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ルビコン川を完全に渡りきった黒田日銀総裁

Miniトピック
先月末に日銀は市場に衝撃を与える追加緩和策を打ち出した。今回のキーワードは「3」だ(前回は「2」)。国債保有残高の増加ペースを年「30兆円」増やして80兆円とし、保有国債の平均残存期間を「3年」延長して10年に、指数連動型上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(J-REIT)の積み増し額を「3倍」にするというものだ。
 その後、黒田日銀総裁は講演で「物価安定の目標を早期に実現するため、できることは何でもやる」「デフレという慢性疾患を完全に克服するためには、薬は最後までしっかりと飲みきる必要がある」などと述べ、必要とあればさらに追加緩和を実施する構えを見せた。黒田日銀総裁は、「従来とは全く次元の異なる金融緩和によって、人々の間に染みついたデフレマインドを抜本的に転換する必要がある」とまで述べている。正直言って、黒田総裁の金融緩和によるデフレマインド転換へのここまでの強い姿勢とコミットは大きな驚きだ。日銀の第一義的な存在意義は物価の安定(日銀法)であり、物価の安定とはすなわち「通貨の価値を守ること(通貨の番人と呼ばれる所以)」と理解されてきたが、黒田総裁は「通貨の価値を下げるためには何でもする」と言っているのである。論理的には「物価の安定」=「物価が下がり過ぎないこと」と解釈できないわけではないが、ここまで日銀ができるとすれば日銀法改正も不要ということになるだろう。
 ともあれ、黒田総裁は今回の追加緩和とデフレ脱却への不退転の決意の表明で、ルビコン川を完全に渡りきったといえよう(「ルビコン川を渡る」とはユリウス・カエサルが軍隊を率いて禁止されていたルビコン川越えを行った故事にちなみ、以後の運命を決め後戻りのできないような重大な決断と行動をすることの例え)。黒田総裁には、米国が量的緩和第三弾(QE3)までやって景気が回復し、金利が上げられるかどうかのところまできたことが念頭にあるのかもしれない。日本の場合、「薬を最後までしっかりと飲みきる」ということで、果たして第何弾まで行くのだろうか。

<YU>

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