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【フィスコ・コラム】人工知能の進化は金融業界の衰退を招く

注目トピックス 経済総合
国内の大手証券会社が、熟練トレーダーの相場観をコンピュータで再現する新たな株式売買システムを開発し、5月にも機関投資家向けに提供するそうです。金融業界だけでなく日本の経済界は人工知能(AI)の導入に積極的ですが、歓迎すべきことなのでしょうか。

市場での取引を自動化する流れは広がる一方です。上記の大手証券が開発したシステムは、コンピュータ内に蓄積された膨大なデータを読み解き、「現在の市場は2週間前のあの瞬間と似ている」などとベテラン・ディーラーのように判断し、数分後の相場を予想するといいます。これは、値動きの特徴をつかんで株価が適正価格を下回ったと判断すれば自動で株式を買うライバル会社のシステムに対抗するものです。米国では約3年間の取引で損を出したのは1日だけという高速取引を専門にしている投資会社もあります。

人間VSコンピュータの将棋対決はよく話題になっていました。トップのプロ棋士に勝つコンピュータ将棋の実現を目指すプロジェクトは2010年から進められていましたが、昨年、打ち切られました。主催者側によれば「事実上プロジェクトの目的を達成した」ためですが、最近のコンピュータの進化が「驚異」よりも「恐怖」を感じさせるからとみるのはうがちすぎでしょうか。

「恐怖」というのは、もちろん雇用の喪失です。大手シンクタンクの調査では、国内労働人口の約49%が技術的には人工知能やロボット等により代替可能と推計されています。芸術など抽象的な概念の理解が求められる職業、他者とのコミュニケーションを必要とする営業などを除く、現在ある職業の大半が人工知能に取って代わられるのです。日本の金融業界には現在22万人が従事しているので、単純計算すれば、稼ぎ頭であるディーラーを含め10万人が今後職を失うことになります。

今から10年以上前、金融情報メディアがエクセルを使って企業情報の配信サービスを始めたのは画期的でした。その時は、人の労力が省かれた分、新規分野を開拓して産業化していけば雇用喪失の不安はないと思われていました。しかし、新たな分野の開拓は進んでいるとはいえません。

一方、コンピュータ化や自動化による取引が広がると、何かトラブルがあった場合の責任は、誰がどのように取るのかという問題も生じます。冒頭紹介した国内証券の取引システムの場合、結果的に予測が外れる可能性はあるがAIは経験を積むごとに自ら学習して予測能力を高めていく、とのことです。つまり、「間違い」もあることを認めています。

金融取引だけではありません。自動車も文字通り「自動化」され、人間はシートに座っているだけでコンピュータが運転してくれるシステムが開発されています。ただ、事故が発生した場合、責任を取るのは座っているだけの「ドライバー」か、自動車メーカーか、販売会社か、疑問は尽きません。ですが、責任を取ることが得意でない日本人にとっては、案外好都合なのかもしれません。





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