【フィスコ・コラム】電力、金融などに構造改革の波
[16/06/26]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 経済総合
22日の朝鮮日報は、韓国電力公社の趙社長が7月初めにも訪日し、ソフトバンクの孫社長(報道では会長)と会談する予定と伝えた。「韓日スーパーグリッド」について協議すると言う。「スーパーグリッド」は2か国以上が巨大電力網を相互に接続し、電力供給を行う仕組み。言わば、海外で発電し、日本などに供給する仕組み。それに先立ち、17日、サンクトペテルブルク国際経済フォーラムで、日本の起業家がプーチン大統領と会談し、ロシアから日本への送電線敷設を提案したとロシア・メディアが報じた。日本への電力供給計画はロシア3社が持っている。
ソフトバンク株に興味がある訳ではない(11兆円の負債、1%未満の配当利回りなど)が、最近のアリババなど保有株2兆円売却、アローラ副社長電撃退任などの動きを見ていると、「スーパーグリッド」が孫社長の「事業意欲」を掻き立てたためではないかと思える。アローラ氏はエネルギー分野の専門家ではないし、5−10年と言う長さを設定していることに、連想要因がある。孫社長は株主総会で「シャープ橋渡し」を明らかにするとともに、ハード分野に興味がないことを示唆した。
カギを握るのは中国。目下、最大の主眼とされる米国との「投資協定」締結交渉を行っているが、米商務長官は中国が提出したネガティブリストに、「満足せず」と不満を表明している。詳細は公表されていないが、欧州の「市場経済国」認定問題とも絡む。やや取って付けた印象があるが、22日中国国務院は通信、空港、石油・ガス探査などの分野で民間企業に一段と開放する方針を表明した。電力分野が含まれてくるかどうか不明だが、18日にサムスン工場が被害を受けた(フラッシュメモリー生産工場の一時停止で、競合の東芝株上昇の材料視された)西安での発電所爆発事故があり、電力事情に改善の余地があることは推測される。
日本の電力業界にも激変をもたらす可能性がある。電力小売り自由化が進められているが、大きくは進展していない(昨日の東ガス株急落はこの失望感が背景か)。電力株は6月に中部、関西を除き年初来安値を更新、投資魅力を欠く状況にあるが、業界変貌の嵐の前のムードが漂う(電力業界の取り組み姿勢に懐疑的)。
同様に、銀行業界にも嵐の前夜のムードが漂う。米マッキンゼーがアジア域内328行を分析したリポートで、「強力な嵐がアジアの銀行収益を襲う恐れがある」と指摘した。中国、インド、インドネシア、日本でストレスを受けた資産が昨年4000億ドル近くに達したと言う。過去10年の並外れた成長が終わり、「3重の脅威」に直面していると指摘した。問題の中心は中国だが、香港やシンガポールなど恩恵を受けてきたところから影響を受けると見ている。「3重の脅威」は景気減速、技術的混乱、バランスシート弱体化で、とりわけIT業界の金融サービス拡大に対抗し、銀行はデジタル能力を大幅に高める必要があると分析した。
ほとんど話題になっていないが、23日(英国民投票締め切り30分前)に米FRBは年次ストレステスト(健全性審査)の結果を公表する。焦点はバンク・オブ・アメリカ(BofA)で、過去2回の審査で躓き、株主の失望を誘った(現在も金融株で最悪パフォーマンス)。日本の銀行は、一部でフィンテックへの取り組みの動き、プライマリー・ディラー資格返上など、構造改革の動きは出ているが、抜本的な方向性が示されていないことが、株価の重石になっていると考えられる。
以上
一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(16/6/23号)
<MT>
ソフトバンク株に興味がある訳ではない(11兆円の負債、1%未満の配当利回りなど)が、最近のアリババなど保有株2兆円売却、アローラ副社長電撃退任などの動きを見ていると、「スーパーグリッド」が孫社長の「事業意欲」を掻き立てたためではないかと思える。アローラ氏はエネルギー分野の専門家ではないし、5−10年と言う長さを設定していることに、連想要因がある。孫社長は株主総会で「シャープ橋渡し」を明らかにするとともに、ハード分野に興味がないことを示唆した。
カギを握るのは中国。目下、最大の主眼とされる米国との「投資協定」締結交渉を行っているが、米商務長官は中国が提出したネガティブリストに、「満足せず」と不満を表明している。詳細は公表されていないが、欧州の「市場経済国」認定問題とも絡む。やや取って付けた印象があるが、22日中国国務院は通信、空港、石油・ガス探査などの分野で民間企業に一段と開放する方針を表明した。電力分野が含まれてくるかどうか不明だが、18日にサムスン工場が被害を受けた(フラッシュメモリー生産工場の一時停止で、競合の東芝株上昇の材料視された)西安での発電所爆発事故があり、電力事情に改善の余地があることは推測される。
日本の電力業界にも激変をもたらす可能性がある。電力小売り自由化が進められているが、大きくは進展していない(昨日の東ガス株急落はこの失望感が背景か)。電力株は6月に中部、関西を除き年初来安値を更新、投資魅力を欠く状況にあるが、業界変貌の嵐の前のムードが漂う(電力業界の取り組み姿勢に懐疑的)。
同様に、銀行業界にも嵐の前夜のムードが漂う。米マッキンゼーがアジア域内328行を分析したリポートで、「強力な嵐がアジアの銀行収益を襲う恐れがある」と指摘した。中国、インド、インドネシア、日本でストレスを受けた資産が昨年4000億ドル近くに達したと言う。過去10年の並外れた成長が終わり、「3重の脅威」に直面していると指摘した。問題の中心は中国だが、香港やシンガポールなど恩恵を受けてきたところから影響を受けると見ている。「3重の脅威」は景気減速、技術的混乱、バランスシート弱体化で、とりわけIT業界の金融サービス拡大に対抗し、銀行はデジタル能力を大幅に高める必要があると分析した。
ほとんど話題になっていないが、23日(英国民投票締め切り30分前)に米FRBは年次ストレステスト(健全性審査)の結果を公表する。焦点はバンク・オブ・アメリカ(BofA)で、過去2回の審査で躓き、株主の失望を誘った(現在も金融株で最悪パフォーマンス)。日本の銀行は、一部でフィンテックへの取り組みの動き、プライマリー・ディラー資格返上など、構造改革の動きは出ているが、抜本的な方向性が示されていないことが、株価の重石になっていると考えられる。
以上
一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(16/6/23号)
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