警戒指標点灯に「株高が示す将来不安」
[21/03/04]
提供元:株式会社フィスコ
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後場の投資戦略
[日経平均株価・TOPIX(表)]
日経平均;29004.41;-554.69TOPIX;1880.59;-23.95
[後場の投資戦略]
本日の日経平均は米株安の流れを引き継いでスタートし、その後も下げ幅を広げる展開となっている。前日の米国市場では長期金利が一時1.49%まで上昇。更なる金利急騰が警戒されてナスダック総合指数は2%を超える下落となり、週足ベースでもこれまでの上昇局面での下値支持線を明確に割り込んできた印象だ。「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は26.67(+2.57)に上昇し、一部では米株の急落を予兆するシグナルである「ヒンデンブルグオーメン」が点灯したことも取りざたされている。
今週に入り、東証1部の1日の売買代金は2兆円台半ばとやや低調に推移していた。5日に予定される雇用統計など、2月の米経済指標の発表が相次ぐことから様子見ムードが強まっているのだろう。それだけに、上述したような警戒材料から売りが出れば、日経平均は大きく下に振らされやすいと考えられる。
これまでの上昇ピッチが急だっただけに、市場関係者の多くは新型コロナワクチン普及による景気持ち直しへの期待などから「一時的な調整」との見方を崩していないようだ。3月期末にかけて年金基金等が株高で上昇した株式保有比率を目標値まで落とすため、断続的に売りを出しているとみられる一方、期末前後には1兆円規模の配当再投資目的の買いが入るとの期待もある。
ただ、本日の日経平均の弱い動きを見ると、市場参加者はそうした強気な意見を額面どおり受け止めていないのかもしれない。ヒンデンブルグオーメンが前回点灯したのは昨年1月28日とされており、その後「コロナショック」が発生したのは周知のとおり。警戒感が高まるのもやむを得ないだろう。
また、米国のブレークイーブン・インフレ率(期待インフレ率の指標)は2.2%台で高止まり。「インフレ加速」への警戒感も依然拭えない。折しも日本ではファーストリテ傘下の「ユニクロ」「GU(ジーユー)」が実質値下げを発表。長くデフレにあえいでいた日本の物価は「我が道を行っている」と指摘する外資系証券もあるが、翻せば人々の将来不安と正解防衛意識が強いことの現れだろう。
「物価の上昇」は「マネーの減価」と表裏一体だ。米民主党政権は発足早々、新型コロナ対策として大規模な財政支出を実施、米連邦準備理事会(FRB)もかねてこれを催促していた手前、積極的に後押しするだろう。マネーが一段とだぶつくことになれば、その減価も改めて意識されやすい。
日本は生活物価の下押し圧力が強く、「マネーの減価」というのが理解しにくいところだが、「アベノミクス」以降の株高や不動産価格の上昇を見ると、「マネーの減価」はやはり着実に進行している感がある。問題はこれとともに名目賃金が伸びるか、実質所得を維持・向上できるかだ。良質・安価な商品の提供に努めるファーストリテの経済圏拡大を見るに、人々がそうした期待を持っているようには思えない。財政支出は「フリーランチ」ではないし、コロナ禍は雇用というものがいかにもろいかを示した。
人々の株式投資意欲が根強いのは「将来不安」への防衛意識が働いているからと考えると、株式相場が高値圏で大きく揺れるのにも納得感がある。
(小林大純)
<AK>
日経平均;29004.41;-554.69TOPIX;1880.59;-23.95
[後場の投資戦略]
本日の日経平均は米株安の流れを引き継いでスタートし、その後も下げ幅を広げる展開となっている。前日の米国市場では長期金利が一時1.49%まで上昇。更なる金利急騰が警戒されてナスダック総合指数は2%を超える下落となり、週足ベースでもこれまでの上昇局面での下値支持線を明確に割り込んできた印象だ。「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は26.67(+2.57)に上昇し、一部では米株の急落を予兆するシグナルである「ヒンデンブルグオーメン」が点灯したことも取りざたされている。
今週に入り、東証1部の1日の売買代金は2兆円台半ばとやや低調に推移していた。5日に予定される雇用統計など、2月の米経済指標の発表が相次ぐことから様子見ムードが強まっているのだろう。それだけに、上述したような警戒材料から売りが出れば、日経平均は大きく下に振らされやすいと考えられる。
これまでの上昇ピッチが急だっただけに、市場関係者の多くは新型コロナワクチン普及による景気持ち直しへの期待などから「一時的な調整」との見方を崩していないようだ。3月期末にかけて年金基金等が株高で上昇した株式保有比率を目標値まで落とすため、断続的に売りを出しているとみられる一方、期末前後には1兆円規模の配当再投資目的の買いが入るとの期待もある。
ただ、本日の日経平均の弱い動きを見ると、市場参加者はそうした強気な意見を額面どおり受け止めていないのかもしれない。ヒンデンブルグオーメンが前回点灯したのは昨年1月28日とされており、その後「コロナショック」が発生したのは周知のとおり。警戒感が高まるのもやむを得ないだろう。
また、米国のブレークイーブン・インフレ率(期待インフレ率の指標)は2.2%台で高止まり。「インフレ加速」への警戒感も依然拭えない。折しも日本ではファーストリテ傘下の「ユニクロ」「GU(ジーユー)」が実質値下げを発表。長くデフレにあえいでいた日本の物価は「我が道を行っている」と指摘する外資系証券もあるが、翻せば人々の将来不安と正解防衛意識が強いことの現れだろう。
「物価の上昇」は「マネーの減価」と表裏一体だ。米民主党政権は発足早々、新型コロナ対策として大規模な財政支出を実施、米連邦準備理事会(FRB)もかねてこれを催促していた手前、積極的に後押しするだろう。マネーが一段とだぶつくことになれば、その減価も改めて意識されやすい。
日本は生活物価の下押し圧力が強く、「マネーの減価」というのが理解しにくいところだが、「アベノミクス」以降の株高や不動産価格の上昇を見ると、「マネーの減価」はやはり着実に進行している感がある。問題はこれとともに名目賃金が伸びるか、実質所得を維持・向上できるかだ。良質・安価な商品の提供に努めるファーストリテの経済圏拡大を見るに、人々がそうした期待を持っているようには思えない。財政支出は「フリーランチ」ではないし、コロナ禍は雇用というものがいかにもろいかを示した。
人々の株式投資意欲が根強いのは「将来不安」への防衛意識が働いているからと考えると、株式相場が高値圏で大きく揺れるのにも納得感がある。
(小林大純)
<AK>