一尾仁司の「虎視眈々」:焦る中国
[15/11/06]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 経済総合
〇安倍政権、国内景気立て直しに動く
TPPの各論が徐々に明らかになりつつある。最も重要と見られた為替政策について、米財務省がまとめたファクトシートで、「12か国は不当な通貨措置を控え、通貨の競争的な切り下げを回避する」決意を表明したと表明した。為替政策に関連した経済データの公表を約束。同時に、少なくとも年1回、為替政策を協議、年次報告を作成する。少なくとも域内では為替安定(それによって企業投資を活発化させる)を優先する姿勢と考えられる。関税云々より、為替の影響が大きいことを考えると、TPPが「為替安定時代」の幕開けにつながるかが大きなポイントとなる。また、ビザ発給の大幅緩和など、各論が順次出て来よう。
マイナス成長懸念の強い7-9月GDP発表を前に、国内景気対策の動きが活発化してきた。最大の材料は「消費増税凍結」と思われるが、そこへ行くまでに、月末めどに「1億総活躍」対策の取りまとめ、補正予算編成を柱とする。「1億総活躍」なら、全方位的な活性化が必要だが、アベノミクスの基本は民間資金の活用にある。起爆剤として、「自動運転」、「ドローン」、「健康医療」に絞る方針を明確にした。5日の「官民対話」で様々な規制緩和方針を打ち出した。
米国で講演した渡辺防衛装備庁長官は、日本が防衛技術の優位性を確保するため、「先端的な民生技術…強みは、材料、センサー、ロボット」を活用する方針を表明した。牽引役として選んだ3分野は、防衛技術など様々な要素を睨んだものと思われる。
このまま、景気対策相場に移行していけるかどうかが株式市場の焦点となろう。
〇焦る中国
習近平国家主席の動きが活発だ。欧米外交、日本との関係改善に続き、ベトナム首脳と会談、台湾とも66年ぶりの会談を行う。二つの不都合なニュースが背景と考えられる。一つは外資系企業の撤退。広東省東莞市にはかつて6000余の台湾企業が進出していたが、既に2000社以上が撤退し、今年になってから約500万人の労働者が失業していると伝えられた。珠江デルタ地帯の労働力集約・輸出産業にダメージは広がっている。台湾総統選での有利不利の前に、この流れを止めたいとの思いが感じられる。日本企業の代表団とあった李克強首相にも、同様の感じがあった。
もう一つは9月末時点の国有企業の負債総額が77兆6828億元(約1476兆円)に達したと報じられたこと。9月だけで約113兆円増加した。国有企業改革を掲げる一方、景気対策を国有企業を柱に行っている構図が見えるが、膨張の割に成果に乏しい。この負債構造は止まらないと見られ、国有企業は走り続けなければならない。中国離れのアジア諸国を引き留めるために、歴訪や首脳会談に打って出ていると見られる。資金調達を睨み、上海株再上昇志向を強める可能性も考えられる。
南シナ海には米原子力空母セオドア・ルーズベルトも入っていた。印米日合同軍事演習の帰りとして、海上自衛隊の最新護衛艦「ふゆづき」も帯同している。5日、カーター米国防長官が空母に乗艦(マレーシア国防相も同行)し、その一端を公表した。空母は中国人工島に接近していないが、10キロまで接近した駆逐艦ラッセンの艦長が取材に応じている。中国は何も手出しができなかった状態が明らかになった。人工島建設の中断に踏み切るかどうかの決断を迫られている可能性がある。
“偽ディズニー”商品の根絶意向(来春に上海開園予定)も表明したが、中国の焦りがビジネス環境の改善につながるか注目される。
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(11/6号)
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