日経平均は小幅続伸、銀行経営不安は一時後退も懸念くすぶる
[23/03/28]
提供元:株式会社フィスコ
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ランチタイムコメント
*12:08JST 日経平均は小幅続伸、銀行経営不安は一時後退も懸念くすぶる
日経平均は小幅続伸。20.58円高の27497.45円(出来高概算5億1093万株)で前場の取引を終えている。
27日の米株式市場でダウ平均は194.55ドル高(+0.60%)と3日続伸。地銀ファースト・シチズンが経営破綻したシリコンバレー銀行のローンや預金買収で合意したとの報道を受け、金融不安が緩和。経営難が懸念されているファースト・リパブリック銀行など他の地銀株、金融セクターも買われ、相場をけん引した。ダウ平均は終日堅調に推移した一方、長期金利が大きく上昇したことでハイテクは売りに転じ、ナスダック総合指数は−0.46%と反落。ダウ平均の続伸を受けて日経平均は96.95円高からスタート。しかし、海外時間に円安基調だった為替が円高に振れてきたこともあり、寄り付き直後から失速。27500円水準では戻り待ちの売りも根強く、上値を切り下げる展開となった。
個別では、みずほ<8411>、りそなHD<8308>、第一生命HD<8750>などの銀行や保険が大きく上昇。イラクのクルド人自治区からの原油輸出が一部停止したことなどによる原油市況の上昇を受けてINPEX<1605>、石油資源開発<1662>、コスモエネHD<5021>も大幅高。丸紅<8002>、神戸製鋼所<5406>、住友鉱<5713>の商社、鉄鋼、非鉄金属も高い。ブラジルでエアバッグなどの生産を強化すると発表した豊田合成<7282>は大幅に上昇。一方、米ナスダック安を受けてレーザーテック<6920>、アドバンテスト<6857>、ルネサス<6723>の半導体や、ラクスル<4384>、インソース<6200>、JMDC<4483>のグロース(成長)株の下落が目立つ。イビデン<4062>はレーティング格下げもあり下落。
セクターでは鉱業、銀行、保険が上昇率上位に並んだ一方、サービス、精密機器、陸運が下落率上位に並んだ。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の41%、対して値下がり銘柄は55%となっている。
今週から物色動向に変化が見られる。先週までは金融システム不安と景気後退懸念を背景に銀行・保険や不動産のほか、エネルギーなどの資源関連株、いわゆるバリュー(割安)株に属する銘柄が軟調だった。一方、米長期金利の低下を背景に半導体をはじめとしたハイテクやグロース(成長)株に強い動きが見られていた。
しかし、今週からはこうした傾向にリバーサル(株価の反転)の動きが確認されている。米ファースト・シチズンズ・バンクシェアーズが経営破綻した米シリコンバレー銀行(SVB)の買収で合意したほか、米当局が緊急融資枠の拡張などさらなる銀行支援策を検討していると報じられたことで、金融システム不安が緩和していることが一つ要因として考えられる。また、米連邦準備制度理事会(FRB)のバー副議長が「あらゆる規模の金融機関に対して全ての手段を講じる用意がある」などと発言したことも、安心感を誘っているもよう。
加えて、明日29日の配当・優待権利付き最終売買日を前にした権利取り狙いの買いや、権利取りに併せてヘッジ対応としてショート(売り持ち)していたバリュー株を買い戻す動きなどがこうした動きを強めているようだ。株価指数連動型ファンドの配当再投資目的の先物買い需要が1兆円超発生する見込みであることも需給面での下支えとして意識されていそうだ。
一方、金融システム不安は完全に収束したとはいえない。昨日の米国市場でのセクター騰落率ランキングを見ると、銀行や保険、エネルギーなどが買い戻された一方、不動産は下落が続いている。リモートワークの普及でオフィス空室率がコロナ前に完全に戻り切らない中、今回の金融システム不安により、中小銀行が融資全体の6−7割をも占めるとされる商業用不動産向けの貸し出しは今後減退が想定され、不動産事業の行方が非常に気掛かりだ。今後も不動産向けエクスポージャーの大きい経済主体の動向を注視する必要があり、影響が実体化されるまでに時間がかかることを踏まえれば、不安定な相場が長引きそうだ。
27日に中国国家統計局が発表した中国1−2月工業利益は前年同期比22.9%減だった。統計局内の一部関係者は「工業生産が回復しても、市場の需要は完全には持ち直していない」とコメント。売上高の減少がコストの減少より大きく、企業の粗利益を圧迫していると指摘している。中国経済のリオープン効果についても、これまでの期待先行のフェーズから実態を見極めるフェーズへと移ってきたといえよう。
全体的に買い手掛かり材料に乏しい状況となっており、不安が一時的に緩和しても、株価指数が上値を追っていくイメージは持ちづらい。来期以降も明確な成長ストーリーがあり、株価チャートも冴えない指数対比でしっかりと上昇トレンドを描いているような個別株を選別し、長期目線で仕込むのが肝要な時期といえそうだ。
