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【フィスコ・コラム】日銀追加緩和は「期待」か「懸念」か

注目トピックス 経済総合
日銀が4月27-28日に開催した金融政策決定会合で金融政策維持の決定を発表した途端、日経平均先物とドル・円のチャートが長い陰線で急落を示したことは記憶になお鮮明です。それより数日前の金融情報メディアによる報道をきっかけに、日銀による追加金融緩和、つまりマイナス金利の拡大への期待が高まっていたことが背景にありました。


この金融情報メディアは、4月27-28日開催の決定会合で金融機関への貸し出しにマイナス金利の適用を「検討する案が浮上している」と伝えていました。日銀が今年1月に想定外のマイナス金利導入に伴い、金融機関の業績に影響が出るとの懸念から、マイナス金利導入の効果を高めるために今回こうした補完的な措置を講じる、と市場では理解されたのです。これが引き金となり、一段の金融緩和への期待が高まっていました。


しかし、実はこの時の決定会合で追加緩和が議論されたことが6月21日に公表された議事要旨で明らかになりました。それによると、マイナス金利政策の効果が金利面ではっきりと表れ「実体経済や物価面にも着実に波及していく」と大半の委員は認識。ただ、その時点では政策効果の浸透度合いを見極めていくことが妥当と判断し、金融政策の現状維持を決めたようです。4月下旬は米早期利上げ観測の後退でドル売り・円買いに傾いていた時期で、追加緩和に踏み切っても円安反転は困難だったでしょう。


このマイナス金利政策は、日銀内でも賛否が真っ二つに分かれているようです。木内登英審議委員は6月23日、金沢市での講演や記者会見で、「マイナス金利が地域金融機関の収益に悪影響が出ていることは間違いない」「金融仲介機能の低下で潜在成長率を一段と押し下げる可能性がある」と批判。「副作用が効果を上回っている」とまで言い切っています。これほど真正面から基本政策を批判するケースは珍しいのではないでしょうか。


とはいえ、木内審議委員の主張の方に合理性はありそうです。黒田東彦日銀総裁が今月16日の決定会合後の記者会見でも述べているように「政策効果が実体経済に波及するにはある程度時間かかる」かもしれませんが、日銀の最終目標である物価上昇率の2%達成はむしろ遠のいています。また、大手行がプライマリー・ディーラー資格を返上する問題を考慮すると、「マイナス金利は金融機関の収益に悪影響を与えていない」というのは事実ではないでしょう。


日銀は今後もマイナス金利を主体とした「3次元緩和」を進める方針のようですが、市場関係者はこれを期待しているのか懸念しているのか、本当のところはわかりません。というのも、今年1月にマイナス金利導入した際にはいったん円売りに振れた後、金融機関の業績への悪影響を嫌気して銀行株を中心とした売りが強まり、円買いに波及しました。一方、4月と6月の会合はマイナス金利を主体とした金融緩和が見送られたため、失望によるリスクオフの円買いに振れています。つまり緩和を実施しても、見送っても円高に振れています。


日銀の決定会合は今年に入ってから、円高地合いの時に開催されているため、日銀の政策決定が円高の波に飲まれているようにも見えます。英国の欧州連合(EU)離脱を受けドルは節目の100円を割り込む円高が進み、7月28-29日開催の決定会合で緩和の実施に「期待」が高まっていますが、それによってかえって円高は進む可能性はあるでしょう。そうなると、追加緩和で円高がいいのか、緩和見送りで円高がいいのか、という選択を迫られているようでもあります。

(吉池 威)



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