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「パウエル氏がもたらしたもの」を再確認

後場の投資戦略
[日経平均株価・TOPIX(表)]

日経平均;27735.34;-53.95TOPIX;1944.70;-5.44


[後場の投資戦略]

 本日の日経平均はNYダウ下落を受けて朝方に一時180円超下落。その後下げ渋るも、プラス圏を維持するまでには至らなかった。日足チャートを見ると、27600円台に位置する25日移動平均線の下値サポートを期待する向きも少なくないとみられ、先週から2
7000円台後半でのもみ合いが続いている。業種別では前日同様に海運業、鉄鋼の上昇が目立つが、供給の混乱や製品値上げが伝わっているこれらセクターは買い安心感があるのだろう。一方、このところ「アフターコロナ」を意識して買われていた陸運業、空運業の下げが目立つ。直近高値近辺まで上昇していた銘柄が多いが、さすがに一段の上値を追う状況にないと受け止められたのかもしれない。ここまでの東証1部売買代金は1兆円あまりとやや低調だ。

 新興市場ではマザーズ指数が+0.99%と続伸。1130pt近辺に位置する75日移動平均線水準まで値を戻してきた。後述するが、米経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」後の市場反応はIT関連などのハイテク株にとって追い風となっている。明日9月1日にデジタル庁が発足することを手掛かり材料とする向きもあるようだ。

 さて、注目されたジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長の講演内容については既に多く解説がなされているので詳細は割愛するが、それが金融市場に何をもたらしたのかを改めて考察したい。

 講演のあった27日の米市場では、期待インフレ率の指標である10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)が上昇する一方、10年物国債利回りは低下(債券価格は上昇)。株式・商品は上昇し、ナスダック総合指数については最高値を更新した。週明けにBEI上昇に後押しされる形で10年物国債利回りが反発する可能性もあるかと考え注視していたが、結果的にそうはならなかった(30日はBEIやや反落、10年物国債利回り続落)。これらが示唆している市場の目線は「インフレ懸念含みの景気減速」のように思われる。

 日米の株式市況が堅調さを維持しており、こうした見方は適当でないとの批判もあるだろうが、結局パウエル氏がもたらしたものとは「あまりに市場に配慮したがゆえのラリー機会の提供」なのだ。やや俗気のある表現かもしれないが、米市場参加者から「パウエルありがとう」などといった声が多く出ているのはそれを如実に物語っているだろう。ラリーの中心となっているのは長期金利低下の恩恵を受けるハイテク株である。また、27日の米市場や30日の東京市場では明らかにインフレ目線の市況関連株や不動産株の買いも見られた。

 もっとも、景気の先行き不安が背景にあるなら景気敏感株の買いは続かない。実際、30日の米市場では景気敏感株が軟調だった。7月の米中古住宅販売成約指数や8月の米ダラス連銀製造業活動指数のように、各国経済指標は予想を下回るものが多くなっている。一方で、インフレ観測が再び強まれば5月のようにハイテク株も一転逆風となる可能性がある。パウエル氏がもたらしたラリー継続は危ういバランスのもと成り立っている印象が拭えない。

 ジャクソンホール会議では、経済学者らが先進国に財政刺激策からの転換を求めたという。また、独アリアンツのチーフ・エコノミック・アドバイザーであるモハメド・エラリアン氏は、パウエル氏が「市場の応援団」となっており、政策を誤るリスクなどがあるといったコラムを米メディアに寄せている。債券投資の権威の警告は重く感じられる。

 今週は9月3日の米8月雇用統計を中心に各国の重要経済指標の発表が相次ぐが、これらや金融当局者の発言を受けて金融市場が不安定化する可能性も決して低くないだろう。外部環境に十分に注意を払ったうえで相場に取り組みたい。
(小林大純)


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