今晩の米国市場では、米3月コンファレンスボード消費者信頼感指数が発表されるほか、米上院で米銀破綻に関する公聴会が開催される予定。ほか、半導体メモリ大手のマイクロン・テクノロジーが決算を発表する予定だ。
(仲村幸浩)
<AK>
日経平均は小幅続伸。20.58円高の27497.45円(出来高概算5億1093万株)で前場の取引を終えている。
27日の米株式市場でダウ平均は194.55ドル高(+0.60%)と3日続伸。地銀ファースト・シチズンが経営破綻したシリコンバレー銀行のローンや預金買収で合意したとの報道を受け、金融不安が緩和。経営難が懸念されているファースト・リパブリック銀行など他の地銀株、金融セクターも買われ、相場をけん引した。ダウ平均は終日堅調に推移した一方、長期金利が大きく上昇したことでハイテクは売りに転じ、ナスダック総合指数は−0.46%と反落。ダウ平均の続伸を受けて日経平均は96.95円高からスタート。しかし、海外時間に円安基調だった為替が円高に振れてきたこともあり、寄り付き直後から失速。27500円水準では戻り待ちの売りも根強く、上値を切り下げる展開となった。
個別では、みずほ<8411>、りそなHD<8308>、第一生命HD<8750>などの銀行や保険が大きく上昇。イラクのクルド人自治区からの原油輸出が一部停止したことなどによる原油市況の上昇を受けてINPEX<1605>、石油資源開発<1662>、コスモエネHD<5021>も大幅高。丸紅<8002>、神戸製鋼所<5406>、住友鉱<5713>の商社、鉄鋼、非鉄金属も高い。ブラジルでエアバッグなどの生産を強化すると発表した豊田合成<7282>は大幅に上昇。一方、米ナスダック安を受けてレーザーテック<6920>、アドバンテスト<6857>、ルネサス<6723>の半導体や、ラクスル<4384>、インソース<6200>、JMDC<4483>のグロース(成長)株の下落が目立つ。イビデン<4062>はレーティング格下げもあり下落。
セクターでは鉱業、銀行、保険が上昇率上位に並んだ一方、サービス、精密機器、陸運が下落率上位に並んだ。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の41%、対して値下がり銘柄は55%となっている。
今週から物色動向に変化が見られる。先週までは金融システム不安と景気後退懸念を背景に銀行・保険や不動産のほか、エネルギーなどの資源関連株、いわゆるバリュー(割安)株に属する銘柄が軟調だった。一方、米長期金利の低下を背景に半導体をはじめとしたハイテクやグロース(成長)株に強い動きが見られていた。
しかし、今週からはこうした傾向にリバーサル(株価の反転)の動きが確認されている。米ファースト・シチズンズ・バンクシェアーズが経営破綻した米シリコンバレー銀行(SVB)の買収で合意したほか、米当局が緊急融資枠の拡張などさらなる銀行支援策を検討していると報じられたことで、金融システム不安が緩和していることが一つ要因として考えられる。また、米連邦準備制度理事会(FRB)のバー副議長が「あらゆる規模の金融機関に対して全ての手段を講じる用意がある」などと発言したことも、安心感を誘っているもよう。
加えて、明日29日の配当・優待権利付き最終売買日を前にした権利取り狙いの買いや、権利取りに併せてヘッジ対応としてショート(売り持ち)していたバリュー株を買い戻す動きなどがこうした動きを強めているようだ。株価指数連動型ファンドの配当再投資目的の先物買い需要が1兆円超発生する見込みであることも需給面での下支えとして意識されていそうだ。
一方、金融システム不安は完全に収束したとはいえない。昨日の米国市場でのセクター騰落率ランキングを見ると、銀行や保険、エネルギーなどが買い戻された一方、不動産は下落が続いている。リモートワークの普及でオフィス空室率がコロナ前に完全に戻り切らない中、今回の金融システム不安により、中小銀行が融資全体の6−7割をも占めるとされる商業用不動産向けの貸し出しは今後減退が想定され、不動産事業の行方が非常に気掛かりだ。今後も不動産向けエクスポージャーの大きい経済主体の動向を注視する必要があり、影響が実体化されるまでに時間がかかることを踏まえれば、不安定な相場が長引きそうだ。
27日に中国国家統計局が発表した中国1−2月工業利益は前年同期比22.9%減だった。統計局内の一部関係者は「工業生産が回復しても、市場の需要は完全には持ち直していない」とコメント。売上高の減少がコストの減少より大きく、企業の粗利益を圧迫していると指摘している。中国経済のリオープン効果についても、これまでの期待先行のフェーズから実態を見極めるフェーズへと移ってきたといえよう。
全体的に買い手掛かり材料に乏しい状況となっており、不安が一時的に緩和しても、株価指数が上値を追っていくイメージは持ちづらい。来期以降も明確な成長ストーリーがあり、株価チャートも冴えない指数対比でしっかりと上昇トレンドを描いているような個別株を選別し、長期目線で仕込むのが肝要な時期といえそうだ。
今晩の米国市場では、米3月コンファレンスボード消費者信頼感指数が発表されるほか、米上院で米銀破綻に関する公聴会が開催される予定。ほか、半導体メモリ大手のマイクロン・テクノロジーが決算を発表する予定だ。
(仲村幸浩)
<AK>