ。

 個別ではレーザーテック<6920>、東エレク<8035>、キーエンス<6861>、日本電産<6594>の主力ハイテク株のほか、ファーストリテ<9983>、任天堂<7974>、ダイキン<6367>
などの値がさ株が軒並み大幅下落。エムスリー<2413>、メルカリ<4385>のグロース株も大幅安。日本製鉄<5401>や三菱商事<8058>、三菱UFJ<8306>、IHI<7013>といった市況関連株も下落したが、トヨタ自<7203>、デンソー<6902>、マツダ<7261>などの自動車関連の急落が目立った。米カーマックスの決算が嫌気されたようだ。また、アシックス<7936>も米ナイキの決算が嫌気される形で急落。業績予想を下方修正した日軽金HD<5703>、西武HD<9024>なども下落した。

 一方、ダブル・スコープ<6619>が逆行高。NTT<9432>、KDDI<9433>、ソフトバンク<9434>の通信大手が揃って堅調。市況関連株ではロンドン金属取引所(LME)がロシア産金属の新規供給を禁止する可能性が伝わったことで、非鉄金属価格の高騰を受けて住友鉱<5713>、DOWA<5714>などが上昇。ほか、第一三共<4568>、アステラス製薬<4503>
など医薬品の一角が買われた。DCM<3050>は増配や自社株買いが好感されて急伸。ハピネスカムズを子会社化したウェルビー<6556>も大幅に上昇。キユーピー<2809>はレーティング格上げで買われた。

 セクターでは輸送用機器、ゴム製品、電気機器を筆頭にほぼ全面安の展開。医薬品、不動産の2業種が上昇した。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の80%、対して値上がり銘柄は17%となっている。

 本日の日経平均は再び値幅を伴った下落となり、急下降中の5日移動平均線を下放れる形となっている。日足一目均衡表では三役逆転が継続し、売り手優位の状況が強まっている。東エレクやソニーGといったハイテクだけでなく、トヨタ自やマツダといった自動車関連、三菱UFJなどの大手銀行などを含めて主力株のチャートが軒並み崩れているのが非常に気掛かりで、リスクオフムードの様相がいかに強いかを物語っている。

 前日は、英イングランド銀行による長期国債の無制限買入れという緊急措置によって金融不安が一時後退し、グローバルな金利上昇圧力の緩和を背景にいったんは株式市場に安堵感が生まれていたが、安息日は僅か1日で終わった。英ポンドや欧ユーロについてはその後売り圧力が和らぎ、対ドルでの買い戻しが続いているが、債券利回りについては欧米ともに低下したのは英中銀の緊急対策後の僅か1日で、前日は再び上昇している。

 9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で公表されたドットチャートでの政策金利見通しの大幅引き上げで、米国の金利動向については大分織り込まれたとは思われるが、財政不安を通じた欧州発の金利高圧力はまだ止んでいない様子。英中銀が国債買入れの期限としている10月14日のデッドライン前後での不安再燃を懸念しているかのようだ。前日には、欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのレーン・フィンランド中央銀行総裁が「ユーロ圏の3分の1以上の国で長期債務の持続可能性が深刻な危機にある」と言及した。欧州を巡るきな臭さはしばらく残ることになりそうだ。

 その懸案の欧州ではスタグフレーションの様相が一段と強まっている。欧州経済の要とされるドイツで前日発表された9月消費者物価指数(CPI)は前年同月比+10.0%
(欧州連合(EU)基準では+10.9%)と8月の+7.9%(同+8.8%)から大きく加速し、予想も大幅に上回った。燃料価格の割引など価格抑制策が終了したことが大きいが、ユーロ導入後で初めての2ケタ台乗せということでインパクトのある数字だ。また、ドイツの4大経済研究所によると、エネルギー価格の高騰などを背景に同国経済の来年の成長率は−0.4%になるとし、4月時点の+3.1%成長見通しから大幅に下方修正した。

 一方で、米国も対岸の火事とはいえない。前日は主要企業の決算発表があったが、いずれも冴えないものだった。半導体大手マイクロン・テクノロジーが示した9-11月期売上高見通しは42.5億ドルと市場予想(60億ドル程)を大幅に下回った。また、設備投資額は2023会計年度に30%減少するという。半導体需要の減速はかねてから明らかになっていたため、驚きはないが、下振れ幅や設備投資額の減少幅は想定よりも大きい印象。米スポーツ用品メーカー大手ナイキの決算も北米での需要の堅調さは確認されたものの、在庫調整が懸案事項として残った。

 そして、インパクトがあったのは中古車販売の米カーマックスの決算。6-8月期業績は多くの項目で市場予想を大きく下振れた。会社側は金利上昇と先行き不透明感が消費者の購入能力を引き下げていると説明。これまで、部材不足で新車納入が遅れるなか中古車販売は活況で、米国では中古車価格がピークアウトしたとはいえ高止まりしていた。そのため、依然として中古車業界は需要が堅調だと思われていたが、そうした見通しが変化してきていることが今回の決算で示唆された。民間消費はまだ堅調とされていた米国も、住宅市場を起点として既に消費は減速し始めており、それがいよいよ住宅以外の耐久財にも及んできたということだろう。米国の景気動向にも一段と注意が必要になってきた。

 視点は変わるが、東京市場でも気になることはいくつかある。オプション市場では今週に入ってからプット(売る権利)の売買が活発化している。特に日経225オプションの権利行使価格25000円以下での取引が活発で、24500円、24000円あたりが活況。24500円には今週に入って建玉が5000枚以上積み上がり、11500枚まで増えている。一段の下値に備える投資家が増えているという点で見逃せない材料だ。

 先物手口では、日本株の個別調査部門を持たないバークレイズ証券の動きが気になる。足元、日経225先物及びTOPIX(東証株価指数)先物で大幅な売り越しが観測されている。日経225先物では28、29日にそれぞれ2400枚、3400枚程の売り越し、TOPIX先物では27日から29日まで3000枚、2700枚、7100枚と売り越した。商品投資顧問(CTA)
といったトレンドフォロー型ファンドのほか、米VIX指数や日経平均VIといったボラティリティー指数の上昇に伴うリスクパリティ戦略ファンドによる売りと推察される。
なお、バークレイズの建玉状況については29日時点で、日経225先物で約11200枚の買い超、TOPIX先物で約53500枚の買い超となっている。9月半ばから大きく買い建玉を減らしてきてはいるが、依然として削減余地があるといえ、株価指数の一段の下値模索の展開にも注意が必要だろう。
(仲村幸浩)


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