中国の不良債権は一体どのぐらいなのか?【世界の金融市場シナリオ分析、中国のヤバイ経済学編(4)】
[16/09/21]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 経済総合
日本総合研究所では8月10日付のレポートで、中国の不良債権残高は12.5兆元(日本円で約190兆円)と試算、金融市場の一部で話題となった。中国の公式統計によると、2015年末の商業銀行の不良債権比率は1.7%、不良債権残高は1兆2744億元であるが、同レポートでは、不良債権の認定基準の甘さやオフバランスの与信なども対象に加え、実際の不良債権は公式統計の約10倍の規模と試算している。
先には、CLSA証券が5月6日付のレポートで、中国の不良債権は公式統計の少なくとも9倍あり、潜在的な損失は6兆9000億〜9兆1000億元(約114兆〜150兆円)と捉えている。上場企業の債務返済能力について開示されているデータを基に試算し、不良債権が昨年の与信残高の15〜19%だとの推計を示している。
そのほかにも、ゴールドマン・サックス証券では、中国当局が発表した2015年の社会融資総量は前年比19兆元(約300兆円)増なのに対して、24兆6000億元(約388兆円)が融資などの形で資金供給されていると分析している。みずほ総合研究所では、中国の過剰債務の規模は約50兆元(約900億円)程度とみているようだ。また、ロイターでは、海外メディアが大手機関投資家対象に実施した月次調査において、中国政府が2年以内に銀行の救済を実施、約5000億ドルの資金を投入するという予想結果を紹介している。加えて、中国の銀行業を救済するには最大10兆ドルが必要だとの見方も浮上と伝えている。
ここに来て中国の不良債権問題がクローズアップされてきているのは、IMF(国際通貨基金)の推計で、中国の企業債務が2015年末にGDPの144%に達し、バブル期の日本に匹敵する状況になってきていることなどが背景だろう。不良債権の推定は実質的に困難を極めようが、日本のバブル崩壊時の不良債権処理額が約100兆円であったことからも、中国のバブルが仮に崩壊した場合、不良債権が日本の2倍程度でとどまるとは考えにくい。
一つの推計として、企業債務を基に考えた場合、企業債務対GDP比は日本のバブルが崩壊した水準にすでに達している。日本のピークは1994年の149.2%、このときの企業向け債務残高は670兆円の水準であり、このうちの15%(100兆円)が不良債権になった計算である。昨年9月末の中国の非金融企業向けの債務残高は17.4兆ドル(約1790兆円)であり、日本と同様に15%が不良債権と考えれば、270兆円程度と推定することも出来る。なお、今後も様々な角度から、こうした推計を試みていきたいと考えている。
執筆
フィスコ取締役 中村孝也
フィスコチーフアナリスト 佐藤勝己
【世界の金融市場シナリオ分析】は、フィスコアナリストが世界金融市場の今後を独自の視点から分析、予見する不定期レポートです。今回の中国経済についてのレポートは、フィスコ監修・実業之日本社刊の雑誌「Jマネー FISCO 株・企業報」の次回号(2017年1月刊行予定)の大特集「中国経済と日本市場(仮題)」に掲載予定です。
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