【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(2):◆円高圧力続くも超緩和長期化歓迎◆
[16/09/25]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 経済総合
〇円高圧力続くも超緩和長期化歓迎〇
右往左往せずに済んだと言う意味で良い休日だったかも知れない。日米金融政策のイベント通過で、金融超緩和時代の長期化を確認、9月末ドレッシングを意識しつつ、待機勢が動いて株高となって帰ってきた。
日銀の政策の専門的解説はメディアに任せるとして、2つの点に注目したい。一つは、マイナス金利拡大で銀行ビジネスモデル崩壊とまで言われたから、長期金利にはチャンと利息を付けますと言うことで、大袈裟に言えば金融崩壊懸念に対処した。これは事前に観測があって日独中心に長期金利が上昇していたので、追認・安心材料。格付け会社フィッチが21日に発表したマイナス利回りの世界の国債総額は10兆9000億ドル(9/12時点)。6月下旬のピークが11兆7000億ドルで、日本国債が約6割占め、約1兆ドル減少している。減少スピードが加速するかどうかが焦点となろう。
二つ目はサヤ抜きの撃退。日本証券業協会が発表する公社債投資家別売買動向で外国人が毎月1.7兆円ペースで買い越している。買い越しは実に26カ月連続。詳しいことは報道されていないが、市場で買って日銀に売れば、利幅は薄くとも確実に儲かるためと言われている。コバンザメ商法みたいなのを日銀は苦々しく思っていた可能性はあるので、もうお小遣いはやりません、と言うことではないか。マイナス金利を勝手に深掘りするリスクを排除し、場合によっては円高狙い(ヘッジをせずに円ロングを膨らませる)になるリスクにも釘を刺す狙いが考えられる。
もう一つおまけで言われているのが、「債券アナリスト要らねぇ」。長期金利まで日銀が決めるなら、金利予想の商売は成り立たない。巷で日銀批判が溢れるとすると彼等が中心となろう。
ただし、枠組み変更・金融緩和長期化体制への移行であって追加緩和ではない。足元の景況感はかなり厳しく(8月コンビニは+0.6%も、全国スーパー-2.9%、全国百貨店-6.0%。百貨店のなかには9月前半に落ち込み拡大の声がある。輸出は-9.6%)、追加緩和が必要との見方も根強いので、日銀の景気認識を問う声、消費不振下でのデフレ脱却の可能性を巡る議論が活発化しよう。
また、日銀の政策だけで銀行の融資が伸びる訳ではなく、利ザヤもそう回復しない。フィンテック・ムードもあって、早晩、銀行のリストラ(店舗縮小など)が浮上する公算がある。
もっと厄介なのが円高回避策。21日の欧州時間から円高圧力が強まり、ドル円100円割れリスクに晒された。どう凌いだか分からないが、円ロングの軸足が米金融政策にある(12月の利上げ確率約6割で変わらず。先行きの金利見通しを引き下げたことで日銀と逆に長短金利差縮小)との印象が強まった。円高狙いの投機筋を排除できなかったことで、追加緩和の攻防が続こう。
以上
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