一尾仁司の「虎視眈々」:来週の反転余地を探る
[16/01/08]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 経済総合
〇中国市場の混乱続くも、米雇用統計など通過へ
7日の下落率は、日経平均2.33%、ドイツDAX2.29%、NYダウ2.32%とほぼ同水準。ドル円は117円台に入ったが、ユーロ/ドルは1.09台(1.0935ドル、前日は1.0785ドル)に急反発した。オイルマネー崩壊に対処するため、人民元取り込みを急いだ英ポンドが一時1ポンド=1.4534ドル、2010年6月以来の安値に沈んだのが目立った。中国経済崩壊に備えたリスクヘッジ的な動きは佳境に入った印象だ。シカゴの日経平均先物は、一時17500円を下回ったが、一応、下値抵抗力を見せている。
中国外貨準備が12月に1079億ドル減少(3兆3300億ドル)。為替介入で減少したのか、習近平のバラマキか、AIIBに回したのか、実態は不明だが、オイルマネーと並んでチャイナマネー激縮が混乱の一つの背景にある。米国債市場で「中国による米国債売却観測で安全逃避需要が減退、揉み合い」(ブルームバーグ)と伝えられた。日本株が最も早くに換金され易く、米国債が最後になると見られるので、米国債の売りが表面化するか注目される。米雇用統計と合わせ、米追加利上げシナリオが修正されれば、来週の市場に揺り戻しの余地が出て来よう(今回の混乱に、日米欧中銀総裁の目立った発言は、未だ出ていない)。
ただし、8日の中国株は緊張感に包まれている。あえなくサーキットブレーカー制度は停止、大株主の売り規制を強化するが、中国ヘッジファンドの解約売り(規模は不明、保有資産価値が一定水準を下回った場合に清算する条項があり、ファンドの3割が既に達しているとされる)が一斉に出る可能性がある。歪でも当局の買い支えが頼みの綱の状況。
元々、中国市場はまともな時価評価をしていない。不動産が典型的だが、不良債権の額すら掴めない。人民元安などが何をもたらすか、市場は測りかねている面がある。目先の対応(それすら朝令暮改に陥っているが)で延命したとしても、中国経済崩壊の印象は免れ難い。
既に、香港、台湾が大きな痛手を受けている。両地域の大陸離れ→日本経済との連携強化で立て直しのシナリオが浮上するタイミングが一つの契機となり得る。大陸も地域に分かれて、対策を進めるのが本筋と思われ、両地域が先行モデルになる可能性があるためだ。16日の台湾総統選、20日からのダボス会議が注目材料となる可能性がある。
北朝鮮の“水爆実験”は、小型の中性子爆弾の可能性が指摘されている。中性子爆弾は水爆の一種に分類され、金属を透過する中性子の特性から生物殺傷能力が高いとされる。この時期に実施したのは、イラン、サウジ両国に売り込む好機と見たためと見られている。北朝鮮自身が使うつもりはなく(一発二発使っても戦争になれば勝ち目は全く無い)、あくまでも商品宣伝との受け止め方。
したがって、北朝鮮の輸送能力の封鎖が、制裁の効果を決める可能性がある。中朝国境は厳戒体制になっているので、ロシアの参加、日米韓による海上封鎖の実行度が焦点と考えられる。
なお、昨年5月、サウジがイエメン攻撃で中性子爆弾を使用したと、米軍事評論家のゴードン・ダフ氏(元海兵隊員)が非難した(首都サヌアのジャバル・ナガム地区)。ネットではその時の映像とするものも流れているが、詳しい報道は無い。
北朝鮮の封じ込めは、サウジ−イランの衝突を限定的なものにとどめるとの見方につながる公算がある。
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(1/8号)
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