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中国2つのPMI、正しいのはどっち?【世界の金融市場シナリオ分析、中国のヤバイ経済学編(2)】

注目トピックス 経済総合


中国のPMI(購買担当者景気指数。一般に50を分岐点に、景気が良くなると考える人が多いほど指数は高くなり、悪くなると考える人が増えれば下がる)は、中国国家統計局が発表するものと、中国メディアの財新とイギリスのマークイットが共同で発表するものの二種類がある。両社の大きな違いとしては、統計局の方は大企業中心の測定に対し、財新の方は中小企業の比率が相対的に高いとされている。

2014年以降の推移を見ると、大半は統計局発表分のPMIが高い数値を示している。景気の恩恵を最初に受けるのが大企業であり、その後に中小企業に波及するため、現在では、中小企業にまで景気回復の恩恵が行き渡っていないことが背景ともされている。また、統計局発表分はそれなりに政府主導で調整された数字であり、財新のほうが実態を表しているといった指摘などもあるようだ。後者に関しては、両者のボラティリティの違いからも意識されるところである。

7月のPMIは、統計局側が49.9と5か月ぶりの50割れになった一方、財新は50.6と、15年2月以来の50超えとなった。14年以降、財新が統計局の数値を上回るのは2回目となる。相対的に信頼性がおける財新PMIの好転によって、中国景気の底打ち期待が高まる状況にもなったと考えられる。ただ、財新PMIは8月に再度低下しており、7月の改善は一時的であった可能性が高い。そもそも、大企業が中心となる統計局のPMIの大幅な改善がなければ、波及する格好となる中小企業中心の財新PMIは好転しにくいと見られよう。

国家統計局が全国地域をカバーしているのに対して、財新のカバー範囲は中国東部地域の企業が中心とされている。また、カバー地域とされる中国東部は主に軽工業を中心としており、財新の統計対象は軽工業に偏っている状況でもある。政府の意思が反映されにくい半面、統計局PMI 指数と比較すると、中国経済の実態がより反映されにくいともいえる。16年7月のように、一時的なノイズで終ってしまうことも多く想定される(15年2月も一時的であった)。

そもそも、財新の前に発表を行っていたHSBCがなぜ公表をやめたのかも考えておく必要はあろう。一つには、結果に信憑性が保てなくなったことなどが指摘されている。調査対象の中小企業では、経営が困難なところも多く、HSBCの融資を得やすくするために虚偽の数字を報告するケースもあったとみられている。現在でも、民間企業である財新PMIに関心が高まりやすいが、統計局のPMIと同様に、強く信用するにはリスクが大きいと考えるべきであろう。

あえて、PMIで中国景気の回復を見極めるのであれば、景気実態から時間差は出てくるかもしれないが、大企業中心の統計局PMIが上昇トレンドを描き、それに付随して、財新PMIも上昇トレンドが明確化する局面、こうした状況を見極めることであろう。

執筆
フィスコ取締役 中村孝也
フィスコチーフアナリスト 佐藤勝己


【世界の金融市場シナリオ分析】は、フィスコアナリストが世界金融市場の今後を独自の視点から分析、予見する不定期レポートです。今回の中国経済についてのレポートは、フィスコ監修・実業之日本社刊の雑誌「Jマネー FISCO 株・企業報」の次回号(2017年1月刊行予定)の大特集「中国経済と日本市場(仮題)」に掲載予定です。




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