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旧村上ファンドへの強制捜査はよく分からない

Miniトピック
旧村上ファンドの村上世彰氏や元幹部に対して、相場操縦容疑で強制調査が行われている。報道によると、「大量に空売りをしてその後買い戻し、その後株価が上がったところで売る」という「悪質」な手口により利益を上げたとされている。また、新しい手法を使って株価操縦をしたとも言われている。
 しかし、報道を見ただけではどこが違法だったのか全く分からない。大量に空売りが入って当該銘柄の株価が下がることはごく普通のことだ。現に銘柄ごとの大量空売り報告も大量に出ている。空売りで売り崩すというといかにも違法に聞こえるが、下値を売るいわゆる「ダウンティックルール」も現在は原則撤廃されている(トリガーに抵触した銘柄のみ一時的に規制)。空売りについてもほぼ自由な取引が保障されているのである。
 また、引け際に株価を下げる行為、いわゆる終値関与が行われたとの報道も見受けられる。しかし、重要な終値に関与することは好ましくないという業界の暗黙のルールのようなものはあるが、終値に関与したこと自体がただちに違法になるわけでもない。そうでなければ大引けで成り売りを行うことが違法になってしまうが、それは明らかにおかしい。
 もしこれが違法なら、前場でTOPIXがマイナスの時に、後場にETFを買い入れて株価を押し上げる日銀は株価操縦にあたるのではないだろうか。
 これはもちろん冗談だが、ともあれ報道を見る限り、「悪質さ」や「新手法」といったものは見当たらず、今回の行為のどこに違法性があったのか判然としない。
 旧村上ファンドと同様に大量に空売りして同じような手口で儲けている大口投資家は他にもたくさんいると思われる。旧村上ファンドは有名であることから一罰百戒的な効果を狙って捜査対象となったのかもしれない。
 しかし、もしそうだとすればそれは明らかに憲法で保障する法の下の平等(14条)に反する。また、刑罰法規の拡大解釈や恣意的な運用は株式市場における自由な取引に対して萎縮効果をもたらすことになる。いみじくも最近中国の株式市場では「悪質な空売り」の取り締りが行われた。これは株価下落を許さない当局の恣意的な取り締まりとみられるが、当局による恣意的な取り締まりが行われる市場では長期的には資金は逃げて行くことになるだろう。
 株式市場で何が違法で、どこまでが禁止される行為なのかが明確にされなければ、取引が萎縮するのは当然である。明確に違法な取引はもとより断固として取り締まるべきであるが、そうではない行為は自由に取引できることが資本主義市場では重要だ。
 今回の旧村上ファンドの件も、何が法に抵触する行為だったのか当局は早急に明確にすべきだ。また、仮に法に抵触する行為があったとすれば、同様の行為を行った他の主体も同様に摘発すべきである。

<YU>

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