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【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(2):◆潜在的なドル不安◆

注目トピックス 経済総合


〇各国中銀の米国債離れ、大統領選の混沌が重荷〇

米大統領選討論会では両陣営がゲストを招くと言う。TVで紹介されるかどうか分からないが、クリントン陣営は「トランプ・スナイパー」と呼ばれるマーク・キューバン氏。富豪のベンチャー投資家でNBAバスケットチームのダラス・マーベリックスのオーナー。同氏は(今、言うべきことではないだろうと思うが)「トランプ氏が当選すれば証券市場は20%以上急落する」と警告している。クリントン陣営は資産家の支持が多く、ビリオネア17人からの寄付金は2110万ドルを集めている。一方、トランプ陣営はジェニファー・フラワーズ氏。ビル・クリントン元大統領がアーカンソー州時代に不適切な関係にあった女性で、モニカ・ルゥインスキー事件などの「ジッパーゲート」の端緒となった。資産家からの寄付は102万ドルに止まる。直前調査では、ロイターが「クリントン氏当選確率88%に上昇」、ブルームバーグが「二者択一の場合、支持率46%で拮抗」。

やや重い様子見となったのは、トランプ氏の政策を巡って意見が割れている点が大きい。例えば、「トランプ大統領」では財政悪化必至→金利上昇でドル高、あるいはドル安政策で輸出ドライブを掛ける、など。「トランプ大統領」の場合、市場がどう反応するか読み切れないのも混沌に拍車を掛ける。

25日、サウジ通貨庁(SAMA)は国内金融支援へ約200億リアル(約5400億円)の資金を定期預金の形で提供すると発表した。原油相場下落で政府が預金を引き出し、国内の流動性逼迫を招いて来たことに対処する。6月の150億リアルの短期融資に続く措置。IMFによると今年の財政赤字はGDP比約13%。ユーロ債と見られるが、初の起債の準備を進めている。

ブルームバーグは「米国債市場の最大の買い手が異例のペースで売り、相場の転換点か」と題する記事を26日に配信した。各国中銀の保有残高が3四半期連続減少、縮小ペースはここ3カ月で加速している。今年1-6月期の減少は1000億ドル近い。サウジなど産油国は原油安、中国は人民元防衛、(記事にはないが)タックスヘイブン問題でカリブ海諸国などが挙げられる。日本もドル不足に対応するため、(限定的だが)現金や短期財務省証券(TB)に交換していると言う。

大黒柱となる中央銀行の売りが強まれば、投資家のドル離れを一斉に招くリスクが潜在する。それを回避するための先行的利上げシナリオだが、ままならない。米経済はドル高もドル安もオーバーシュートを回避しなければならない状況に陥っていると考えられる。両候補がこういった問題に言及していないことも不安心理を招いていると考えられる。黒田日銀総裁は26日の講演で「為替対応」を鮮明にした。為替介入も臨時会合(短期金利引き下げ)も辞さない姿勢と受け止められ、米大統領選の混沌の最中、緊迫した場面が続くものと考えられる。


以上



出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(16/9/27号)



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