ギリシャ問題に過剰反応する世界の金融市場
[15/06/29]
提供元:株式会社フィスコ
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Miniトピック
週末にユーロ圏諸国とギリシャの交渉はまとまらず、ひとまずギリシャへの支援打ち切りと、ギリシャによる支援の条件を受け入れるかどうかの国民投票が決定した。このところの世界の金融市場はギリシャ情勢のヘッドラインに右往左往している。まるで世界経済の命運をギリシャが握っているかのようだ。
しかし、ギリシャの経済規模(国内総生産GDP)は神奈川県程度にすぎず、欧州全体の2%未満にすぎない。企業と比較するとギリシャのGDPはトヨタの売上高とほぼ同じである。経済の絶対的な規模からいって、世界経済全体をこれほど揺るがすほどのインパクトは本来持ち得ないはずだ。
また、追加支援打ち切りで、ギリシャのデフォルトの可能性が高まっているが、ギリシャの借金の8割は国際通貨基金(IMF)や欧州中央銀行(ECB)といった公的機関に対するもので、ギリシャ国債のほとんどはギリシャの国内銀行が保有している。前回ヘアカット(借金棒引き)も既に実施されていることもあり、海外の金融機関のギリシャに対するエクスポージャーは極めて小さい。
ギリシャ問題がリーマン・ショックと並べて語られることも多いが、リーマン・ショック時はサブプライムローンが証券化され組み込まれた金融商品が世界中にばらまかれ、リスクの所在が誰にも分からなくなったからだ。その損失の規模もクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)への連鎖的影響も含めると1000兆円を大きく超えるともされた。
ギリシャ問題はこれに比べるとリスクの所在もはっきりしているし、規模も明確だ。ギリシャの返済が問題となっているのは主にIMF等の公的機関とのやりとりであり、これはデフォルトには当たらないというのが格付け機関の見解でもある。
ギリシャ問題で唯一注意しなければならないのは、スペインやイタリア等の重債務国に同様の動きが波及するかどうかだ。スペインやイタリアがギリシャのように反緊縮・ユーロ離脱となれば確かに影響は大きい。
しかし、これは金融市場における問題というよりも、もはや完全に政治問題だ(金融市場の防御網としては、国債についてはECBの量的緩和が効いている他、欧州安定メカニズム「ESM」等もある)。スペインやイタリア国民がギリシャ国民のような政治的意思決定を行うのかにかかっている。
ギリシャは苦し紛れに非常識で無謀な主張をするチプラス政権を選択した時点で大きな過ちを犯した。チプラス首相は国の信用を毀損する瀬戸際交渉を繰り広げたあげく、ユーロ圏と国内支持者の板挟みにあい、自ら決断できずに国民投票に丸投げするという政治家として最悪の行動に出た。ギリシャはユーロから離脱するというさらに困難な自滅の道に進みつつある。ギリシャ国内はユーロ離脱でドラクマに戻った場合には大混乱となり、資金流出やハイパーインフレなど経済的により疲弊することになるだろう。
ただ、ギリシャの問題はユーロ圏にとっては、ガン細胞のようなもので、切り離してしまうか、切り取らずに薬(追加支援)でじわじわ治癒させるか、いずれにせよ一定の悪影響はあるが、他に転移しなければ影響は限定的だ。
それにしても、スペインなど他のユーロ圏の国民はギリシャの混乱を見て、ギリシャのようになりたいと思うだろうか?
ギリシャが困難な事態に陥れば陥るほど、スペインなどの反緊縮・反ユーロの動きは逆に低調になるだろう。
<YU>
しかし、ギリシャの経済規模(国内総生産GDP)は神奈川県程度にすぎず、欧州全体の2%未満にすぎない。企業と比較するとギリシャのGDPはトヨタの売上高とほぼ同じである。経済の絶対的な規模からいって、世界経済全体をこれほど揺るがすほどのインパクトは本来持ち得ないはずだ。
また、追加支援打ち切りで、ギリシャのデフォルトの可能性が高まっているが、ギリシャの借金の8割は国際通貨基金(IMF)や欧州中央銀行(ECB)といった公的機関に対するもので、ギリシャ国債のほとんどはギリシャの国内銀行が保有している。前回ヘアカット(借金棒引き)も既に実施されていることもあり、海外の金融機関のギリシャに対するエクスポージャーは極めて小さい。
ギリシャ問題がリーマン・ショックと並べて語られることも多いが、リーマン・ショック時はサブプライムローンが証券化され組み込まれた金融商品が世界中にばらまかれ、リスクの所在が誰にも分からなくなったからだ。その損失の規模もクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)への連鎖的影響も含めると1000兆円を大きく超えるともされた。
ギリシャ問題はこれに比べるとリスクの所在もはっきりしているし、規模も明確だ。ギリシャの返済が問題となっているのは主にIMF等の公的機関とのやりとりであり、これはデフォルトには当たらないというのが格付け機関の見解でもある。
ギリシャ問題で唯一注意しなければならないのは、スペインやイタリア等の重債務国に同様の動きが波及するかどうかだ。スペインやイタリアがギリシャのように反緊縮・ユーロ離脱となれば確かに影響は大きい。
しかし、これは金融市場における問題というよりも、もはや完全に政治問題だ(金融市場の防御網としては、国債についてはECBの量的緩和が効いている他、欧州安定メカニズム「ESM」等もある)。スペインやイタリア国民がギリシャ国民のような政治的意思決定を行うのかにかかっている。
ギリシャは苦し紛れに非常識で無謀な主張をするチプラス政権を選択した時点で大きな過ちを犯した。チプラス首相は国の信用を毀損する瀬戸際交渉を繰り広げたあげく、ユーロ圏と国内支持者の板挟みにあい、自ら決断できずに国民投票に丸投げするという政治家として最悪の行動に出た。ギリシャはユーロから離脱するというさらに困難な自滅の道に進みつつある。ギリシャ国内はユーロ離脱でドラクマに戻った場合には大混乱となり、資金流出やハイパーインフレなど経済的により疲弊することになるだろう。
ただ、ギリシャの問題はユーロ圏にとっては、ガン細胞のようなもので、切り離してしまうか、切り取らずに薬(追加支援)でじわじわ治癒させるか、いずれにせよ一定の悪影響はあるが、他に転移しなければ影響は限定的だ。
それにしても、スペインなど他のユーロ圏の国民はギリシャの混乱を見て、ギリシャのようになりたいと思うだろうか?
ギリシャが困難な事態に陥れば陥るほど、スペインなどの反緊縮・反ユーロの動きは逆に低調になるだろう。
<YU>